作戦研究

君は君。

我は我也。

されど仲よき。

―――――――――武者小路(むしゃこうじ) 実篤(さねあつ)―――――――――――

【国際連合統治軍第１３集積地/ゲストハウス/出入り口付近外部給水所/青龍の貴族】

俺が過ごす今日この頃。

幼女性愛者と認識されると即座に射殺されます。

国連軍には自衛隊と違って軍法会議があるので。

しかも、軍法会議にかけるほどのことも無いよね、って言う国際的に古今東西の軍隊独自の慣習もね、あるんですよこれが。

戦友同士の庇いあい。

それはしばしば、戦死したことにしてやる、って形になります。

しかも相手が異世界人だとなればもっともともっと即座に射殺されます。

平和に対する罪で一回。

人道に対する罪で一回。

防疫滅菌措置で一回。

事後研究の解剖措置で

・・・・・・・・・・・・・・・・・・三回じゃすまないなこれは。

元カノみたいに、お偉いさんとその配下を吊るし斬りにして腹いせにするケースもよくあります。実際、元カノがやらなかったら、どこかの連隊長以下が暴発していただろう。

いやマジで。

※第２７話 ＜修羅場＞参照

そんなろくでもない境遇に、襲われる日が来ようとは。

いや、来られてたまるか。

回避だ回避、受け取り拒否。

そのためには自分の知力だけが頼り。

あんまり体力ないからな、俺。

状況。

俺はエルフっ子を抱いている。

正面にエルフっ子。

その先にゲストハウス。

ゲストハウスの窓内にはＣｏｌｏｒｆｕｌ。

リングサイドがぶり寄りみたいに詰めかけて見学するのはやめなさい。

最悪の場合、人死にを見ることになるんだから。

俺だが。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌたちが見える窓。

これも一つのカードだな。

窓に映っているのは狙撃手が二人。

さっき見た相手を含めて、だが。

ポインターもどきのペンライト、その光点の数から見れば二人のわけがない。

背中に目はついていないので、他の姿は見えない。

しかも鏡と違って解像度が低すぎる。

これ以上、得られる情報はない。

ＯＫ！

なら考えよう。

相手の数は？

狙撃手が五以上十名未満。

ただし、指揮官や観測員を合わせれば、やっぱり全部で十名程度か。

相手の質は？

大規模駐屯地以外は前線。

帝国軍と向かい合っているのは最前線。

第１３集積地は最前線。

孤立前提の拠点位置、捕虜とはいえ組織だった帝国軍と向かい合う。

こういう場所の要員選抜は、戦闘力や戦闘経験が基準。

つまり俺に照準している女性自衛官のみなさん。

強いよ？

俺よりは。

いや、異世界人を含めて俺より弱いのは子供だけだけどね。

そのエルフっ子だって俺より強いけどね。

集積地司令官ならあるいは？

帰る前に勝負しよう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・帰れたら。

いやいやいやいや。

明るい面を見るべきだ。

ピンチはチャンス！

百万回言えば真実になると誰かが言っていた。

明るい面とは？

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誤射の心配はないな。

エルフっ子より背が高い俺。

射線を避けることくらいは、軽くするだろう。

エルフっ子に弾が当たる可能性はゼロに近い。

さらに明るい面は無いか？

女性自衛官のみなさん。

彼女たちを納得させれば、危険はなくなる。

究極の解決だな。

どうやって伝える？

これ以上動けば撃たれそうだ。

要検討。

なんて伝える？

伝え方次第だな。

つまり相手次第。

前線勤務の自衛隊員大半が俺と同年代。

肉体的にピーク、経験値も一定以上を期待できる。

そして何より重要なところ。

年上よりは、口説きやすい。

戦争とはコミュニケーション。

相手を知らずに勝利無し。

性別年齢経験値。

まさにピンチはチャンス！！

数カ月以内を見込んで男女交際再開に向けた大きな転機となるだろう。

女と見れば口説きたがる

――――――――――そんな不評も聴こえてくるが。

己を知るは、百戦危うからざる第一歩。

＜君は君 我は我なり されど仲良き＞と言ったのは誰だったか。

誰だったかな～。

それを彼女たちに聞いてみよう。

女好き、口説き好き、嫌われるのが怖くても恐ろしくはない。

不評、悪評、その他もろもろ。

――――――――――たいへんよろしい。

不評から始めれば、あとは昇るだけ。

好評を失う。

不評を返上。

実は後者の方が楽。

聖人を失墜させるのは、瑕瑾に過ぎない不幸不運。

悪ですらない嫌われ者が、少しの勇気で英雄勇者。

これを劇場版ジャイ○ンの法則と言う

――――――――――少しじゃないよな、あの勇気。

是非とも安全な座席で鑑賞していたい。

ジャイア○格好いいよね。

普段はアレだけど。

フィクションじゃだめか。

ならあれだ。

俺のパソコンに○リデータが入っていても、誰も問題にしない。

だが有名○画家のパソコンなら、袋叩き。

法治国家になりたーい

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・例が悪い？

売春婦と過ごしたと言われただけで、最後は刑務所送りになった世界的作家の方がいいか。

共通点は「俺じゃない」と言っても信じてもらえないこと。

刑務所には「女買って、新作書け」と激励が

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・刑務所でどうしろと。

まあいい。

誤解されるということはよくあることだ。

不本意な場合もある。

不本意でないときはそれを放置したりもしているがそういうことではない。

気持ちはよーく分かる。

先月、同じ体験をした。

まさに不幸な誤解。

俺の任務用端末。

まあ異世界に私物パソコンなんかもちこめないが。

ましてや任務中作戦範囲に有り得ない。

そのパソコンの中。

稀によく発生する、怪しいデータ。

スマフォならともかく、パソコンで起こるかって？

アングラサイト見てたんだろう解ってるよ女断ち一週間越えればね～

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・などという誤解をされても仕方がない。

んが。

国連軍仕様パソコンは国連イントラネットしかつながらない。

イントラネット自体が複数たてられ、個別に制御され物理的にも電子的にも接続されていない。

日本列島在日米軍根拠地と異世界の大規模拠点に構築済み。

何を警戒しているのか。

異世界人が電子戦を仕掛けると考えるほど、偏執的ではないはずだ。

自衛隊根拠地には造られていないことを考えると、何を考えているのかお察しであるが。

いやまあ、合衆国軍他一般的な軍隊の慣習が、そのまま持ち込まれただけと考えることもできる。

自衛隊は軍隊じゃないからね。

電子線とかいう発想がなくても仕方がないね。

つまり。

日本列島クローズドサイクルとして再編成されたインターネット、が俺には閲覧不可。

各国大使館ＨＰ改め各国政府ＨＰよなり、サーバーが外国施政下（大使館や領土係争地）にある、間違いなくインターネットであると参議院で決議が出た、そのネットワークにはつながらないのである。

ということは今どき素人でもしでかさないような怪しいサイトであやしいデータを意図せずに仕込まれることはないのである。

まるで俺が自分でやっているように思われるなコレ。

どんだけ怪しいかと言えば、非実在少女童女幼女の、成人向けというのもヤバい、禁則データ。

それを入れたのは、神父だ。

趣味は自由だが、巻き込むな。

仕事柄、布教活動か？

神父は仕事しゃなくて、生き方か。

火炙りにされるときは俺が着火。

だが残念ながら、まだ生きていやがる神父。

監察官権限がある以上、観察対象部隊のパソコンへアクセスは止められない。

だから俺は、堂々と無視。

相手にしないのが一番だ。

こーいう悪戯は、慌てるのが一番喜ばれる。

一々削除してたら、キリがない。

いたちごっこは手間の無駄。

何とも親切なことに、仕事の邪魔にならないようにファイルやフォルダーが工夫されていたからね。

邪魔になったら殴るところだが、だから無視しておけたと言い切れる。

そんな風に思っていたこともありました

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あの時は、隕石が落ちてこないかと真剣に祈りました。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌは任務用パソコンがある。

シスターズにはない。

だから、俺のパソコンを貸していた。

ニートにな～れ♪

と基本過程教育中。

ネット溺死。

あくまでも、それ以外は考えていない、俺。

だからブラウザーくらいしか使わないと思っていた、俺。

俺が思っていた、だけ。

子供特有のアレ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いつの間にか操作できてた！！！！！！！！！！

魔法使いロープを普段着ている魔女っ子が、俺の膝にのっているとき、である。

俺は非電子ブックを読み、魔女っ子がこちらを見上げる時だけ対応。

そうこうしていたら、ちょくちょく俺を見上げる魔女っ子が、 ディスプレイガン見の異常動作。

再起動の為に撫でるべきか、と目を向けた。

――――――――――あら不思議。

空間投影ディスプレイに、魔法使いロープをはだけた（控えめな表現）幼女のイラスト。

眼が怖い

――――――――――お嬢とエルフっ子の。

膝の上でフリーズした魔女っ子は、背を向けたまま。

こわくてかをおみれません。

セクハラってレベルじゃねーぞ。

神父死すべき慈悲は無い。

ゼロ距離に詰め寄られた、俺。

詰めよったのは、保護者代表エルフっ子。

保護者次席お嬢。

三人が三人とも俺の膝に乗り込んでいるカタチ。

――――――――――弾劾裁判不可避。

俺も魔女っ子なみにフリーズ。

目に涙を溜めた保護者会をシカトする流れ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わざとじゃなかった。

その時、歴史が動いた。

魔女っ子がディスプレイに倒れ込み、俺が手掴み、わちゃわちゃと暴れる小さな手足が中空のアイコンにネコパンチ。

ディスプレイに追加。

ウィンドウを閉じずに、平行閲覧できるように、綺麗に並べられる。

ＯＳの親切設計。

よけーなことを！！！

シスターズがそれぞれ向けの画面を見比べられるように並べられました。

幼女――――――――――

古典的ファンタジーの魔法使い風衣裳の残骸を纏ったようにみせかけた、まるで背を向けている魔女っ子が浮かべてるんじゃないかというような羞恥心に満ちた表情のイラストと動画。

少女――――――――――

耳の尖った人ならざる雰囲気の少女が革鎧や中世風のドレスをはだけて、縛られ剥かれ転がされて喜んでいるように見えるイラストと動画。

童女――――――――――

ゴスロリだか西洋人形だかのヒラヒラドレス、の残骸を纏った内に入らないが特殊なポーズを決めてさそいをかけてるってもんじゃねーぞと思えるイラストと動画。

シスターズ三人とも、釘づけであった。

それぞれを比較するように、ゆっくりと。

三人が三人とも俺の膝に乗りだしているカタチ。

俺は――――――――――あの日、空の蒼さを忘れない。

隕石一つ無かった。髪や瞳の色が近い、イラストを凝視するシスターズ。

詰んだ詰んだ。

投了し退席したかったが、膝を魔女っ子、左右の肩をエルフっ子とお嬢にホールド。

――――――――――あれほど隕石を待ち望んだ日はない。

全員が真っ赤になるのはよくわかります。

逃げたい俺の気持ちも判ってほしかった。

フリーズしてたのもあるが、真っ赤になったシスターズの三人が、がっちり体全体で俺を抑えに来たので動けませんでした。

犯人扱いですね解ります。

結局、マメシバ三尉が突入してきたが。

シスターズ＆Ｃｏｌｏｒｆｕｌの局所的体温異常と脈拍心拍数増加を感知したとかなんとか。

バイタルストーカー怖い。

突入後、Ｕターンかましたマメシバ三尉。

俺が引き留めたのは、言うまでもない。

人生最大の危機はこうして解決(うやむや)したのだ。

あの時は。

では。

この時は。

今日はどうするどうなるどうしよう？