幻想世界の住民たち/ＨＵＭＡＮ．

日本人は本当にバカですね。

我が、ああ、つまり合衆国が、どれほど日本を恐れていたことか。

組織化された一億人と戦う？

そもそも、統制された一億の国民っていうのが、どれだけレアか知ってるかしら。数だけが余っている地域なら、いくらでもあるけれど。

ルーズベルトでなくては、やらかせない。

ま、ルーズベルトはバカだから、フィリピンと区別して無かったろうけどさ。

マヌケは数字が大好きよ。

統計は何も証明しない、詐欺師のツール。

米国の国土は日本の２０倍以上、だっけ？

それはね

「米国は自分の国土を管理するコストが２０倍以上かかる」

って意味よ。

しかも、平野が多い米大陸と比べれば、日本の平野部は国土の１０分の１。

２０対１が、２０対０．１

つまり合衆国は日本の２００倍のコストを常に払い続けないとならない。

資源はさておいて、人口は合衆国が二倍要るから、マンパワーだけは半分に見積もってもいいかもね。ざっと１００倍のコストで済むかしら。

もっとも、２億人の維持コストがかかるから、絶対に１００倍以上になっちゃうか。

数百年以上その国土を管理してきた経験を加味すれば、比較する意味すらないわよね。

総人口？

粗鋼生産力？

石油算出量？

自動車生産台数？

繰り返すけどさ、コストパフォーマンスを考えなさいな。

大陸一つを、ただ、単純に、維持するだけでどれだけ必要かしら？

人手が、鉄が、石油が、自動車が。

戦争以前に、よ。

そりゃ、破産しかけるわよね。

あのろくでもない戦いで合衆国が全力を傾けて、運良く、やっと戦場を制しました。

ただ、それだけ。

あの当時の核、あんなオモチャで何が出来ましたか？

一発で都市が一つ灰、都市化が進んでいない、当時の日本でね。

たったそれだけじゃない。

量産不可能な、職人芸で創られた、動作保証すら怪しい核分裂実験装置

何発あったかしら。

三発目はどこにあったの？

ドイツなんぞに落とす余裕はないわ。

ありったけの脅しを、日本に向けないといけないんだから。

ま、列強諸国ならみんな基本概念くらい知っていたからね。

ネタバレのブラフがどこまで通じたのか、通じた真似をしただけだったのやら、怪しいものだけれど。

合衆国が戦中、必死に学者を集めて、必死に日本を研究したのは、なぜ？

バカに言わせれば、合衆国の周到さの表れだそうね。

以後も以前も、あんなことは一度もしていない。

だから、毎回、ソレが原因で失敗しても、相手の民族性を研究しようとはしない。

合衆国が、敵を理解しようとしたこと。

敵を理解して、それにある程度成功したこと。

たった一度きり。

日本以外には、必死で学び死ぬ気で応用したりは、しない。

わかるかしら？

本当に、日々、命がけな自覚があったからよ。

占領？

占領？

フフ、ああ、あれは進駐。

日本人の合意を得て。

日本の支配階級、官僚たちと組んで、ね。

ギリギリ紙一重のお芝居。

愚劣な政治家どもに責任を擦り付けられた自称「占領」軍。

自滅にいたる決定はしても、責任はとりたくない日本の官僚機構。

彼らと造った物語。

失敗ばかりして、不利な状況で開戦。

大失敗で、勝てなくもない戦争に負けた。

これリアル。

それよりも

「勝ち目のない相手に精いっぱい戦いました」

ってのがファンタジー。

無条件降伏とやらに「以下の条件で」と明記されているのは、ご存知でしょう？

無条件降伏、って、和訳は、誰が造ったのかしらね？

誰が広めたのかしらね？

ＧＨＱじゃないわよ？

笑えるほどに、クソッタレ。

こんな簡単で粗雑なパッチワーク。

大慌てで創ったのが判るわよね。

進駐軍が何人いたか、お考えなさいな。

戦闘訓練を受けた日本人が何百万人いたかご存知かしら。

占領してるマネ、占領されているフリ、命のかかった猿芝居。

お祖父様に悪いから、おばあ様は絶対に、認めませんけどね。

じゃあ、極東軍事裁判はなにか、って？

言わせたいのかしら。

もともと「戦争指導者を裁く」なんて習慣は、あの時まで無かった。

存在しないことを求める世論なんかできるわけがない。

それは、誰かの失敗を隠す生贄だけれど。

とにかく、誰かを殺さなきゃならなかった。

合衆国は、勝てない戦争をごまかすために、売国奴から日本を買ったのよ。

適当なＳｃａｐｅｇｏａｔを吊るしてあげる約束で。

わわざわざ、合衆国最高の頭脳が、知恵を絞って捏造した屁理屈。

合衆国市民や兵士には関係のない物語。

なにもかも、あなたたちのためじゃない。

日本人のため。

日本人の機嫌をとるため。

日本人に協力をお願いするため。

負けた事にしておいてもらうために。

日本人が殺したがっているヤツらを、殺してあげた。

罪人として、悪人として、辱めた上で、ね。

ハハ！

当たり前じゃない！

亡国の王を吊したい。

そう切望するのは、その民だけよ。

――――――――――「知日家にして親日家にあらず」

アメリア・マッカーサー合衆国空軍中尉（ファルコン・ドライバー）―――――――――

【太守府/王城/王乃間/国際連合統治軍軍政司令部窓外屋上端】

なにが起きたか、教えて欲しい。

俺のことじゃなくてね？

俺は身を乗り出して死にかけたんだが。

国連軍兵士の死亡原因ナンバーツー、事故死。

ナンバーワン？

敢えて言わないが、三佐絡みだと察して欲しい。

とりあえず、助かった

――――――――――――――――――――のか？

俺は。

だが下は

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大惨事だ。

よく見えるよく見える。

一酸化炭素をよく吸収しそうなヘモグロビン色。

つまりそれは、何を意味する？

血の色は赤い。

姿形が違えども。

異世界と地球世界は異なれど。

科学と魔法に分かれども。

血の色は赤く、心臓や脳があり、心の組成は変わらない。

なお、主な血管の配置や血流も変わらないらしいですよ？

マメシバ三尉の知り合い、仮名メンゲレだの仮名イシイだのが確認済み。

ハナコ（マメシバ三尉の自称）、メンゲレ、イシイ

――――――――――――――――――――――――――――――仮名多いな、おい！！！！！！！！！！

体構造における例外の確率を実地検証中、地球と同じ数値に収まるかどうか、とかなんとか、意味が解らん。

解っちゃいけない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・判るのはキラキラネーム仲間が多いらしい、ってこと。

いや、そうじゃない。

ここ、異世界の多種多様な生物に、地球生物と類似どころか一致点が多い、らしい。

だからこそ、だ。

だからこそ、異世界で、なにもかも通用する。

地球人類の英知、その結晶。

自白剤、心理的拷問、洗脳、煽動誘導

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・人類が半世紀前には完成させ、効率化を推し勧めた技法。

だが、何もかもが通じる訳じゃない。

だからこそ、開戦前からずっと、たぶん、これからも検証実験が続く。

しかし、そんな他人ごと、にして置きたい、一生涯知るべきではない、仮に事実Ｘとしよう、な話しは関係ない。

技法技術英知どころか、俺たち地球人類、いや、俺の存在そのものが複合効果を発する場合があり得る。

文化人類学にはよくあること

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・軍政官訓練キャンプで、人類学者が力説してたな～～～～～～～～～～。

学者が一人立ち入ったせいで、ある少数民族が滅びる。

ただ一人の軍政官が立ち入ったせいで、ひとつ社会が滅びる。

化学的生物学的な反応なしに、社会学的な序列変動による連鎖共振が集団自殺、類似行為を誘発し５％が反応した時点で不可逆性をもつ。

だったか？

たった一人、人口百万程度の孤立した社会ならば、確率は飛躍的に高まる。

高まる、ってのが、アレだ。

つまりたった一人の宇宙人が降り立った結果、地球人類が滅ぶ可能性は、ある。

今は？

日本列島が日本人他多数ごと、異世界に降り立った。

その数、一億かるくオーバー。

ならば異世界は滅びるのだろうか。

お気の毒。

謹んでご冥福――――――――――じゃない。

ある前提が成り立つならば、立ち位置を変えても同じだろう？

異世界人類他多数が、地球に降り立った。

と解釈すれば

――――――――――安保理は、そう解釈している。

とは、三佐の言葉。

宇宙人一人で世界が変わるなら、今はその程度じゃすまない。

だからこそ、認識レベルで日本列島を隔離している、のだろうか。

まあ自分たちを隔離しつつ、こうして存分に異世界に乱入している俺たち。

よって、これは起こり得たことだ。

起こらなかったかもしれないが。

予測不可能だから、諦めろ。

ただ知っておけ。

ｂｙ訓練キャンプ教官

――――――――――――――――――――ってね。

今、真っ最中。

予想外な複合効果を発揮した、西の山の皆さん。

そこに鎮座するドワーフの戦士長。

同じドワーフの首を掲げる西の山の皆さん。

今更、血だの骨だの内臓他にショックなど受けないが。

慣れってコワい。

これ

――――――――――――――――――――俺がやったのか？

トリガーを絞ったのなら、うん、無関係ではないな。

そう考えると、感慨も一塩です。

首になっている、見知らぬドワーフ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・たぶん。

見分けがつくか、と言われたら怪しいけどね。

見知らぬ西の山のドワーフたち、多くの現地市民。

見知った参事に執事長。関係があってしまった、人たち。

なにより、お嬢の、お父さん。

何か勘違いして、俺へのアタリがキツい人。

邪険にしているお嬢は、 なんだかんだでファザコンな気がする。

この後巻き添えやらなんやらで、お父さんが殺されたら

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺を責めたりはしないだろう。

それが判るくらいに、馴染んでしまった。

すっげ

――――――――――キツいぞ、それ。

最初から最後まで、俺にとれる責任なんかない。

んが、知り合いが死ぬ、惨殺されるのは

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・イヤだなぁ。

今のところ、知らん人（ドワーフ）しか死んでないが。

幸いに、と感じてる、俺。

ここは罪の意識なり、悲しみなり、衝撃なりを感じるべきだ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、教えこまれてきてるんだが。

まあ、そういった人間的感情と呼ばれる条件付け。

今、そこかしこで上書きされてるけどね。

産まれもっているわけじゃない、感情的首輪。

転移前の現在日本だけで必要とされた、社会最適化ツール。

別なゲームが始まった為に、ルール更新中。

そのゲームの名前は戦争。

皆さんご一緒

――――――――――ご他聞に漏れず、ね。

いまさらか。

誰もが殺す事に何も感じなかったように、俺も自分のミスで虐殺が起きて、何も感じないらしい。

三佐なら、いや俺だって部下に相談されたら答える。

フツーフツー、開戦３ヶ月で溜まりきった事例、見る？

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺だけの特異現象なら、良かったのにね。

ここから、どうなる

――――――――――筋肉が強張り、緊張感で倒れそうだ。が、グッと我慢。

背後に感じるシスターズ、Ｃｏｌｏｒｆｕｌ、この子等がいる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・微動だに、出来ない。

「ご主人様

・・・・・・・ドワーフさんは、ふゃ」

「あのドワーフは、ケガをしているが大丈夫だ」

俺は金色の頭を抑え、話をそらした

――――――――――――――――――――見るんじゃありません。

魔女っ子は、俺みたいにフツーじゃない。

見ず知らずの誰かですら、死ねば、ショックで口もきけなくなるタイプだ。

ふと、思う。

シスターズが死んだら、俺は、泣けるのか？

・・・・・・・・・・・・・・・・絶対に確かめてやるもんか。

【太守府/王城/王乃間王乃間：青龍の本陣外、露台中央】

いかが致しましょうか？

それを指図いただけるならば、御領主様ではございませんわね。

それを差配できねば、長、と名乗るわけにも参りませんわ。

とは申せ、あたくしは問いかけることにいたします。

――――――――――――――――――――あたくしに。

もう一度、振り返ってみることにいたしましょう。

ドワーフの戦士長が飛び降りるに至る、まで。

あたくしの側からは、恐れながら一列に、順番に見渡せました。

まず最初は、そう、ここから。

露台端の御領主様、その前にドワーフの戦士長、そしてエルフの側女さま

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・に隠れてお顔を覗かせるお嬢様に魔女さま。

御領主様は戦士長の言葉通りに下をみて

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・肩を落とされます。

――――――――――即時、本当に間を置かずに振り返られました。

もう下への興味を失われた御様子。

変わって眼を向けられました、幸運と不運、運命にのぞき込まれましたのは、ドワーフの戦士長。

常と異なる気配を感じますわよね。

あたくしは、部屋の中に、いえ、窓扉に張り付いいてこちらを見ているメイドたちをに、目くばせ。

メイドたちが音も小さく、露台に走り出て、御領主様の手前にて、目を離さぬように致します。

【太守府/王城/王乃間王乃間：青龍の本陣外、露台端/青龍の貴族、前】

あたしは次に、次々に起きたことをすべて見た。

青龍の貴族に魅入られた、ドワーフの戦士長。

戦士長は、あたしに向かって腕を突き出す。

その自然に突き出された掌に、あたしは鞘に納めてから刀を渡した。

戦士長は刀の鞘を払い、一気に斬り落とした。

この高さから、飛び降りながら、一気に。

青龍の貴族。

彼に、媚びたような笑いを浮かべていた、ドワーフの長老たち。

その、先頭。

上から見えたのは、最初、刀を振りかぶって、鎧を捨てて跳び降りる姿。それが見る間に小さくなり、切り下げた姿勢で、石畳にたたきつけられた。

一瞬あと。

戦士長の前、ドワーフの先頭が、ふたつに分かれた。

葡萄酒を入れた革袋が裂けたかのように、瞬時に赤い、まるで花弁が開いたかのように血の池が生まれる。

身をのりだして、真っ逆様に落ちる、青龍の貴族。

とっさに腰に抱きついて、支える、あたし。あたしの体重じゃ、彼を支えきれない。

ドワーフの斧、それを床石に噛ませて、足場を増やした。

【太守府/王城/王乃間王乃間：青龍の本陣外、露台中央】

あたくしは、恥ずかしながら、立ち竦んでおりました。

声もなく、まるで空中を歩けるかのように、進み落ちようとされる、御領主様。

落ちて行く御領主様を支える側女の皆様。

エルフの姫様が、御領主様の下肢を支え、小さなお二人が両の脚を。

それで支えきりました

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ら、支えの斧が中空に。

支えを失った御領主様、余裕に満ちた笑みを浮かべて、中空に

――――――――――間に合いました。

あたくしには、鼓動が止まりそうな、いえ、おそらくは鼓動が響く程の間もない、刹那。

駆けつけたのは、部屋付きのメイド、５名。

呼び置きまして、動くように命じましたのは、あたくしに御座います。

しかしながら、一人が鉤代わりに御領主様方にしがみつき、二人が互いに手を合わせて縄となり、洗濯台の石にて皆様の重量と、御領主様の勢いを支えたる工夫。

これは、５名の機転にございます。

あたくしには、とても考えつかぬ仕儀にて、安堵と称賛が抑えられませんわ。

あたくしにて言上申し上げますれば、御領主様から御褒美を賜れましょう。

とはいえ、あの５名が望みは、賜ることではなく捧げること。

であれば、すでに叶っているともいえますが。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そこまでは、教えて、あげませんわよ。

今は、５名の手柄をお伝えするのみ。

メイドが主との距離を縮めることが、すなわち悪い、とは限りません。とは申せ、仮に御寵愛を受けたとて、御領主様の趣味嗜好ならば、如何様にもあしらわれましょうけれど。

それを差配するのも、あたくしの役目にございましょう。

それでも今は、素知らぬこと。

あたくしにも

――――――――――妬みはあるのでごさいます。

【太守府/王城/王乃間王乃間：青龍の本陣外、露台端/青龍の貴族、前】

あたしは進む余地のない高みの端で、やっと一息。

女八人がかりなら、鎧や防具もない、平服姿の彼、青龍の貴族を支えられる。

今思えば、ドワーフの戦士長が鎧を捨てたのは、その為ね。

落下の打撃を減らして、本懐を遂げるまで命を保つ

――――――――――それだけ。

あたしは、チラリと下を見た。

遂げてなお

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生きてるじゃない。

よかっ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふん、ドワーフらしいわね。

脚を砕いたみたいだけど、片脚、だけかしら？

憑き物が堕ちたみたい。

それでも、斬るべきを斬って、胸を張っている。

それを、斬るべきを斬る、その姿。

とっさに模倣した戦士たち。

つられて、とっさに、刺殺され、一瞬の弾みで消えた、長老たち。

戦士以外。

職人、御者、鉱夫たち。

居合わせた他のドワーフたち。

西の山のドワーフたちは皆、驚いては、いる。

だれも予想していなかったのね。

それなのに、みんな、気が済んだ、って顔。

殺された長老たちは何をしたのかしら？

なにも。

何もしなかった。

だから、同胞に、殺された。

それだけで、敵意と侮蔑、殺意と剣を向けられた。

――――――――――あたしは、肢体の奥底が震える。

いつもいつも、青龍の貴族に、遊ばれるときのソレじゃない。

これが、青龍の貴族、彼が生きる、その世界。

戦士長が、最長老を斬ったところまでは、解る。

そこから先が、解らない。

戦士で。

剣士で。

騎士で。

それしか知らない、あたし。

そんな、あたしにはわからない理屈で、同朋だった相手に殺される。

――――――――――否定すべき＜悪＞として。

【Ｍｉｓａｗａ Ａｉｒｂａｓｅ：３５ｔｈ Ｆｉｇｈｔｅｒ Ｗｉｎｇ】

青森県三沢市。

カタリベである青年は、インタビューを終えて見送りをしていた。

政治的にも軍事的にも、その中枢にいる、傍観者。

その彼女は好き放題に、自分が言いたいだけのことを言うと、飛び立っていった。

怒る。

罵る。

嘆く。

怒鳴る。

他人のことも自分のこともお構いなく。

カウボーイ、いや、カウガールか。

カタリベが思う、アメリカ人、あるいは、素朴な人々の典型だ。

合衆国空軍第35戦闘航空団は、これでほぼすべて異世界大陸に移動する。対地支援を主任務とする部隊をすべて投入することで、国連軍の準備は三カ月以内に整うだろう。

二つの首を落とす。

半月前には、その準備が整う。

彼女と彼らは、表向きの主軸となる。

ねえ。

怒ってみなさいな。

そう言った彼女は、想像もしていない。

もう、貴女が怒る必要など、ない。