羊質虎皮
登場人物&設定
※必要のない方は読み飛ばしてください
※すでに描写されている範囲で簡単に記述します
※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします
本作では一人称で描写される登場人物の固有名詞を使いません。
他の登場人物も複数ある役職名やアダナ等で呼ばれます。
文節の大半は一人称となりそれが次々と入れ替わります。
よって、以下の特徴で誰視点であるのか、ご確認ください。
・一人称部分の視点変更時には一行目を【】で区切ります。
・【語る人間の居場所/誰視点】とします。
・「誰視点か」の部分は「青龍の貴族」「魔女っ娘」など代表的な呼称(役職名やアダナ)を入れます。
・次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。
以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。
(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)
地球側呼称《三佐》
現地側呼称《青龍の公女》
?歳/女性
:陸上自衛隊三佐、国際連合軍事参謀委員会参謀、WHO防疫部隊班長、他いろいろな肩書を持つ。日本の政権与党を支配する幹事長の娘で、父親と連携して戦争指導に暗躍している。
何か起きたときは「三佐の陰謀」と考えると気が楽になる。
すくわれないけど。
地球側呼称《マッチョ爺さん/インドネシアの老人》
現地側呼称《副長/黒副/おじいさん》
?歳/男性
:インドネシア国家戦略予備軍特務軍曹。国際連合軍少尉。国際連合軍独立教導旅団副長。真面目で善良で人類愛と正義感に満ち満ちた高潔な老人。
今日も人類を救っています。
国連総会でそう決まりました。
コトダマ、といいましたかな。
本来は忌み言葉、だと聞いております。
忌むべきことを避けるる為に、忌むべき言葉を避ける。
音に表すのではなく、肝に銘じる。
史書曰く。
「In principio erat Verbum et Verbum erat apud Deum et Deus erat Verbum.」
(はじめに言葉があった、言葉は神と共にあった、言葉は神であった)
ゆえにこそ、言葉にしてはいけない。
それは世界を表すがゆえに。
世界を表そうとする人とは、狂人にすぎませぬからな
禁忌。
戒め。
警句。
まさにまさに。
ゆえににこそ、気触れには好まれますが。
言の葉とは、軽いものです。
「核武装」を唱えるが「核攻撃」は口にしない。
「戦争」と口にするが「侵略」とは言いださない。
「国賊」と書き散らすのに「吊るす」と思いもしない。
いやいや。
薄い。
薄っぺらだ。
埃のようですな。
他愛なし。
それとも、不可思議、というべきですか。
「核兵器」は魔法の杖。
ただあるだけで一目置かれる。
さて、チンピラのナイフですかな?
「戦争」は自然現象。
起こすのではなく、起きるもの。
さて、被害妄想か被害願望ですかな?
「国賊」は呪いの呪文。
嫌いな相手に投げるモノ。
さて、唱え続ければ改心するとでも?
振るう覚悟もない刃物を飾り付け。
誰かに襲われることを期待して。
敵視し傷つけても殺せない。
いやはや。
生きるのが辛い、と、は思わないからこそいるのですな。
生かすのが辛い、と感じる皆の優しさで見逃されているわけですな。
おお!
そうですか。
「チュウニビョウ」
というのですか。
ほう?
それに伝える言葉?
言葉は人に向けるモノですが。
そうですな。
では。
「だからオマエはダメなのだ」
【聖都南端/青龍の軍営/青龍幕舎/青龍の貴族背後/エルフっ娘】
あたしは決めた。
あの娘たちのお手本になる!!!!!!!!!!
青龍の貴族、彼の言いなりにはならないわ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何も言ってくれないけど。
でも、仕草や視線、でわかるし。
あたしたちが恥ずかしがったら、力ずく
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・圧されると、逆らえないだけだけど。
だ・か・ら!!!!!!!!!!
そこで 逆らえ、なくても、伝えなくちゃ!!!!!!!!!!
辛いことは辛いって
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・その、希望としては、そのその、期待させられてはぐらかされるのはひどいっていうか、期待させてほしいけれど、そのまま進めてほしいというか、じらさないで、っていうか。
それが彼、青龍の貴族、その意に添わなくても!!!!!!!!!!
ずっとずっと、じらしてからかって弄ぼうと考えて、いても!!!!!!!!!!
それはあとでもできるわよね?
どうせ趣味は変わらないんだから貴男の一生続くんだからじらしたりじらさなかったりしてもいいはずよね??
よし!!!
からかってばかりはイヤって、伝えないと
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大丈夫。
あたし、あたしたちは、望むままにする
――――――――――彼がそう命じたんだから。
【国際連合統治軍第13集積地//ゲストハウス/卓袱台の前/青龍の貴族】
俺の背中で気合を入れているエルフっ子。
ぴったりくっついているから、何を考えているのか手に取るようにわかる。
両手でガッツポーズをとって、決意を新たにしているよーだ。
今朝方の〈エルフっ子抱擁事件〉で凹んでいたんだろうな。
ふだんの〈クールビューティー&おかんもあるよ?〉なエルフっ子。
じっさい、怜悧な印象の美女、美女寄りの美少女でかつ世話焼き時は愛嬌もある。
そら凹むわ。
むっちゃくちゃに子供っぽく甘えているところを、目撃されたらね。
小さい妹二人の前で、外見実年齢共に年下のColorful達の前でね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺だったら逃げるな。
耳も立てようってものだ。
もともとエルフの耳は立ってるじゃないか?
いつもより余計に立っております
朝食の間中、俺の背中に隠れるのも無理はない。
魔女っ子が美味しそうな雑炊を仕立てて背後に持って行ったのが、涙を誘う。
敢えていじり倒したいという誘惑がすっごく盛り上がるが、我慢した。
幾ら俺でも、お姉さんな子を失墜させるほど悪趣味じゃない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・凄く楽しそうだが。
良くやった!
良く耐えた!!
一緒に堪えたよ俺!
俺の方でさりげなく大人の配慮。
背中の気配を確認。
何時までも隠れているわけにはいかないぞ。
隠れていなかったことにするのが、俺のテクニック。
ここは何事もなかったかのように振り返る。
そこは緑の瞳だった。
――――――――――あ――――――――――
エルフっ子をガン見する俺。
見返すというより、動けなくなっているエルフっ子。
いじめよくない。
俺か?
先に目をそらせた方が敗け、とかそういう問題じゃない。
銀糸のような髪から覗く瓜実顔に、白い肌を紅潮させて涙目。
だんだんと気持ちが爆発しそうになっていることが見て取れる。
俺は無言で撫でる。
エルフっ子の頭をなぜて、前に向きなおった。
うん。
間をとろう。
お嬢がお茶を注ぐタイミングが絶妙。
魔女っ子が小さな焼き菓子を進めてくれる。
朝食後の満腹感を阻害せず、味のみを楽しむサイズ。
素晴らしい。
仕切り直し。
女の子、というより、女扱いするとぴったりくるかもしれないな。
俺の背中に顔をうずめるエルフっ子。
俺は後ろ手にエルフっ子の手を取り指を握る。
剣士だから硬い、と思われがちだが全く違う。
エルフの恒常性維持機能。
ぶっちゃけ健康を維持する力だが。
それは特に肌や髪に現れるとかなんとか。
つまり酷使しても皮膚が硬くはならないのだ。
柔らかく、ほんの少し冷たい指先。
心は人並みだけどね。
かなり繊細で柔らかくて温かい。
人並み外れてほしいわけでもないが。
よしよし、がんばれ、強い子だ。
俺がついてる、ついてるだけは。
時間だ。
いま必要なのは時間だけだと言い切れる。
エルフっ子、再起動中。
ソレと気が付かれないように、誰もが自然に受け入れるように、時間を潰す。
ここで5分。
あそこで8分。
1分2分を刻んで稼ぎ、30分以内に切り替えねば。
片手でエルフっ子が絡めてきた両手の指をにぎにぎ。
残る片手で、お茶とお菓子を飲み摘まむ。
俺の両手は総動員。
というと不便そうだが。
あくまでもお茶請け。
腹いっぱい食った後、甘いものが欲しくならない?
かるーくさ。
俺はそういうタイプだ。
今噛みしめる、魔女っ子のありがたさ。
完全に国際連合統治軍専属料理人ですありがとうございました。
十歳児なんですが?
王国規模の太守領を住民を代表する現地代表なんですが?
魔法使いっていったい?
最初は違ったよな。
国際連合統治軍は基本的に従来の統治体制を継承。
手を出さないともいうが。
俺たちの様に直轄統治をする場合も同じ発想。
従来の施設機関と運営体制をまんま接収継承。
だが太守府王城ではそうもいかなかった。
元々の太守家臣は皆逃げたし、奉公人も半減。
人や施設が足りないわけじゃやない。
まあ俺たち以前には、王城に二千からの帝国騎士団がいたんだからね。
今は一個分隊。
それにシスターズ&Colorfulを入れて、その人数は小隊にも届かない。
まったく違う形なるのは納得。
それ以外は、特に知ろうとしなかった。
いや、俺の仕事じゃないからね?
まあ、不都合が起きるまで放置。
不都合が起きて、その対処ができなくなったら俺に報告が来る。
つまり今まで物流に支障がなかった。
物流には。
つまり問題は。
いやまて。
物流も問題だったか?
物資に不を苦は無いと、思っていた。
が、取り戻して初めて気が付く大切なもの。
お米である、ごはんである。
完全に一致、白米。
喉ごしがたまらないね。
ごはんを主食に、おかずは味が濃い。
しかし材料一つ一つの味や歯触り舌触りが判る。
お吸い物は、濃い味をリセットする為か。
出汁は魚系かな?海藻系かな?
おそらく異世界の。
海近いしね。
都度都度、味わいを繰り返し繰り返し。
お米を始めとした食材、調味料の一部は日本列島からの補給品。
他の素材は異世界産品。
たがこれは和食と言い切れる
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・納豆と味噌汁が無いのは、まあ仕方ない。
バイオハザード対策ってどういうこと??????????
――――――――――納豆菌で滅びる異世界惑星。
なんだかんだいって、発酵食品は危ないよね。
味噌醤油を造るときの麹って、カビだもんね。
俺たち喰ってるけどね。
異世界産のチーズとか酒とか。
生きてるからいいって?
誰がそういってるか、俺しってる。
その人なら、まだ生きてる?
って言ってたよこの間。
国際連合軍事参謀委員会参謀として言ってるのか。
12ヵ国何処かの軍事顧問として言ってるのか。
UNESCO調査戦略班班長として言ったのか。
アムネスティ・義勇兵として言ってるのか。
WHO防疫部隊班長として言ってるのか。
陸上自衛隊三佐として言ってるのか。
間違いないのは〈試した〉ということ。
自白剤の異世界人類馘首族に対する処方箋が出回っているくらいだ。
実際にやってみないわけがない。
それで何人、何十人、何百人が
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やめておこう。
なお醤油は完全に化学的に製造されつつある。
いわゆる代用醤油。
とりあえず焦がした植物を煎じた代用コーヒーとは違う。
黒い液体でさえあればコーヒーと言い張る西欧文明の精神主義は日本とは無縁。
代用醤油はマジ化学。
<異世界人を含む異世界環境を守るため>
WHOが生産開始。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嫌な予感しかしない。
生産方法は明確だけどね。
すでに前回の敗戦直後に基本概念は出来ていたくらいだから。
前回。
日本市場最後の敗戦とかなんとか。
そのひどい時代、俺たちが知る必要のない時代。
確立されたレシピ。
いやいや。
醤油粕(正規の醤油を造るときに出てくる搾りかす)を使うバージョンじゃない。
それじゃ結局、醤油と同じ。
パンデミックは防げない。
大豆のアミノ酸を化学処理で抽出するパターン。
たんぱく質を加水分解し化学薬品で中和。
アミノ酸液を採取し成分調整をする。
するとできるのが醤油っぽいナニカ。
これなら異世界人が摂取しても大丈夫。
だろう。
おい!
いや、違う。
そこじゃない。
そもそも、なぜここまでして代用醤油を造るのかって話。
美味しいけどね。
腹を立てる人は<醤油>って思うから腹を立てるのであって。
調味料と考えれば優秀優秀。
醤油を使うシュチュエーションで利用して、まったく問題なし。
醤油を使う代わりにこれ使ったんだ~っていえば、醤油みたいだね~って、喜ばれるレベル。
異世界導入の理由?
国連軍兵士は普通に醤油をのめばいい。
脱走罪で憲兵に捕まるくらいで、直接的な害は無いに等しい。
つまりは異世界人に使わせたいんだな。
その為に手間ひまかけて、非志願者による人体実験を重ねて、わーざわーざ、辺境にもちこんで。
地球産食料が解禁されている異世界人は、此処にしかいない。
害がないと判っていても、要注意要警戒要偽装。
十万年かけてでも、エルフの寿命を測定するのはやめないだろう。
他の方法がないからだ。
いまのところ。
だが、すぐに結果が出る事ならば。
やってみないはずがない。
人類が待つわけがないのだ。




