食馬解囲
登場人物&設定
※必要のない方は読み飛ばしてください
※すでに描写されている範囲で簡単に記述します
※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします
本作では一人称で描写される登場人物の固有名詞を使いません。
他の登場人物も複数ある役職名やアダナ等で呼ばれます。
文節の大半は一人称となりそれが次々と入れ替わります。
よって、以下の特徴で誰視点であるのか、ご確認ください。
・一人称部分の視点変更時には一行目を【】で区切ります。
・【語る人間の居場所/誰視点】とします。
・「誰視点か」の部分は「青龍の貴族」「魔女っ娘」など代表的な呼称(役職名やアダナ)を入れます。
・次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。
以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。
(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)
【登場人物/三人称】
地球側呼称《マッチョ爺さん/インドネシアの老人》
現地側呼称《副長/黒副/おじいさん》
?歳/男性
:インドネシア国家戦略予備軍特務軍曹。国際連合軍少尉。国際連合軍独立教導旅団副長。真面目で善良で人類愛と正義感に満ち満ちた高潔な老人。
旅団には現地職制の副団長が同格としてあり、白を基調とした魔法使いローブのエルフが努めている。区別の為に肌が褐色な彼が現地兵士に「黒副」と呼ばれている。
現実を知らない理想主義者は素晴らしい。
現実を知らせれば理想に近づいていくだろう。
現実を知ろうとしない理想主義者は最高だ。
現実に日々侵蝕される人びとの息抜きとなる。
現実しか知らない現実主義者は最悪だ。
現実を言い訳にして現実の支えにすらならない。
理想を持たざるは死体に等しい。
生きるも死ぬも価値は無い。
理想を隠したるは生きるべきにあらず。
なればこそ死なねばならぬ。
理想を自覚すればこそ生きている。
なればこそ殺さねばならぬ。
然様。
我らは殺すもの。
然様。
諸氏らは殺すもの。
然様。
然れば左の様に。
――――――太守領港街から農村で流行した詩―――――――
上記は和訳ですが、現地で歌われる際は主に北方人間種の言葉で歌われています。
節回しや伴奏は歌詞ほどに統一性が有りません。
詩が先に在り、伴奏を付けたというところでしょうか。
あるいは詩ではなく、誰かの言葉だったのか。
内容からすると演説、訓戒、宣撫どれも当てはまりそうですね。
これらの詩歌は異世界固有の文化とは隔絶しており、かといって日本文化との関連性も薄いものです。
内容のとおり、急進主義ないし過激な理想主義の傾向が見られます。
「主に」と言った通り、地球の単語が現地の言い回しの中に混在しているあたり、日本語で言う外来語交じりの詩に近いものと言えるかもしれません。
であればやはり日本語の影響かとも考えるところですが「理想」を「Ideal」と言っていますがこれはラテン語を思わせます。
しかし発音はインドネシア語、もしくはマレー語に近いですね。
まあ両系統とも国連軍で一部隊を構成するほどの人数はいなかったはずですが。
さらに「大陸北部に非日系部隊が派遣されたのかどうか」ということもありますし「単語や概念が混ざり合うほどの深い交流が行われたのか」というところに疑問符がつく次第です。
《岩手大学人文社会科学部人間文化課程講義録より》
【国際連合統治軍第13集積地//ゲストハウス/出入り口付近外部給水所/青龍の貴族】
再び訪れた俺人生最大の危機。
最大が人生で何回有るんだ。
最大の敵と最悪の敵が交互に現れるなんてどこの少年漫画かと。
複数の狙撃銃。
その銃口を向けられて、大変練度の高そうな狙撃兵のみなさんが、女性的な怒りを目に湛えて照準を俺に向けている。
お怒りはよーく解ります。
俺だってそちら側に居たら、銃器使用と弾薬消費を誤魔化す算段を考え始めるでしょう。
でも、誤解だから。
女の子を襲ってないから。
俺が悪くないかと言えば、俺が悪くはあるんだが、そういう意味の悪さではない。
女の子を泣かせた罪で銃殺ってのは、原因と経過によると思われ。
それには誰もが同意してくれるだろう。
誤解を解ければ。
誤解を解く。
たった一つの単純作業。
手段がない。
ここでプラス材料は何か?
選抜歩兵の練度から考えれば、暴発させる可能性は、まず、ないだろう。
俺の体の中心線とエルフっ子の体が重なってはいる。
が、彼女らの技能、この距離ならそこら辺は避けられる。
いやいや。
銃弾なんて百発百中を狙うもんじゃない。
危険が危ない。
もしかして。
まだ俺が生きてるのって。
射線に近い子供らに配慮してるからか。
人質への危険を組み込んだうえで、無言で射殺する。
警告脅迫で人質を離させたうえで、騙して射殺する。
普通は二択。
考慮中?
俺が子供を襲っているように見えてるんだろう。
性的に。
エルフっ子を抱いたのは俺だしな。
エルフっ子にしがみつかれてるのも俺だしな。
傍から見たら?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見えなくも、ないか。
不幸な誤解が継続拡大再生産。
こうなりゃ力技以外でエルフっ子を引きはがすしかない。
力勝負だとかなわないし。
鷲掴みは避けたい。
普段でも避けたいが、いまはもっとマズい誤解につながる。
誤解に誤解を重ねるとトリガーに指が近づくようになるだろう。
なら、どうやって?
女をひっぺがす、力によらない方法ならいくらでもあるが。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無理だな。
どれをやっても、その場で射殺される。
今でさえ抱擁と強要が誤解されているのに、誤解じゃ済まなくなりそうだ。
死ぬ直前に冤罪を犯罪に切り替えるのはいただけない。
さて、解決方法はなにか?
お手上げである。
俺に何もできないならば
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マメシバはよ。
『発砲まだか。送れ』
あれれ?
通信系が解放されてますよ?
俺に聴こえていいんですか?
通信系統だけは俺を味方扱いしてくれる。
科学は信頼できるな。
寝るとき以外、常時装着通信端末。
スピーカーもマイクも骨伝導式。
だから、耳は空いているが。
耳の奥に響く、女声。
『待機。すぐ』
なにがすぐなんですかねぇ。
射手をからかうのは、止めよう。
体に悪い、俺の。
『少女たちに被害を及ぼすな』
しかし。
手元にカードが配られた。
待っては見るもんだ。
【聖都北辺/青龍の軍営/青龍幕舎/外の水汲み場/青龍の貴族胸元/エルフっ娘】
あたしの耳にも聞こえた。
『娘たちを襲わせるな』
は?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!
誰彼構わず喧嘩を売りたくなるのは、仕方がないと思う。
ドワーフどもがいてくれたら、なんて思う日が来るなんてね!!!!!!!!!!
なんなのなんなのなんなの!
もしかしなくても誤解されてるわけよね!!
青龍の貴族に、あたしたちを守れと言われている、青龍の女騎士たち。
それが殺気を、青龍の貴族に向けるって、どれだけ命令に忠実なのよ!
素直で真っすぐ字義通り!!
これが青龍の気質なわけね!!!
もぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――嫌がってないわよ!!!
ちょっと、その、抵抗はしたけれど、それくらいわかりなさいよ!
恥ずかしいけど、拒んでないこともないけど、大丈夫じゃないけど、ほっといて!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――って、言葉ではっきり言わないといけないわけよね!!!!!!!!!!!!
【国際連合統治軍第13集積地//ゲストハウス/出入り口付近外部給水所/青龍の貴族】
俺もビックリ。
エルフっ子が俺かばってくれた。
顔を真っ赤にして、必死である。
耳が真っ赤に震えているし、震え声。
俺はエルフっ子に、好かれているだろう。
それは知っていた。
だが、このテンションは、すごい。
まるでうちの子に限ってそんなことはしないしワザとじゃありません!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
と怒鳴りつけるような勢い。
かなりろれつが回っていない。
理屈も何もなく、とにかく、味方してくれるんだな、俺に。
――――――――――日頃の行いは大切だ。
シスターズ&Colorfulはみんな通信機を身に着けている。
チョーカータイプの首飾り。
喉の振動をキャッチして、通信系にアクセスできる。
もちろん、骨振動伝達で聴くことも可能。
被害者ポジションの子が、通信網全体に怒鳴りつける勢いで、被害を全否定。
俺の疑いはめでたく晴れた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大丈夫か?
被害者が被害を全部否定しても有罪になる国。
そんな国出身だと疑い深くなるのだよ。
エルフっ子が、俺の腕をとる。
奮然としたまま、宿舎へ引っ張られる。
当然その大きな胸に、俺の腕はめり込んでいるのだが
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・光点は、戻ってこない。
たすかった―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!
おれはエルフっ子の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「え??え???え????
きゃ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――いまから?」
抱き上げて、宿舎の中へ。
エルフっ子。
世話焼きオカンの面目躍如。
普段から頼っているからな。
エルフっ子の保護本能に火をつけたか。
俺が社会人になって失いかけたニート力。
さすが俺、超人的回復力。
だがしかし、実質子供に火をつけてどーする。
いかんいかんいかん。
大人に、発揮しないとな。
俺が末永くすねをかじれる裕福なまだ見ぬパパママ募集中。
女に近い女の子にかばわれると、ほんとーにナニかをしたような気になるし。
――――――――――してないぞ?
だがエルフっ子の心意気を無碍にはできん。
謹んでご厚意、承る。
エルフっ子の熱い弁舌。
護衛についていた女性自衛官へ。
シスターズ &Colorfulへの特段の配慮に感謝しつつ、俺が相手の時はなにをされても大丈夫だとかなんとか。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――泣きそうである。
なんという信頼感。
女と見れば口説くと思われているのに。
TPOはわきまえているのに。
俺だけは、俺だけはシスターズ &Colorfulに絶対、不埒で不穏で失礼な行いはしないと信じてくれている。
俺個人への絶対的な信頼。
俺だよ?
この俺!
自己利益最優先。
長い物には自らダイブ。
そのくせに逃げやすい位置をキープ。
しようとしたあげく、ちょくちょく失敗してちょろちょろ逃げている。
俺だったら、俺をそこまで信頼しない。
それが!
あなた?
年端もいかない女の子たちを、支え合っている子たちを、束ねる奥義の要。
エルフっ子が、甘えるは頼るわ身を任せるわ。
エルフっ子にとって大切な、魔女っ子だのお嬢だのみんなの運命を背負ったまま、白紙委任。
――――――――――どこの聖人かと。
俺を見れば性犯罪既遂者扱いし、未遂かと舌打ちするマメシバ三尉にみせてやりたい。
見てるか。
みてるな。
魂の汚れた成人女性のことは後で口説く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・のはやめるとして。
純真な子の、魂の叫び。
体は大人、心は少女なエルフっ子。
こりゃもう、一生騙し通すしかないね。
この信頼に応えないで、なんで呼吸ができようか!
口説く相手ならいくらでもいる。
口説き落とせるとは限らないが。
おかげさまで女性自衛官の皆様、その俺への扱いが一転
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?
通信網に響く。
不穏な声が。
『洗脳済みか』
マメシバ三尉なら調教というところですが。
洗脳って、敢えてロシア領にしてある北方領土の特殊な国際連合が関与していないと明言している、研究所関係者か。
あれ日本名で択捉島の。
領有権が曖昧な為に、誰も責任をとれない場所。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?
なんで俺が知ってるかって?
気のせい気のせい。
洗脳実験関係者認定?
今までのロリコン扱いから、良くなった、のか。
おかげで俺は無罪放免
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・証拠不十分で保釈?
検察がよくやる嫌がらせか!!!!!!!!!!
無実の人間を糾弾した責任をとりたくない時。
裁判に持ち込めない政治犯を、失墜させたい時。
どちらも毎年恒例行事。
日本の政治犯?
官僚様に逆らった選良、議員のこと。
さておき、自由の身。
女性スナイパーの照準から外された。
たぶん。
ペンライトを消しただけじゃなければ。
命の恩人のような気がするエルフっ子。
どうしてくれようか?
此処まで真剣に誰かのことを考えたことはないと断言できる、俺。
だがしかし、うーん。
俺、そんなに頼りにならないぞ。
マジ。
なんとかごまかしきらないとな
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・占領下を乗り切れば、どうにかなるかな。
戦後になれば、時候の挨拶、冠婚葬祭くらいしか接点がないだろうし。
一生騙しきるのは難しくあるまい。
数ヶ月、ナンパ他を我慢すれば。
身を慎み、煩悩を棚上げし、聖職者のようにAMEN
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・神父になったらいかん。
カトリックに含むところはないが。
禁欲?
いや、まて。
それ無理。
釈迦様もおっしゃった。
中道でいけ、と。
いつおっしゃったのかは知らないが。
だいたいバチカンの研究でも、禁欲は性犯罪の元凶と立証されている。
やはり隠密行動でなんとかアムネスティと連絡を取り合い人道的支援をうけよう。
プロフェッショナルな女たち。
ほんの少し。
やや不自由ながら、工夫と努力を重ねれば。
短い人生、その短い期間。
人生初の我慢というのも、悪くないことはない。
真の快楽主義者は禁欲的、という。
喉が渇くたびにビールを飲むより、渇きに乾いた水道水の方が美味しかろう。
悪くない。
偶には。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・数ヶ月で、すむよな??????????




