李下瓜田
登場人物&設定
※必要のない方は読み飛ばしてください
※すでに描写されている範囲で簡単に記述します
※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします
本作では一人称で描写される登場人物の固有名詞を使いません。
他の登場人物も複数ある役職名やアダナ等で呼ばれます。
文節の大半は一人称となりそれが次々と入れ替わります。
よって、以下の特徴で誰視点であるのか、ご確認ください。
・一人称部分の視点変更時には一行目を【】で区切ります。
・【語る人間の居場所/誰視点】とします。
・「誰視点か」の部分は「青龍の貴族」「魔女っ娘」など代表的な呼称(役職名やアダナ)を入れます。
・次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。
以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。
(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)
【用語】
『シスターズ』:エルフっ子、お嬢、魔女っ子の血縁がない姉妹同然の三人をひとまとめにした呼称。
『Colorful』:奴隷商人に造られたハーフエルフの最高級愛玩奴隷たち。
異世界では用途別の奴隷を出産から教育まで一貫して生産する奴隷牧場がある。
なお、中学生当時の俺。
教室に放置されたのに気がついて、窓際に移動。
俺の席は教室の真ん中だったからね。
窓際の方が陽向で風が心地いい。
天気がいいから仕方がないね。
二度寝に入ったのは言うまでもない。
遅刻で怒られのは、確定。
なら、最後まで寝過ごした、ことにする。
同じコストを払うなら、利益を最大化したいよね。
「えんりょなくおこしてください」
とメモ紙を額に貼る気遣い。
アイマスク兼用。
そんな配慮が生きて、起こしてもらえた。
起きた時には体育の授業も終わり、みんな着替えて着席済み。
寝顔を笑われたが、寝顔なんてそんなもの。
大変気持ちよく眠れました。
なお、怒られなかったのは特筆すべき出来事だろう。
委員長が教師をごまかしてくれたのだ。
持つべきものは学友である。
学校なんてくだらない。
そんなことを言うのは、世間知らず。
ガラクタをひっくり返さなきゃ、宝は見つからない。
駄作を途中まで見ないと、最高傑作には出会えない。
ただ積んでおくだけじゃ、ゲームの中身は判らない。
口を空けていても、良いもの良いことは落ちてきやしないのだ。
あんまり。
落ちてきてほしいけれど。
我が学友、時の委員長。
その傷にならないように口裏を合わせた。
いざとなれば、俺が騙したことにすればいい。
教師の俺への信用は、その辺りについては厚い。
一方の委員長はけっこう騙されやすい性格だったし。
だが。
二人で無事ならばもっといい。
裁判に備えてアリバイを創るにしても、捕まらないほうがいい。
そんなものだろう?
体調不良で保健室にいたこと。
それゆえに報告が遅れたこと。
心から反省していること。
以上三点を学年主任の先生にお詫びしたのは、言うまでもない。
体育教師に言うとメンドクサイからな。
欠席は現場で起こっているのである。
上の了解をとってから、直接の担当におわび。
不在がちな保険医にも、いらっしゃらない時に利用してしまいました、と根回し。
体調を気遣われて早退したが
――――――――――人の情けが身にしみた瞬間である。
三人の先生には一生隠し通すことで報いたい。
報いているが。
報い続けているが。
――――――――――委員長にお礼?
うむ。
学生らしく、ってか、学生ってのは大学生以上か。
生徒らしく、爽やかに言った。
「何でも奢る♪」
真面目一辺倒な委員長だけに、ストレスに気を使ったのだ。
あれ以来、柔軟性がついてクラスメートの評判は悪くない。
が、やりすぎだし、俺が原因だしね。
ただ
――――――――――小遣いを全部いかれるとは思いませんでした。
真面目で気は強かったが、もっと奥ゆかしかったよね??????????
丸一日朝昼晩にチケット代まで全部もちなんて聴いてないよ!!
――――――――――退くに退けない。
女の子も女だな、と思い知った瞬間だった。
男だったら、ラーメン二・三杯くらいで済む。
もちろん、やられっぱなしではいられない。
委員長も、やりすぎたと思ったのだろう。
以後、弁当や菓子をたかっても赦された。
奢ったり奢られたり。
今に至る付き合いが出来たのだから、良かったんだが。
【国際連合統治軍第13集積地//ゲストハウス/卓袱台の前/青龍の貴族】
俺は通常礼装に甲武装。
といってもまあ、ホルスターは未装着。
国連軍標準装備の銃器は自衛隊装備とは関係ない。
だからホルスターもM1911用。
デカイ。
付けたままだと、畳に座りにくいからね。
正座じゃ抜きにくいし。
服を乱さないように、居住まいをただす。
今日ほど、制服が似合う俺カッコいい、と思ったことはない。
自分で着たんじゃないからだ。
俺なら全く気が付かないであろう細かな対称非対称。
左右上下に色合いに影と光沢。
全周から六つの瞳にチェック済。
一分の隙も無い士官将校出来上がり。
シスターズの眼に狂いはない。
すぐにでも、閲兵可能。
そこに厳しい曹長チェック。
士官が先に立つのは士気に関わります、とかなんとか。
あ、はい。
兵が隊列を組むまで出て行きません。
閲兵は宿舎の前でやるから出てくるな、ってことですね。
はい、了解しました。
戦闘装備、銃器弾倉、プロテクターまでまとう兵士たち。
フル装備。
時間がかかるのも仕方がない。
あんまり急かしてはいけない。
急かしたら台無し。
じっと待つ。
曹長の許可、いや合図を。
そんなこんなの事情。
それを察して、座布団を差し出した魔女っ子。
だいぶ驚いた。
三つ指つくのは如何なものか?
誰が教えたニッポン文化。
正しい日本文化が求められるが、それをやったら銃殺か?
料理はいいのか?
いまのうちに言い訳を考えておこう。
そして着座すると、すみやかにお茶が差し出された。
お嬢の流れるような仕草。
エルフっ子は、お菓子。
ぎこちなさが可愛いな。
お母さんのお手伝いをする、近所の高校生を思い出す。
Colorfulが一礼して立ち上がる。
っていうか、脚がしびれたのか。
洋風異世界に正座は厳しい。
俺の真似か。
久しぶりの畳でテンション上がったからな。
畳だけに、転んでも怪我はないだろうが。
ふらふらしていて、楽しいが。
大丈夫かな?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いい感じに、気を抜かせてくれる子たちだよ。
まったく、可愛らしい。
みんなゆっくり着替えなさい
――――――――――とは、いかなかった。
なんかシスターズは不動の構え。
俺の相手をしてくれるって?
シスターズ&Colorfulの二組。
交代で着替える、らしい。
着替えと給仕の二重包囲?
時間かかりそうだなあ。
手持無沙汰だから、お茶は歓迎するけどね。
女の子だから仕方がない。
俺は簡単。
起きたとき。
つまりはエルフっ子を慰めてたら、射殺されそうになったとき。
寝間着代わりの戦闘服。
上はシャツだけだった。
身支度は簡単。
顔を洗い、髭をあたり、制服を着るだけ。
戦場なので、シャワーは省略。
曹長が制服を用意してくれる役目。
意外に手間取るブラッシングとか、軍靴の手入れとかね。
これも自分でやってはいけない。
軍政官の権威を保つため。
うっかりやると、銃殺になりかねない。
異世界住民に見られたら、致命的事態になりかねない。
死ぬのは主に、異世界側。
もちろん、そんな事態を望む訳がない。
そのためには異世界側に解りやすく、軍政官の地位を特別視させる演出が必要だ。
だから山ほど殴られた。
軍政官訓練キャンプで
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺だけじゃないよ?
礼を言って殴られ、謝って蹴られ、自分で靴を揃えて関節技。
都度々キャンプ場マラソンは、教練軍曹の機嫌次第。
こうして俺たちは、仕立てられたのである。
君臨すれども統治しない軍政官人形。
だが最近は、ちょっと違う。
制服衣服の用意が、シスターズ&Colorfulに移行。
曹長からあらゆる手順を微に入り細に入り聞き出したらしい。
自分の娘(中学生)を思い出したらしく、ほっこりしている曹長。
完全にお父さんである。
で俺の、制服、それと銃以外の装備は子供たちが用意してくれるようになったのだが。
衣食住コンプリートされてなお、着々と何かが進行している。
しかも今朝は、用意されるだけじゃなくて着替えまで
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・手伝われたんじゃない。
気がついたら、すべて終わっていた。
魔法使いか?
魔法使いもいたか。
【聖都南端/青龍の軍営/青龍幕舎/青龍の貴族背後/エルフっ娘】
あたしたちが彼、青龍の貴族を着替えさせたんだけど
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・主に妹たちが。
あたしは、まあ、二人が手の届かないところを補った、だけ。
――――――――――恥ずかしかったもの!!!!!!!!!!
なんで妹たちは慣れてるの??????????
今日まで一度もしたことないのに!!!!!!!!!!
いつも自分で手際よく着替える彼、青龍の貴族も馴れたもの。
着せられるのも慣れたもの。
軽く動きを併せて、流れるように
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、まあ、貴族なら、当たり前かもしれない。
でも、執事や従僕にやらせている風には見えないわ。
女に着せられている感じ、しか、しないわね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぜかしら?
【国際連合統治軍第13集積地//ゲストハウス/卓袱台の前/青龍の貴族】
俺はお茶を楽しむ。
お嬢に目礼。
茶道は一期一会というけれど。
一杯ごとに味が違い、美味しいってすごいよね。
葉も変えてるんだろうな。
お茶の温度や器の形。
器の温度や茶葉の形。
そこまで工夫しきったお茶を飲ませてくれたのは、中学時代の友達だ。
当時は全く気が付かなかった。
そこまで手間ひまかけていることに。
直接お茶を入れる時に至るまで、何日も前から準備していることに。
気が付いていたら、さすがに遠慮したかもしれない。
いやまあ、だから、お嬢のお茶を遠慮するかと言えば、そうではないのだが。
何でも手に入るようでいて、大量消費財ばかり。
貴重ではない希少品は出回らない現代。
一人の為に農園や山がしつらえられるという、商人貴族の世界。
お嬢の手並みは、そういう意識の違いから来ているのだろう。
縁のない世界だが、馴染みたいとは思わないが、覗いてみればいと楽し。
まさにそれ。
これから。
今日。
外出。
お出かけ。
物見遊山。
そのために着替え。
第13集積地ゲストハウス。
全国を狙うSMしゅ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・運動部が合宿余裕な充実設備。
だが俺の中学時代と一緒で更衣室はない。
前線基地だからね。
ゲストっても、人権保留の捕虜しか想定してない。
遮蔽物は少なく、集団も少なく、十字砲火の火点のごとく。
だからまあ、俺は着替えて先に出るつもりだった。
女の子とはいえ、そろそろ女扱いを始める頃合いだから。
早めに自覚させることで魅力が磨かれる。
もちろん防犯にも役に立つ。
しかもエルフっ子にColorfulは、肢体だけなら立派過ぎる。
特にColorfulに至ってはプロフェッショナル以上。
文字どおり、男を誘うために産み出された。
その事情を知らなければ、自制するのが大変なくらい。
事情を知っても楽ではないが。
無防備過ぎて頭が痛い。
世の中には俺以外の人間もいるんだぞ、と。
完全個々人監視システムが、絶え間なく見張っている国連軍。
監視に慣れて忘れたバカが、異世界住民に不適切な接触を図って銃殺にされるケースは絶えていない。
正確に言えば、記録はされているが監視は(あまり)されていない。
なので手遅れになるケースもあるのだ。
少ないけどね。
戦死者よりは多いくらい。
戦死者が少なすぎるだけだが。
不適切な関係にも種類はある。
勝手に異世界の紛争に手を出すバカが一番多い。
まあそれなら、この子たちとは関係ない。
直截的には。
それ以外、力への媚びを好意と解釈する下衆。
そもそも、その力は銃がもたらしたもの。
異世界住民に好かれるどころか、目を向けられてすらいない
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、下衆には判らない。
勝手に恋愛無罪と考えて、監視の目を忘れてしまうあたり、どんな頭の構造なのか。
軍法会議って知ってる?
大丈夫、すぐわかるから。
三分間くらい。
そのあと主にWHOが対応します。
軍法会議がない場合も普通にあります。
最初から主にWHOが対応します。
その前に優しい戦友に射殺してもらえることもありますが。
戦死者三桁。
処刑者四桁。
行方不明者不明。
その実態。
まあ、六桁の国連軍総体としては、瑕瑾に過ぎない。
馬鹿と下衆は絶えないが、決して多数派にはならないということだ。
だが。
存在する。
絶えない。
それが問題。
国連軍駐屯地だからって、安心していいとは限らない。
確率的には少なすぎるが、万が一、で赦される話ではない。
女性自衛官有志が俺を誤解するのも、無理からぬところがある。
この誤解を解くには有志諸氏を口説いて健全な趣味嗜好を理解してもらえばいいのだが。
未来の課題は、未だに来ない。
君子であるためには、危うきに近寄らず。
当面はそれが大事。
率先模範で距離を置きつつ、置きすぎない。
誤解を避けつつ、防衛カバー。
だからお茶を飲んでいる場合ではない。
外に出て朝日を浴びて光合成。
二度寝にならない程度に。
出来るだけ早く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と思っていたのだが。
うん。
まあ。
戦闘準備は時間がかかるものだよね。
女も女の子も兵隊も。
とここまでが、俺が座布団に正座しつつお茶を飲むに至っている過程である。




