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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第六章「南伐」

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206/1003

幕間:優しい人を探しています(帝国政府広報)



人っはとっても、痛がり屋♪


牛より♪

猿より♪♪

痛っがり屋♪♪♪


頭っがいいからっ怖がりで♪


傷っつく前っからのたうって♪♪

逃っげる前っから死んじゃった♪♪♪


頭っが悪けりゃ逃っげらっれる♪

口っがきっけなきゃ戦えっる♪



何っでもでっきるから、殺された♪

何もできっないかっら、殺された♪






ボクは馬車の荷台、ふかふかの上。

まあ、飼い葉に使う燕麦のうえなんだけどね。


そしてボクの上。

彼方まで突きぬけるような蒼空。



きもちいいなぁ~。



ゆーか、やっぱり、北の空だよね。

空はどこでもおんなじ。


まあ、十年過ごした帝都と違って、起伏が激しい土地柄だけどさ。

キライじゃないかな、って。


でっ

――――――――――身を起こした。



フフン♪

ちょっと凄くない?

足場ふかふかなのに、腹と背中だけで一気だよ!



ボクは自慢の笑顔で皆を見渡す。


もちろん、その中には口うるさい爺もいるわけよ♪

ボク、爺にいわれる前に、イケたね♪



「姫」


言われるまでも、ないよ~。


目の前にはチンケな街。

ボクの背丈程度の、土壁。

門はだらしなく開けっ放し。

門前市場は店じまい。


見張り、衛兵すらいない。

ここ肝心ね。


大型馬車の上から背伸びで覗けば、門内側の広場が丸見えだ。



「掴みで千!」

どーよ♪


「二千」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――?

へ?

え?

は?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ボクは見直すまでもなく、降参。


「見えない範囲を観てくだされ」


諦めきれないボクは振り向いて。

どーよ?

って視線で問う。


背後の騎士が、慇懃に頷いた。


ぶぅぅぅぅぅ

――――――――――――――――――――――――――――――物見の結果と照らし合わせて、爺の見立て勝ち。


ボクは腹がたったから、荷台から跳び降りた。


「姫」


わかってますよーだ。

将たるものはその身を貴ぶべし。

跳ぶな、走るな、見てるだけ。


ボクは悔しかったから爺に指先で、聞いてますよーだ!って応えて、言葉で命令。


「教本通りね」


馬車はとまり、ボクが中心、左右に五名ずつ並ぶ。


横一直線。

背中はボクの魔法使い。

爺はボクのすぐ左。


ボクが進めば皆が続く、とーぜん、ボクに合わせてね。ボクの脚は素敵に長いけれど、周りの皆は体がデカイ。

足が短くても足幅が広い。

そこでボクたちを置いていくような、不届きモノは成敗だ!!


ボクは背中の気配、ボクの魔女がちゃんとつい来られるかだけ気にすればいい。魔女は体力ないからね、仕方がないね。


バラバラに歩くボクたち。


バラバラってのは横幅のことだよ?

それぞれ腕の長さも違うからね。まあ、互いが互いの間合いの中にいるようにしているんだけど。

必要ないんじゃないかな?

実際、ボクがいなければもっとみんな、気楽にバラけたいたろうね。



で、まあ、すっごく獲物に近づいたんだけど。


いやはや、鹿や野牛ほどに、ってまでは期待してないけどさ。

鳩よりショボいな生け簀の魚?


羊みたいではあるけれど、みたいにしてりゃよかったのにね。




門の内側、広場に集まっている民。

その一番外周より、つまり外から向かうボクたちに近い連中は、比較的醒めてるみたい。


よしよし。

ボクらに気がついた、何人か。


賢く逃げる者。

少し距離を置く馬鹿。

すぐに関心を失う屑。


違うでしょ?

そこは、かまえるとこだよ~??



群衆の向こう側から、悲鳴と嘲笑。


ボクを、帝国を罵倒する声。

もちろん、領民の鳴き声に腹をたてたりはしないよ!


ゆっくり、のんびり、てくてく。


剣も鎧も、略奪品に見えるのかなぁ?

だから民には近づいてくるボクらの姿を見ても、恐怖で失神したり、恐慌状態で暴走したりしない。

どう考えても、ボクを帝国貴族だと、見ていないよね。

これ。



・・・・・・・・・・・・・・・・威厳が足りない?


ボクは手鏡を取り出して、確かめる。

もともと、面頬は外している。

うーん、この肌艶はただものじゃないと思うんだけどな?


切れ長の眼に長いまつ毛。

瞳は、生みの女譲りの紫色。

波打つ金髪は、まあ、肩口くらいしかないけど。

切りたくなかったけどさ。

兜をつける手前、ね。

特注を造るかな。

問題なし。


綺麗だよね?


振り返って、目で問うと、ボクの魔女はうなずいた。

うんうん。

正直でよろしい。


キミもかわいいよ?

フードで隠している淡い金髪は見えないけど、赤い瞳が素敵だね。



なら、こいつらが馬鹿なんだ。

領民だし。

このチンケな街に、あるわけないじゃん。

帝国軍軍装、騎士装備がさ。


!!!!!!!!!!!!!!!

・・・・・・・・・・・・・爺ににらまれた。


ゆだんなんかしてないもん



ふん。

馬鹿な連中。

ここは吶喊して、向かってくるところでしょ~?


仕方がないな~。

ボクは手近な女を斬った。


うん、悲鳴。

背中を斬ったし、骨は断ってない。

いい感じに血が飛び散って、いい声で泣きながら駆け出す。


立ち尽くしている男、その胸を肋ごと斬りさいた。

うんうん、肺は無事だね悲鳴でわかるよ。


サクサク進む。


こーいう時には、ボクの軽さはべんりべんり。

深く斬りすぎると、脂で斬れなくなるからね。


騎士過程の最後だものね。


軽い体重、弱い勢いでもイケる斬撃術を習うのは。

元気だろうな

――――――――――騎士学校のみんな。




父である前当主、の役目柄、ボクは帝都で育った。

しかも、家を離れて。

ふつーは15歳くらいまで、家で過ごすのにさ。


まあ、氏族の爺婆に読み書き礼儀を教わるところは、どこの貴族騎士とも変わらないけど。


10歳までは帝都周りの草原で、気楽に馬の背で暮らす。

このころは常にフードをかぶっていても、日焼けしてたな~。いま、珠のお肌を見ると信じられないくらい。

後は、主に帝都の天幕の上、で寝てたけれど暮してたのは中。


帝国人ならだいたいみんな、体が出来るまではおんなじおんなじ。


ボクの時は10歳から5年、20回くらいの試練試問をこなした。

走ったり歩いたり、矢継ぎ早に質問されて答えたり。


やってるボクは、競技と区別してなかったけれど、結構重要なことだと後で知らされた。その結果と、結果が伸びているか頭打ちか、それとも下がっていくかが注目されていたって。


結果はもちろんだけれど、伸びていくならさらに高見が期待できるからそっち優先。

頭打ちなら無難だけれど、伸びているところが無いか細かく試練や試問を与える。

下がっていくなら向いてない、のか普段の生活に問題があるのかどちらか。



ボク当然、問題なし。

数字と伸びしろが測られて、狙った通り、騎士学校任官。

まあ、他より優れていたのは容姿だけだけどさ。


官吏学校とか無いよね~ほんと。

まあ、落ちこぼれたり、おんでたり、作戦上の転進は幾らでもあるけど。

ボクみたいな一直線は、一番平凡。



ボクは目についたオジサンの、弛んだ腹を斬り裂きながら、武術課程を思い出す。


最初の最初は殺し方。

兵じゃないから、皆で同じ型にする必要はない。

体格、筋力、瞬発力、反射なんか学徒個々にいろいろ。

学徒ひとりひとりに、教官が方向付け。


兵だったら、一人残らず同じ型で同じ動きを強いられる。それが一番効率が良くて、総体として最強になるから。



まあ、騎士の大半がなるのは将か軍師だから、個々の武術は二の次三の次。

選抜騎士なんかは、個々の技量の頂点を目指すけど。

なるとしても、騎士学校を終えてから。


もちろんボクは将になる。

実家が太守だし、女の肢体じゃ選抜騎士にはなれない。

竜騎士なんか、とてもとても。



当主の竜に載せてもらったから、諦めるのに十分だった。

あれじゃ、竜を御するどころかしがみつくだけ。


ボクの最初の、幾つも積み重ねられる、記念すべき挫折だったよ。

そういう体験が家で出来るんだから、太守の娘っていうのは悪くない。でも騎士学校では実家の訓練と違って、学校にしかない教材がいろいろつかえる。


もちろん、使い方を仕込む教官も込み込みでね。

これ、重要。



ボクは騎士学校を思い出しながら、三連突きで腕と腹を斬り割いて、剣の平で殴りつけて走らせる。

うん、身についている、とはいえ、考えながらやるとうまくいくな。

意識しないと殺しちゃうし。



教材が貴重品じゃなくたって使い方を知らなきゃ、勿体なくて使えない。試行錯語なんて、引退した爺婆がやることだよ。


ボクの時間は大切に。

それに貴重というほどじゃなくても、無限にあるわけじゃないしね。



教材の中でも人間は、週に一人しか使えない。

学徒一人に、だよ?


一回一回の時間と手間を考えたら、仕方がない。

学徒は武術以外にやるべきことが多いから。



最初の頃は、上級生が固定してくださる。

藁束や木とは違う骨肉の感じ、斬る感触、それにまず慣れるんだけど。


次に生体と死体の差を体得。

生きてるうちに殺して、死んだあとは刻む。

もちろん、適当に刻むのは最初だけ。


すぐに、部位々の感覚を教えてもらう。

筋の走り方、骨のつなぎ目、脂の溜口、血のめぐり。

見て知って、感じて覚えて、聴いてバラして、刃の当て方に力加減。



そう、今、突いたみたいに、大きな血管を避けてね。


うーん元気、元気♪♪♪♪

民はこうじゃなくちゃ!


ついでに呆然とした子供を斬る、あ、ダメか。

腕が落ちたから、すぐ死ぬ。


子供は初めてだから、これも経験だよ。

種族に依らないか

――――――――――小動物は、すぐに死ぬ、っと。



そうこうしながら、ボクが10人、ボクの隊で併せて100人位を斬り散らした。大半が血まみれで生きていて、悲鳴と苦鳴を上げている。


集まっていた民衆は、自分が悲鳴を上げて、逃げ崩れていっちゃった。


ボクら

――――――――――――――――――――背後から、ただ斬り進んだだけなのにねぇ。



一人でも、勇気があるヤツがいれば、戦局は変わっただろうに。

勇気は貴重な資質で、威力も大きいんだ。


危険を冒す、そんな者は勇気じゃない。

ただ単純に、死ぬこと。

それだけが勇気。


ボクがいくら騎士でも斬り続けるとき、隙は出来るんだから。素人でもやってやれなくはない。ってゆーか、殺れる。


惨殺覚悟でボクに一刺し。

一刺ししたヤツはボクが斬るけどさ。


この可愛いボクが殺されれば統率している爺がキレる。

そうなればボクの軍が動揺して、広場中の群集がそれに気が付けば?


二千人にたいして、追い回しているボクらは十人しかいない。

弾みさえつければ

――――――――――ボクらが八つ裂きにされてもでも、おかしくはない。



なのに。

なのに。

逃げっちゃった。

みんな

・・・・・・・・・・・・・臆病者。




広場の真ん中には死体が十二。

ボクらが殺した以外には、だけどさ。


吊され、焼かれ、カタチも怪しいね。

街の徴税人や帝国の下っ端を務めていた顔役かな。



他には裸で血塗れ、一応生きてるのが二十三か。

女子供ばかりだね。


嬲り殺しにされた連中の、血族、友人、恋人ってところ。

嬲り殺して、嬲って生かして。


気持ち悪い。

ヤダヤダ。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・き、きし、さま・・・・・・・・・・・・」


触らないでくれる?


ボクは剣身で伸ばされた手を払う。

なおいい募ろうとする女を、首蹴りで黙らせた。

横にいた、比較的マシな、おばさんに尋ねる。



「油を売ってる店は、どこ?」


帝国貴族に話しかけられたら、どうするべきかな?

答える?

跪く?

死ぬ?


――――――――――答え、従う。


はーい、正解。


やっと正気に帰った23人。

そのうちから動ける8人を連れて、街の目抜き通り、名も無き商会の店舗兼倉庫に着いた。名前はあるんだろうけれど、ボクが知らなきゃどーでもいい。



うん、まあまあ、かな?

時間も規模も。


ボクが呼ばわって固く閉ざされた鎧戸を開かせる。


番頭だけ?

この規模の店なら、店主は

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・逃げ出した、か。


ボクが指を落とした番頭に集めさせた、手代や奉公人たち。

ボクの指示が皆の頭に入ったら、番頭の首を跳ねた。


それを合図に、皆が走り出す。

ボクは店の前にでる。


前の道に腰を下ろして伸びをして。

見回して。


広場から引きずって、小突いて連れてこさせた馬鹿ども。

その生き餌を、軽く刻ませた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱ、いない、か。

ざんねんざんねん。


騎士学校で教わったこと。


殺す時に、笑う人間。

世の中には、極々一握りの、異常者がいる。


殺す時に、取り乱す人間。

殺す側には全く危険がないのに、ね。


騎士学校では教官たちが、そして上級生も学徒をよーく観察する。

殺す時、刺すとき、斬る時。


笑う者がいないか?


楽しくて、じゃなくて。

怖くて、じゃなくて。

耐えられない、から笑う。



他人の痛みを、他人の恐怖を、他人の死を我がことにしてしまう、限られた異常者。

異常者は、耐えようとして、笑う。

殺しながら笑う。


拘束されなんの危険もない相手に対して、死ぬほどの痛みを感じ、逃れる為に笑う。



それは臆病とは違う、って教官はおっしゃった。

そういう異常者は、むしろ戦場では頼りになる事が多い。殺す相手だけじゃなくて、殺す味方にも注意を払い、常に周りが見えている。しかも、献身的に戦い護る。


戦友にほしいよね。

最初、みんなそう思っただろう。


でも、いつか壊れて動かなくなる。

殺し過ぎて消耗し、護り過ぎて盾になり、仲間を守るために不眠になる。

やっぱり、戦場には連れていかない方がいい、それ。


縛り上げてでも、帝都に連れ戻す。

みんな、そう思っただろう。



これは向き不向きの問題らしい。


ボクは最初、向かないからつまみ出す、と考えた。

向かない奴を連れ込まなくちゃいけないほと、帝国軍は人手不足じゃない。

そもそも異常者は、数も少ないどころか、存在自体が稀だって話。


なら帝国は広いから、もっと向いている役目は幾らでもある。


帝国は無数の得意で成り立っている。

竜騎士、魔法使い、騎士だけが帝国じゃない。

苦手なことをやる必要はないし、やらせるのはマヌケだけだ。


そいつ等が殺すことが苦手なら、得意なボクたちが殺ればいい。


殺るのが得意な者は多い、少なくとも不得意な者は少ないんだから、なんの問題もない。

なんなら、その異常者はボクの家で世話役か話し相手にしてもいい。

きっと気が回るだろし、話して楽しいだろう。

ボクが子供を産んだら、子守にするといいかも!


ボクだけじゃなくて、騎士を目指す皆がそう思った。だけど教官たちは、ボクらの解釈を読み取って、命じた。


これまでを思い出せ。

これからは目を凝らせ。


他人と自分の苦痛、その境が解らない者を探せ。

その者にしか担えない、役目がある。


鍛えればより一層に他人の痛みを、自分の事のように受け止められるようになる。


そうなれば護られる異常者は、異能者として帝国を護る。

鍛えることは出来ても、生み出す事は出来ない異常性。


一見すると、健常者と変わらない。

多くの地域で、弱さと受け取られる資質を隠す。

だから痛みが溢れている場所、戦場以外で探し出すのも難しい。


戦場なんぞで消耗させる訳にはいかない。


だからボクは、せっかく戦場に来た機会を生かして探してみるのだけれど。

――――――――――残念。


今の部下には居ないみたい。

いうのもナンだけど、普通の騎士ばかり。


領民にもいなかったみたい。

斬りながら、魔女に探させたのにな。

うん、ボクが探せって話だけど、作業に集中していたからね。



ま、いいや。


お楽しみはこれからだしぃ。

遠巻きにし始めていた民が、や~~~~っと、ボクたちの数に気がついたみたい。



棒きれや石、棒きれと同じ扱いしか出来ない槍や剣、鉈や斧を持って集まり始めた。



んん?

集まる、だけ?

もっと張り切ろうよ?


しょうがないな~~~。



店の前に並べられている、生餌。

広場から引きずってきた、暴徒、この街の住民の一部。

ボクは立ち上がり、これみよがしに手近に跪かされて泣いている若い男の首を、っとと、刺激が強すぎちゃだめだね。

また逃げられちゃ、メンドクサイ。

蹴りで足を折った。


生き餌の声で、やっと罵声があがり始める。

気を利かせて、気絶させないように他の連中を蹴り飛ばした騎士。

気が付いて、それを手伝う騎士。


○ひとつ。


ボクは視線で誉めてやる。

後で杯をとらせよう。



・・・・・・・・・・・・・・・・・で、まだぁ~まーだ、来ない。

見た目で五百人越え、凶器をもって集まって、ボクら住人ぽっちに、なにしてんのさ、まったく。




「火をかけますか」


爺がまだ声を上げられそうな女に油をかけた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うんうん!

もっといい方法があるよ!!




ボクが前に進み出て、兜を外した。


ふーんふん、驚いてるね?

こんな綺麗な女の子だって思わなかったろ♪♪♪♪♪♪



あはは。


ついでに、生き餌の子供を斬った。

首を、群衆に向けて蹴り転がす。



騎士学校では出来なかったな。

戦士の首じゃないと、馬上競技の首冠に相応しくない。


授業が進めば、抑えつけたりはしなくなる。

動いて、逃げて、刃向かってくる人間を殺す経験を積むんだ。


でも剣闘士って訳じゃなく、大半は竜の餌からまわされた人間。脱走兵や反逆者なんか、在学中は一度殺れたらいい方。


なら、ボクはツいていた?


二年しかいなかったのに

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・懐かしむのは、まだ早い、ね。




ボクの華奢な姿、与し易い弱そうな容姿。

女一人なら、かんたんにみえるよねぇ?


安全と勘違いし、走り出す。

激昂した連中が、走り出す。

釣られた周りも、走り出す。


ふふ♪

こうして走らせると、やっぱり野牛みたい。



僕は騎士たちを、手で抑えた。

屈強な騎士が前に出たら、勢いが止まっちゃうでしょう?


ボクを殺せると思ってる、興奮した血走った目。

広場でなぶりモノにした女たちを、思い出してるのかな。


ほーらほーら、おいでなさい。

極上の女がいるぞ~~~~~~貴様ら領民には、眼福だろぅ~~~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪



後、15歩。

騎馬隊が、横切った。



ふふん♪

人間の顔って、こんなに変わるんだ。


うけるぅ~~~~~~~~~~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪



真横から馬蹄に蹴り殺され、突き飛ばされ、錯乱混乱暴走し、追い散らされた暴徒たち。

先頭が踏み殺され、すぐ後が止まって後ずさり、更に後ろと押し合い。


ボクはゆっくり、前に進む。

馬蹄に踏まれ、かろうじて身を起こした男の顔を斬る。


騎士たちはボクを追い越し、圧倒的多数の民に躍りかかり斬り殺していく。



やっぱり、騎士学校繰り上がりのボクとは違うな。

いや、体力筋力で張り合おうなんて、思わないけどさ。


剣先で首や脚腕の付け根を斬ってる。

脂で剣を潰さないように。


馬車にはまだまた替え剣があるけど、それを届ける従士がいない。


本当は、ボクみたいな半人前の仕事なんだよね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・太守がやれるわけ、無いって。


すぐに回り込んだ騎馬隊が、群集の後ろに突撃。

方向もなく、ただただみんなが逃げ崩れた。



たかが十騎の騎馬突撃でねぇ。



しかも大半は、自分たちで逃げながら、互いに踏みつけ押しのけ蹴り殺し。

ボクは教本を思い出す。




後は、夜までに街の家々に火を放てば完了。

ついでに馬鹿どもには、命にかかわらない傷を負わせる。

ボクらを恐れ、夜に怯え、着の身着のままで逃げざるを得ない。



生き延びる為、夜を明かすために、物資を求めてさまよい続け。

周りの村や町で邪魔にされ、嫌われ、盗み襲い狩られる。


共食い。




領民たちは、求めるだろうねぇ。


秩序を。

統制を。

帝国を。


逃げ惑う連中は、結局、元の街に戻ってくる。

このあたり一帯、街も村も、戦時徴税と動員で余裕はないからね。

結局どこにも行けやしない。


そのころには先遣隊が着く。



街にいる全員を串刺しにして並べておしまい。



あはぁ♪

かんたんだなぁ♪♪










『簡単ですなぁ?』

『偽札(偽造軍票)をばら撒き流通を崩壊させて、ついでにボトルネックとなる橋を爆破したのに』

『まあ、不服従から弾圧、反帝国暴動

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・鎮圧』

『羊の群れを恐れる羊飼いはいない、か』

『短い夢だった』

『まあ、特殊部隊三人で帝国軍20人をひきつけられたんだから』


――――――――――――――――――――軍事参謀委員会はこの成果をもって、戦略的焦土化作戦の拡大継続を決定した。





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