兵站理論
【用語】
『フレンズ』:青龍の何かに惹きつけられた、太守領港街を中心とした緩やかな人脈。組織化されているわけでもなく、目的を持つわけでもなく、特定の活動もない。
「ファンクラブですか」
とは港街駐留の国連軍女性将校の批評。
シスターズ&Colorfulのように青龍に近い、そう見える人々。
それを、太守領の異世界住民は「青龍の眷族」と呼び始めている。
「青龍の眷族」対比して、青龍の貴族にシンパシーを抱く人々が「フレンズ」と呼ばれ始めたのが発端。
そう名付けたのは港街に駐留している褐色の国連軍将校。
※第208話〈種まく人/Le Semeur〉参照
元々、「青龍の貴族が幼女性愛者である」という異世界側の認識に伴い、貢物にされた富裕層の幼女童女たちが中心。
※第66話〈異世界の流儀〉参照。
青龍の貴族は「貢がれた」と気がつかず様々な誤解(?)の果てに、少女たちは急速に青龍の貴族へ傾倒。
彼女たちは所属氏族の実権を掌握し同年代の富裕層に浸透していく。
これに盗賊ギルド末端の愚連隊が合流。
彼らは彼らで青龍の貴族に憧憬を燃やしていることが、互いを結び付けた。
※第71話〈青龍の統治〉参照。
「自由が導くあるべき道の形は判らない
――――――――――だが、正義だ。
純真が導く素晴らしい行動はよくわかる
――――――――――今でも覚えている」
インドネシアの老人は、そう語る。
兵站を征する者は戦争を征する!!!!!!!!!!
――――――――――常識以前の問題ですね?
そう!!!!
すなわち!!!!!!
男子厨房に立ち入らせず!!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、これは愛する殿方のことですよ?
どーでもいいジャンクは、どうぞどうぞ台所へ。
自炊掃除洗濯お好きにどーぞ。
そんなん男に入りません。
好きに生きて好きに死ねばいいじゃないですか?
さて。
愛しい男子厨房に以下略!!!!!!!!!!!!!!
ごはん!
お味噌汁!!
一汁三菜満漢全席ふるこ~す!!
コンビニ粉砕!
レトルト追放!!
お総菜売り場は立ち入り禁止!!!
先人は偉大なり。
なんのかんのと口実を付け、最小労力で最大戦果。
りゆーなんていーんです。
こまかいことはいーんです。
おせわしたいんだからいーんです。
古来のおきてに感謝しつつ、戦果を頂戴しましょう。
食から初めて、衣住を制圧。
三大欲求から十戒まで、24時間、頭から爪先まで、二次元から四次元まで。
愛しい愛しいアンチクショーを隅々までゲットするのです!!!!!!!!!!
――――――――――しかーし!!!!!!!!!!
注意すべきはエプロン男子。
危険分子です領域侵犯ですセクハラです。
男らしさにそーいうモノは入っていないと言い切りましょう。
スカートはスコットランド以外ではいちゃだめ。
貫頭衣はスカートじゃないからセーフ。
男の子の知るべきでない世界です。
理由も詳細もいりません!!!
理屈も根拠もいりません!!!
自活を許すな軍閥化赦すまじ!!!!
乙女の既得権断固死守!!!!!!!!!!
貴女の、貴女の、貴女たちの敗北は、乙女すべての前線に影響します。
常に恋敵な皆さん。
日々、愛しいあの人を虎視眈々と狙っているドロボウネコの貴女。
今、この一点に置いては、此処だけについて、だけは、同志と呼びましょう。
愛しいあの人の生命線を女同士で奪い合うのも大変なのに、男の参戦などだめ絶対ダメ。
伝統に勝利を!!!!!!
形式に敬意を!!!!!!!
乙女に栄光を!!!!!!!!
《フレンズ向けマメシバ・ハナコ総統恋愛演説会》
【国際連合統治軍第13集積地//ゲストハウス/卓袱台の前/青龍の貴族】
俺正座。
朝ごはん。
たいへん美味しゅうございました。
ほんのりダシの効いた卵焼き。
異世界産物のみで、香草を軽く効かせた赤身魚の岩塩ふり焼き。
なんだか上品なお吸い物。
国産、じゃなくて地球産大豆を国際連合大規模集積拠点〈出島8〉で仕上げた豆腐と、それに筍っぽい食感の異世界根菜だと思うを使った煮物。
そしてなにより、粒がたった、ごはん――――――――――!!!!!!!!!!
お懐かしい。
お米と離れて幾年月。
いや、1.5ヶ月くらいだけど。
長い
――――――――――俺が女に縁がなくなってから
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いやいやいや、見てる見てる、子供が見てる。
右に魔女っ子。
左にお嬢。
二人が楽しそうで何よりです。
俺の背中に背を預けるエルフっ子。
うなじも耳も真っ赤です。
ペタン耳が可愛いので後で摘もう。
で、正面にはColorful。
今日のセンターは、朱。
五人とも表情がコロコロ変わる。
一瞥ごとのアップダウン。
なんかあれだな。
懐かしい
――――――――――ネコと過ごしたことがあれば、わかる感覚。
撫でられる順番待ち。
一巡すると、最初の子が見てる。
Endless
Endless
Endless
どーしろと??????????
なでなでマシーンとして生涯を終わる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アリだ。
我が人生に一片の悔いなし。
――――――――――それも悪くない一生だが。
ずっ~~~~~~~~~~と、順番に見てはいられない。
最後に真ん中、朱を見て切り上げる
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大変心が痛みます。
期待に満ちた視線は、体に悪いぞ。
人を殺させても、目の前が命令一つで血の海になっても、何にも感じたことはないのにな。
オカシイナーオレダケジャナイカラ、ヨケーニムカツク。
俺だけおかしいなら、安心できるのに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いかんいかん。
思考を逸らせよう。
Colorfulがくつろげるのは、良いことです。
異世界被差別民ハーフエルフ。
やはり、完全に地球人の領域にいると安心するらしい。
そのColorful。
安心しても、遠慮がち。
脚を崩せ、と命じたから女の子座り。
命令しないとくつろがないのはデフォルトだが。
何故か俺の真似をして、異世界に馴染みのない正座をするから。
脚がしびれてジタバタする様は、大変に楽しいのだが。
だがつまり、この子たちは、俺を見て、俺を真似る。
子供なら当たりまえか。
下手な動きは出来ない。
よく眠った朝に美味しい食事をとり、さて女。
人間の三大欲求である。
周りにいるのが大人なら、性別問わずに隠したりはしないが。
残念ながら子供しかいない。
まっすぐな目で見つめられます。
すっごく信頼されているのを感じます。
もっと疑ってもいいのよ?
そんな ナイスガイが、子どもたちの目をかわす手順を考えている
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やましくは、ナイデスヨ。
やましくはない。
知られたくないだけ。
大きくなるまで気が付かなくてよろしい。
Cool Down.
Cool Down.
Self Control.
Self Control.
俺は産まれてからこれまで嘘をついたことがないよーな顔をキープ。
女の子はこういう話に敏感だからね。
真実と正直は最高の対尋問戦術。
今は叫ぼう声高く。
ごはんは正義だ!!!!!!!!!!
【聖都南端/青龍の軍営/青龍幕舎/青龍の貴族右側/お嬢】
わたくしは、Colorfulの皆を見て
――――――――――なぜ、固まりますの?
と思えば、安堵したように、ご領主様に甘え始めました
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・視線で、ですけれど。
まるで、わたくしが、許可を出しているみたい。
もちろん、ご領主様に迷惑なら、赦しませんけれど。
そうでなければ、何もいいませんわ。
白さんの胸元を、ご領主様が見ておられようと。
朱さんの腰付きが、ご領主様の視線に反応しましょうと。
碧さんの脚の線や、翠さんのうなじが、ご領主様の興を誘っていましょうと。
橙さんの真っ赤になった耳がピクリと動くたびに、ご領主様の眼が獣の光に満ちましょうとも。
お誘いするのは、理の当然。
仕草一つで応えていただけたら、調子にのろうというものです。
わたくし、ぜんぜん、とめようとはいたしませんのよ?
なにをどうおもったとしても、けっして、ごりょうしゅさまのごきぼうをとめたりは、いたしませんとも!!!!!!!!!!
【国際連合統治軍第13集積地//ゲストハウス/卓袱台の前/青龍の貴族】
世界を圧する魂の叫び
――――――――――を、心の中で済ませた、俺。
え?
魂の叫びが大気を振動させるわけ無いじゃないですか。
魂は物理現象ではないし
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ま、俺の感動は、置くとして。
無難なことに意識をそらせる。
自己規律の融通無碍は大人の嗜み。
三大欲求第一に回帰。
満腹すると、食べ物のことなど考えたくなくなる?
かもしれない。
だららこそ、食べ物じゃなくて料理を思いだす。
満腹だからこそ、味わいをゆっくり思いだし、二度おいしい。
食後の時間はかくあれかし。
今朝のご飯は、異世界と地球のハイブリッド。
素材に調理法まで上手にできてますね。
大正義ごはん、これは国産ですが。
次回、お米を食べられるのはいつになるやら。
戦闘糧食はあるけれど。
糧食は国産中心なのでご飯ものが多い。
だが緊急時備蓄扱い。
ごはんが欲しい、って理由で手をつける訳にはいかない。
戦闘糧食だけで、何ヶ月も戦えるけどね。
異世界産の米類似植物は捜索継続案件。
国連軍を始めとして異世界侵略中の俺たち。
なんだかんだと国連勢力圏は増えたけどね。
とはいえ、統治してない、税金もとらないし徴発もしないから、異世界の植生産物は不明だらけ。
ましてや帝国を逐っただけで軍政すら敷いていない地域は、まったく手付かずだ。
そういう地域と俺たち国連軍と関わり。
時々、都市や街々、村々を殲滅してるだけ。
家畜に農作物に採集物に獲物に釣果。
何があるかなんて、わかるわけがない。
地球人の勢力圏は、そーいう地域が一番広い。
帝国はもちろん領土の隅々まで把握していた。
気候、地勢、人口、産物、収穫量、生産量、増加率に減少率に傾向に将来予測。
それは全部、といえないにしろほぼ全部、一般的な世界を網羅する範囲の資料は略奪済み。
最優先作戦目標だったからね。
事後にゆるゆる進めている、UNESCOの調査とは違う。
資料を死守撤収させようという自爆覚悟の帝国軍魔法使いたち。
資料を焚書破棄隠匿しようとする玉砕上等な帝国軍殿部隊多数。
国連軍兵士の危険を顧みず、そんな厄介極まりない敵を制圧した結果。
欠損部分は、地域の商家好事家から帳簿資料を略奪して穴埋め。
解説や付箋まで解る、魔法翻訳万歳だ。
異世界の各種多様な文字、裏帳簿の符丁、個々人の目印まで翻訳されるんだからすごい。
だから、その資料を抑えた国際連合にも、数字は解る。
数字は。
だが、固有名詞は翻訳されない。
正確には、意訳されない、かな?
つまり発音が判るだけ。
○○という表記を見て、まさに見るだけ見て判るのは、それだけ。
正体が判明している産物在庫と照らし合わせ、利用法を聞いてみて一つ一つアタリを付ける。
例えば小麦類似物と同じカテゴリーにされていれば植物、たぶん、穀物の名前。
そんなかんじ。
書類から読み方使い方だけ判っても、どんな外見かすらわからない。
持って来させて外見が判っても、それは二次加工済みであることが大半。
精米済みの米粒から、稲の形を想像できるだろうか?
見に行けば判る。
持って来させれば判る。
手間と人手がどれだけかかるか判る?
ありとあらゆる無数の物を判るのに、どれだけの手間と時間がかかるか判らない。
異世界の博物学者、この世界では趣味人だが、個人的な趣味で作った絵図入りの図鑑。
これが至高の価値を持つ。
図鑑だけではなく、著者、本人が居なければ遺族友人までがUNESCOに接収される。
あらゆる障害、その可能性を破壊しつくして。
そこまでする理由も判ろうってものだ。
それを判ってほしいなどとは言えないが。




