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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第五章「征西/冊封体制」

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192/1003

最期の一押し/Cherry Blossom.

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします


一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。

次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。

以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。

(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)


【登場人物/三人称】


地球側呼称《三佐》

現地側呼称《青龍の公女》

?歳/女性

:陸上自衛隊三佐、国際連合軍事参謀委員会参謀、WHO防疫部隊班長、他いろいろな肩書を持つ。日本の政権与党を支配する幹事長の娘で、父親と連携して戦争指導に暗躍している。



地球側呼称《曹長》

現地側呼称《騎士長》

?歳/男性

:国際連合軍/陸上自衛隊曹長。



地球側呼称《坊さん/係長》

現地側呼称《僧侶》

?歳/男性

:国際連合出向中地方公務員。得度した僧侶。浄土真宗らしい。軍政司令部文官。



地球側呼称《官僚/財務官僚/役人》

現地側呼称《役人》

?歳/男性

:財務省官僚。高級官僚の一族に属するらしいが、異世界転移後の官僚機構一斉粛清で大半を失った。殺された者もいると信じている。



地球側呼称《三尉/マメシバ/ハナコ》

現地側呼称《マメシバ卿》

?歳/女性

:陸上自衛隊三尉。国際連合軍独立教導旅団副官。キラキラネームの本名をかたくなに拒み「ハナコ」を自称している。上官の元カノが勝手に「マメシバ」とあだ名をつけて呼んでいる。




敵対的行動を示し、示した可能性がある集団ないし個体のうち、国際連合資産の条件を満たさない対象の処分。



最小接触にて完全殲滅のこと。


降伏、恭順、抵抗無抵抗などどのような姿勢の変化も考慮することを禁ずる。

これに違反したる場合は人道に対する罪が適用される。



なお戦闘に至らぬ敵対的行動については、作戦遂行上明瞭な利便性が認められる場合においてのみ、殲滅を留保する。



その際、地球人類による不用な接触、その可能性がある場合は世界保健機関(WHO)に一任とする。


《国際連合軍事参謀委員会通達/参考資料》




【太守府/王城/王乃間/国際連合統治軍軍政司令部窓外屋上端】


人生万事塞翁が馬。

喜びの後には、悲しみが待っている。

悲しみの後には、喜びが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・待って、るのかなあ?


就職の後に無職が待っていてほしい。

進学の後にニートが待っていなかったんだから。


などと考える俺の目は、死んだ魚のようだった。

――――――――――と、後に三佐は語った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱり、見物してたのか。


施設科が据え付けていったのは、贋札工場だけじゃなかったらしい。

記録装置付きドック・タグは、俺の視線を中心に周りの映像や音を記録する監視装置。俺自身の顔は鏡を見なけりゃ映らない。


此処に鏡があるかどうかはお察しだ。



Big Brotherかな?

あいまいな笑顔を浮かべないと蒸発するのかな?

とりあえず、2+2=5から始めないといけないのかな?


正気でいるための努力が足りません!

もっともっと努力しなさい!!

考えるなんて犯罪です!!!

・・・・・・・・・・・・・とか言われたらどうしよう。


三佐のことだから、自動再就職エンドレスで俺の失業保険をフイにする気だろう。

それに心からの歓喜を感じる、そんなふうに改造されるのは目に見えている。

よく考えなくては。


・・・・・・・・・・・・・・・生き残れたら。


※元ネタ「1984年」




【太守府/王城内郭正面/内郭と外郭の間/演習場兼閲兵場兼園遊会会場にして馬車乗り場】


僕は、三歩下がった。

大先輩も、五歩下がった。


青龍の貴族。

その眼が見ている。


僕を、じゃない。

大先輩を、でもない。

誰かを見る、眼じゃない。


周囲を圧する輝きに満ちた、宝玉、金銀、細工物。

場を埋め尽くす、千を超える大勢の息吹と存在。


それが、独りの、眼によって圧殺される。



王城の奉公人、メイドや執事たちは

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・十歩下がっているな。


無邪気に目をみはっているのは?


王城に派遣されている五大家の奉公人、参事会の事務方、下っ端商人。

さっさと全速力で逃げ出した参事は、後で説教だ。

とっさの判断としては悪くない。


悪くないが、しかし

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・僕が危ないだろーが!!!!!!!!!!

こっちは逃げるに逃げられないんだぞ!!!!!!!!!!

僕らが逃げたら殺されるだけじゃすまないからな!!!!!!!


貴様の抜け駆けが龍の逆鱗、そのキッカケになったらどうしてくれる!!!!!!!!!!

逃げる時は、ゆっくり、さりげなく、前を向いたまま、後ずさりだ!!!!!!!!!!!

こっちは事態を把握しなけりゃならんのだ!!!!!!!!!!


僕の邪魔をするなら、逃げ切れると思うなよ??????????

青龍の貴族に消されるなら邦ごと揃って同じだか、生き残ったら追い回して蹴り転がして、二度と逆らえないように躾けてやるからな!!!!!!!




などと思いながらも、僕は周りを抑えきれない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・貫目が足りん、とは言われたものだ。




【太守府/王城/王乃間/国際連合統治軍軍政司令部窓外屋上端】


俺の仕事は終わった、ハズだった。


占領作戦とは、その実、帝国資産設備の接収に他ならない。

思えばつまらない、地味な作業だよ。

ひたすらスキャナーで記録して、書類や帳簿を確認して、現物を照合して

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・地元の皆さんのご協力、三佐が連れてきた同僚(施設科のみんな!ありがとう!)に押し付けて、記録的な速さで終わった

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ってのに。




――――――――――そうですか、前太守の資産ですか。




この規模なら、私財と言い張るのは無理がある。


個人資産なら、封印して、うっちゃって置けたのに。

実際、太守や家族の私物らしき家財道具や宝飾品は、彼らの部屋ごと放置。目録だけ作って基本封印、毎日の掃除手入れはメイドさん任せだ。


美術品のうち、絵画は三佐の趣味に合うらしい。

ちょくちょく眺めているのを、俺は知っている。

曰く、太守が生きていたら異世界美術について選別作業を強制するところ、だそうで。


個人資産以外の美術品は国連が接収しているからね。

個人資産は記録に撮るだけで済ませているけれど。


個人資産でも焼却汚染殲滅予定地域の品々は事前に掠奪しているけどね。



マメシバ三尉などは、太守の遺していった器や家具がお気に入り。意外なことに、王城の一般、まあ来客用の装飾家具食器などと太守の個人資産は異質らしい。


騎馬民族っぽく興味がない、のではなく、趣味が違うのだとか。

本人の趣味か家族の趣味かわからない。

だが、王城全体の調度品その他備品は、兵器以外が旧王国からそのまま掠奪温存継続利用。

旧王家の資産は帝都に送られ、太守周りは太守一家の趣味でまとめられたようだ。



誰の趣味か判ったら拘束して異世界美術について選別作業を以下略。



その辺りの流れは、接収した資料をスキャンしてまとめ上げたうちの部隊の役人が気がついた。本土の専門家たちより早かったんだから、こいつも生活用品が好きなのかもしれない。



俺には、アンティークですね、ぐらいの感想しか出ないから何も言わない。

間違ってるだろうし。

アンティークがなにか正確に知らんし。



でまあ、それら家具やら部屋やらについては、UNESCOからは現状保存要請が出ている。

配置も含めて、弄るな触るな手入れしろ

・・・・・・・・・・・何か矛盾を感じるのは、素人考えなんでしょーね。


軍事参謀委員会はUNESCOの希望に協力的だ。

作戦に支障がない限り、だが。


支障の範囲は現地司令官一任。

つまり――――俺の裁量――――――と聞けば、エラそうに聞こえるよね。



だがまあ、兵士と同じく現地司令官の俺だって、三佐の盗撮が無くても首輪(記録装置付きドック・タグ)つき。

下手なことはできないししたくもない。



私物、しかも故人のものなんて、手を付けていいか迷う。騎士や役人クラスの私物は少ないし数も多いから梱包させてしまったけどね。



まるまる一家族が住んでいた、かなり広い太守一家のプライベート空間。

不躾に過ぎて、立ち入るのも気が引ける。


太守には子供たちが居たらしく、家族の肖像がなんかあったら泣いちゃいそうな気がするし。

メイドさんに確認求められても、一任で済ませているくらいだ。



でまあ、今度は太守の遺産っぽいお宝のお話か。

お宝じゃなければ楽だった。



この、馬車いっぱい、馬車多数のお荷物。

誠意だったら

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いやいや、が単純に地球人の関心を買うための贈り物なら、もっと都合が良かった。



西の山のドワーフからの貢ぎ物なら、返品出来たのに。




つまり結論、あの金銀財宝は帝国資産。

コレを、記録して、管理するんですね。


俺がですか、そうですか、給料分の仕事ですか。

給料分働いたら、何も生まれない不毛な徒労だと思うんですが。

大切なのは利潤だと思うのですよ。

俺の。

等価交換って、間違いなく破産しますよね。


はぁ、ほんっとに、輝きやがって。

・・・・・・・・いやいや、子供が見ている、笑顔笑顔。



え、まあ、うわーキレイですね

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・人並みに物欲があっても、異世界の産物は何もかも日本に持ち込めない。



よって、どーでもいいのである。



まあ持ち込みたいか?

って言われると微妙

――――――――――実際に眼にすると、テンション下がるよね。


持ち帰れても、置く場所に困るものばかり。


金に換える?

通帳を眺めて喜ぶ趣味ないしなあ。




物語でもそうじゃないかな。


お宝を手にするのは、エンディング。

お宝入手後のウハウハ生活を詳細に描写した作品って、無いよね。

つまり需要が無い、つまらない、必要ない。


俺が知らないだけ?


結局、人の欲望なんか、たかがしれてるんじゃないか。

飢えなくなれば、後は余分、お荷物。


転移前から、物が売れない、なんて何十年も言われてたし。まあ、前から薄々わかっていて、異世界転移で顕在化した、過剰生産社会

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・過剰消費社会じゃないぞ。



現代人の生活は、中世(この世界)で言えば一般貴族、騎士程度のレベルが最初から保障されてるんだし。



造る為に壊していた、百年以上続いた徒労の歴史。

産業革命から二世紀か三世紀か。

生産と戦争の歴史。


積んでは崩して、掘っては埋めて。

ハムスターが回す車輪の如く。

歴史に冠たる人類文明。


何を冠してたのか知らんが、ゲームのハイスコアみたいなもんか。

ごくろうなこって。



転移後の日本がそうであるように、生産しなくても社会が維持できる、ってバレた時点で財産の意味が変わったけどね。


ばれた、てより、知られた、か。

学問的には昔からわかってはいたしな。

そんな世界に生きる俺。


猫に小判、豚に真珠、馬の耳に念仏

・・・・ちょっと違うか。



にしても、どーすんだこれ。



煌めき輝くだけならば、眼にいたいだけ。

単純すぎて、すぐ飽きる。


重くて多くて疲れ眼を養う、物質化した労働災害。




【太守府/王城/王乃間王乃間:青龍の本陣外、露台中央】


ドワーフの戦士長が、固まっているのを感じた。

まあ、そうよね。


あたしだって、そう思う。



王侯の財宝をみて、捧げられて、顔をしかめて肩を落とす。


命を狙われて笑い。

子供を助ける為に慌てて。

街を破壊しながら表情も変えない。



そして、コレ。



――――――――――貴男は、貴方たち青龍は、何しに来たの?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・置いて帰られても、困るけど、ね。




【太守府/王城/王乃間/国際連合統治軍軍政司令部窓外屋上端】


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・などと、三佐に言っても仕方がない。


そもそも、俺に給料払ってるの、三佐じゃないし。


だが、諦めない。

働かないことを、諦めない。

絶望は愚か者の結論である。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・絶望を選べるなら、それはそれで、意味があると思うけれど。


大抵は、絶望すらできずに流されるだけだしね。



俺は違う。

物心ついたときに覚悟は完了している。

努力しない事に全力だ。



どうやって?

――――――――――要は、他人に頼ればいい。



善意溢れる新しい友人に、協力をお願いしよう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・これは決して、他人に押し付けようって話じゃない。



きっとわかってくれる。


元々、管理していた者が資産登録を行う。

事情に詳しい者が、知識が必要な作業を行う。


まさに道理だろう?


スキャナーの使い方など些末な問題、に違いないよね?

異世界で一番器用なドワーフが、地球(日本)謹製簡単ツールを使えないハズがない?


俺は楽、いや、効率よく業務を進めるだけ。


もちろん、俺だけに利益がある訳じゃない。

自分たちでやれば、さじ加減は自由だよ?


せっかくの横領、もとい、所有者不明資産。

何もかも出す必要は、アレだよねぇ?



言葉は最小限、アレとかソレとか、指示代名詞で事足りる

――――――――――他世界を結ぶ、阿吽の呼吸。


証拠を残したくないなんて言ってない!



これなら三佐も文句ないだろう。

三佐はこーいうノリが大好きだし。

証拠なんて気にしない暴君だから、趣味嗜好には忠実だ。



俺は、悪い笑顔を向けた。

新しい友人、身近な(3m圏内唯一)、他人ならぬ、他ドワーフの方を。



さあ!

これが俺の返礼だ!!

受け取りたまえマイ・フレンド!!!




【太守府/王城/王乃間王乃間:青龍の本陣外、露台端/青龍の貴族、背後】


あたしは堂々と歩み寄った。

ここまでくれば、後ろに隠れる意味もない。


青龍の貴族、彼の顔を見たからだ。

笑顔、のカタチ。


殺す時、青龍の貴族は無表情

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・違うわね。

意識して、ないわ、あれは。


どっちにしろ、終わり。



流血が避けられない。

なら、いっそ敵の眼を、あたしに注目させた方がいい。


危険な獲物、価値ある獲物。

あたしと青龍の貴族。


どちらをとるか、判らない。

判り切った結末から、十分に状況を引き戻せたわ。



あの娘たちを背に、青龍の騎士とあたしで戦士長を挟み込む。



西の山のドワーフたちは、降伏した。

あの一撃、一瞬で煙獣に山をまかれて、戦意を失った。


今更だけど、当たり前ではあるのでしょうね。

まったく思いも寄らなかった。


あたしたちの世界の常識が、あたしの頭からすっぽり抜け落ちてるのよ。


それは、あたしが青龍を知っているから。

青龍の貴族が認めた事を、戦士長を認めた事を知っているから。


青龍は、降伏を認める。

それに価値があれば。


青龍の目的に寄与する。

青龍の感性を刺激する。

青龍の貴族、その気が向けば。


価値がなければ、考慮すらしない

――――――――――――――――――――見もしない、かしらね?



この邦が降伏を許されたのは、価値があるからじゃない。青龍は大陸全土にすら、価値を見いだしていないのだから。


救われたのは、あの娘のせい。


青龍に初めて出会った時。

落ち武者狩りに来た青龍の女将軍に、独りで対峙しようとしたこと。

支配者としてやって来た青龍の貴族に、独りで向き合ったこと。



――――――――――女として以前に、認められた、のだと思う。



ならば、青龍が、青龍の貴族が西の山のドワーフたちを、認めるかしらね。

逆らい、媚びて、なお金貨を数えるのを止めない奴らを。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・領民一般が、それより上等だとは思わない。

あの娘が庇わなければ、とっくに邦ごと消えているでしょう。



帝国を滅ぼす為に、大陸中を潰してとぐろまく、青い龍。

辺境の箱庭なんか、目に付いたのが奇跡でしょうね。

そんな箱庭の、飾りに等しい西の山。



そのドワーフたち。

連中を、認める訳がない

――――――――――ドワーフの戦士長が、同胞を認めようがない。


でなければそんな、つまらない、ヤツを、青龍の貴族が認める訳がない。


部族を、氏族を率いる者などいない、ドワーフ。

長老は、ただのまとめ役。

まとめ役は、大抵、無難な方に流される。


皆の困惑を破らぬように。皆の沈黙を壊さぬように。

皆に責められること無きように。


戦士なら、我慢する訳がない。

戦士は、守る為に居るんじゃない。

戦士は攻める為に在る。



皆と称する有象無象が、巻き込まれたとて、どうでもいい。


あたしには、解る

――――――――――戦士だったから。


だから、戦士長と従う戦士たちが、一番に狙うのは。


ドワーフの手が、斧に伸びる。

あたしの手が、刀を掴む。




【太守府/王城/王乃間王乃間:青龍の本陣外、露台中央】


ご主人様が、仰いました。

大きなドワーフさんに、です。

・・・・・・・・・・・・・わたしに、じゃないんです。


「任せる」


わたしが見たこともない、ご主人様の、怖い、笑顔。


抑えていたものを、解き放ってしまううな。

留めていたものを、奔らせてしまいそうな。

堪えていたことを、忘れさせてしまうような。



わたしは、普段から、囁いて頂いています。



望め

――――――――――欲にまかせて、欲しいままに、求めろ。


やりたいことをやれ。



そう、命じる、怖い、怖い、眼。

禁忌を、最初からなかったことにしてしまう、青い龍の息吹。




西の山のドワーフさん。

おおきなおおきなドワーフさん。

苦しそうな、辛そうな、悲しそうな。

無表情なのに

・・・・・・・・・・・・・痛みをこらえていた、お顔。


ご主人様の声に貫かれ、重々しく、頷かれました。


「御意」




【太守府/王城/王乃間王乃間:青龍の本陣外、露台中央】


わたくしは、ねえ様の陰から前を覗いておりました。

あの娘が陰から顔を覗かせて、わたくしは背伸び。


もともと、線が細い、お強いのですけれど、な、ねえ様。


わたくしも、ほんの少し背伸びをすれば、ご領主様の眼をの頂けます。

背伸びは、ほんの少しですわ

――――――――――わたくし、お姉さん、ですから。


でも、残念無念口惜しく、ご領主様の眼は、よそのドワーフに向いてしまいます。

お役目中ですから

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・我慢、します、わよ?


わたくしが、そんな想いを、かみ殺そうと、一生懸命努めておりますと、ドワーフめが手を突き出しました。




何のつもりかしら?




【太守府/王城/王乃間/国際連合統治軍軍政司令部窓外屋上端】


ドワーフの戦士長は、時代劇のような、世界観にはマッチした一言。



そして、刀を構えて飛び降りた

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――はぁ??????????



投身自殺!!!!!!!!!!





俺の頭は凍り付いたが、反射的に下を見るのは人のサガ。

ろくでもない確信を旨に、真下を見下ろした。



白を基調とした石畳、砂利、時には煉瓦で舗装され整地された城内の広場。

正面玄関の前に広がり、大勢の市民がドワーフ他の馬車列を遠巻きにしている場所。

ちょうど王乃間と呼ばれる軍政司令部の外に張り出した屋上の端から見下ろせる、こじゃれた公園のような集会場のような駐車場のような平面。



呪うべき視力が良いのが災いして、一生モノのトラウマが約束された瞬間である。


菜食主義者にジョブチェンジ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・我ながら、考えるコトがゲスイ。



だが、次の瞬間、確かに視力に助けられた?



華。

赤い花弁を開かせた平面の花。


花弁を開き血を覆い。

明るく陰影を強調し。

色鮮やかに咲き誇る。


人が、ドワーフが、潰れたのなら、こんなことにはならない。



あ。



生きてる生きてる殺してる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?



投身他殺?






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