にたようなもの/Ｓｉｍｉｌａｒ Ｐｒｏｄｕｃｔ.

威嚇してはいけません。

警告してはいけません。

説明などもってのほかです。

暴力は法則を悟られずに振るいましょう。

ルールが在れば、ルールが恐れられます。

ルールを知れば、ルールを利用されます。

ルールではなく、我々を恐怖させましょう。

常に不安を与える。

絶えず死を意識させる。

変化をつけて慣れさせない。

かくして彼らは絶え間なく、貴方の様子を伺います。

調べて、推測し、先回りしようとする。

命令も、忖度も、示唆すら要らない。

見失い、反応するようになる。

これが、同化です。

《国際連合公文書館所蔵：planC関連文書》

【聖都/内陸側/白骨街道/徴集農民居住地/青龍の貴族背後】

あたしたちが立つ所。

徴収領民たちが住まう場所。

広く四角に区切られた、区切ったのは帝国。

その区画、区画を仕切る外周は徴収領民たちの宿舎が並ぶ。

帝国風の天幕じゃなくて、まあ普通の小屋が並んでいるわね。

居住区の真ん中はなにもない、広場。

広場を囲む小屋が隙間なくならび、街道から見た壁を造る。

だから、中に入るまで見えなかった。

だから見ちゃった

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それは、帝国のせいじゃない、けど。

帝国が管理していた時、青龍が来る前の居住区。

宿舎は区画の真ん中から並んでいた、って聞いた。

広い間隔を空けて、見張りやすいように。

当然、街道からも見通せるように。

今はまるで逆。

内側からむみる外周側の宿舎には、それなりに隙間がある。

隙間っていうより、窓や戸口があるわけだけど。

でも街道側、居住区を外から見れば隙間なく囲われている、みたい。

あたしたちは見ていないけれど、まるで領民たちを立てこもらせるような造り。

まるで居住区を城館のように、とばかりに整えさせたのは、青龍。

帝国軍を降伏させ、領民たちを従えて、最初に命じた作業。

居住区中央の宿舎を解体させて、外周に移させた。

小屋も竈も蔵も、何もかも外周へ外周へ。

急かしもしない、でも、のんびりともさせない。

隙間なく、頑丈に、囲いのように。

そして居住区中央に広い場所をあけさせた、ら、間を空けずにそこを耕させる。

あらゆる工具を使い、農具まで造らせ、交代で休ませながら作業は止めない。

元々がこの居住区全体が聖都の外周で、大都市を支える豊かな農地だった。あたしの記憶では何ひとつ追えないほどに様変わりしてしまったけれど。

帝国軍による十年間の攻囲戦、行き来する隊列・ゴーレム・土竜。

最盛期は十万を越える軍兵に、畑も森も踏み固められた。

聖都陥落後は、聖都破却の作業場扱い。

百年以上続いた耕地が、十年以上かけて荒野に変えられてしまった。

それを耕したからといって、収穫が上がる訳がない。

肥沃な土地を、ただ耕したら芽が出て育ち実りの秋

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ありえない。

素人のあたしにだって、判る。

そしてそれは、青龍も承知の上。

耕すことを命じたのは、収穫を狙っているわけじゃない。

それくらい、青龍を知れば、あたしにも解る。

まあ、そもそも税をとる意識がないものね、青龍は。

青龍の貴族が言っていた。

百万近くいて、今も数十万が居る領民たち。

彼等に耕させる目的。

目的を与えることが目的

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・民に。

耕して肥料を鋤き込む。

それ自体は無意味ではない、みたい。

青龍がそう言うんだから、そうなんでしょうね。

何年か何年か、いつか畑は、蘇る。

作業自体は、徴収領民の大半、農民たちには慣れたこと。

それを収穫するのが自分たちではないにせよ、意義は全員が理解できる。

ここには豊かな農地が蘇るでしょうね。

農民たちがすべて出身地に帰った後。

十年、二十年経てば、あたしが覚えている風景が見られるのかも。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ただし例によって、青龍はその耕地を利用しない。

当然、不必要な労役をさせれば、その分物資が減る。

働く人間は働かないそれより、よく食べるし怪我もすれば病気にもなる。

ソレに与える物資は、帝国軍が蓄積してあった遺棄された兵糧、他。

別に青龍の腹が痛むわけでもないけれど。

戦利品が減るのは確かなわけで。

いつもながら常識外

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いくら領民を働かせ続けるため、っていってもねえ？

無意味で役に立たねども、何かに励ませる。

無駄と浪費を続けていないと、誰しも誰もが皆狂う。

ソレを徒労と言い聞かせねば、皆が勝手に意義を見る。

彼は、そんなことを言っていた。

青龍の貴族、だけじゃなくて、僧侶も騎士も、みな同じことを答える。

青龍の帝国は、よほど豊かな土地みたい。

何世代も何世代も、外と関わらなくとも、青龍の世界の内側だけで暮らしていけるって。

それも、農民が十人に一人、土地も狭いと言い切ってるのに。

狭い場所からたくさん収穫が上がる奇跡？

それとも、青龍にとって狭いだけ？

――――――――――龍の狭さなんか、あたしに理解できやしないけれど

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つれていって、くれる、わよね？

【国際連合呼称地域名「聖都」/第１３集積地/領民集積区画】

俺は何事も起こらない、起こっていない、起こってたまるか！

書類上何一つ問題が起こっていない、居住区を一瞥してるふり。

帝国軍によって段取りはついているといえるだろう。

その段取りの最初の一歩が大変残念だったが。

ファーストコンタクトが最悪だが幸い、あちら側から見えたのは俺ぐらいだと断言できる。

あちら。

虐待されている方々。

太守府農民御一行。

こちら。

虐待している我々。

国連軍とその協力者。

間。

帝国軍捕虜鵜。

つまりは俺たちの代理人。

背が高くて横幅が広くて緻密な隊列をこしらえてくださる、ナイスガイ。

つまり人間の壁。

背丈からすればエルフっ子は視界の中に居ただろうが、礼儀に基づく配慮とういうことにする皆さんの条件反射により、俺の側にいる女の子にあえて目を向ける領民はいないようだ。

エルフっ子は常に俺の背中にくっついている。

長身ではあるが、俺よりは低い。

俺の肩に顎を乗せて、おぶさるように前を見ていたが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・領民諸氏にはすぐに座ってもらったし、あまり見えなかったんじゃないかな？

おぶさってきたと思ったら、慌てて離れようとしました。

離れた、と言っても過言ではありません。

押し付けられていた大変人目を惹く重量感溢れる離れたことが大変残念で革鎧ごしなのに存在感が半端なかった双球。

今この時もその先端が、俺の背中に突き刺さっているのですが、印象的に。

いえ、喜んでいません。

普段のスキンシップがアレなので、鎧越しでは喜びが小さい性質になりました。

エルフっ子が成長期を終えているとかで、今後千年経っても見た目高校生くらいから一歩も成長しない、というのが残念でなりません。

というのは関係ない。

雑念退散。

離れてくれて、半歩下がってくれて、よかったよかった。

嘘じゃありません。

シスターズの小さい二人は小さいから、人垣にさえぎられている。

もともと徴集農民の視界に入っちゃいない。

しかも、立ち位置が基本的に、俺の足元。

俺の制服の裾をつまんで、ちょこちょことついてくる。

魔女っ子は人見知りの恥ずかしがり。

魔法使いローブはフード付きで、しっかりそれをかぶっている。

ここまでの道々で、魔法使いに対する帝国軍の礼を繰り返された。

だから余計にひっこんだ。

お嬢は存在感が半端ない上に押し出しが強い。

んが。

装飾過剰、いや似合っているけれど、なフリルに埋もれがち。

しかもそろそろ陽ざしが強くなったから、とかで外出時や車外では、羽根飾りをあしらった帽子をかぶっている。

まずもって人の視線は羽飾りに向くだろう。

ちびっこ二人、人垣の隙間から視線が通過することがあったとしても、印象付けられることはないといえる。

よって、シスターズ三人に関しては大丈夫。

だろう。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌは？

初見虐殺が異世界デフォルト設定されている、ハーフエルフ。

これに悪意とか向けられたら最悪のさらに先があったぜ！

・・・・・・・・・・・・・って事になりかねない。

しかも美少女ぞろいってことは、人目を引くということ。まあ、ハーフエルフで美がつかないなんてことはないらしいが、原因より結果だよ結果。

だからこそ、国連軍の、というより陸上自衛隊の野戦服を着せたのだ。

軍政部隊兵士の様にプロテクターは装備させていない。

んが、この世界では目立つハズ。

ダメ押しに、国連印のブルーヘルメットを被らせて、耳と髪を隠している。

国連軍のコーカソイド兵士のように見えないことも無いかと言えば、何処からどう見てもミリタリーコスプレですありがとうございました。

だが、そこはそれ、地球人の、とりわけ日本人の見方だ。

日ごろからその手のコスプレに悩まされている職業病かもしれないが。

異世界からはそれらしく見える。

彼女たちが言う青龍の騎士に見える、とエルフっ子チェック済み。

ハーフエルフに見えなければ、とりあえず第一印象は誤魔化せるだろう。

演出としてはシスターズの好感度を稼いだ後で、タイミングを見てＣｏｌｏｒｆｕｌを紹介。

国連軍のブルーと関連付けさせることでヘイトを防ぎつつ、異世界内での好感度を稼げれば

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・という企画だったのだが。

こんな形で役に立つとはね。

五人とも背丈は人並み、コーカソイドの平均だから日本人よりやや高い。

とはいえ、概ね一歩後ろにいるから見えないだろうし大丈夫。

大丈夫じゃなくても、地球人に見えるから大丈夫。

ここにきて一層確信した。

異世界における、俺たち地球人の立ち位置。

異世界の皆さんが反射的に視線真下になるくらい。

好かれなくても襲われまい。

うん。

よし。

シスターズ＆Ｃｏｌｏｒｆｕｌはカバーできたな。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つまり徴集農民の皆さんの嫌悪と恐怖と忌避感は、俺だけに集中したと言い切れる。

やったぜ！

異世界に友達ができないことが確定したよ？

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・仕切り直しだ、仕切り直し。

今日は、帝国軍曰く、平仮名表記っぽい、さんぷる、百人ぐらいとの対面。

魔女っ子たちのアピールは、もっと広く大勢の、太守領の徴集農民を集めたところで行おう。

ざっと十万人近くいるはずだしな。

ある意味で、俺に悪感情が集まるのは好都合かもしれない。

善い警官/悪い警官、などの基本的な印象操作戦術を当てはめられるからだ。

俺が脅して、魔女っ子以下シスターズがとりなす。

そうすれば太守領農民の少なくない数が、シスターズ＆Ｃｏｌｏｒｆｕｌに好意を持ってくれるはず。

少なくとも嫌われないはず。

だといいなあ。

三佐だったら、悪感情を抱いた可能性のある人間を全パージ。

最初からやり直し！

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・真似できんわ。

いや、いけるいける。

虐殺じゃなくて、印象操作のほうだよ？

イケるのは。

そうなればしめたモノ。

魔女っ子たちに助けられたと感謝溢れる農民諸氏。

そんな十万人を太守領の農村へ帰還させれば、邦の隅々にまで好印象が浸透する。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌもついでに、ハーフエルフ差別の例外になれるかもしれない。

ハーフエルフ差別がなくなるとは思わないけれど。

悪目立ち？

冒険は避けるべきか？

要検討。

目の前の反応を見つつ柔軟に。

そこは、まあ、なんとか俺が。

かくして。

魔女っ子たちも故郷で穏やかに暮らすという選択肢を選べるようになるだろう。

まあ、生まれ育ったところで、ずっと暮さなきゃいけない理由もないけどね。

異世界ではそれがスタンダートでも。

この子たちの時代では、たぶん変わる。

何処でだって、生きていけるようになる。

そのうちに日本にだって行けるようになる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺は太守領に二度と近づけなくなるだろうが、まあ、今さらだし。

ブルーベレーだからね。

異世界で帝国と一・二を争うくらい嫌われてる侵略者兼虐殺者の国連軍だからね。

別に寂しくありません。

きっと、目の前の帝国将官と、戦後再会の式典とかしちゃうんだろうな。

【聖都/内陸側/白骨街道/徴集農民居住地/青龍の貴族左後ろ】

なにがなんだか、わかりません。

わたしだけじゃ、ないとおもいます。

だいぶ離れた、人垣の向こう側。

見えないけれど聴こえます。

聞き慣れない言葉。

わたしは、わたしたちは、ご主人様、青龍の皆さんの言葉はわかります。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・後は、産まれた邦の言葉と帝国公用語しか判りません。

青龍の騎士さまたちの、向こう。

帝国軍隊列の、さらに向こう。

大勢の人たちが集まっているみたいですね。

どこの邦の方々でしょうか？