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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第七章「神の発生」UNESCO Report.

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幕間:魔女狩りの昼/黒髪黒瞳急募!!

『UNESCO調査団』

:国際連合三大暴力装置の一つ。

研究員を中心に調査作業用機材専用技術者、専門工兵隊、戦闘部隊を保有する。国際連合軍が戦争遂行上の必要のみに注目して資料収集をしているのに比べ、異世界全体への解析を目的として資料集めをしている。基本的に国際連合軍の勢力圏内で活動する為に、戦闘部隊は歩兵や軽車両が中心。そのために国連軍部隊がバックアップに待機することが多い。研究員たちにはファナティックな者が多く、地球人だけではなく現地加入の異世界人も多数参加。戦闘部隊には国連軍からの出向組が多く、非戦闘員への殲滅戦に否定的な者が多い。もちろん、否定しなかったからこそ銃殺にされていないのだが。



『なんで貴様は染めてんだよ!!!!!!!!!!』


「「「殺せ」」」

「「「殺せ」」」

「「「殺せ」」」


『流行に合わせました申し訳ありません、サー!!!!!!!!!!』


「「「殺せ」」」

「「「殺せ」」」

「「「殺せ」」」


『染め落としもなしか!!!!!!!!!!』


「「「殺せ」」」

「「「殺せ」」」

「「「殺せ」」」


『駐屯地のロッカーのどこかに置いてきました、サー!!!!!!!!!!』


「「「殺せ」」」

「「「殺せ」」」

「「「殺せ」」」


『毛染めでもマジックでも墨汁でもないのか!!!!!!!!!!』


「「「殺せ」」」

「「「殺せ」」」

「「「殺せ」」」


『装備しておりません、サー!!!!!!!!!!』


「「「殺せ」」」

「「「殺せ」」」

「「「殺せ」」」


『よりによってブロンド、ブルーアイズ、ホワイトばっかりかよブラウンでも可能性はあるってのに使えない奴らだな!!!!!!!!!!この』


「静かにしたまえ、軍曹。顔がうるさい」


『黙ってろDr.ライアン!!!

あんたが心中しようとしている街には1万以上の命が溢れてるんだからな!!!!!!!!!!』


「通信機で話しても聞こえないが、やはりうるさい」






――――――――――それは、簡単な任務だった。



異世界。

日本列島の西に位置する大陸。

その沿岸部。


ユーラシア大陸相当と思われる大陸の半分ほどを勢力圏とする帝国。

その帝国の三分の一が沿岸部。


「沿岸部」とは異世界での呼称。

沿岸部とはいいながら、海岸線沿いの地域だけではない。




異世界の帝国領域は三つに大別される。

大洋を世界の果てと見て、東から沿岸部、内陸部、深奥部。

社会の中心から見れば西から深奥部、内陸部、沿岸部。



大陸の奥深く、騎竜民族の中枢部を深奥部と呼ぶ。

北の草原から現れた彼等が最初に滅ぼした四王国がもとになっている。


そこから海を目指して西に進むと山脈を経て大高原に至る。

そこは湧き水が豊富で鉱産資源にも恵まれた内陸の農業地帯。

人口密度はともかく、帝国領域の中では最も広い地域だろう。

ここが内陸部だ。


その高原をは山脈に囲まれており、西に向かうとまた山脈に至る。


それを超えると内海と大河、河に川が錯綜する水と緑にあふれた平野部に至る。

土壌と水利に恵まれた農業地帯であると同時に古くから諸王国が栄えた大陸経済の中心。

帝国が支配していた異世界大陸。

中でも一番豊かで人口が多い地域。

これが沿岸部だ。


国際連合軍は沿岸部一帯から帝国勢力を駆逐し、内陸高原地帯の半ばで帝国軍とにらみ合っている。



そんな最前線からはるかに遠い沿岸部。

国連軍制圧下に位置する、街。

いや異世界の人口、経済規模を考えれば、都市。



そこに近づく破滅の足音。

高らかに響く、相互理解の喇叭。

それが掲げる御旗に輝く、青地に白い神殿。


UNESCOがやって来たのだ。




到着したのは書籍類似物収集部隊。

ここは国際連合勢力圏。


もちろん該当都市に、国連軍はいなかった。

まあ国連軍が駐留している都市などほとんどないが。


前線近くでもなければ補給線の途上でもない、異世界住民たちの物流中心部でもない。

作戦上の意味がない。


その周辺が肥沃な農業地帯であっても、異世界の生物資源は安全性の確認だけで何年もかかる。

そもそも食糧自給が可能な日本列島には意味がない。

その都市には商業流通の中心部ではなくとも、その周辺として商業的な価値がある。

だが社会の維持に不自由がない日本列島を策源地にしている限り、異世界で生み出される何もかもが意味を持たない。




国連軍掃討部隊が通過しただけである。


かれこれ2ヶ月前、一度きり、だ。

だからこそ今回、判断は速かった。



住民たちはUNESCOへの、無条件全面的服従を誓った。


前回、国連軍掃討部隊に接触されたのは、住民の極々一部。

当の都市有力者たちは、国連軍通過の体験を完全には覚えていない。

だからこそ新たな、国際連合統治軍軍政官の通告に凍りついた。



国際連合統治軍軍政官。

こうした地域、いや、異世界の大半においてそれは、時々やってくる善し悪しがつかない奇跡の塊。

破滅をもたらすときもあり、幸運をもたらすときもある。


異世界には悪魔という概念が無い。

だから、メフィストフェレスもマーラもいない。

荒野や召喚陣の中から聖人や賢者を誘惑したりはしない。


そんなナニか。



この市では、どうか。

破滅をもたらされたことが無い。

だからまだ市があるのだが。

幸運をもたらされた記憶もない。

はっきりとはしないが。


国際連合統治軍軍政官。



そのナニかと初めて言葉を交わす、彼らの認識ではそうなっていた。

なぜか国際連合統治軍軍政官の存在は知っていたが。


それがUNESCOの来訪を予告した。


それは破滅の宣告か幸運の囁きか、判らない。

判るわけがないし、手遅れになるまで判らない。



結果だけは、判らせられるのだから。

軍政官が来訪を伝えて来た以上、否やはない。

いや、全力で服従しなければならない。



それは異世界の常識ではないが、この地方の常識だった。





余談ではあるが、国際連合は人道的組織だ。

人類の守護者たることを唱うくらいには。


もちろん人類の生存は絶対条件。

だが、生きねば、などと開き直ってはいない。

そこまで堕落してはいない。



生きるだけなぞ、どんな意味があるのか?



人間の尊厳、権利をも当然に護る。

だから、常に絶え間なく、人道的配慮を忘れない。


と国際連合事務局広報部は明言する。


非人道的措置には国際連合機関は関わらない

・・・・・・・・・・ようにしている、とスワヒリ語方言で語っているようだ。


正確な通訳が待たれる。



だが地球人類は安心していい。

異世界住民に接するのは、国際連合機関ばかりなのだから。

だから、常に人道的だ。



自白剤の投与にあたっては、常に倫理的配慮がなされている。

もちろん平和に対する罪人や、人道に対する罪人に対しても。


もちろん防疫上の配慮から、より一層深い意味で人道的な配慮がされることは、少なくない。

人類の健康で文化的生活を人道的に守る為に、その全存在を人類に捧げた君たちを忘れない。


人類の為に意図はどうあれそのすべてを捧げさせてあげるのは、主にWHOの使命。


人道的なサンプルデータとして断片が遺されている。

もちろん、焼却溶解記録のみ、ということもある。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、人間を正直にする措置について、だったか。


だから国連軍は、健忘症や認識の欠損などが生じないように万全を尽くす

――――――――――「人間」を大切にするために。



もちろん、異世界の大陸にいる人間は膨大な数にのぼる。

もちろん、絶対に一人余さずに、人道的な配慮が求められる。


だから、すべての人間には認識票ドック・タグが着けられている。

アムネスティのような、非政府組織のメンバーに対しても、例外はない。


認識票ドック・タグには位置確認機能も、付いている。

行動記録だけではないのだ。


国連軍が人間を見逃すことは、有り得ない。


――――――――――絶対に。



よって人道的配慮により、人間への危険性は排除される。


虐められたカラスが通行人をつつく。

国連軍が介入する異世界には、有り得ない。


虐めずに殺せ。

虐められた、と受け取られる可能性があれば、地縁血縁ごと殺せ。




家族が殺されたら、悲しい場合がある。

現代社会以外では、あまり当てはまらないが。

しかし、氏族組織がある中世。


遺族を絶やしておくべきだ一応は。



友人を殺されれば恨むだろう。

むしろ現代社会以外では、友人関係が一番強固だ。

財産権が未分化だから、友情とは個人に属する唯一無二のモノ。


友人の友人の友人くらいまでは確実に。



知人を失えば困るだろう。

知人とは親しくもないのに付き合う相手、それはすなわち利害関係。

代換え知人を見付けるまでは不便が蓄積恨みに至る。

情より利害は恐ろしい。


ついでと思わず丁寧に。




ニコロ・マキャベリ曰く。

「苦痛は最大級に一瞬で、恩恵は最小限に末永く」

至言だろう。


だから根絶やし皆殺し。


氏族は当然。

友達の友達。

友達の知人。

知人の知人。

例外なく、平等に。


なに、簡単だ。

星を何周も出来る世界じゃない。

見知らぬ相手と知り合えたりは、しない。


一人一人の交友関係、洗えば洗えるが必要ない。

一定範囲を物理的に絶滅させれば、それで十分事足りる。


そう、だから人道は揺るがない。

絶対的無条件に人間を優先する。


それが国連軍やWHOの原理原則。




だがしかし、UNESCOはいささか特殊な集団だ。


人間以外との対話や交換、維持と観察を重んじる。

根本的に言えば、相手を信頼するところから始める。



なにしろ異世界。

なにしろ魔法もあり竜もいる。


どんな法則が在るのか判らない。

地球人の経験則は役に立たない、どころか有害ですらある。



迷信と事実を一からより分ける必要がある。

地球の常識を一から疑わなくてはならない。


それならば、異世界人の経験則を集めればいい。

もちろん嘘をつかせない工夫は常用するが、錯誤は防げない。

嘘をついていないからと言って、事実ということにはならない。

だから出来るだけ、自然な状態で観察する。




ある時など、魔女狩りに狂奔する村人たちから、魔女を引き取ったくらいだ。


そのまま疫病が流行っている地域を封鎖。

魔女をいったりきたりさせ、原因菌やウィルス菌の活動を観察。

疾病流行の自然沈静化まで2ケ月。

因果関係確認不能、と結論。


別な機会に試す為に、魔女は収集。

村々はWHOに引き渡した。



担当者は語る。

「次は失敗しません。あと五回繰り返せば証明できます」

なにを、とは言っていない。


魔女の呪いか。

魔女の無害か。

証明不要か。




そんなUNESCOが来た。

書籍を中心とした資料を手に入れる為。



その街は人口一万余り。

古くから築かれた壁に囲まれている。

中世における典型的な城壁都市。


帝国以前には、諸王国の一つに属してた。

その王国は首都を焼かれて、一撃で滅ぼされた。


だから、城壁はよく保たれている。

すぐに降伏した故に、無傷。



近くにより大きな都市があり、周りが農村部。


村から都市へ。

その逆へ。


物流結節点周辺、その繁栄。

一時、国際連合武力制裁の余波で、物流が停滞したこともあった。

しかし、本当に一時のこと。


駐留していた帝国軍も、別な都市にいたこの地方の太守も、素早く撤退。

遺された住民たちは、手早く市の実権を掌握した


それは、帝国の支配体制の下で配下に組み込まれていた地元有力者たち。

既存の体制を引き継いだだけなので、混乱が起きなかったといえる。


戦闘もなく、内紛もなく、必要物資や流通に支障が起きていない。



壊されずに、そして特別に重要でもない。

故に帝国式の再開発を受けていない。

帝国の没落とも関係していない。


だから、目を付けられた。

UNESCOの研究者たちに。

無疵の標本、その一つとして。





そして今度は地球人が突然来訪。

それが与える刺激は、UNESCO側でも把握していた。

そしてUNESCOには、わざわざ平穏を乱すつもりはない。


唯一無二ではないが、状態が良い。


街中の一軒一軒を家探ししたりはしない。

屋内戦闘は射程を生かせないから危険だし。



だからこそ、友情を育む。


事前に、来訪を予告。

目的と、協力の内容を伝えておく。


「提示された条件に合致する物、合致する可能性が有る物を、その所有者と共に集めるべし」



伝達役は、国際連合統治軍軍政官に依頼。

初来訪のUNESCOよりも、いくらかなりと現地異世界住民になじみがあるであろうチャンネルを使う。


だからこそ、異世界住民の自主的な協力を得た。


初来訪の都市。

初対面の人々。

彼等は勧んで協力に狂奔する。

理性に乾杯。

利害に万歳。



この地方における国連軍の作戦。

それは異世界の人々にはとてもとても印象深いものだった。

それもきっと、プラスに働いたのだろう。



こうして書籍類似品収集部隊は、順調に役割を果たしていた。


あくまでも自主的に提供を得る。

地球人の基準で書籍に見える物。

それに関係する者。


参考になる可能性があるモノ。



文盲率が高い異世界において、書籍はそもそも需要が少ない。

だが、都市住民に限ればそれなりに需要がある。

富裕層ともなれば、必須の品々となる。


実用品でありかつ、嗜好品。

持ち主は概ね、失うモノを持つ人々。

強者の依頼を断れない。


対価は破格。

金銀財宝、奴隷に命。

なんならハードコピーを代わりに残す。



大英博物館やルーブル美術館の所蔵品集めより紳士的。


だからこそ、数々の品々が広場に集まった。

万が一の天候不順に備えられた天幕の列、列、列。


品々を持ち寄る、住民の中の富裕層。

中にはUNESCOの研究者と書籍談義に耽る者も、ちらほら。


まさに平和な光景。



M-137やM-2が常に銃口を向けていても、大丈夫。

実包が装填され試射もすませてあるから、大丈夫。


緊張した都市衛兵が背を向けて周りを囲み、UNESCO戦闘部隊兵士が構えるM-14の銃口が異世界住民に向いている。


でも、射線上にUNESCO職員(異世界人を含む)を入れないようにしているから、大丈夫。

全力連射で人類や協力者を巻き込まないから大丈夫。



周辺上空にはAC-130ガンシップ。

エンドレスエイト、八の字飛行を繰り返しているが大丈夫。


AC-130UJ スプーキー Ⅲは在日米軍モデル。

GAU-12 25mmガトリング砲。

ボフォース 40mm機関砲。

それぞれ二基。


GBU-44/B バイパーストライク、要は精密誘導爆弾も搭載。

平均誤差半径が1m未満という、これまで出番がなかった在庫品。


事あれば3分以内に最小威力の精密爆弾が落とされる。

味方とそれ以外が混交している状態で、あえて戦闘する為に用意されたような、フル装備。


国連軍は遠距離面制圧全火力一斉投入しかやっていなかったから、今後もほぼやらないのでUNESCO支援ぐらいしか使い道がない。


だから気前よく投入されている。

これだけ準備しているのだ。

虐殺の。



大丈夫。

大丈夫。

大丈夫。





大丈夫だから、起きた。

大丈夫だから、悪化した。



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