ｉｔ’ｓ　Ｔｕｅｓｄａｙ/静音な日常

明日を憂えていた。

街を追われてゲットーに移された時も。

ゲットーを追われて収容所に運ばれた時も。

収容所の中でシャワー室に入れられた時も。

まだ生きてるって、思っていたかったから。

もう殺されてるって、思いたくなかったから。

少しづづ。

少しづつ。

辛くなる。

慣れていく。

苦しくなる。

慣れていく。

ぜんぶわかっていた。

みんなわかっていた。

まだいきていますか？

もうころ

【国際連合統治軍/第１３集積地/駐屯地居住区/ゲストハウス】

では、今日の予定です。

未だに陽は高く、過ごしやすい日差しに気持ちの良い風。

俺がいる。

異世界の空と大地、近くに海。

五月。

皐月。

雨月という名前は異世界では定着しないかもしれない。

南の方にしか雨季はないようだ。

もちろん、文献調査とヒアリングの結果であり、今後どうなるのか分かったモノではない。

海上に日本列島が出現したことによる海流変化。

その影響を推し測るには十、年では足りないだろう。

花粉症が存在しない世界では、窓を開ければ大変気持ちいい。

異世界に謎の植林計画は在りません。

わざわざ生態系を無視して需給予測をしていないことを無視して戦後復興の為にある官僚たちが闇雲に努力した結果。

大変な経済効果が生まれました。

主に製薬保健業界に。

波打ち際を掘り続ける拷問のような。

道路を掘り返して埋めるような。

ベトナム戦争中の有名な拷問。

（実話）

おー明治以来の伝統に沿った試験官僚の見事な手腕。

植民地省とやらが設立されたらプランテーションを創るという。

まさか杉林のモノカルチャー経済を創る気じゃあるまいな？

そうなる傾向があるのならクーデター計画を全力で応援する準備に入る所存。

それはあたかも某国の水爆実験のようなモノ。

水爆実験に成功した。

それはつまりこういうこと。

水爆（を創ることを目指す実験場を創る作業員の宿舎を立てる測量技術者の栄養状態を改善するためのジャガイモの栽培）実験に成功した。

（内を）中略するとニュース（と称するモノ）の見出しになる。

具体的には、ジャガイモにヨウ素液をかけて変色した、的な？

そんな春の風物詩を楽しむ機会はもう来ないのだろうな。

平和だったな～。

そのネタが出てくると、何もしなくてよかったもんな。

いや、普段練習できないＰＡＣ３の実戦的な演習ができたけどね。

アレは良かった。

俺は直接関係ないけど、同期が喜んでいた。

わかるわ～。

やっぱり使わないとわからないことが多いしね。

スカッドミサイルすら一回も落としたことが無いのに、ＰＡＣ３を弾道弾迎撃に使えると言い出したのは俺たちじゃないし。

水爆の作り方すら調べないド素人が、何を言い出したってかまわない。

どうせ何も起こらないとわかっていればこそ、理想的な演習になる。

残業代だけ稼げたし。

適当な経費をつけやすくなったし。

自衛隊員あるある。

平時にだけでも弾よこせ。

有事になったら米軍がくれるけどね。

普段にこそ弾が無いと練習できんのよ。

新型と称する実戦と縁のない戦車(複合素材クズ)造るくらいなら、弾薬は役に立つよ？

平時が長く続いた軍隊は、練度が上がる。

消耗もなく、人員の入れ替えもなく、積み上げる経験も訓練も無い。

世界史的な例外がココに。

まあ俺は、そんなあるある愚痴の最中、皆をフリーズさせていたが。

弾丸より、死体袋が先だろ？

もちろん、平時に。

え？

だって？

真面目に演習したら銃身が破裂するからね。

仕方がないね。

なお、防衛省は死体袋の導入を検討したことが無い。

自衛隊に戦死者は出ないそうです。

マジ。

ＦＰＳゲームかな？

元カノはもっとまじめなことを言っていた。

元カノのくせに。

モルヒネ寄こせ。

医療キット寄こせ。

衛生兵寄こせ！！

メディック！！！！

なお、防衛省は現状のままで問題ないとかなんとか。

自衛隊に戦傷者はでないそうです。

本土防衛戦で民間の医療関係者を前線に連行するんですかねぇ。

ＰＫＦでは例によって、他国の軍隊におんぶ抱っこ。

全力で駆けつけてそのまま野戦病院へスルー直行。

伝説になるな。

例によって、国内では報道されないだろうけど。

そんなのどかさも、今は昔。

異世界戦争、おっと、国際連合武力制裁では軍隊の基幹部分は外国軍、主に米軍が担当している。

イランやパキスタン兵を臨時で衛生兵にしたりもしている。

実践経験者なら応急処置に慣れてるから。

まあ、そもそも戦死戦傷者がほとんど出ていない。

きっと防衛省も鼻が高かろう。

だけどちょっと思い出してもいいよね。

ちょうどやることなくなったし。

ちょうど３０分前に。

ついさっき。

俺と帝国軍将官との打ち合わせ。

その結果。

しばらく暇になった。

つまりどういうことかというと、こういうこと。

俺たちがココ、第１３集積地に来た本来の目的はなんでしょーか？

俺たちの目的。

太守府、シスターズの故郷から連れ去られた領民。

現地代表たる魔女っ子の要請に従い、彼等を帰還させる。

そのためにわざわざチヌークに乗ってやってきたのである。

その前は一週間近くかけて、太守領で準備にいそしんできたのである。

満を持してやってきた、ここ第１３集積地。

頼れるお兄さん気取り。

かっこつけようという、意図が無かったとは言えない。

いやー、ドヤ顔なんて、子供相手じゃないとできないじゃないですか。

子供にカッコつけるという発想がどうなのか、といわれたらそうですけどね。

大人の前で成果を上げると、じゃあ次はコレ、ってハードルどんどん上がるんですよ。

主に親とか教師とか彼女とか、今は上司（三佐）に命がけのハードルを強いられてるし。

それは既に諦めてるから、地味にサボタージュしてるけどね。

だから今回は、積極的に三佐を巻き込んだ。

俺が任務を完了したタイミングを狙うように持ち込まれた、強制連行中の領民発見！

ＯＫ！

嫌がらせならそれもよかろう。

ならこっちも利用してやろうじゃないか。

元々は俺が魔女っ子に言い出させたことだしね。

別に世話になったわけでもない連中を、心配して気に病むタイプなんだこの子は。

理解はできるが共感はできない、だが、捨てておけるわけがない。

このあたりの気持ちは、お嬢やエルフっ子も同じだろう。

だから、頑張ったよ？

事前にちゃんと伝えておいた。

第１３集積地に管理責任者に連絡をつけることができる三佐へ。

何が必要でいつまでに準備しておいてほしい。

太守府の港街で準備しながら、メールでやり取りを繰り返す。

隙あらば余計な意図をねじ込んでくる三佐の罠を解除し続けて。

やっと準備万端整えてから、チヌークへ。

の、はずだった。

んが。

不幸な行き違い発生。

第１３集積地の実務を担当している帝国軍になにも伝わっていなかった。

俺から三佐。

三佐から国連安全保障理事会。

安全保障理事会から国連軍事参謀委員会。

軍事参謀委員会から安全保障理事会。

安全保障理事会から国連軍。

国連軍から国連統治軍。

国連統治軍から

・・・・・・・・・・・・・・・・・もうええっつーか。

うん。

典型的な伝言ゲーム。

そこに文化的相違が絡む帝国軍の、指揮系統の問題が絡まる捕虜部隊を介せば？

そりゃ伝わらんわ。

つーか、三佐なら直接現場と連絡とれたよね？

と言ったら。

当たり前じゃない。

と返されました。

俺は黙りました。

と言われました。

楽しかった？

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

というわけで、通信回線を切った俺は、その場で現場同士の相談開始。

実務担当者だけの会話。

俺と帝国軍将官。

要望を伝えるのに１０分。

理解させようとしなければ軽い軽い。

帝国軍の回答は１分。

確認すらせずに、少し考えて答えが出る。

俺たち、いや、魔女っ子が連れ帰りたがっている、しかも今日全く姿の見えなかった、強制連行中の太守府領民。

所在と数の特定は今日中に可能。

帝国の管理能力は優秀だ。

太守府農民の帰国作戦。

それに伴う確認作業作戦。

まずは帝国軍が特定した帰還対象者にそのことを周知しないといけない。

ソレも帝国軍がやってくれる。

広報準備と、広報活動。

情報を浸透させる。

混乱なく集める準備を整える。

明後日いっぱいかかるとか。

それで出来るんかい。

えらい早いな、まったく。

パソコンが無いんですよコレ？

俺たちが注文している領民の人数は十万弱。

実務担当の帝国軍捕虜五千。

もちろん、別に四十万余りの領民がいる聖都。

その管理をしながら、十万弱に指示命令周知徹底。

何人動員出来るかしらないが、凄い能力だ。

元、管理下にあり、一から築くのではないにしても。

脅して出来るのは、止めるか進めるか。

伝えて宥めて威嚇して、だもんな。

その面倒事を、俺から押しつけられた、帝国軍。

そして、別れ際。

出会って最初から一時間ばかり。

俺たち一行の中で魔女っ子以外をスルー気味だった、帝国軍将官。

打ち合わせ後、お嬢に笑いかけて礼をした。

判ってるな。

英雄は英雄を知る、か。

うんうん、お嬢が澄まして胸をはるのが微笑ましかったな。

異世界で帝国軍に褒められる、心底認められるって、凄いことですよ？

今日のハイライトシーンをリフレイン。

いい気分を取り戻した俺。

お嬢や帝国軍、他みんなの協力に感謝つつ。

おかげで三日間やることが無くなった。

今日明日明後日。

お嬢を抱いたまま俺は、時間潰しを考える。

【聖都北辺/青龍の軍営/幕舎内/青龍の貴族/背中】

彼、青龍の貴族。

あたしたちに、いつも通りに命令。

好きに過ごせ。

つまりは、別命あるまで待機、ってこと。

困るといえば困るけど、当たり前。

青龍の貴族、彼の側にいるのなら騎士も女も自分で動く。

罰はないけど、褒美はある。

罰はないけど、捨てられる。

護られたまま、棄てられる。

なにもかも命令してくれるほど、彼は優しくない。

考えて感じて、従って逆らって。

覗って囁いて、お互いみんなで相談する。

いま、あたしは何をすればいいかしら？

【国際連合統治軍/第１３集積地/駐屯地居住区/ゲストハウス】

俺は広い道場のど真ん中。

卓袱台の前で胡坐をかく。

お嬢は俺の胡坐にはまり込み、ちょうど俺が座椅子替わり。

まあ、子供が良くやる姿勢だよね。

他の皆はと言えば、思い思いに寛いでいる。

エルフっ子は俺の背中に背中を預け、背合わせ。

背を軽く預けられるので、俺にとってもありがたい。

魔女っ子はＣｏｌｏｒｆｕｌ達と一緒に、夕食の仕込み。

料理が得意な魔女っ子。

でも、肢体が小さいからね。

身長１３０ｃｍ未満。

台所では背伸びしたり飛び跳ねたり、それはなかなか危なっかしい。

決して大柄ではないが、少しお姉さんなＣｏｌｏｒｆｕｌが手伝うのは助かるようだ。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌは人並み以上に機敏。

そんな五人がフォローするから、俺も安心して楽しめる。

普段は主にシスターズがＣｏｌｏｒｆｕｌを導く。

だが、魔女っ子はＣｏｌｏｒｆｕｌに遠慮がち。

とっさに指図しながらも、その後で何か言いたそうにモジモジしている魔女っ子。

わかる。

たぶん、見つからなくて困っている。

年上のＣｏｌｏｒｆｕｌへの敬意を示す方法。

奴隷であることを生得しているＣｏｌｏｒｆｕｌ。

周りのすべてに遠慮して生きてきた魔女っ子。

俺は見てるだけ。

いや、面白いからね。

それがどうだろう。

台所の中ではテキパキと指示している。

まさに自分の城の中。

軍政部隊の俺たちはともかく、シスターズ＆Ｃｏｌｏｒｆｕｌは自由時間。

俺に座る。

俺に寄りかかる。

家事にいそしむのもいい。

こうなれば、流れに任せた方がいいだろう。

別に女を口説こうってんじゃあない。

引っ張りまわす必要はないんだから。

甘えたがるのは、子供の正常。

甘え方は個々それぞれ。

任せておき、俺は合わせればいい。

そして今日一日は、お嬢が優先。

それでみんな、納得しているようだ。

【聖都北辺/青龍の軍営/幕舎内/青龍の貴族/胡坐の中央】

わたくし、わたくしたちは一生懸命にご領主様を窺います。

時々、気のせいかもしれませんが、勘違いに決まってますけれど

・・・・・・・・・・・・・・ご領主様が、どこかにいってしまわれる、ような。

こわい

――――――――――忘れられそうで。

あの娘はいつも、捨てられないかと怯えています。

ねえ様は、覚悟しながら、怖れをわすれようとなさってる。

わたくしは、いつか気付かれなくなるような、不安を感じます。

わたくしついつい、身じろぎしてしまいました。

しかも、続けて。

だから、だから

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・困って頂けたのが、嬉しい

――――――――――だめなのにぃ～～～～～～～～～～！！！！！！！！！！

【国際連合統治軍/第１３集積地/駐屯地居住区/ゲストハウス】

俺の膝の中でジタバタするお嬢。

なかなか楽しそうだ。

リラックスしているのが良くわかる。

お嬢はリアルお兄さんもいるしな。

甘えるのに慣れてるんだろう。

邦を離れて、しかもずっと俺が連れまわしている。

魔女っ子を、親友を助けるけなげなキミを。

いいように使ってすいません。

さみしくなるのも無理もない。

父と兄に猫かわいがりされたお嬢。

代わりの男手は俺しかあるまい。

「Ｃａｌｌ ｍｅ？」

俺しかいないな。

「Ｇｏｔ ｙｏｕｒ Ｂａｃｋ！ Ａｌｌ-ａｒｏｕｎｄ Ｆｕｃｋ！ 」

真っ赤になるシスターズ＆Ｃｏｌｏｒｆｕｌ、首を絞めても顔の色でわからない神父。

俺の視線ひとつで察する佐藤と芝が、とりあえずオトし、曹長が撤去させてくれた。

一応、生臭神父である前に合衆国海兵隊の士官なんだが、遠慮ないのねキミたち。

さて。

俯く、お嬢。

無かったことにして進める俺。

時々かまれたり、じゃれつかれるのもいだろう。

毎晩うっ血するるくらい抱きつかれるのもよかろう。

移動中にちょくちょく椅子替わりにされるのも許そう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・魔女っ子やほかのみんなと譲り合う範囲で。

さて、どうする？

【聖都北辺/青龍の軍営/幕舎内/厨房（簡易キッチン）】

わたしは盛んに動き回ってしまいます。

お料理だけ、しかもＣｏｌｏｒｆｕｌさんたちにてつだってもらっています。

ほんとうは、ジッとしていてもいいんですけれど

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気になります。

ご主人様。

――――――――――に、抱かれている、ちい姉さま。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌさんたちも、わたしと交互に見てしまいます。

私だって、その、ご主人様に、その、ありますけれど、でも、まだですし。

ついつい、味付けが濃くなってしまいます。

岩塩を砕きすぎたかしら。

あ、あ、白さん。

ご主人様が

・・・・・・・・・・・・・・・うぅ。

やっぱり、大きい方がお好きなんでしょうか。

え？

橙さん？

そそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそ、い、一番、観ていただいてますか？？？？？？？？？？？？？？？

わたし、ですよね？？？？

はぅ。

でも、でも、橙さんは、ご主人様のお口をあんなに。

（※第135部分 公開処刑/Ｎａｎｏ　Ｓｅｃｏｎｄ．にて ）

わたしなんか、していただくだけで、気絶してしまいましたのに。

（※第209部分 巡航速度×４/給油×１ にて）

あ。

ご主人様の手が。

ち、ち、い姉さま！！

うぅ。

羨ましいです。

え！

あんなに

――――――――――――――――――――そこまでなさ、るべきなんですね。

【国際連合統治軍/第１３集積地/駐屯地居住区/ゲストハウス】

今日は休もう

シスターズ＆Ｃｏｌｏｒｆｕｌを休ませる。

お嬢のご褒美おねだりに応える。

みんな、お手伝いしてくれたが、お嬢が一番大変だったろう。

普段おとなしい魔女っ子を撫で転がしつつ、年長のエルフっ子とＣｏｌｏｒｆｕｌをねぎらい

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・忙しいが、今日はこのくらいか？

ま、夕食と風呂の前に、軽くここ、第１３集積地の記録をチェックしておくか。

明後日の確認作業の前に、領民たちが体験したことを調べておく。

俺は胡坐をかきパソコンのモニターを見つめる。

お嬢は俺の前側に座り、俺を背もたれにしている。

今日一日、一番側にいたい。

その回答がこれ。

椅子扱い、かと思っていたら、よくあるパターンに突入。

あれだよ、あれ。

キーボードや本に載られるやつ。

ネコと子供っと女は眼を逸らすことを、許さない。

許さなくても、逃げ出さない。

大変だな、と慰めると、怒る。

お嬢も座り位置を直しながら、俺を見あげて掴まってくる。

――――――――――なにもしない方が、良さそうだ。

お嬢の注文に応えつつ、明後日以降のあれこれに備えて、事前学習

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・するハズでした。

うん、しかたない。

データを鑑賞するだけにしよう。

確認や問い合わせ、操作はせずに最小動作。

いや、単なる映像鑑賞。

ここ、第１３集積地の指揮所に蓄えてあるデータ。

ハードウェアの中を仕切ったｄｉｓｋから、管理責任者お勧めの一品。

いやね？

明後日以後、準備ができたら初顔合わせ。

昨年晩秋以来、太守領から連行された農民の皆さん。

その留守中に、彼らの郷土をしっちゃかめっちゃかにした俺。

しかし、彼らは俺を知らない。

彼等は国連軍、地球人をここ第１３集積地で知ったはずだ。

なら、第一印象が気になるのが人情

――――――――――俺の。

「ふやっ」

俺はお嬢を掴んで抑える。

ながら視聴ならシスターズ＆Ｃｏｌｏｒｆｕｌも許してくれるだろう、たぶん。

ならば、仕事にかかろうか。

《Ｄｉｓｋ １～５再生開始》