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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第八章「天獄に一番近いここ」

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攻勢防御



日本国衆議院副議長閣下。

議会が外交権を行使することは憲法上の問題がありませんか?


「ありません。外交とは国家間の交わりであり、総体を規定する概念は在りません。民間外交、議員外交、戦争など様々な形があり得ます。無論、我が国は戦争という手段を放棄していますが」


行政府が司る外交に立法府が干渉しても、三権の独立に影響はない、と?


「ありませんね。そも外交は国家総体の行為であり三権のそれぞれが関与します。行政府に与えられているのは外交の一オプション。条約の締結権のみ。それを批准するのは議会であり、違憲審査するのは裁判所です」


日本国議会はどんな根拠でもって、国際連合に要求をできるのですか?


「要求ではなく、要望ですらなく、希望です。しかも日本国国会への便宜を図ってほしいといっているわけではなく、様々な情報の公開が求められている、と伝えるだけのこと。希望を伝えるだけなら、事務総長に面会できる人間ならだれにでもできることですよ」


誰の希望です?


「日本国民、です。国会は与野党ともに日本国民意の代表ですからね。もちろん、全権委任を受けているとうぬぼれているわけではありません。内外からの批評批判は歓迎いたします」


国連報道官はジャーナリストの質問にはまるで答えませんが?


「調べるのが貴方がたの使命であり、ジャーナリズムでしょう。答えさせるも、答えを疑うも、御随意に」


閣下も嘘をついていると?


「虚偽と嘘は違いますぞ?誰が知っていて誰が騙されていて誰が隠しているのか。あなた方は人類最後のジャーナリズムなのですから、自覚を持っていただきませんと」


お国には報道企業が山ほどありますが?


「ソビエト連邦にもタス通信やプラウダがありました。新華社通信や人民日報については友好国のメディアだけに論評は避けましょう。もちろん我が国は現存するすべての国家と万古不変の友情を誓っておりますが」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・閣下の誠実さは身に染みました。

続けます。


日本議会は国連共同分担金の拠出を人質に国連を恫喝しているのではありませんか?


「そのようなことはありません」


どのような理由で凍結決議が委員会を通ったのですか?


「議案一つ一つに細部を説明する立場ではありません。個々の決議については議事録をお読みください」


既に予算委員会を通過した拠出凍結決議が、本会議採決を毎週延期されているのはなぜですか?


「議院運営委員会が日程の調整に失敗しているからです。様々な国会規則改正で柔軟な審議ができるようになりましたが、これはいただけませんね。もちろん、調整がつけば今日にでも可決され即日施行されます」


それは恫喝ではない?


「そのような誤解があるとしたら残念です。すぐにも国連事務総長に面会し『そのようなことがない』という合意に至りましょうか?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続けます。


Ministry(日本) of() Foreign(外務) Affairs() of Japanは、議会独自の動きに不快感を表明しているとのことですが。


「人知れず表明する感想に興味はありません」


UN(国連)への働きかけが二元外交だという批判もありますが?


「それは相手の受け取り方でしょうね」


といわれると?


「まず、話し合いの窓口は多ければ多いほどよろしい。国家意志さえ統一されていれば何の問題もありません。二元化してしまうのは国家意志の統一がない場合です。それでは外交以前であり、窓口が一つでも言うことがころころ変われば二元以上で外交どころではありませんね」


受け取り方というのは?


「だれが日本の代表者であるのか?正当性と実行力を持っているのは誰なのか?交渉相手が信頼できるか、という話です」


Ministry(日本) of() Foreign(外務) Affairs() of Japanは不適格であると?


「相手次第ですな」


世界各国がどのように考えていると?


「敗戦時の話をいたしましょう。1945年、当然ですが日本と連合国の間には講和交渉が持たれておりました。意思の確認、条件のすり合わせ、複数ルートでね。代表的なところで言えばスウェーデン王室経由の英国ルート、在スイス米国諜報部経由の米国ルートですね

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いずれにせよ、様々な交渉や打診すべて、我が外務省は全く関与しておりません。創設以来、日本国内の他省庁以外とのチャンネルを持ったことがないのですよ。彼らは」


実話ですか?


「実話です

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、あちらから持ち掛けられることなく、日本の外務省から講和交渉を持ち出したことはありましたな。ソビエト連邦に、彼らが日本へ参戦する直前に、根回しも何もなく」


日本国外務省の仕事は何ですか?


「大本営発表を司る組織の一つです」


具体的な例を教えてください。


「敗戦間際、連合国との交渉ルートを外務省に一元化すべきと決定させました。自分の縄張りから部外者を追い出し、進んでいた交渉や打診を一切引継ぎせず、情報を集めようともしなかった。そうしたことを報道させず教科書や文献から削除するのが仕事ですね。もちろんん、今日、この場の記者会見も国内では報道されません。まあ、与野党の機関誌や街頭演説する議員個々が宣伝するでしょうが」


笑い話ですか?


「嗤い話ですな」



※衆議院副議長は慣例に従い第二党である野党議員。

野党執行部は右派が主導しているが、それなりの勢力を維持している極右派と激しく対立。少数左派代表議員を副議長ポストに祭り上げ、右派主導の左右協調で極右派を抑え込む体制をとっている。




《東京都千代田区有楽町1丁目7番1号 有楽町電気ビル北館20階/日本外国特派員協会/記者会見》






【国際連合統治軍第13集積地/駐屯地居住区/ゲストハウス/出入り口付近外部給水所/青龍の貴族】


俺は衝動を抑えるのに一苦労。


可愛すぎっだろ!!!

エルフっ子恐るべし。



俺はエルフっ子のニート力に感心していた。

つまりは世話してあげたくなる感じ。



普段ならオカン気質に頼もしさすら感じ、正直、頼りっきりなのだが。


強いし。

武力的な意味で。

小さい二人の安全を、丸投げしてるしな。


いまは完全に大人に甘えており、飴玉だけじゃなく、季節を無視してお年玉(全財産)あげそうになる。

つーか、頬擦りするキャラだっけ??????????



無理してたのかな。

そりゃあするよな。



最大256年。

エルフの場合、成長が止まると成人だとか。


成人、って概念はエルフの方が比較的強い。

成長停止という不可逆強制発生の節目があるからだろうな。

俺たち地球人のような社会的通過儀礼よりはっきりしやすい。


そしてエルフっ子は故郷を出た。

どちらかといえば、捨てた。

200年以上前に。




以来、異世界を、人という異種族の世界を旅してきた。

のだそうだ。


まだ、ところどころかいつまんで聞いているだけだけどね。

でまあ、256年目に俺たちと遭遇。

ってより、俺たちが押し掛けた。


で、今、俺の胸で甘えてるエルフっ子。

気持ちはよーくわかります。

たぶん。





【聖都北辺/青龍の軍営/青龍幕舎/出入り口内側/青龍の貴族とエルフっ子抱擁場所から5m/お嬢】


ううん。

ちがいますわ。

ちがいますわ。



わたくし。

お恨み申し上げているけれど。

言葉にすれば解決すると示されてるけれど。

申し上げるなんてはしたなくてできませんけれど。



工夫よ工夫。


ご領主様に申し上げてしまうのが先か。

ご領主様にそれも悪くないと感じていただくのが先か。


そう!

工夫!!


ねえ様に先を越されても。

それはそれは口惜しくて妬ましいのですけれど。

きっかけには、なるはずよね。


そのためにも、わたくしの趣味の為にも、なによりご領主様に愉しんでいただくため。


ねえ様が映える素敵なステキなドレスを。

もちろん、注意は必要。


ご領主様の回りは殿方でいっぱい。


余計な目に触れないようにしなくては。

隠すような外衣を組み合わせる事ね。


Colorfulの皆も、基本はそうまとめましょう。



ねえ様もColorfulも、減り張りの効いた肢体ですから、とっても似合うわ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わたくしには似合いませんけれど。



あの娘なら?

造り込んだ装飾と重ね合わせた衣裳が似合うわよね。

ご領主様にもお気に召していただけますし。


わたくしと同じように

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいんです。


わたくしの明解な肢体は、自慢なのですから。

あの娘より大きいですが。


ご領主様もそれはそれは喜んでくださいました。


あの娘みたいに、小さい方がいいのかしら?

それほど差はないから、それほど気にしなくてもいいはずよね。



なんども膝にのせていただけましたし、抱き上げていただけましたし、わたくしが、あと少し欲を隠せれば今頃はきっと焦らされずに

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・違います違います。


悔やむのではなくて、ねえ様から学びましょう。

ご領主様にも教えを乞うて、ねえ様をもっと輝かせるドレスを用意しなくてはいけません。


側に侍る女を整える。


ねえ様、大きくて豊かで賢く強い。

あの娘、小さくて優しく純真。


わたくしは、2人に及ばぬことも多いけれど。

これならできますわ。


二人にはできない、わたくしだけの技能なのですから!!!!!!!!!!!!!





【国際連合統治軍第13集積地/駐屯地居住区/ゲストハウス/出入り口付近外部給水所/青龍の貴族】


俺たちとこの子たち。


大人という概念がない世界。

知らなければ楽だったろうに。


俺が、俺たちがそれを持ちこんでしまったわけか。

俺のそばにいるからこそ、そのせいで、ともいえる。


子どもを守る。

子どもは守られる。

大人がそれを当然視する。


そんなものを、知ってしまったということは。

知らなかったということは。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いかん、泣きそうだ。

俺が。




この子たち、異世界の人々を憐れむ筋合いではない。

地球だって、そんな概念が成立する最近までは、こうだったんだろう。

それとて異世界転移前の地球人類全体でいえば、少数派だったはずだ。

今の日本列島でそれが貫徹されているとはいいがたい。



だからエルフっ子。

この子は、かわいそうなわけじゃない。


俺もエルフっ子を、かわいそうに感じているわけじゃない、と思う。

たぶん。



でもあれだ。


シスターズ。

Colorful。


この子たちが産まれる前から、立ち会っていたかったな、と思う。

うちの近所や、通りすがりに知り合ったガキどもみたいに。

あたりまえって面して居合わせていたかったな。



そうすれば、256歳の子供が、数世紀分、ひとまとめに甘える必要はなかったんじゃないか。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺を泣かしてどーしようというのか。



いかんいかんいかん。


エルフっ子が泣き出す前に食い止めたっていうのに、俺が泣いたら台無しだ。

大人は泣かぬもの、泣かぬもの。


しかもエルフっ子が泣きそうになった、そもそもの始まりが俺だっていうね。

メンゲレ大尉が悪いんだが。


ちびっ子たちにも示しがつかんではないか。




【聖都北辺/青龍の軍営/青龍幕舎/出入り口内側/青龍の貴族とエルフっ子抱擁場所から5m/お嬢】


わたくしは、背後の気配をいなしつつ、ほんの少し俯いてしまいます。

わたくしの視線の真下。


綺麗に広がったドレスの裾が見えますわね。

その下には大地を塗り固めた、黒々とした隙間なき石畳。


どんな馬車でも車輪車軸を傷めずに、罪にも客も快適に過ごせそうですわ。

非常に平らで凹凸もなく、視界をさえぎることもなく、わたくしのむなもと

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いい、

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ことにいたしましょう。




そうですわ。

ご領主様は、わたくしの歯とその並びをほめてくださいました。

普段、わたくしの回りであれば、真珠の様だとか玉髄の様だとか瑪瑙の様だとか、言葉を尽くして褒めそやすソレ。

あの娘、ねえ様にも決して引けを取らないモノながら、あまり意識していなかったのだのだけれど。


でも。

でもでも。

お気に召してくださいました。

ご領主様の物を傷つけることは出来ません。


だから。

だからだから。

わたくしは、手巾(はんかち)を咥えます。


決して声に出しませんように。

決して歯を痛めませんよに。

決して表情に

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――悔しくなんかありません。


ごりょうしゅさまはおおきいのもたしなまれるだけで、

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちいさいほうがすきなんですから。





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