問答無用(無言)
登場人物&設定
※必要のない方は読み飛ばしてください
※すでに描写されている範囲で簡単に記述します
※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします
一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。
次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。
以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。
(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)
【登場人物/一人称】
『俺』
地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿》
現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様/我が君》
?歳/男性
:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。軍政官なのでいつも陸上自衛隊制服(常服)着用。元々訓練以外で戦闘服を着たことがない。
『あたし』
地球側呼称《エルフっ子》
現地側呼称《ねえ様》
256歳/女性
:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。姉貴分。ロングストレートなシルバーブロンドに緑の瞳。長身(数値不明)。革を主体とした騎士服にブーツに剣が常備。
『わたし』
地球側呼称《魔女っ子/幼女》
現地側呼称《あの娘》
10歳/女性
:異世界人。赤い目をした魔法使い。太守府現地代表。ロングストレートのブロンドに赤い瞳、白い肌。身長は130cm以下。主に魔法使いローブを着る。
『わたくし』
地球側呼称《お嬢/童女》
現地側呼称《妹分/ちいねえ様/お嬢様/愛娘》
12歳/女性
:異世界人。大商人の愛娘。ロングウェーブのクリームブロンドに蒼い瞳、白い肌。身長は130cm以下。装飾の多いドレスが普段着。
『僕』
地球側呼称/現地側呼称《若い参事、船主代表》
?歳/男性
:太守府参事会有力参事。貿易商人、船主の代表。年若く野心的。妹がいて妻の代わりに補佐役となっている。昔は相当な札付きであったようだが、今は特定の相手以外には紳士的。
『あたくし』
地球側呼称/現地側呼称《メイド長》
?歳/女性
:太守府王城に奉公する女性たちの長。ストロベリーブロンド、碧眼、白肌。異世界でも地球世界でも一般的な、ロングスカートに長袖で露出が少ない普通のメイド服を身にまとう。まだ年若いが、老人の執事長とともに王城の家政を取り仕切る。
初登場は「第11部 大人のような、子供のような。」
【登場人物/三人称】
地球側呼称《神父》
現地側呼称《道化》
?歳/男性
:合衆国海兵隊少尉。国連軍軍政監察官。カトリック神父。解放の神学を奉じる。
地球側呼称《曹長》
現地側呼称《騎士長》
?歳/男性
:国際連合軍/陸上自衛隊曹長。
地球側呼称《坊さん/係長》
現地側呼称《僧侶》
?歳/男性
:国際連合出向中地方公務員。得度した僧侶。浄土真宗らしい。軍政司令部文官。
地球側呼称《官僚/財務官僚/役人》
現地側呼称《役人》
?歳/男性
:財務省官僚。高級官僚の一族に属するらしいが、異世界転移後の官僚機構一斉粛清で大半を失った。殺された者もいると信じている。
地球側呼称《元カノ/団長/だんちょー/一尉/一尉殿》
現地側呼称《青龍の女将軍/団長/主》
?歳/女性
:国際連合軍大尉/陸上自衛隊一尉。国際連合軍独立教導旅団団長。『俺』の元カノ。インドネシア軍ベテラン兵士の副長(褐色)、筋金入りの傭兵エルフ(白ローブ)。黒副、白副の二枚看板に支えられ、ドワーフやエルフに異世界人と地球人類が同じ戦列を組む、初の多世界複合部隊「黒旗団」指揮官。
地球側呼称《三尉/マメシバ/ハナコ》
現地側呼称《マメシバ卿》
?歳/女性
:陸上自衛隊三尉。国際連合軍独立教導旅団副官。キラキラネームの本名をかたくなに拒み「ハナコ」を自称している。上官の元カノが勝手に「マメシバ」とあだ名をつけて呼んでいる。
地球側呼称《頭目/お母さん》
現地側呼称《頭目》
?歳/女性
:太守府の有力都市、港街の裏を取り仕切る盗賊ギルドのボス。昔エルフと恋に落ち、ハーフエルフの愛娘がいる。
地球側呼称《三佐》
現地側呼称《青龍の公女》
?歳/女性
:陸上自衛隊三佐、国際連合軍事参謀委員会参謀、WHO防疫部隊班長、他いろいろな肩書を持つ。日本の政権与党を支配する幹事長の娘で、父親と連携して戦争指導に暗躍している。
アメリカ海兵隊武装偵察部隊
(United States Marine Corps Force Reconnaissance、通称: Force Recon フォース・リーコン)
第3海兵遠征部隊本部グループ、第5武装偵察中隊所属。
『RECON1,to3,2』
『3』
『2』
『Zero hour』
『2』
『3』
国連軍最北端地上拠点、太守府とよばれるそこから飛び立った彼ら。
現地に唯一展開している、狙撃兵を中心とした長距離偵察部隊。
全ての戦線で需要があるチヌークのうち、太守府に展開している全機。
本来であれば、はるか後方の国連航空部隊や高空哨戒ユニットに付随しているコマンド部隊を使うべき任務。
それが、とある三佐の独断で、現地に展開している人員機材のみを使った秘匿作戦に様変わり。
つまり、ここから得られる結果を、軍に共有させる気が無い、ということ。
太守領をはるか離れた、異世界における人口過疎/非居住地帯。
レコンは直線距離で60km先まで地上進軍し、偵察し、同じ距離を戻ってくる。
必要に応じて、異世界人を偽装。
人民軍第七軍団や、革命防衛隊、国家戦略予備軍などの協力者たちを取りそろえながら、彼らでは異世界人に紛れ込めない。
情報収集は、相手を知ることよりも、相手に知られないことを中心に据える。
常に滞空監視を怠らない相手には、航空偵察を仕掛けない。
訓練された標準的な飛竜の行動半径は60km、実際は余裕を持たせて作戦範囲を決めるようだ。
この不毛な無人地帯にて、地球系コーカソイドが紛れ込める集団を動かせる。
偵察対象は、つまりそういうこと。
ヘリに乗る前に、当然作戦は熟知している。
ココから先、彼らはハンドサインと通信端末の文字のみでやり取りをする。
最後の一言が、発せられた。
『gung-ho!』
【太守府/王城/王乃間/国際連合統治軍軍政司令部窓外屋上】
五月の空は蒼い。
さすが北邦。
南が朱いってわけじゃないが。
赤い時もあるだろうが。
・・・・・・・・・まだ見たことないけど、この異世界の南の空は。
ま、同じようなもんだろ。
地球人の血も赤いが、ドワーフの血も赤い。
見たことないけど。
ともあれ。
北邦とはいえ、優しい陽光が俺を、皆を、西の山のドワーフの戦士長を照らし出している!!!!!!!!!!
俺はまだ生きている。
生きてるって素晴らしい。
人類にとってみれば小さな一歩だが、異世界にとっては大きな一歩である!
手には入った結果を見てそれを疑う人間はいない!
疑ったら非人間確定!
やりきったぞ
――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!
10歩いた、のだよ?
【太守府/王城/王乃間王乃間:青龍の本陣の隣室/青龍の貴族の寝室】
なにやってんのよ――――――――――!!!!!!!!!!
どうするつもり?
――――――――――――っと、あたしが見る間に、彼、青龍の貴族は、無造作に立ち上がり、隙だらけの背中をさらし、ドワーフの戦士長を先導
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・従えるように、露台に出てしまった。
あたしが釘付けにされながら、動くに動けないうちに。
あたしが構えるドワーフ刀。
この薄刃の斬っ先なら、厚い鎧の隙間から、間違いなく殺せたのに!!!!!!!!!!
殺れなかった
――――――――――青龍の貴族、彼に見られたからだ。
まるで付き従うように、青龍の貴族についていくドワーフの戦士長。
が、一瞬、こちらを気にした
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・かもしれなかった時。
「こい」
!!!!!!!!!!
短く、嘲りを込めた、青龍の貴族、その一言。
戦士長は、黙って窓扉を出た
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、あたしに、じゃ、なかった。
何もかも終わりかと思ったわよ!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・違う違うから!!
聴こえた気がしたの!
彼の声が!!
気がしただけ!!!
あの瞬間
――――――――――動くな、と。
あたしは、動かない、動けない。
心が凍り付いて、動けと命じることができない。
肢体がまるで、彼、青龍の貴族に操られているかのように、逆らうことができない。
あたしが凍り付いている間に、手の届かない場所に行ってしまった。
魔法なの?
魔法なのかしら??
魔法で縛られたことはあるけれど???
魔法、の時とは、なんか違うような????
彼。
青龍の貴族にかけられた、魔法。
あたしがしる、今まで見聞きして体験した魔法とは、まったく似つかない、青龍の魔法。
命じられたら、命じられるままに、なんでもその通りにしてしまう魔法?
今この瞬間まで、そんなことなかったわよね?
あの口付け(頬に)が、術だったのかしら。
出会ってから今まで、いろんなことを命令された事
・・・・・・・・・・・・・・ない、けど。
――――――――――なんか、腹が立ってきた。
「ねえ様!」
あの娘が涙声で哀願してくる。
あたしは、あの娘の頭を撫で
・・・・・・・これはできるのね・・・・・・
――――――――――――――――――――――――――――――でも、青龍の貴族、その呪縛は解けない。
こんな時に限って!!!!!
なんてことかしら!!!!!!!
別なときなら、なんだって言うとおりにするのに!!!!!!!!
「ねえ様!動けません!!!」
あの娘にまで、術を????
「動いたら、ご主人様に嫌われちゃう!!!!!」
あたしの肢体が、勝手に、震えた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え。
【太守府/王城/王乃間王乃間:青龍の本陣の隣室/青龍の貴族の寝室/扉口】
わたくしは、そ~と、前に出ます。
慎重に、慎重に、しんちょ~~~~~~~~~~~~に。
寝室から顔だけ出しますと、露台にに向けた側は一面が窓扉。
鎧戸は開き切り、カーテンは開かれ、ご領主様の姿がのぞけます。
わたくしの視線を遮るドワーフが、邪魔、ですわね。
覗けるということは、覗かれるということ。
ご領主様、せなを向けてらっしゃいますけれど。
もし、ご主人様の眼にとまったら?
・・・・・・・・・・・・・・・・・きっと、もうばれてますわね。
青龍の方々は、ご領主様は、遠く離れたところから、過去のある時に至るまで見通していらっしゃいますし。
何もかも、わたくしが生きてきたすべての瞬間を、独りで思い煩う時間も、ご存じなのでしょうか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嬉しい。
でも、そこまで関心を持っていただければ、ですわね。
そのまえ、に。
ご意思に背いたことは、見ていらっしゃらなくとも、ご存知ということ。
なら、そう、しかたがありませんわ。
――――――――――――――――――――――――――――――肢体を投げ出して足元にお縋りして哀願して嘆願していっそ殺していただけるまでお情けをいただけますようにご奉仕するのみ!!!!!!!
あ、あら?
ねえ様??
すたすたと前に
・・・・・・・・・・さすが、ねえ様!!!!
その勇気に憧れます!!!!
わたくしたちの見本にして規範たる方ですわ!!!
銀糸の髪から覗いているお耳が真っ赤!!!
気力を振り絞っていなさいます!!!
わたくしは、そしてあの娘は、ねえ様のせなに隠れて窓に駆け寄ります。
その先に、メイド長が背中を向けておりますけれど、さりげなく、わたくしたちを隠しながら視界を空けてくださいました。
お見事
・・・・・・・・・お仕えする、という意味では見本とさせていただきますわ。
わたくしたちの、わたくしの前に、偶然に事故で偶々ご意思によらずして、ご領主様の唇に、その唇を接触してしまわれていることなんか、妬んでませんわよ?
※百万文字以上前〔第11部分 大人のような、子供のような。〕 より
ええ、ご領主様から艶のある視線を時々まれにいただいていることなんか、少ししか気にもなりませんわ。
内心を隠して表情を変えないで見せているのは、とても真似できなくて、すごいことだと思います。
わたくしたちの応援を買って出ていただけるのですし、感謝もしておりますのよ。競争相手であるとか、障害物であるとか、敵であるなんて思ってませんわ。
だいたい、嫉妬なんて、ご領主様に、赦していただけませんもの。
だから、きっと、ぜったい、ぜったい、メイド長より大きくなって見せます!!!!!!!!!!!!!!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――本当に。
【太守府/王城/王乃間王乃間:青龍の本陣/露台側窓扉付近】
あたしは距離を測る、までもなく、遠いわね。
これじゃダメ。
彼、青龍の貴族は、緑色をした青龍の騎士服。
防御力皆無の背中に、張り付くように付き従うドワーフの戦士長。
戦士長の傍らには、戦斧。
広い室内でも、そばの卓や椅子が取り回しを制限する。
屋外にはそんなものは、ない。
今朝はまだ、洗濯物も干されていないのに!せめてそれさえあれば、風を受ける音に紛れて距離を一気に詰められるのに!!
今、あたしが跳び出したら、先に戦士長の攻撃が彼に届く。
振り上げるだけでその切っ先が、青龍の貴族、その背を割る。
さらに悪いのは、ドワーフ一般の斧は、戦士長のそれを含めて先端が槍先になっていること。
最悪なのは立ち位置。
あたしが届かないってだけじゃないわ。
青龍の貴族は、露台の端に立っていること。
胸壁もなく、一押しすれば真っ逆さま。
いつも傍らを、青龍の貴族を守っている、青龍の騎士、いない!!!!!
騎士長もいない!!!!!
伏兵
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なし!!!!!!!!!!
完全に、孤立している、彼。
そうあっていいはずがない。
こんな場所に出ているのだから、この邦の持ち主なのだから、彼自身が認めなくても青龍がそう決めているのだから。
絶対に、護られて、危険を冒しちゃいけない。
はずよね?
いくら青龍でも、そのはずよ。
―――――――――そんなこと気にする人じゃ、なかったわ―――――――――――
あたしたちのことは気にしなさいよ!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・自分の物だって、言ったくせに。
青龍の力故に、実は安全、とか?
青龍の貴族は、魔法で引き裂き貫き破壊できる。
でも、あたしが知る限り、正面の敵しか潰したことがない。
実は背後にも、力を発揮出来る?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ないわ。
あたしには、解った、何故か。
あれは、あの、青龍の貴族の感じは
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何も考えてない!!!!!!!!!!
なのに、なのに、ドワーフの戦士長に、背を向けて
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ドワーフの戦士長は、あからさまに戸惑っている。
でも、すぐに気が付く。
見通しが利く場所に、たった2人っきり。
例えば生きて帰れなくとも、もし万が一仮に何かが起きようものなら、あたしが戦士長を殺すとしても、青龍の貴族を殺せる。
戦士なら、騎士なら、男なら。
この邦の歴史を変える。
この邦を滅ぼす。
こんな誘惑。
耐えられる?
あたしは、見てることに耐えられない、もう、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・彼、青龍の貴族が伸びを、した。
――――――――――斬りたい!!!!!!!!!!――――――――――
――――――――――――――――――――ばかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――
【太守府/王城/王乃間/国際連合統治軍軍政司令部窓外屋上端】
歩き切った俺は、思わず伸びをして、フリーズ。
背後の殺気は、人生で初めて感じるはずなのだが、なんとなく懐かしいような?
高校生くらい、学生時代、似た様な気配を感じたような?
だがしかし、操り人形のようなカチコチの体が、春の日差しを受けて反射的に伸びてしまったのだ。決してエルフっ子に斬られたい訳ではないのでご理解たまわりたい
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ドワーフの戦士長に斬られなかったのは、奇跡だな。
ちょっとした動作に釣られて手がでるというのは、大いにあり得ることだ。
なぜか軍政官訓練キャンプでは、人質交渉の訓練までさせられた。
当たり前じゃないかって?
見敵即殺の国連軍。
疑わしきは砲撃爆撃科学攻撃な国連軍。
見るな見せるな聴くな聴かせろ触るな寄らせるなの国連軍。
そーいう、敵対的な集団や個人と話し合うような、話を聴くような、信頼関係を創るような印象ないよね?
帝国軍の捕虜は、普通に投降してくる。
初期の初期は、そうでもなかったけれど、国連軍も相手に投降させる余裕なんか与えなかったし。
開戦から、三カ月。
思えば遠くへ来たもんです。
だが、そんなわけで、一応技術はあるのですよ。
そこで教わってはいるのだ。
突然の挙動は、相手を刺激するので避けるように。
刺激に対する反応はしばしば攻撃的なものになり、相手自身も意図していない偶発戦闘を生じさせる。
絶対に避けること。
動きは緩慢に、大きな身振りで、相手に見やすいように行わなければならない。
ほら。
覚えてる覚えてる。
身についてないけれど。
しかし、やり遂げたってことで、一息つくのは仕方がない。
目先の事だけ考えて、目先の片付けていれば、人生は終わる。
ハッピーエンドとは限らないが。
今、人生で、俺が初めて価値を持った一瞬。
まさに。
俺が俺の役に立ったのだよこれが。
もちろん、俺以外の役に立ってもしかたが無いじゃありませんか。
俺は何者か?
哲学じゃないから、ご安心。
国際連合統治軍大尉軍政司令官。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・陸上自衛隊では三尉にすぎないとか、箔付けの為だけに軍政将校は階級を水増しされている、なんてことは関係ない。
異世界ではそんなことは、知られていない。
主に占領下の異世界住民向けのハッタリなんだから、当たり前だけど。まあ、同じ国連軍の戦闘部隊向けの要素も、多少ある。
任務が違うために、戦闘部隊と軍政部隊は編成が分けられている。
だが国連軍支配地域である限り、指揮下にない戦闘部隊は必ず通過したり滞在したりする。
占領下では軍政部隊の方針が優先される、と決まってはいる。
が指揮系統が違うし、なかなかスムーズに行きにくい
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・らしい。
このあたりは米軍の経験則。
だからといって、その都度編成替えなどしてられない。そんなこんながありまして、問題化する前にとられた予防策。
所属が違う部隊を、影響下にまとめるためには階級が一番!
軍隊の共通言語は階級章!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・多国籍軍で、苦労したんだろうな。
民間軍事会社みたいな、傭兵モドキのまだ生きてる死体袋のクセに脚を引っ張るところだけリアル、現地部隊で個別に処理するのが面倒で敵兵士よりたくさん殺したYO!
なーんて愚連隊風情の悪口は山ほど聴いたが神父から
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とまあ、様々な配慮から生まれた、建て前の大尉。
それが、俺。
しかししかし。
一見すれば、この邦にいる国連軍の中で、一番
――――――――――偉い。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、嘘じゃない、ですよ?
分隊規模の現地軍政軍では一番高い階級です。
一尉(元カノ)が率いる、本隊まで含めれば旅団規模の独立教導部隊(元カノの子分、黒旗団)が居るけどね?
指揮系統なんか無視して、第七艦隊や三沢のF-16やらWHO防疫班(陸自や在日米軍NBC部隊)に標本集めに勤しむ国境越え医師団
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・を操る三佐なんか、一般的言い回しなら少佐で大尉の上とか。
アレ?
俺って下から数えた方が早くね?
指揮下にある人数は、だいたい曹長が指揮してるから、片手の指で足りる。
一人目は
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・グーで足りるね、指揮してないね。
なら、俺が指揮官じゃなくてもいいわけで。
例えば、偉そうで上から数えたら五本指に入る三佐。
この邦を占領して上手く回す、前に仕事の整理で消毒しそうですね。
はい、間違っておりました。
陸上自衛隊一尉、兵隊さんの位で言えば大尉、な元カノなんかベスト。
実質階級なのに俺と同格。
国際連合軍で軍功一番!
何かしている、と言えばまさにコイツ。
帝国一の魔法騎士を討ち取って、帝国最強傭兵団を配下にして、どこのヒロイックファンタジーかと。
他にも帝国支配圏に突撃して捕虜を奪還したり、ついでに帝国軍とガチでやり合って街が無くなったり、軍規違反の陸自幹部と配下を独断で拷問処刑したり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・YESかShot(射殺)か二者択一。
いかん、どこの○帝か。
愛など要らぬと、絶対に認めない聖○。
ならピラミッドに埋められるのはお
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、仕方ないね。
異世界は広いしね。
オマケ自衛官の俺が、しばらく、なんとなく、役目を押し付けられるのも三佐が悪い。
だがしかし、だからこそ、役にたつこともある!
ってか、あった!
ついさっき。
俺が進めば、ドワーフの戦士長も進む。
俺がテラスに出れば、続く続く。
今はすっかり端っこまで進んだよ。
どこまで釣られてくれるのか、さすがにこの先は試せない。
俺は、つまり、囮、オトリ、ルアーみたいなモノ。
国際連合統治軍大尉軍政司令官
・・・・長い。
西の山にガス攻撃を仕掛けた、ドワーフたちにとって恨みの主犯。
この邦を蹂躙して占領して好き勝手している異世界からの侵略者のボス。
ああ!
国際連合統治軍軍政大尉にして軍政司令官!
この肩書きがなければ、こうは上手く進むまいことを断言出来る。
俺だけだったら、スルーされてお終いだ。
階級が無きゃ釣れなかった。
俺単体なら、無視するか踏み殺されるか、追い出されておしまい。
俺は何者か?
肩書きというルアーを付けた釣り針の糸、というていどは自負してもいいだろう。
実質的に部隊指揮を何もしていないのは、さらにプラスポイント。俺が囮として活動中、誰にも迷惑がかからないってこと。
これはなかなか、普通の将校にはできないと思われ。
囮になる前から役に立ってたかっていうと黙秘するけれど、今日この日の為だったと考えたらアリじゃないかな?
これは凄いことだよ?
俺より遥かに強い、筋肉だるまなドワーフを、広い屋上のような実質物干し台におびき寄せたのだ!
Mission complete!
これで安心だ。
ここまでくれば、エルフっ子も届くまい。
シスターズもColorfulも、メイドさんたちも届かない
――――――――――ドワーフの戦士長に。
つまりドワーフの戦士長からも届かない訳だ
――――――――――俺以外に。
あれ?
※ここから先の文章は作品を楽しんでいただく上で必須な内容ではありません。
※ネタバレでもありません。
折り返しを過ぎようとしている今日この頃、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。
100万文字オーバーの作品にお付き合いいただきありがとうございます。
日々、本作の執筆にご協力いただきありがとうございます。いえ、自覚なさっているかに寄らず、作者ににとってはそういうものですので。
そろそろ中盤も過ぎ、この作品で目指していることの一つをお伝えさせていただこうと思います。
まだ中盤なのかって声もあるでしょうが、まあそれはそれとして。
それは、作中人物の表現に対する目標です。
もし、
「異世界」
と表示を張られた書割の中で
「コスプレした現代日本人が動いている」
様に見えてしまっていたら、失敗です。
もし、
「異世界」
の中で生きる登場人物の視線が
「違和感は感じるが、それなりに納得できる」
と感じていただければ成功です。
もし、上記に加えて
「違和感はあるけれど、共感できるところもあるな」
と表現できていれば大成功なのですが。
さて、いかがでしたでしょうか?
結末までまだまだ話が控えていますので、ゆっくりとお楽しみいただきつつ、時々思い出していただければ幸いです。
では、来週もまたお会いできますことを。




