地獄/ベアトリーチェの導き
愛。
それは仏教用語からきており、「執着」を意味する。
なるほど全くその通り。
聴いたことはないだろうか?
相手に完全性を求める。
相手に無謬性を求める。
相手に理想像を求める。
失敗も過ちも否定して、批判も批評も拒絶する。
疑問を挟むことは相手を否定することであり、相手を攻撃することであり、自分を傷つける行為である。
故に絶対、考慮しない。
検証しないし、考えないし、拒絶の為だけに論拠を集める。
それはつまり、相手を見てはおらず、相手を認めておらず、相手を否定しているのだが。
本人はそれすら感じられない。
相手の中から、自分好みの要素だけを切りだして、脳内コラージュに執着し、それが愛だとリフレイン。
なるほどなるほど。
お釈迦様は正しかった。
それは棄てるべき煩悩に違いない。
その煩悩は、しばしば暴走する。
人や思想や国家へ向けて。
【国際連合統治軍/第13集積地/駐屯地居住区/ゲストハウス/布団の中】
その時、俺の頭を走り抜けた打算計算予測に感情。
保身と見栄と羞恥心、それに義務感を一滴。
改めて検算リテイク指差し確認。
ぐるぐるぐるぐる繰り返し。
俺は俺の手を離れることには慎重です。
最低三回は確認します。
俺なら何とか誤魔化せる。
俺以外のことは知らない。
だから気になる気にかかる。
わざわざ、俺たちの暗部を見せるかフツウ?
あんな場所。
あんなモノ。
そこに導くメフィストフェレス。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まったく、こっちが知らんうちに余計なことを。
だいぶちょっぴりムカついた。
メンゲレ大尉め!!!!!!!!!!
嫌われたらどーする!!!!!!!!!!
俺が!!!!!!!!!!
何処かの誰かの余計な干渉。
それはいつもの当たり前。
懸念しなくもなかったが、考えるのは止めていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無駄だしな。
だが、ここで来るか。
俺が身動き出来ない時に。
しかも、友好関係回復の朝に。
いつも通りに一緒に就寝。
いつも通りに抱き枕。
いつも通りに無警戒なシスターズ&Colorful。
努力が実を結び、性犯罪者疑惑を払拭した。
ら、戦争犯罪者認定か。
落として挙げて、また落とす。
人生に谷や山は必要ない。
水平移動だけでよい。
だけで十分たいへんなんだから。
『大丈夫、だいじょーぶ、今度は勝つからさ♪』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・最近おきた、参議院議員の舌禍事件。
マシなのかな?
大丈夫なのかな?
いやいやいや、妥協はいかん。
罪と罰。
両方ない方がよい。
人生に、よりマシな選択なんかいらん。
ベターから始まる負け犬人生。
常にベスト、それだけだ。
それが出来たとは言わないが。
あらゆる犯罪類似行為には、関わらなかったことにしないとな。
第一、それより先に考えるべきこと。
訴追されるかどうか、そんなことが関係ない。
いつから法律は感情の上にたったんだ?
――――――――――世界の名著、アシモフ先生の銀河帝国シリーズ名台詞。
つまるところ、どう思われるか?
俺が。
ここ重要。
最重要。
あの子たちは、国連軍と、地球人との、俺との距離。
距離の取り方ひとつで、人生が台無しになってしまう。
近づきすぎると、異世界に戻れなくなる。
野生に戻れなくなったアライグマの様に、ずっと俺の側にいるわけにもいくまい。
遠すぎると、この世にいられなくなる。
世界規模で恨みや憎しみや嫉妬をかっている俺たち、の代わりに殺されそうなポジションNo1!
生きてりゃいい、ってもんじゃない。
死んでしまえば無駄死にもいいところ。
ええ、まあ、俺個人のせいなんだけどね。
強引に俺たちの都合にまきこんじゃったからね。
出会い頭のその場の勢い。
ついカッとなりました。
反省してます。
では
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、だが、まてよ。
考える余地はある。
メンゲレ大尉の実録戦争犯罪紀行。
アリかもしれない。
いずれ、さけられない、段階。
付かず離れず、距離間調整。
一人一人の人生設計を睨みつつ、俺が何とかするしかない。
俺以外の地球人とはあまり接触しない、シスターズ&Colorful。
俺との距離が地球人類との距離、その基準と考えていいだろう。
俺から離れたら、危険。
だが、一生縛り付けるわけにもいかない。
近くに置いてるだけ、それは先延ばしに過ぎない。
距離を置く。
それが必要なのは言うまでもない。
今すぐ物理的な距離を置くのは命がけ。
だからまず、感情的な距離が必要だ。
安全を確保しつつ、俺たちに巻き込まれない。
適度な距離を測ること。
保つ感覚を教えること。
俺たちの危険性を教える。
手始めなら、悪くない、かな?
妙に、なぜだか、シスターズ&Colorfulの視線は温かい。
一般的で正常な異世界住民であれば、恐怖と怯えと忌避と絶望。
なんか、俺たちを勘違いしてるんだろうな。
いつも向けられる視線が痛いです。
憧憬と賛美と安堵と親愛と
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ほんとーにすいません。
そのためにこそ、実録戦争犯罪紀行。
シスターズの小さい二人なら、絶対に教えることを許さないが。
年齢的にも、経験的にも、エルフっ子ならアリかもしれない。
いやいや俺は、真実が必要、なんて考えるほど幼稚じゃない。
過酷な現実は、言わない見せない教えない。
それが一番、幸せだ。
事実をありのままに、なんて、腰抜けの戯れ言。
騙し続ける苦痛に耐えられない痛がり屋。
騙していた事に胸を張れないロクデナシ。
大人が支えるべき現実を子供に被せる弱虫。
――――――――――絶対に、そうなりたくないね。
だが、子供を無垢なままでおこう、なんてそれは児童虐待のバリエーション。
心が大人、身体がまあ大人?のエルフっ子なら、イケるんじゃないか?
通過儀礼を受ける、典型的な頃合いだろう。
たぶん。
もちろん、誇り高く真面目なエルフっ子。
アレを見たら嫌われる、か、距離を置かれるだろう。
俺が。
俺にね。
悲しくなんかありません。
だが、他を巻き込むことはない。
小さい二人はもちろん、ある意味で世間知らずなColorfulも。
エルフっ子なら、周りを見て判断できる。
たぶん。
そこから適度に希釈して、皆に伝えることだってイケるか。
おそらく。
おかんエルフの渾名は伊達じゃない。
万が一
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・刺激が強すぎて、取り乱したら?
それこそ、俺の出番だろう。
泣く子を宥めるのは得意だ。
けっこう慣れてもいる。
俺の目の前で泣き出すからだが。
俺は悪くありません。
だが、今回は本当に俺のせいだけじゃないだけ、見通しはたつ。
悪くも良くも悪くも千年先行している、俺たち。
二百年以上先行されている、個人スペック。
その差、埋めてみせようじゃないか。
いやまあ逃げられたら寂しいが
――――――――――いざという時は、坊さんに投げよう。
坊さん到着は明日明後日。
間に合う間に合う。
困った時は寺が来る。
古きを尋ねて古さをしる。
よし・・・・・・・・・うむ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
だから・・・・・・・・・いける!!!!!!!!!!
可能性は否定出来ない??????????
【大陸北東部/「聖都」南方内陸側/青龍による禁足地/中央】
あたしは聖都郊外、その一角に来ていた。
連れられてきたんじゃないけれど、ね。
全身を覆う青龍の鎧兜。
隙間もすべて詰められて、飛沫ひとつ通さない。
だから、異なる世界を見ているみたい。
青龍の兜。
端から見たら、覗き覗かれる隙間のない面貌。
目を使わないで、魔法で周りを探っている、だけだと思ってたわ。
遠見の魔法。
感知の結界
使い魔。
見えないところを知る手段はそれなりに知られているけれど
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・中から視ると、透明なのね。
隙間なく防具で覆い、守りを固める。
覇がより硬い鎧の甲が、内側からは透けて見える。
外側からは不可視だから、視線を追われることも無い。
単純で、効果的。
面貌の内側、視界を妨げない片隅には、いたずら書きのような図形。
自分の周り、その略図。
目で見て見える。
だから要らないけれど、十重二十重に術を張るのが青龍らしい。
そう、視界の範囲はみんな見える。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・周りを埋め尽くす、汚濁の世界。
鎧兜を付けなくても、大丈夫、らしいけれど。
メンゲレ卿は付けることを勧めた。
サトウ卿、シバ卿は脅迫。
あたしが青龍の鎧兜を付けないなら、主に言いつける、と。
あたしはこれから除く世界がどうなっているか何も知らないまま。
ここに来る前、言われるままに青龍の鎧兜を身に付けた。
そして今。
足元の、怖気をもたらす感覚。
湿地のように軟らかく。
枯れ野のように頼りなく。
在るのに無いように脆く崩れる。
あたしは、確かめるように歩き回り、一歩一歩に後悔する。
踏みしめた下から溶け出す
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ナニカの触覚。
兜の内側に満ちた、無臭の空気。
あたしは、深く吸い込む。
汚濁に満ちた、汚染されそうな、ほんの少し危惧していた感じはしない。
そう、何も感じない空気。
聖都の、この土地固有の匂いがしない。
潮の香り。
焼き砕かれた骨の匂い。
草木一つない乾いた土の匂い。
青龍の陣幕特有の灼き浄められた香り。
兜を、面貌を閉じてから
――――――――――まるで世界から切り離されたみたい。
なにより鎧越しに感じる、気配の無さ。
サトウ卿、シバ卿、メンゲレ卿。
三人だけ。
周りが見える。
周りの音は聞こえる。
鎧越しとは思えないほど鮮明な風景。
鎧の魔法が伝えてくるのは風の音。
なのに、気配を感じない。
ううん。
無い。
虐殺の跡は、何度も見てきたわ。
何度も何度も、見てきた。
誰一人、生きる者がいない、殺戮後の場所。
戦場には有り得ない、死が満たされた空間。
血が滴り、脂が飛び散り、骨が
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんて、生気にあふれていたのかしら。
それは、悲しい場所だった。
ここは、怖い場所だわ。
ここには、在るべきものが、いない。
蠢く虫や啄む鳥、かじる腐肉あさりと彷徨く死体漁り、そんな居るべきものが
――――――――――なにも、いない。
賑やかで騒がしい、戦場跡。
雑多でせせこましい虐殺跡。
――――――――――何百年の日常――――――――――
それは、あたしたちの常とした虐殺、殺戮、暴虐は
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――活き活きとしていた。
単色に塗りつぶされた、一刷毛でしつらえられた、殺人。
死の気配すら殺された、濃密な、固さすら感じる結果。
『見えましたか』
――――――――――青龍――――――――――
メンゲレ卿が、謳うようにつづけた。
『ホスゲンオキシム』
あたしは空気穴を意識し続ける。
それを忘れないように。自分の命を、忘れないように。
『CXgas――――――――――糜爛性ガス』
サトウ卿が常にこちらを覗き込んでいるのは、あたしが自分の吐瀉物で窒息しないように、ね。
『マスタード・ガスに代表される糜爛剤は、皮膚や粘膜を浸蝕する接触性の毒物です』
朝食前だから、大丈夫、たぶん。
良かったんだか、悪かったんだか。
『本来、致死率は低く、たいしたガスではありません。もともとが呼吸器系ガスと併用し、ガスマスクを外させるために使われました』
あの娘が創る、美味しい食事
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・喉は通る。
間違いなく。
『ただただ苦痛を与えることだけを、熟慮。致死性ガスへの防御を忘れさせるためだけ。だから、ほとんど死にません』
腐乱死体の山の上でも。
血の海に浮かびながらでも。
あたしは飲み食い出来た
――――――――――戦士の心得、昔の話。
でも出来るから、だからといって、それが楽しい訳がない。
『生き残った場合はこうなります』
こうなるのね。
メンゲレ卿が指し示すのは比較的、人の体に見える部分。
足元、ううん、視界いっぱいを埋め尽くす死体。
その一つ。
その一部。
変色して挽きつれた皮?
溶けた肉?
脂?
似ているとしたら、火傷。
色がまるで違うけれど。
暗い暗い朱。
青黒い濃緑。
変色して滴る薄茶色。
『化学的に浸蝕された外皮は醜い痕跡を遺して機能を失い、破壊された周辺組織とともに永続的障害を与え続け、決して再生しません』
でも焼死した骸とは違い体を丸めていない。
まるで、生きていたころの姿勢かしら。
もちろん、こちらは間違いなく死体。
『それはそれで効果はありました。不具者を生産するのは現代戦の基本です』
ううん、死体というより、今も苦しみのたうち回っているみたい。
崩れた顔形に表情なんかない、はずなのに動かないそれが苦鳴を上げている。
身動きしない身体は変色した骨にこびりついた、溶けたなにかをまとわせて微動だにせずのたうち回る。
『ただ、やはり不十分です。十年スパンで敵の社会を破壊する。戦争サイクルの短縮化を考えると、現実的とは言えない。生きてさえいれば、兵士に出来ます。だから、その場で殺せなくてはいけない』
死の瞬間を、そのまま固める呪い。
それは堪らなく不愉快で腹が立ち
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?
『銃撃よりも砲撃よりも、簡易にして効率的で、討ち漏らしがない』
あたしは感情が戻ってきたことに、気がついた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いつのまにか、忘れていたなんて。
メンゲレ卿は、まるで大学教授の様に話を続ける。
諸王国時代、聖都にもあった大学。
あたしはいつのまにか、100年前に受けた講義、その感覚を思いだしていた。
青龍の言葉を、あたしの理解に置き換える。
『これが理想的回答です。我々の、ね』
ドワーフの、太守領、西の山を飲み干した煙獣。
あれと同じ、青龍の魔法獣
――――――――――ほすげんおきしむ。
一息で肌を腐り墜とす。
一舐めで脂が融け墜ちる。
甘咬みで筋を解しきり。
骨まで浸してしゃぶり尽くす。
青龍の貴族が、西の山で戯れさせた煙獣。
しーえす、といったアレ。
アレはドワーフ氏族を試しただけ。
目と鼻と喉を潰し、ドワーフ長老たちの肝を踏み潰した。
死んだのは、百に満たなかったという。
それも、煙獣に殺されたんじゃない。
怯えて逃げて事故で死ぬ。
怯えて慌てて窒息死。
なら、ここ、聖都で放たれた、ほすげんおきしむ。
ソレは違う。
死と苦痛、死してなお続く汚辱の獣。
踏みにじる為に産み出された、んじゃない。
そんなことは、眼中にない。
殺すため、でもない。
ただ殺すだけなら、こんなものはいらない。
いつもの青龍なら、考えもしない、ソレを産みだす為に創られ、青龍が永く多くの工夫と思考を凝らして、行き着いたモノ。
『致死率100%の浸蝕性化学兵器、ホスゲンオキシム
――――――――――我々の世界では、遂に一度も使われませんでした』
メンゲレ卿は、それが残念そうね。
使いたかった?
ここで使ったのに?
なのに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・青龍の世界で、使われなかった、のが?
あたしは、吐き捨てるような口調を聴いた気がした。
・・・・・・・・・・・・・・やっぱり、そうか、そうなのね。
『ここで我々が殺したのは11856人。もちろん人数は、事前に画像解析で割り出しだのですが』
あたしの周りに広がる、奇怪な塊。
青龍が殺した領民たち。
『ご覧の通り、寸鉄帯びていません』
もとの形が判らない、けれど嘘を言われてないのは判る。
崩れ溶けた死体の平野で、持ち物と思しきものは残っている。
『力のない、戦う意思もない、逃げ出した領民たち』
だからこそ、メンゲレ卿は、あたしに問いかけている。
帝国に狩り集められた百万人。
青龍の掌、握られた人々。
その一部。
武器を持たない。
力を持たない。
敵意を持てない。
『我々に殺された、と知ることもなかったでしょう』
青龍を知りもしない人々。
そんな人々を、何故殺したのか。
比肩すべき者がない、最強種たる青龍が。
帝国に従うどころか、その支配から逃れた人々を皆殺しにしたのは、何故か。
メンゲレ卿は、付け足そうとはしない。
これが
――――――――――青龍ね。
何故もない。
警告しない。
しばしば、命令すらしない。
行いを淡々と。
行うを粛々と。
『わかりましたか』
一万余りを殺したのは、メンゲレ卿じゃない。
でも、メンゲレ卿も殺すだろう。
敵じゃ無くても。
脅威が無くても。
殺すと決めてなお、苦しめるだけ苦しめて。
殺して苦しめ、そしてなお、辱めるだけ辱めて。
正義も悪も、大儀も名分も、些細なことと無視して。
――――――――――彼、青龍の貴族も、殺すでしょう。
黙ってこちらを見ているメンゲレ卿。
此方から見えない、兜の面貌の奥で、どんな表情をしているのかしら。
だいたい、わかる。
貴女は?
と言われたような気がした。
あたしは
――――――――――問われている、あたしに。
メンゲレ卿は、見せただけ。
弱い者を殺す。
罪なき者を殺す。
敵ではない者を殺す。
苦しむように殺す。
出来るだけ大勢殺す。
一人残らず殺す。
殺した後も末永く辱め、想いを殺す。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それを、あたしは、どう感じているの?
許さない。
許せない。
腹が立つ。
耐えられない。
でも、赦してしまいたい。
あたしを欺いて、あたしを否定して、あたしを誤魔化して。
彼を
――――――――――――――――――――受け入れてしまえたら。
【国際連合統治軍/第13集積地/駐屯地居住区/ゲストハウス/出入り口付近外部給水所】
俺はようやく、布団をたたんだ。
シスターズ&Colorfulの宿舎、俺もいるよ?、から出て顔を洗う。
厨房は魔女っ子たちでいっぱい。
外にも水道があるのだよ。
聖都は海に面してるからね。
米軍が中東他で多用している、海水淡水化装置が設置済み。
駐屯地は長期稼働前提で設置。
日本列島なみに水道完備。
散水用でも、飲用可能。
なんなら、朝シャワーも可能です。
爽やかな朝を満喫
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・出来るのは、いつのことやら。
顔を洗って、タオルを受け取り、振り向いた。
そこには濡れ髪のエルフっ子。
どういう状態?
いや、化学戦跡地を視察したあとなんだろうな。
除染エリアで防護服、単なる戦闘装備、を洗浄して脱ぐ。
一応、エルフっ子本人も洗浄を受けたんだろう。
だから、風呂上がり状態。
ドライヤー嫌いみたいだからね。
シスターズ&Colorfulみんな、自然乾燥派。
エルフっ子が、濡れ髪で色っぽいのは仕方がない。
さて?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうしよう。
不意討ち良くない。
【聖都北辺/青龍の軍営/青龍の貴族幕舎外/入り口付近/青龍の貴族、前】
あたしが差し出し、彼が受け取る。
当たり前。
あたしにとって、彼にとって。
見る聴く感じる
――――――――――そんな必要は、ない。
ここまでは。
だから、あたしに向き合う、彼、青龍の貴族。
・・・・・・・・・・・・・・・つくづく、あたしは彼が好きなんだ、と感じる。
彼、青龍の貴族が、何を感じているのか。
知りたいけれど、知らなくてもいい。
彼、青龍の貴族が、何をして何をするのか。
知りたいし、知って見せる。
あたしが許せないことも。
あたしが赦せないことも。
あたしはきっと見届ける。
・・・・・・・・・・・・・・・・結局、そういうこと。
やっと解った。
彼に、青龍に向き合っているんだ、と。
だから、何も言う必要は、無いわ。




