ミニガンさんじゅうななさい
エルフは何故ドワーフを嫌うのでしょうか?
《インタビュー01withフェアリー》
【太守府/港湾都市/沖海上/LCAC簡易上部デッキ】
ヘリにエスコートされ港へ。海自のLCACの甲板は揺れる。ホバークラフトっても揺れるもんは揺れる。
デッキを人員輸送用モジュール装備にしてさらに上部にも柵を設置、正面にサーチライト二器と30mmガトリング砲二門を併設。
バランスが悪いんじゃないだろーか。
なんでヘリじゃないかというと。
「ガハハハ!!!!」
ドワーフである。150cmくらい。縦横あんまり変わらない。年齢オッサンがデフォ。なにゆえ?
いや、まあ、地球人類の感覚では『おっさん』に見えるだけだが。
「あたしにもそう見える」
「わたしも・・・」
「ですわ」
訂正。異世界人類にもエルフにも『おっさん』に見えました。
話を戻そう。
ヘリは使えない。
休暇配置のコイツらが一緒だから、である。
単に人数が多いからだが。
戦場にて国連軍「に、ではありません」元カノに「ガッハッハッハッ!」元カノ個人に降伏「なんぞ我らには無縁」じゃなくて帰順だか恭順(審議中)。
完全に私兵じゃねーか。
でコイツ等に、練度と経験値は高いが数が微妙、な国連軍ASEAN部隊が合流。
異世界混合共同部隊完成!
なぜか俺の心に明滅するのは『混ぜるな危険』だったりする。
「ガハハハ!!!!ガッハッハッハッハッ!!!!!!」
むちゃ笑っとる笑っとる。
斧振りかざして呑んでる呑んでる。
元カノをチラ見。
「いーのいーの。現地の習慣に介入したら人道に対する罪だよ?」
お前の臣下は国連軍所属だろーが!
一応!
国際連合軍特別軍法適用だろうが!
酔って武器振り回していいんかい!
「あれ私物」
だろうな!ドワーフに斧だもんな!
「おお!ワシの兵器はこれですじゃ!」
みにがん。ミニガン。M134.
足元に転がした弾薬箱に弾帯。担ぐ仕草。手持ちかよ!
それ、オマエの胴体ぐらいねーか?
短身ミニマッチョが担いだら豆タンク。
「スッゴいよ?単身騎馬千騎突っ切ったし」
「ガッハッハッハッ!褒め方が足りませんぞ!!!!あるじーーーーー!!!!!!」
楽しそうだな!オイ!
何でも国連軍兵士捕虜をかっさらってくるとき敵地に深入りし過ぎたらしい。
いや、味方の捕虜って敵から『かっさらってくる』モンなのか?
騎馬隊千騎に追撃された。観測気球は常に黒旗団の上空にいるのですぐに気が付いたわけだが。
「数えさせた!後で!」
させた!
デカイ胸を張る元カノ。
お前が何故自慢?
「細かい作業得意!」
エルフの副長の肩を叩く。あ、部下(家臣?「臣下です」)自慢ね。
「近くの街に一万くらいいたからさ、潰したら引っ張り出せるかな~って」
【太守府/港湾都市/LCAC簡易上部デッキ/青龍の貴族右後方】
わたしは唖然。
『千人斬り』はただの形容詞。実際に出来るわけがない・・・と聞いていたんだけど。
ねえ様に。
しかも、一万人斬りの布石?
「いやいや、一万人は誘き出すだけだよ?」
女将軍さんが教えてくださった。
「こっちも団が伏せてあったしね」
目立たないように10人くらいで捕虜を捕えられている街に突入、そこから捕虜を担いで本隊に戻る途中で騎馬隊に追いかけられた、と。
「うちらは200いたからさ、千潰して、一万は空爆かなってね」
広い場所まで引き出せば、後は遙か彼方の青龍本軍に任せる。
・・・・・・・・・・・・気軽におっしゃるけど、けど。
英雄譚のお話、みたい、なんですが。
ご主人様は平静でいらっしゃる。
普通、の事、なんですね。
【太守府/港湾都市/LCAC簡易上部デッキ/中央】
俺は向き不向きを悟った。
こいつ(元カノ)以外、コイツら(ドワーフ他大勢)を扱えるわけない。
千騎の突撃、鋒矢の陣。
正対する豆タンク、もとい、ドワーフ。
元カノたちは味方が伏せてあるところにつく前に追いつかれそうだった。
一人。
元カノに「いけ」って言われた時、一番早く飛び出したから。
一人で殿。
「いやいや、ミニガンは二つ持ちましたぞ」
いや、かわんねーから。ジャム対策は良いけど、普通じゃないから。
つーか、一丁手持ちで撃つだけでもすごいけど、二丁持てるわけ?
騎馬最適の平原でポージング。
ミニガン制射で帝国騎馬隊先鋒瞬殺。
人馬の血肉で背丈を超える山が出来る。100tほどの肉の塊と考えるといい。
帝国騎馬隊は好機に速度を速めた。
ふつー逃げるぞ。最強の先鋒一割が殺られたら。
「なんで?」
ミニガンと騎馬隊の間に肉の防壁。
射線が断たれたからチャンスじゃん・・・元カノの現地化がヒドい。
「ま、コイツらに通じる訳ないけどね」
無言でポージングするドワーフ、達。
中心の一人しか関係無いんだが。
その独りに向けて。
帝国騎馬隊のギャロップ。
左右に分かれて右側がランスチャージ。
左手は距離を置いて二撃に備えた。
が。
右周り瞬殺。
何があった。
ドワーフは人馬の残骸山を駆け上がり、見回した。
射線全周確保。
見下ろしドワーフ。
「いや~腕が疲れよったわ」
破顔一笑。力こぶ誇示。
近い側に二連ミニガン斉射。
二連?
まとめて一人で撃った!?
コイツらの近代兵器適性どうよ?
「独断専行で何を抜かす!!」
おお!やっとツッコミが!
「あの時!団長は皆殺しにしろとおっしゃったんだぞ!オマエのせいで半分逃げられただろーが!」
そこかよ!激オコエルフ。つーか、逃げ切ったんか!すげーな帝国騎馬隊!
「そうじゃ!そうじゃ!」
なぜかドワーフがエルフの肩を叩く。バンバン音してるぞ、痛そう。
帝国騎馬隊左翼は右翼に斉射が始まると、遁走。
全力で。
右翼は全滅。最後の一騎まで突っ込んだらしい。
左翼の逃走時間を稼ぐため、か。
「勇敢だな」
ドワーフ集団ポージング。おまえ等じゃない。
【太守府/港湾都市/LCAC簡易上部デッキ/青龍の貴族背後】
あたしは悟った。
あたしたち、エルフがドワーフに何を感じるか。
「うん。カッコいい」
青龍の女将軍の言葉。
斧を打ち鳴らすドワーフ達。なんか、拍子が合ってるけど、踊り?
「でもアレはね~」
単身ミニ機銃座状態のドワーフは人馬の血肉が作った小山の上で――――――――――昇天。
あまりの快感(絶対!想像するのイヤ!!!!!)に忘我の極致。
「ほら、コレ」
青龍の女将軍が薄板をかざす。
ぶっ!!!!!!!!!!
ゲッホッゲッホッケホ。
背中をさすられた。
助かる。
え!
青龍の貴族が?あたし?背中さす?
ケホケホ!
「大丈夫かい?」
青龍の女将軍。
アンタのせいでしょ!
まだ、元凶の映った薄板?手帳?をかざしてるし!
【太守府/港湾都市/LCAC簡易上部デッキ/中央】
俺は見た。元カノのガラケーみたいな、まあガラケーなんだが、の端末。
(熱暴走、エラー、脆弱、他のスマフォは国連軍軍用として考慮されなかった)
映し出された偶像。
それは忘我の極致。宗教的聖者を思わせる涅槃の表情。
全ての己を失った全天一宇の極致。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・のドワーフ。
少し引いた画像。
雲間から落ちる光の帯に囲まれた姿。
起動音が響く弾切れのミニガンを構えた姿。
埋め尽くされた人馬の血と臓物。
鼻先を舞う小鳥。
え?小鳥?
で、涅槃顔アップ。
いや、実演する本人。
「キモイ」
ストレート元カノ。
おい!
ドワーフ達も他人のフリ。
おいおい!!
打撃音。
「結局作戦失敗だろーが!」
エルフの杖は打撃武器。魔法の杖じゃないのかソレ。
「おお!騎士どもよ!逃げてしまうとは情けない」
「退いて当たり前だ!強い敵に当たったら退く!しかるのちに隊形戦術を整えて再戦する!常識だ!」
帝国軍ドクトリン。
そこで士気崩壊を起こさないのが帝国だな。
「あーいう時は!オマエが退いて我らで囲うべきだったんだ!命令したろ!」
「こちらが退けば相手も退いて立て直す!出会い頭に退却なし!」
おお?!一理ある。
「どっちにしろ退いたろーが!」
どうどう。いなすドワーフ、キレるエルフ。
やっぱり仲悪いのか?むしろいいのか?
エルフっ子を振り返るとイヤイヤしてる。
・・・・・・・仲がどうというより、嫌なのか。
「おかげでアタシ、蹴られたけどね」
三佐に。
学ばせてどうする!!!
って。
銃火砲火を知れば対処方法は思いつく。帝国の学習能力は証明済み。
国連軍が見敵全滅を基本としているのはそれが理由だ。
まあ、国連軍ってより赤坂、戦術を仕切ってる米国大統領(元合衆国統合参謀本部議長)の考えだろうが。
「「「「申し訳ございませぬ」」」」
瞬間土下座。
ドワーフ、エルフ、他全員。
何故、土下座?
やらかしたのはドワーフ(の一人)だろ?
「このバカを止められず」
地べた、つーか、LCACの甲板、に額をこすりつける。
国際連合軍特別教導旅団一同。
理由はわかった。
当事者の反省。
周りの反省。
土下座しないといけないことかは知らんが。
まあ、いい。
それより、なにより、気になる日本文化。
土下座は多世界共通?
エルフっ子を見た。
かぶりを振る。
異世界の風習じゃないな。
「アタシじゃないからね!」
かぶりを振る元カノ。
怪しい。
「扱いが違う!」
元カノ大抗議!
「マメシバ!」
元カノの傍ら。
衛生兵・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いたな、最初から、そういや。
「あんたでしょう!」
「何でですか!!」
負けないな~。
だが、ASEAN兵がネタ元ってのは、無くもないが、不自然だ。
「マメシバ、なに教えたの?怒らないから」
「教えてません!マメシバゆーな一尉殿!」
マメシバ「ハナコって呼んでください」さんによれば、不幸(?)な偶然だった。
開戦一ヶ月。
今から二ヶ月前。
元カノと異世界騎士団、まあ、黒旗団との遭遇。
黒騎士(初代)射殺直後。
元カノ(当時)失神中。
それを必死に治療する彼女(「ハ・ナ・コ」)は、土下座して周りを囲むエルフ、ドワーフ、他に『待ってください』と頼んだのだ。
拍手。
何を頼んだのだのかは、本人もよくわからない。
とにかく、何かをしなければいけないと思った。
頼まれた方から見れば、余計謎。
崇拝する団長(当時)を打ち取った青龍の女騎士。
必死に主を助けようとする従者(え?)。
少なくともその瞬間、孤立無援で敵中で囲まれた主従(あ、まあ)。
それは、異世界人に謎の感情をもたらした。
謎の(重要)。
そして『土下座』は彼らの理解を得た。
特別な場合、特別な相手に、特別な許しを得る儀礼。
え?
まあ、間違い、ではない、よね?
「この上は我ら!皇帝のそっくび落として主にお詫び奉る!」
「いや、コミじゃんアタシ。団とセットだし。それにプランEは要らないって言ってたし」
そんなプランあんのか?頷いた元カノ。
・・・・・・三佐か。
「あたし等だけじゃ首とったあと詰むし」
とれるのかよ!皇帝の首!
ん、と元カノ。
C130と弾薬目一杯、レコンが皇帝の場所特定すればイケる、と。
「あと対地支援と・・・」
全然お前らだけじゃないよね?いや、それでもスゲーな。というより、お前ら、捕虜奪還でけっこう遠距離浸透作戦してるんだ?
「弾薬以外は帝都で調達できるし」
マジだ。
「団長。やらない理由が違います」
苦虫を噛み潰したエルフ。
言ってやれ言ってやれ!
「クライアントのオーダーは『帝国の根絶』です」
地球化エルフ。
「公女殿は『皇帝の首なんかいらない』と言っていたでしょう」
また三佐か!
「だぞ~」
エルフにまるノリして皆を説教する元カノ。
「やれるからやっちゃダメ」
「みな皇帝の首をとってこないように」
なんか皇帝の扱い雑。
つーか、良いのか?元々帝国軍だろ?お前ら?
「まあ、帝国兵は腑抜けだからの~」
おまえ等が言うか?
やべ、見られた。
「我ら黒旗団の旗は一本ですぞ」
帝国軍と共に戦ったからといって共感などない。
と、いうことか。
ということは、国連軍とともに戦っても同じ理屈だな。
誰の味方か?
自分の味方だ!
至極納得。
「婿殿は解るようですな!」
誰だよ婿って。肩痛いし。肩をたたくのはドワーフの常。一応力は抜いてるのかな?
「「「誰が婿」です」か!/よ!」
噛みつく魔女っ子シスターズ。三人揃った。
ドワーフはポンッと手を打つ。
「情夫殿」
おい?
「「ジョウフ?」」
魔女っ子はポカーン。
お嬢は羞恥か憤慨で真っ赤。
エルフっ子はそっぽ。
孤立無援。俺が。
「こら」
パカーンとひっぱたく元カノ。手のほうが痛そう。
あ、痛いんだ?ドワーフは硬いのか。
新知識。
ドワーフは硬い。
たたく前に注意。
口より先に手が出る人は特に気をつけましょう。
「アタシが嫁だって!」
「おお!」ドワーフ。
「団長!!」エルフ。
「「違います!!!!!」」シスターズ。
わちゃくちゃ。
「黒旗団再開ですじゃ」
いいのかよ。
楽しそうに馬鹿笑いしながら腕を組んでくる元カノ。
私兵チックなノリに馴染んでる。
【太守府/港湾都市/LCAC簡易上部デッキ/青龍の貴族右後方】
わたしはご主人様の腕を取りながら、周りを見回します。
積み荷の上に乗り背を伸ばすと、のぞけます。
何回目、でしょうか。
元々周りに視線を走らせておられた青龍の騎士さんたちは、われ関せず、といったいつも通りの姿勢。
ちいねえ様も困って・・・・・・わたしを見ています。
いえ、わたしを見られても、どうにもならないんですけど。
ご主人様に、申し上げるべき、でしょうか。
ねえ様?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぜか、ドワーフの悪口を呟かれてます!怖いです!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・みんな見てますけど、上陸しないんですか?」
青龍の史家さん!ありがとうございます!ご主人様への非礼は許しませんけど。
ご主人様、青龍の皆様、黒旗団の方々は周りを見回しました。
「じゃ、降りよっか?」
疑問形なんですか?女将軍さん!
【インタビュー01withフェアリー】
生理的にイヤ。
(エルフは何故ドワーフを嫌うのでしょうか?)




