表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第六章「南伐」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

227/1003

服従と抵抗の損益計算

『パージ』:国際連合/国際連合軍直接管理下の異世界人に対する集団処方の一つ。作戦資料、さらに世界解析資料、ゆくゆくはプランB/Cの素材として、多数の異世界人が地球側に管理されている。軍政統治方式、収容所方式、居留地方式などなど形式は目的により様々。ただ、どの形式においても「総体」として試料を確保し続ける為に、必要に応じて整理する方法が用意されている。その発動はおおむねふたつの方法に大別され、コマンド/オートと呼称する。コマンドは現地指揮官、並びに対象エリアに立ち入る部隊の最上位指揮官による。オートは哨戒気球の情報に基づき、動体の動向や熱源の生滅などの、一定の条件を満たすと発動する。



私は平和主義者です。


私は戦争を否定します。

私は殺人を否定します。

私は破壊を否定します。


私は問われます。


「他国に攻め込まれたらどうするのか?戦わないで済むと思っているのか?」



さて、多くの人々は何と答えるでしょうか?


仮定の問題に答えられない、とか。

それはこれからも考え続けます、とか。

攻め込まれないようにするのが先決だ、とか。



全くその通り。


「なったたらどうする」など意味を成しません。

「ならなかったらどうする」と返されたら終わりです。

平行線になるような問いかけは問とはなりえません。


答えが明瞭な問題ばかりではありません。

ある答えが別な疑問を招くことなど、良くあることです。

全てに答えが出るまで何も決められないのならば、人は何もできないでしょう。


最悪の事態に備えるよりも、最悪の事態を回避すべきだ。


これほど明確な正論は在りません。

医療保険に入る前に生活を見直しましょう。

火災保険に入る前に防火の備えをしましょう。

殺されることにおびえる前に、皆と仲良くしましょう。



しかし、私の答えは違います。


戦争になったらどうするのか?

他国に攻め込まれたらどうするのか?

おまえは大切な誰かを守るために戦わないのか?


「大切な誰かを守るため、そのために降伏します」


これが私の答えです。


唖然とする方。

呆れる方。

嗤う方。



少しお時間をいただきたい。



戦わなければ守れないのですか?

戦えば守れるのですか?

確かめましたか?


ココは東京です。

周りを見回してください。


平和ですね?

豊かですね?

幸せですね?


私は心からこの日本を愛します。



これは、戦わなかった結果です。

強大な米国に、抵抗するのをあきらめて、降伏した結果です。


屈辱があり、犠牲があり、理不尽に蹂躙された同朋が居るでしょう。

それは戦った時の方がひどかった。


全てを望むことができないなら、よりマシな方を選ぶべき。

歴史的事実をもとに、私はそう考えます。


だからこそ、私は強く主張します。


戦争は悪です。

既に犠牲になった方々、国連特使のみなさん、地球異世界の兵士のみなさん、巻き込まれた異世界住民のみなさん。


心からお悔やみ申し上げます。

だからこそ、申し上げます。


異世界での戦争を即刻中止すべきです!



〈日比谷公園反戦集会記録映像〉

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――『独創的だな』『もっと単純でもいいんじゃないか』『哀れな原始人をイジメるのは良くない』『それで十分だろう』『人権ネタはマズい』『異世界人に人権を!』『などと叫ばれたら厄介だ』『だからこれぐらいでちょうどいい』『ま、思想的に面白くはある』『与党には頭が痛いんじゃないか』『支持層に反戦団体が多いからな』『戦争を始めて推進しているのは議員どもなのに』『もっと露出を増やそう』『あれを?』『あれを』『顔もいい』『警察に洗わせた』『経歴もきれいだ』『画面映えもする』『話してる内容なんて誰も理解しやしない』『それっぽく聞こえるのはプラスだ』『今日も取材は集めてあるな』『一局一社残らず来させました』『報道させる』『各社にプロジェクトを組ませろ』『夏の選挙に向けて』『和平会議に向けて世論を盛り上げるんだ』『事後、植民地省のイメージキャラクターにでもしてやろう』



《東京都新宿区若松町19-1総務省第2庁舎別館/大会議室音声記録》





【国際連合呼称地域名「聖都」/第13集積地/領民集積区画】


俺は背後のエルフっ子、両脇のちびっこたちを意識する。

ガスマスクがこの子達の為にある、と言ったら大げさか。


最悪の場合。

それは、この子達を守れない、ということじゃない。

それは守れて当たり前。


その点、誰も疑問には思っていない。



自動機銃やランクル、なにより軍政部隊の兵力で対処できない場合。


例えば、難民化しかねない徴集農民数千人に取り囲まれたら?

例えば、帝国軍捕虜が護衛として近接している時に一斉蜂起したら?

例えば、長期間支配被支配の関係にあった帝国軍捕虜と徴集農民たちが共同作戦に出たら?


それは普通に起こり得ることだ。

帝国軍の残党が、大規模な帝国軍捕虜と連絡を取り合うのは自然。


占領下の住民を先導するなんぞ、基本中の基本。

タイミングによっては、火力で対処しきれない一瞬が生まれるかもしれない


防ぐ方法はない。



では、そうなったら困るかと言えば、別に困らない。

国連軍は、ね。


例えばここ、第13集積地。

ここでそうなったら、どうする?


塩素ガスを散布するだけだ。

それが最悪の場合。


俺たちは十秒以内にガスマスクを装着。

フェイスカバー状態の兵士なら三秒。



これはチェックの時間も含めて、だ。

ほぼ同時に俺たちを中心に塩素ガスが立ち込めている。



呼吸器系のガスだけに装面マスクひとつで防げる。

シスターズもColorfulも、肌の露出は少ない。


魔女っ子は厚手の長いローブ、その下は乗馬ズボンとシャツ。

お嬢はドレスのままだが、ドロワーズにストッキング。

エルフっ子は全身を覆う革鎧。

Colorfulは今回だけは、野戦戦闘服を着せている。

コスプレにしか見えんが。



もちろん、肌と髪に悪い塩素ガス。


散布から5分以内に除染洗浄施設の中に放り込まれる算段ができている。女の子たちの着衣を引ん剝く女性自衛官と女性軍医までそろっている。


抜かりなく確認済み。


少し時間をとって、女性自衛官と女性軍医と、お話ししたのは決してナンパではない。

事前準備を確認するのは野戦指揮官として当然なんであり、おれが野戦指揮官というには微妙ではあるが、あらゆる布石を惜しまないとだけ言っておこう。



いや、即決するもんじゃないよ?

広く薄く布石を打ち、蓄積された成果を一気に回収するっていうかね?

身近な同僚には決して手を出さないのはお約束だよね?


誰でもいいとは言わないが、このひとしかいないんだ!っなんて狙いを定めるのは童貞の

・・・・・・・・・・・・もとい。



彼女たち、親愛なる別部署の女性同僚一同からは、いろいろと興味深い話を聴けました。

女性とばかり話したのは、うちの子たちを女性以外にゆだねることがあり得ないからですのでお間違えなく。



今日の日の為に、現地中世風装束の脱がせ方まで研究済みだとか。

ほんと、すいません。

ちなみに、その脱がせ方というのは専用ナイフで衣裳をバラすのだとか。

何を練習したんだ。



医療用の通常装備?

肌を傷つけずに解体する方法?


アリと言えばアリですが、お嬢の服って高いんですが。

いえ、肌と髪が一番高いと承知しておりますとも。


値段がつかない、っていうと把握しにくくなって陳腐なので、最高値ってことで。


しかしもちろん、方法はある。

パッと見、装飾から生まれた装飾の化身のような、フリフリ人形ドレス。

しかも、12歳児が入ってるんだからどうやって着替えさせてるんだと不思議に思う。


でもまあ、服というのは日用品。

特に、お嬢が着ているのはどんなに凝って見えても、パーティー用じゃない。

21世紀現代日本人から見れば舞踏会用にしか見えないが。

普段着なんだそうです。

お嬢の中では。



それこそ人形用でもなければ着脱のことは当然考えて作られているわけで。女官やお手伝いさんがいないと着脱できないなんて、リアルにはあり得ない。


例外はあるけどね。

お嬢も、園遊会の時はそういう着脱困難なドレスを着る時もなくはない、とか。


家の者の目を離れているときに貞操を守るために必須とかなんとか

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そこかよ!!!!!!!!!


基本的にキリスト教の影響がない異世界では、処女信仰はない。

特権階級と、富裕層だけは氏族/血族を中心にしているので出生管理の考え方が強い。

処女性は重視されないけどね。


むしろ、軽視?


そういう意味では、江戸時代に日本と似ている。


庶民レベルでは基本雑婚。

子供は村のもの町のもの。


父親母親の明確な役目などなく、養うのも躾けるのも見捨てるのも、すべて地域で担っていく。


そも、血統なんかどうでもいい。

庶民は、生活上に必要なのは居住地域の労働人口。

それを維持するためなら子供を買ってきたり、もらってきたりもする。

捨てたり売ったりもするが。



一方、人口の一割前後の例外。

武士階級や富裕層では子持ち寡婦が優遇された。


血統集団が組織の基本であれば、子供が作れる、ということが集団の構成要素になる。

まあ、養子なんかも普通以上に盛んだったので、推奨要素というべきか。


生殖医療なんかないし、現代のような様々な検査技術もない。

ゆえに、出産経験がある女性はお墨付き。

それでできなきゃ男側の原因。


と、まあ、おおざっぱな切り分けができるからだ。



そもそも出生に伴う母体のリスクは高い。

江戸時代なら公衆衛生の習慣が浸透していただけに、同時代の欧州よりははるかにマシだろう。

が、子供一人生むのが命がけであることは間違いない。


だからこそ、子供を産んだことがあるお墨付きの女性が重視されるわけで。

そして、出来れば優秀な母体が良くて、ほかの氏族とかかわっていないとさらに良い。

だから、子持ちの、縁切り確認済みの、寡婦が理想的となる。



もっとも、江戸期日本だけでもなく、欧州でも支配者は氏族血族体制。

教会の横やりに苦しみながらも、本音はそんなところだったのではないかと思うが。

家臣の妻を召し上げる王とか、妻を献上する臣下の話はありふれている。

ふつうに、そういう女性が王妃になったりする。


それはそういうこと。


悪名として末永く語り継がれる例が多い、全てではないところに本音が出ているが、のは教会の都合。

キリスト教教会各派にすれば、結婚制度を維持できなければ支配階級(氏族血族)への介入権を失う。権力者を制御できなければ、存亡にかかわる。


となれば、必死にネガティブキャンペーンだってうつ。



まあ、そんな大人の都合が存在しない、別な都合で生きている異世界。

倫理でも道徳でも何でもいいが、ルールや習慣の成り立ちは別な経緯で別な形をとる。



ただ、異世界では人間以外の種族もいるからね。

みんながみんな、純潔にこだわらないわけじゃない。

個々人の趣味は別にして。



エルフっ子、つまりエルフは小規模の家族主義。

検証中ではあるが、ほぼ生涯を特定の相手と過ごす。


受胎能力のピークで老化が止まり、出産は通年で可能で、妊娠期間は人間と変わらない、で不老長寿。

不死の可能性については、これまた議論中。


千年間、同一個体の生存を確認すれば不死認定、とか。

産まれると同時にLongplayer(演奏時間千年の曲)を流し始めるのかな?


五千年は欲しい、とか、人類の滅亡までは、とかいろいろ検証手段が議論されているが。エルフ保護法案を、エルフの寿命有無確認のために創るべきという議員の意見はどこに行こうとしているのやら。



そんなエルフが異世界を満たしていない理由。

日本列島では仮説が仮説を生んで、学者やマニアやエルフ信者が怒突きあい中。

そんな中で、こんな一文があった。


「世界を満たさないようになっている」


かも知れない。

エルフとういう種族が惑星の生態系を覆さないように、仕掛けがついているのかもしれない。


故にこそ、エルフはそうあるのかも。



たった一人の相手に対する執着。

男も女も純潔主義。

低い出生率。



まあ、興味は尽きないが、俺にとっては老後の暇つぶしネタ。

かんけーないかんけーない。


要は、うちの子供らの話。


シスターズ三姉妹。

義姉妹の盃を交わした三人組。


その長女長姉オカン代行がエルフっ子。

お嬢と魔女っ子にとっては、憧れの星。

故に見習う真似をする。


この子らの恋愛観が一見して現代日本風味なのは、その影響なんだろう。

元々上流階級で異性関係の管理を見聞きして育っている最中に、エルフの純血主義をチャージされたわけで。


おかげで乙女チック・パラノイアのマメシバ三尉と話が合うようだ。

よその家族の話とはいえ、それはどうかと思いますが。



いえいえ、異性関係に自制的、ってのは別にいい。

大人になってからのことを考えれば、リスクの最小化は基本基本。

妊産婦の死亡率が高い世界だからね。


十年後に、この子たちの訃報なんて聞きたくないしな。

国連が異世界に、どの程度の地球医学を持ち込むつもりかわからんし。




ま、そんなわけ。

俺の周りにいるときのお嬢や魔女っ子は、家の者と一緒にいるときと同じ態勢。

脱ぎ着しやすい普段着を着ているわけだ。


バラさなくても脱がせることができる。


普段着と言っても、デザイン的にはお嬢の趣味でごってごて。

一人着脱困難な社交着と変わらんような気がするが。


いや俺の視線だと、どちらもフリルが多いな~、ってことで似た様なモノかと。



そこで、雑談ついで。

俺は久方振りの女性自衛官の皆さんに、言ったのだ。


リボンや紐のところを数か所引くだけで、あとは力まかせに剥けるんですよ?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんか、変な目で見られました。


お嬢とマメシバ三尉に教えられたんですが。

緊急時の応急処置とか、する機会が無いとは言えないからとかなんとか。


そんな黒歴史(30分前)は忘れよう。



ま、緊急事態で即対処すべきなのはシスターズ&Colorfulだけ。

俺たちはゆっくりで構わない。


別に今回に限らないが。


塩素ガスは大気より重く、拡散しにくい。

催涙ガスと違って致死性、即効性があり敵を確実に無力化する。

しかも皮膚浸透性が主流の現代ガスと違って、扱いやすい。


ガスが使いにくい時、風が強かったり、大雨だったり、そんな時はそもそも領民たちに近づかないしね。




いざ、その時が来れば。

ココではガスには無着色で、視界を塞ぐことも無い。


つまり、作戦行動がしやすい。

兵士たちはガスの影響を受けずにM-14を撃ち、銃剣で障害物を排除しながら脱出路を、文字通り切り開ける。


ほーら、問題ない。

じゃあ、何が最悪なんだって?


最低でも数百人がのたうち回って死ぬ光景が見えてしまう。

よーく、ね。


俺はいいよ、俺は。

いや、よくないけど。

教育に。



本来であれば、それも作戦の一部。


仮に。

死ななかった者を生かしておいた場合。

あるいは。

死ななかった者を残さず掃討する場合。


生き延びようとする意志をくじいて、あらゆる処分に従属させるため。



な?


最悪だろう。




【聖都/内陸側/白骨街道/徴集農民居住地/青龍の貴族背後】


あたしたちは、また黄色い光を抜けた。


おふぇんす・ぞーんから、領民たちの居住地に移ったということ。

聖都に来る前に、集積地の区割りは説明された。



聖都に来る前。

港街で準備をしている時。

青龍の騎士、彼らの軍議に同席したのだ。


その時。

あたしは青龍の女将軍、マメシバ卿と一緒。

妹たちは青龍の貴族と一緒。


港街の有力者に命令する青龍の貴族。

有力者たちが勘違いして、港街が滅ぼされないようにするのが、妹たち。


ま、いつものことね。

有力者相手は、あたしじゃ役にたたないから。


別行動が面白くない、って言えばその通り。


あの娘たちと離れるのはどうしても心配だし、それに青龍の貴族と離れて楽しいわけがない。

でも、役目を期待されているのが嬉しいのも確か。


青龍の騎士たちと歩調を合わせる、なーんて、たしかに、あたしにしかできないわよね。必要とされたい場面じゃないけれど、自分だけにまかされる、期待されるというのは悪くない。



その時。

あたしを使おうとするとき。


青龍の貴族、その秤を見るような眼。

少なくとも、その時だけは、あたしだけを見ている。

と、あたしは勝手にそう思う。



そして聖都に来た。

今は、その時に説明された居住地、その一つ。


一つの区割りの中に、一万前後の徴集領民が暮らしている。

帝国の施設だったころは、居住地から毎朝、聖都周りの解体作業場所に通っていた。

もちろん逃亡は厳禁、帝国兵士の監視見回り付き。


ただし、今みたいに完全に閉じこめられてはいなかった。


居住地同士の交流は、帝国が黙認する範囲でほどほどに。

徴集領民を狙った商人も集まった。

商人たちは今も居る、むしろ青龍が管理するようになってからの方が増えたみたい。

ただし、青龍が来てから徴集領民は、ほぼ完全に居住地から出入り禁止。


十分な広さがあるとはいえ、閉塞感はたまらないでしょうね。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ