無名戦士
登場人物&設定
※必要のない方は読み飛ばしてください
※すでに描写されている範囲で簡単に記述します
※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします
一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。
次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。
以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。
(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)
【登場人物/一人称】
『俺』
地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿》
現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様/我が君》
?歳/男性
:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。軍政官なのでいつも陸上自衛隊制服(常服)着用。元々訓練以外で戦闘服を着たことがない。
『あたし』
地球側呼称《エルフっ子》
現地側呼称《ねえ様》
256歳/女性
:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。姉貴分。ロングストレートなシルバーブロンドに緑の瞳。長身(数値不明)。革を主体とした騎士服にブーツに剣が常備。
おめでとう!
皆が言うだろう。
誰もが思うだろう。
歴史に残るだろうな。
貴様の娘も、よりつかない妻も、親兄弟もみんながな。
貴様は生まれてくるべきじゃなかった!!!!!
――――――――――市警本部長に市長がつたえた、最期の言葉。
恐慌時代の合衆国。
最低賃金以下の生活に困窮した警察官たちが、待遇改善を陳情。
数年かけた運動の果てに、市当局との交渉が開始。
金のない市政府と、義務だけで堪える警官たち。
苦境であっても、希望があれば耐えられる。
互いにできること、僅かでも約束だけではなく、実行を。
直後、市警本部長が交代。
資産溢れる名家に生まれ、高い教育を受け、市長や議員に検事と、無数の要職を一通り経験した人物。
交渉が白紙に戻される。
「市民への奉仕は神聖不可侵な義務である。要求とは脅迫であり、不満はコミュニズムにほかならない」
とした本部長は警察官たちの代表を処分。
警官たちは組合結成とストライキ準備へと走る。
憂慮した市長が第三者的な地元有力者を巻き込んで、調停案を作成。
根回しを重ね、待遇改善に至る財源試案を含んだロードマップを発表。
多くの市民が喝采し、警官たちは感謝を表明し、混乱に便乗しようとしていたアナーキストを失望させた。市の外でさえ誰もが称賛し、市議会と市長は有力者を持ち上げて金を調達する。
直後。
市警本部長は警官たちの中心人物を全員、懲戒解雇。
武装した失業者で準警察隊を編成。
警察官はストライキに突入。
都市と周辺の管轄地域は無政府状態になる。
市長は対策に奔走中、コミュニストに暗殺され歴代最低の無能とよばれた。
大火災が起こり、テロと略奪が横行し、自警団同士と準警察隊が殺し合う。軍が動員され戒厳令が敷かれ、徹底的な弾圧が行われるまで事態は収束しなかった。
市警本部長は?
なにを、という証言はだれもしない。
誰もが奔走していたからだ。
なぜ、という記録は残っていない。
誰も聞かなかったからだ。
手遅れになる前は、皆が彼を、おだててあやして誘導した。
手遅れになった後は、皆が彼を、聴かず訪ねず気づかなかった。
なお、彼は死ぬまで市警本部長だった。
暴動最中に市警本部に居続けた彼を、誰も解任しなかったからだ。
市長が決まり、市警本部長が選ばれ、再建がはじまり、何十年経っても。
特別な人間と認められたい。
そう、ずっと、ずっと、生涯、絶え間なく望み続けていた市警本部長は老衰により死去。
誰も殺しに来てくれなかったから。
※based on a true story.
【大陸北東部/「聖都」/港/青龍の貴族の右斜め後ろ】
あたしたちの前に表れたのは、三騎の帝国騎士。
瞳は赤くない
――――――――――偽装でもない。
魔法使いはいない、か。
騎士服が将、よね。
甲冑二人は面貌を外してる。
将を守る姿勢はあるけど、戦場って感じ、じゃないわ。
「よくきたな」
騎士服が青龍の貴族に声をかけた
――――――――――馬上から!!!!!!!!!!
【異世界大陸北東部/国際連合呼称地域名「聖都」/第13集積地/港湾地区ヘリポート】
俺が今いる、異世界大陸東北部。
まあ、太守領だって広く言えば東北部だけどね。その太守領の太守府から、ほぼ直線で千kmくらい南がここ。
ここに戦火が及んだのは、比較的後のことだった。
戦火というのは、帝国の征服戦争のことではない。それも最後に回って来たが、昨年末に終わったからだ。だがこの世界には、まるで入れ替わるように戦火が及んだ。
それは日本列島の異世界転移。
ほんとーに――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――すいません、悪気は無かったんです。
俺の選んだ代表たちが、あんなにアグレッシブだとは露知らず。
それはそれとして。
だからこの地、聖都にも再び戦火が回って来た。
二週目である。
二巡目か?
今度の順番は最後ではなかった。
俺たちの戦争はこれからだ!!!!!!!!!!!!!
次回作戦にご期待ください。
だが、最初でもなかった。
つまりは戦火を付けたうえで異世界全体に広げて回っている国連軍、聖都はその進撃路ではなかったからだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんか、俺たちって、異世界から現れた魔王っぽくない?
気のせい?
あ、気のせいですかそうですか。いえいえいえいえいえいえいえいえいええい、日本国憲法に忠実な自衛隊員が国権の最高機関の衆参両院決議に逆らうわけがないじゃないですか。
・・・・・・・・・・・・・・批判はしますが。
国民(俺)の大切な大切な大切な権利が護られ、義務と引き換えだ、などという義務教育をコンプできずに卒業させられた間抜けがバカを言い出さない限り、テロに走ったりはイタシマセン。
え?
うん。
クーデターは無理。
そんな伝手はないんで。
で、ここをスルーしている国連軍の進撃路。
国連軍はもっと南、大陸南北の中央部を貫いた。
中央にある、内海と大河どちらにもとれる、巨大な水上交通線。
なんで水深やら水流やらを把握してたんでしょーね~~~~~~~~~~?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シーウルフが開戦1ヶ月以上前から侵入してたんだろうな、と。
なんか、転移時点で日本近海をうろうろしていたらしい。
海自の潜水艦隊も動員はされたのだろうが。
大変残念なファーストコンタクトを理由に、その当日中に、かってに知ったる異世界内海/大河、そこをを突き進む国連軍。
その河口都市に合衆国海兵第三軍が上陸。合衆国第七艦隊が内海/大河を遡上。陸上自衛隊が沿岸/河岸の要所々を占領、破却して進軍。
この後、帝国軍主力との一度目の会戦が起きるのだが、どーでもいい。
いま肝心の聖都周辺は、単なる沿岸地帯の一部。
国連軍はそう考えていた。
だから、占領も破却も行われない。
海上自衛隊護衛艦隊、その封鎖線圏内とみなされただけ。
まあ聖都近辺海域だけではなく、異世界大陸の東側外洋が封鎖対象。
ありとあらゆる海上物体が、国連軍やWHOに無差別攻撃されたのだが。
いや過去形じゃない
――――――――――――――――――――――――――――――まだ続いている。
機雷や航空哨戒は今この瞬間も基本、無差別だ。
異世界の海上物体は帆船、内海/大河ではガレー船もある。
みなレーダーに映りにくい木造船。
封鎖するのはユーラシア大陸の東側相当の長大な海岸線。
戦力は海上自衛隊
――――――――――無理、って思うじゃん?
簡単だよ(笑)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・笑われました。
海自のヤツに。
いつか思い知らせてやる!!!!!!!!!!
戦争は歩兵がするんだってな!!!!!!!!!!
死体を死亡確認するだけの簡単なお仕事??????????
死体の破片を銃剣で突き刺して、グルグルグルグル、隙間なくまわるのは大変なんだぞ??????????
1日あたりの遠大な歩行数を万歩計で証明してやるさ!!!!!!!!!!
ね
――――――――――曹長?
もちろん兵站将校が一番偉い、なーんて爆笑トークはしないよ?
ファンタジーのせいか、兵站万能病が好事家の間に定着したようだが
――――――――――――――――――――俺、職業人なんで。
万全の補給を整えてから戦う
――――――――――――――――――――ふぁんたじー♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
実社会で万全なんてことが、起こると思うなよ。
とりわけ殺し合いではな。
こちらが整えれば、あちらも整える。
こちらが増えれば、あちらも増える。
こちらが耐えれば、あちらは決断
――――――――――――――――――――――――――――――先手を取られたら?
補給を続け、補充を続け、相手を上回って万全になってから戦闘開始
――――――――――――――――――――ゲーム脳だな。
補給を続ける間も、物質は減る。
事故や病気や疲労で、戦わなくても戦力は減る。
相手の戦力は判らない。
味方の戦力も解らない。
え?
味方は判るだろうって?
サボタージュも虚偽報告も誤認誤解も無いのはゲームだけ。
そして世界は目の前以外に広がっていて、知りも知らない事情に振り回される。
兵法の基本?
敵を知り己を知らば百戦危うからず。
歴史上、危うくない戦いがあったかな?
笑っちゃうぞ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・不可能ゆえに、基本なんだ、よ!
先手の利は、その中で唯一選べるカード。
だから多くの戦場で、指揮官たちが味方の虚構と敵の影、にらめっこして札を切ってきた。
何が起きるか判らない、何かが起きると知っている。
その優位
――――――――――――――――――――だけに、賭ける。
そんな中、兵站の、兵站将校の役割なんぞ、一番気楽な傍観者。
だからこそ、俺はこの仕事を選んだのだ。
なのに、笑われた
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だから、か?
しかも、懇切丁寧に説明された。
質問したの俺だけど。
奢られた分だけ返したげる、とかなんとか
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、そーいう礼はいらん。
貸しをキープしたまま機会を狙っていたというのに!!!!!!!!!!
しかも、太守領に左遷される前
――――――――――俺、前線から帰ったら、って死亡フラグ?――――――――――
最後まで聴いたのも俺だけど。
教訓。
本来の目的を忘れて雑学に食いつくなかれ。
さて置き、そいつが言う、異世界海上封鎖
――――――――――そもそもが木造船だからレーダーに映らない、訳じゃない
――――――――――――――――――――――――――――――映る。
だから従来の索敵システムは、精度が下がっても有効だ。
さらに導入された目視確認。
これだけでもかなりの範囲をカバー出来る。
目視というと人間の目を連想する、よね?
だが、人間をそこまで割く必要はない。
ここでも高々度哨戒気球は大活躍。無人の広角カメラが、絶え間なく見張っている。単純明快で汎用性に富んだ、コストパフォーマンス最高の哨戒網。
でも、海をすべて見張ることは出来ない
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――って思うじゃん?
逆に考えるんだ、とか。
――――――――――すべてを見張る必要はない――――――――――
外洋航海技術(経験?)が確立していない時代の異世界。
基本的に沿岸航海沿岸漁業のみ。
沿岸では海流、水深、岩礁、などなど船が航行出来るルートは限られている。
異世界船舶の基本的な航路を、俺たち地球側は開戦前に把握済み。
船を追尾し、海流を観察し、岩礁を探り出し、干満を計測した
――――――――――今も続いているが。
しかも無理をすれば外洋航海が可能なのは、この時代の技術なら大型帆船のみ。
基本的に俺たちが警戒しているのは、パンデミック。
異世界人に、日本列島へ到着されること。
だから、必須の監視対象は限られる。
大形船舶だ。
それが拠点に出来る、補給補充修理整備が可能な港など、航路以上に限られている。
天気が悪ければ、船は出さない。
船を出せば雲にさえぎられることはほとんどない。
上空から目視カメラで丸見えである。
まあ、普通は出航前日に準備して夜明けから船出。
船を出す前から、いついつに出航するな、と丸わかり。
国連軍の眼をごまかすにはどんな方法があるだろう?
中世の技術では、夜間に出航など不可能だ。
夕方に出航するためには、やはり真昼に準備しなくてはならない。
夕方ならやっぱりわかる。
なんとか暗くなる前に沖に出て座礁海域を逃れても、国連軍の眼から逃れられはしない。
沖合を夜間航行すれば、宇宙からだって判る。
灯りをつけているからだ。
月明かりで繰船などできやしない。沖合の海に無灯火で乗り出せば、船員は空間失調症にかかりかねない。
結局、夜も昼も夕方も、監視の目を逃れる方法はない。
国連軍の眼。
広大な海岸
線の、広大な海の、ごく限られた定点だけを観測する。
機械と判別ソフトウェア、だけが。
人間のダブルチェックはほぼオマケ。
こうして画像解析などを駆使して、海上の動体を特定。
そして帆船は遅い。
風向きは予測可能。
先回りは容易い。
ゆっくり、のんびり、経済的に、掃討機が近づく。
主に飛行艇。
喫水線下に穴を空ければ十分。
対物ライフルか機関砲の単発。
まあ、時間がもったいないし、弾薬は余っているし、さっさと連射するらしい。
火気厳禁なのは、煙で海面を隠さないため。
一人残らず確認するため。
沈みきった海域には、幸か不幸か脱出できた乗船者が浮き沈み。
救命ボートや筏の類は潰して、標的全員半身浴以上を確認。
彼らの周辺三海面に、爆雷投下同時起爆。
水中爆圧の中心にいれば、いろんなモノを吐き出して死ぬ。
沖合とはいっても大陸棚の辺り。
爆圧半径に水中生物もいるのではないだろうか?
ガチンコ漁は、環境によろしくない。
だが、日本の、地球の環境には良い。
日本列島に異世界を触れさせる気はないのだから。
もしも三点同時爆発で死ななければ、そんな耐久力にあふれた個体は回収する。
貴重なサンプルとして
――――――――――未だにそんな例はない。
みな、死亡確認済み。
爆雷投下後、しっかりゆっくり時間をかけて、全滅していることを記録してるからだ。
もちろん、帝国の軍船ならばキチンと対応。
こんなルーチンワークじゃなくて、攻撃機や哨戒機が出る。
やることはあまり変わらない、ガチンコ漁だが。
哨戒気球が事前偵察。
偵察機が高空から詳細確認。
攻撃機が拘束接近し船体を破壊
対潜哨戒機が念入りに爆雷投下を繰り返し。
必要なら海面に燃焼ゲルを散布して着火、広範囲を水面封鎖。
帝国軍ならば飛竜のエスコートや、魔法による艦対空攻撃があり得るからだし、以上に耐久力が高い魔法騎士や獣人などもいるかもしれない。
まあ、海軍という発想がない帝国軍には、輸送船以外の軍船は無いけれど。
内海/大河には軍用、戦闘用のガレー船他があるが
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・陸軍扱い、らしい。
そんなこんなで、開戦から1ヶ月で400隻以上を撃沈。
99%民間船。
1%は、たぶん、軍用。
すでに五月。
開戦から四か月目。
今は、まったく、戦果なし。
最初の半月で、理解を得られたからだ。
異世界のみなさんの、理解。
海に出るな
――――――――――殺す手間をかけさせるな。
今となっては、大型小型を問わず、異世界人は一切海に出ようとしない。
貿易商人は破産しかけ、漁村は疲弊している。
だがそれでも、すぐ死ぬよりはマシ。
軍事参謀委員会は異世界のみんなと分かり合えると信じていたとかなんとか。
異世界側に与えた損害は予想外に少なく、大陸沿岸部を航行していた主要船舶、その1%程度ですんだとかなんとか。
恐怖は高い感染力を持ち、想像力は事実よりも強く人間をねじ伏せる
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・戦争とはコミュニケーションだとかなんとか。
かくして、疎にして洩らさぬ哨戒網。
ここ、聖都も、国連軍が定めた重点監視地点ではあった。
大型の港があったから。
まあ、無駄手間ではあったけれど、こんな大きな港が稼働しないなんて、普通考えない。
巨大な都市の傍らに在る、よく整備された真新しい港。
俺は傍観者として、事態を俯瞰して眺める。
なんか、笑うしかないよね。
【大陸北東部/「聖都」/港/青龍の貴族の右斜め後ろ】
皆、青龍の貴族と帝国騎士を交互に見た。
あたし、妹たち、Colorfulみんな蒼白
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、そうくるんだ。
え、うん、殺しを見たかった訳じゃない、けれど。
――――――――――青龍の貴族は、帝国の将、その言葉にも態度にも、まるで応えない。
無視じゃないわ
――――――――――面白そうに、騎兵たちを眺めている。
まるで、馬上を見下ろしているみたい。
これ、あたし、たち
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・女を弄ぶ時と、おんなじじゃない。
相手の関心を放置して、まったく応えずにやりたい放題。
連想させる。
あの、常に、睥睨している、青龍の公女。
似てると言えば、似てるかしら。
例え殴り倒されて、血塗れで地面に這いつくばわされていても、真下から睥睨しているであろう、アレ。
誇りや見栄とは無関係。
犬に噛まれたからといって、畏れる訳がない
――――――――――そんな感じ。
睥睨と見下ろし、青龍の公女とよく似た青龍の貴族。
でも、平然としているのは彼だけ。
青龍の騎士たちは、その半分が戸惑っている。
うん
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱり、普通じゃない、のね
――――――――――青龍の基準からしても。
青龍の騎士たち、二組。
戸惑ってないのは、半分。
いつも彼、青龍の貴族と一緒にいる11人。
戸惑っているのは、出迎えに来た、この地にいた騎士12人。
出迎えた青龍の騎士たちは、礼を忘れた帝国騎士に銃口を向けたまま、止まっていた。さすがにこの邦の、青龍の統治者は余裕で笑っているわね。
帝国騎士も三騎揃って、馬から跳び降りる。
自分たちがしでかして居ることに気が付いたみたいね。
「忘れていた」
青龍の貴族は、無知に対しては寛大だけれど、とても気まぐれ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・本当に気がついているのかしら?
帝国の将は笑いながら、青龍の貴族に、帝国式の礼を示した。
つまり両腕を広げたのだけれど
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・屈託ない、緊張感のない表情ね。
「初見だな」
っていうのに、名乗らない、本当に、コイツは帝国貴族だ。
自分の名前は、相手が知っていて当然。
知らないならば、調べて当たり前。
だから帝国貴族には、名乗る習慣がない。
【異世界大陸北東部/国際連合呼称地域名「聖都」/第13集積地/港湾地区ヘリポート】
え?
俺?
いつの間にか話題の中心に移されていた、俺
――――――――――ギャラリーだと思ってたのに!!!!!!!!!!
いや、だって、ここには国連軍の担当者がいる訳だし。
現地の段取りは任せていいと、思うじゃん?
「よく来たな」
おお!
なんか初めて歓迎されてるような気がする。
これはすごいことですよ?
異世界に来て、っつーか、かってに押し掛けたんだけどね?
俺が悪いわけじゃないけどね?
しかしまあ、避けられ避けられ恐れられ嫌われて。
側にいる子供たちまで普通に巻き添え喰っている今日この頃。
にこやかにほほ笑む、三十代見当の、彫りが深く造りがデカイ目鼻がちょうどよいバランスをとった紳士。
血と肉と悲鳴と歓声を漂わせている、間違いなく戦士なのに紳士。
笑顔。
まさに、漢の表情。
この方々帝国軍ですよ?
二月初めからかれこれ四ヶ月目に突入する、突然、俺たち国連軍に襲い掛かられて、一方的に殺しまくられている、連戦連勝常勝無敗がベルトコンベアーで焼却炉にツッコまれている廃棄物扱いにされてしまった。
ものすごく、俺じゃないけど俺たちがヒドイ目に合わせ続けているのに。
この帝国将官は、器が大きい人なのかもしれない。
生まれ変わったら俺の上官になってください。
「招かれざる敵よ」
帰っていいですか?




