Quintet/五人与
【用語】
『Colorful』:ハーフエルフの最高級愛玩奴隷たち。髪の色がいろいろなために神父により命名。一人一人の名前も髪の色に合わせて白・朱・翠・蒼・橙と主人公に名づけられた。前領主(帝国太守)が奴隷商人に発注し、引渡し前に戦争開始。占領軍の太守資産接収に伴い軍政司令官に引き渡された。軍属として雇用契約を結んでいるので日本の労働法が適用される。
名前カップサイズ
白(F)
朱(C)
翠(E)
碧(D)
橙(C)
『ハーフエルフ』:エルフと人間の間に生まれた混血種族。エルフに似た美しい容姿と不老、不妊、それ以外は人並みの種族。異世界全体としてすべての種族から迫害されている。出会い頭になぶり殺しにされるのが、異世界の常識。
100歩後退。
大丈夫だ。
問題ない。
後と前が判っていれば、十分だ。
勝っても敗けてもかまわない。
一勝に歓喜し、一敗に涙する。
それは慰みにはなるが、誤解でしかない。
勝利で何が得られる?
それは手段でしかなく、かろうじて踏みとどまれたに過ぎない。
敗北で何を失った?
それは好機であり、弱点欠点を処分出来る。
愚かな者。
無能な者。
悪意ある者。
敵が勝ったとしても、何が出来る?
せいぜいが、世界を停滞させる、それだけだ。
戦いが続く限り、世界は前進するのだよ。
全ては正しき向きへ。
全ては理屈通りになる。
全て理屈通りにしかならない。
勝てば正義、それは臆病者の隠れ家だ。
正義は勝つ、それは陽が昇るかのように。
どれほど西に急いでも、星の回りを止められぬ。
地球人を代表する有権者は、賢明だ。
我々には停滞出来る余裕がある。
150年の停滞を清算する余力がある。
それを喜ぼう。
計画の二十年分を、一年で実行出来る余力がある。
それを感謝しよう。
3万人の犠牲者を、悼もう。
昨日までが原因で、明後日の為に、明日殺される者たちに、敬意を。
《某衆議院議員後援会最高幹部会合》
【国際連合統治軍第13集積地/駐屯軍区域徒歩移動中】
俺が目くじらを立てすぎるのもよくはない、かな。
Colorfulが余計に孤立してしまう。
保護者同伴以外で生活できなくなったら大変だ。
地球人だろうが異世界人だろうが、フルスイングでボコって怒鳴りつけるような。
腕白でもいい、たくましい子に育ってほしい。
例えば元カノ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はマズい。
エルフっ子のような。
最悪、元カノでもいいが。
少なくとも殺されなければ、なんとでもできる。
そこが俺の裁量。
Colorfulとの接し方。
別に、この子たちに特定したことではないが。
一兵士と言えども、軍政部隊であれば異世界人との接触は避けられない。
うちの隊員は上手くやっている方だろう。
国際連合の教本通り。
見るな、話すな、触れたら死刑。
軍事参謀委員会は貴方を見ている!
(UN Military Staff Committee is watching you!)
とはいえ、あれだ。
Colorfulは国際連合の軍属。
今後、地球人と関わらないで生きていくことはできない。
例によって、俺がしてしまったのだが。
そうなるとまあ、注目されるよね。
ほぼ妖精さんな、美少女と来れば。
ソレだけなら良かったんだが。
可愛くて綺麗、ってだけじゃないんだね。
この子たちの場合。
いや、ある程度やむを得ないところはあるけれど。
Colorfulは産まれた時から常に女の愛玩奴隷として、訓練を受けてきた。
俺の気のせいではないと断言してもいいが、断言はしないが、容姿や仕草に艶がある。
異性の眼を惹きつける
存在そのものがそのように、徹底的に工夫されているのだろう。
プロフェッショナルのアムネスティガールズが仕草を学んでいたくらい。
色とりどりな、しかも妖精のようなハーフエルフの容姿はマネできないから仕方ないね。
マネしようとしたらただのコスプレだしね。
そーいうの嫌いじゃないです。
マメシバ印、三尉お手製の婦人自衛官制服コスプレバージョンはどうかと思うが。
それをColorfulに着せているマメシバ三尉はどうかと思うが。
野暮ったい自衛隊の制服をそのまま着せたんじゃ、おしゃれ盛りの女の子にはかわいそうだけどね?
嘘だと思う人はレッツ!ググる。
画像検索一つで理解できるのは、制服を変えるだけで志願者が増えるレベルってこと。
それに比べれば、さすがのマメシバ印。
軍政部隊の経費で自分と元カノ用に誂えただけはある。
Colorfulたち。
タイトスカートを中心に絞るところを絞り、レースかと見まがうほどに袖口襟口に遊びを持たせた制服姿。
元カノとマメシバ三尉、自分たちの分はフレアスカートでまとめていたが、戦闘職だから動きやすく。
だそうで。
たいてい野戦戦闘服のくせに。
事務職が動きやすくてもいいと思うが、そーいう問題ではない、そうで。
似合ってるし、一見すれば露出もないし、似合ってるけど、妙なギミックが満載されてるからね。
ラッキースケベを主体的に仕掛けて特定標的を誘い込み
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とかなんとか。
それ、ラッキーと違う
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――マメシバ・ドクトリン、怖い。
若さと、美人から可愛いまで取りそろえている、プロの娼婦たるアムネスティガールズ。
こちらの方々の意見のほうが参考になる。
彼女たちに言わせれば、男の視線イコール不愉快じゃない、と。
そーなのかー。
我慢している視線を見るのは快感だ、と
そーなのかー?
欲しがる視線はOK。
嬉しい、と。
奪おうって視線はNG。
怖い、と。
欲しいだろ?って視線はアウト。
キモイ、と。
参考に、なる?
ちなみに俺の視線はムカつくそーです。
教えてほしい?
などとアムネスティガールズのシュリに言われたので、別にいい、と答えたら大笑いされました。
で、まあ、教えてくれたんですけどね。
そこがむかつく、とかなんとか。
軍政司令官室で全員集合。
そこまでして俺のダメ出しをするのはやめてほしいな、と。
いつものR-18トークではなく、シスターズ&Colorfulが興味津々だったからほっといたんだけどね。
というわけで、俺の視線は問題なし。
プロフェッショナルのお墨付き。
それ以外は要観察。
のはずだったんだが?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺もColorfulに怖がられてるのか、今日は腰が退けていたような?
俺がColorfulに嫌われる理由なんか、あるが、怖がられる理由は、あるが、まあ、ね。
視線がセーフでも、な。
ただでさえハーフエルフとして、異世界の常識を叩きこまれている。
差別なんて生ぬるい、虐待拷問惨殺が当たり前。
もちろん、最高級愛玩奴隷として出生から管理されてきている以上、本人たちは虐げられたことが無いだろう。
実際に買い手に引き渡される前に、俺たちが引き取ったからね。
引渡し前の商品を、預かっていた奴隷商人が大切にしないわけがない。
とはいえ、引き渡された後。
異世界で少なくないハーフエルフ愛好家、あくまで愛玩奴隷として、だが。
その主人でさえ、義務感に駆られてハーグエルフを虐げる。
でないと世間に異常者扱いされるから。
そんな人生が約束されている以上、事前にそれを見越した訓練がされているわけで。
そんな訓練をして15~6年生きてきたColorful。
今日のお仕事は、帝国軍人との会議で通訳をすること。
そりゃ怖い。
ムチャ辛い。
あの、異世界最恐の帝国軍人を前に、意見や助言を言える訳がない。
言わせたが。
帝国が差別して絶滅に努めてるのはエルフ。
特別にハーフエルフに厳しいわけではないけれど。
初手虐待嬲り殺しの異世界で、それ以上に厳しくできるわけもないか。
だからこそ、差別虐待を当然ととらえ、警戒して怯え続ける心象は最初から持っているだろう。
国連軍が軍属として待遇しているColorful。
それはつまり、この子たちは人間扱いされるということ。
もちろん、地球人並みに。
それは取り消されたりはしない。
今後、もし国連に反逆しても同じ扱いだろう。
そのあたり、原理原則が覆らないのは、国連の元締めである議員の性格。
それが新たな国連に影響されている。
日々増え続ける異世界出身の国連軍兵士に軍属、協力者たち。
事あれば他の同じ反逆者と等しく、軍法会議に基づいて処刑される。
現代日本の裁判くらい公正で、虚飾を取り去った無審理無弁護即決裁判。
あ、自白剤が乱用されている分、日本の裁判や捜査よりはマシか。
被告側に発言の機会を形式的に与えたりはしないが、冤罪だけはない。
それで支障があるわけじゃないしね。
どれほどの惨劇を起こすときでも原理原則がある。
実質日本に少人数の外国勢力を組み込んだ国連にとって、むしろ必要不可欠なんだろう。
だが、それは、この子たちは、ってこと。
ハーフエルフの人権を国連が認めたわけじゃない。
Colorfulに権利を認める。
ハーフエルフに権利を認める。
全く違う。
現に大陸中のハーフエルフ牧場は国連が接収している。
奴隷のエルフを使ってハーフエルフ奴隷を造りだす、異世界の稀少産業。
何をどうしているのかは聞きたくもない。
接収した後どうするかって?
そのまま続けさせている。
作業工程を調べて、関係者を自白剤で尋問し、技術をコピーする
いずれ、国連が運営を直接行うことになるだろう。
なぜか?
Colorfulを造るため。
マルチリンガルを生産し、国連の異世界活動に役立てるため。
一番前に立ち皆を庇う、朱。
一番不器用で耳が短い、橙。
一番気が回り、橙をフォローすることが多い、碧。
一番背が高くシスターズと一番話す、翠。
一番胸が大きく一番後ろでポヤポヤしている白。
それはどうでもいい。
国際連合は関心が無い。
ではなく、その機能を造るために、日々、愛玩奴隷工場がフル回転。
愛玩奴隷の育成過程で、なぜか、最良の言語解析装置ができた。
ならば再現しない手はないよね。
俺だってそう思う。
だから前線なんて来たくなかったんだ。
後ろでハンコ押してたい。
ずっと後ろで寝ていたい。
俺関係ないし。
・・・・・・・・・・・・・・・・・と言うことも出来んか、最早。
Colorful。
俺の駐留中は、安全と安心のために俺から離れられない。
異世界人はすなわちハーフエルフにとって脅威。
地球人と同行していれば異世界人からは安全。
かといって、その地球人が安全かといえば、わからん。
他の地球人と仲良くなるのは時間がかかるからな。
わからない相手と過ごすのは、そりゃ怖かろう。
だから、俺。
で、同行すると、俺の職務上、人目にさらされるのは必須。
本来の異世界であれば、人目をはばかるハーエルフ。
奴隷として所有者の誂えたかごの中で暮らすのが当たり前だったらしい。
そんな子たちを常に十数人、最悪、万を超える人目にさらすわけだ。
常日頃のストレスは察して余りある、から察せない。
しかも、俺自身も接し方に問題が生じてるしね。
ファーストキス、奪っちゃったしな。
Colorful全員。
政治的な演出で。
一万人越えの群衆の前で。
誰にも誤解ができないようにはっきりと。
たいへん印象深い体験でしたね。
いちおう後で念のために、辛くはないか確認したら、真っ赤になって頷かれました。
いや、頷かれても。
とはいえ、追い打ちをかけることもできず、そっとしとこうと思ったら、逆に察せられる始末。
五人そろって
「「「「「がんばります!」」」」」
満面の笑顔で励まされました。
とっさに何を馬鹿なことを聞いたのかと。
反省してます。
あ、ちょうど、一か月前か。
今日。
5月15日。
犯行日
4月15日。
あれは、うん、あーまあ、いいや。
よくないか。
(第135部分 公開処刑/Nano Second.にて)
思えば、思わなくても迷惑かけてるな、Colorfulにも。
反省している。
迷惑をかけてない侵略者、ってのも目指し甲斐があると思うんですよ?
かといって、離れるわけにもいかず。
とはいっても、放置するわけにもいかない。
なんとなーく、お風呂も一緒だし、今も。
聖都滞在中は宿泊場所、つまり寝る場所が一緒だしね。
王城だと続き部屋でも別の部屋。
これはまあ、警備上の都合。
シスターズ&Colorfulを預かれる人間がいないからな。
異世界人にハーフエルフを預けるなんて、殺すようなものだし。
国連軍にしても見ず知らずの地球人。
預けられるくらいなら、死ぬ、殺してください
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・涙目で言われたしね。
この子たちが普段隠している恐怖。
見知らぬすべてに死を覚悟して、見知った相手に最初から絶望。
俺たちが生まれたときから感じている、与えられている、保護。
それは強大な、星すらのみ込むところまで達した地球人類の、力。
その力、暴力と生産力を生み出す社会が保証している、裏書き。
それはColorfulにも与えられている。
それが例え似て非なるものであっても、類似品として通用するモノだ。
わかりゃせんわな
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お兄さん、泣きそうになってポーカーフェイス。
そんな訳で、比較的恐怖が薄い俺。
でも、恐れられてはいる俺に、Colorfulがツッコメる訳がない。
これもいずれ何とかしないとな。
だから、今はシスターズ様々である。
俺を怖がらない唯一、唯三の異世界人。
異世界へのパスポートだ、俺の。
それはつまりだようするに。
ハーフエルフ・ブリーダーと、どう違う?




