Rules of Engagement/ROE/交戦規程
All Weapons Free.
《国際連合軍事参謀委員会作成/交戦規程》
【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/正面通り】
俺の人生はこうあるべきだ。
穏便に。
安全に。
そして怠惰に!
ふっ。
見るがいい。
笑顔の寸前で留めた曖昧スマイル。
適度に緊張していないが礼儀正しい直立。
背中を支える拳銃の重みは、あくまでも、御守り。
相手の話を傾聴。
肯定とも否定ともとられぬサイレントアクション。
話の継ぎ目を狙って怒涛の反撃。
こい!世紀末ヒャッハー伝説!!!
日本公務員流窓口応対術!クレーム流し!!
【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/一階玄関脇窓際】
あたしは矢に呪文を唱え、結界を抜けるようにする。
青龍の貴族は一歩下がれば結界内に退けるし、先頭の男を射殺せばヤツらは止まる。
止まったところを狙えば、全員仕留められる。
とはいえ、青龍と気が付けば逃げ散るだろうけど、ね。
【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/正面通り】
「要はな、赤目呼んで来い」
要約にもなにもなっていない。
「聞いてんのかウラァ!」
モヒカンじゃないのが残念だ。
「アー?」
凄んだ奴を傍らの男が制する。
「奴隷にはちゃんと仕事を教えないとな」
いや、聞いても意味はないんだが。
後ろの一党を見回す。似たような男が八人、頭一つでかいコイツはリーダーだな。分かりやすく肉体派。
頭が悪いから後続はなし。
得物は棒、棍棒、これ見よがしなナイフ。長モノと近接がバラバラ配置。ハイ、経験も訓練もなし。
脅迫止まりか。
「いいかー!俺たちから誇りを奪った帝国は滅びた」
滅びてねーよ。
「赤目は帝国の侵略者にケツふってた売国奴、裏切り者なわけだ」
バカの他は連中にしなだれかかる女が三人、離れた場所に別な女が五人。
ん?
「同朋が、仲間が、虐げられている中で侵略者に加担するなんざクズだろ」
血色が良く、センス以外は悪くない衣装。
元気そーだな、おまえ等は。
離れた五人の女はボロをまとい痣や血痕をつけていた。
「だから俺たち愛国者が裏切り者に罰を与える」
はい、出ましたー!『愛国』キター!
「おい奴隷、意味はわかんだろ?」
俺そんな『立派』な人間じゃないんで。
国(民族、自衛隊/会社、友人、家族でも可)の為に俺がいるんじゃねーよ。
逆だ逆。
「おめーも賛成だろ?」
俺は。
だんだん。
めんどくさくなってきた。
【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/一階玄関脇窓際】
あたしはここまで命知らずなやつを初めて見た。
青龍の、しかも、青龍の貴族相手に、肌や髪の色がどうだと下卑な野次を飛ばしているバカども。
金に不自由がなさそうで、自制心がない、小金がある職人か商家の餓鬼ども。
親の言いつけに逆らう覇気などないが、従う理性もない。
・・・参事会の布告で外出禁止・・・今日になって・・・まさか、ヤツら、青龍を、し・ら・な・い・・・・の?
【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/正面通り】
後ろの女たちは、数珠繋ぎに縛られてるね。
「あ?ああ、あいつ等みたいにな。帝国兵に股を開いていた淫売どもだ」
ああ、そ。
まあ、コイツが視線に敏感なのは判った。そういえばチラチラ周りを見てるな。
仲間や敵の視線が気になる臆病者か。
見栄一つのために人を殺しかねない、な。
男にまとわりついていた女達が嬌声を上げる。
「赤目に言って結界とかせろ。ずっと見張ってるぞ?逃げられやしねえ」
結界、か。結構丈夫なんだな。
棍棒で破れないなら拳銃くらいいけるか。『試したい』って言ったら、エルフっ子に叱られるかな?
「結界の中なら安心か~?飢え死にするまで閉じこもる~?」
「それとも青龍に吊されるか?呼んできてやるよ!青龍は魔法なんざ気にしねぇぞ?俺たちは恩賞でもいいぜ」
「大丈夫よ~赤目チャーン。お姉さんがくわえ方教えてあ・げ・る」
「まずは俺たち愛国者が教えてやるよ!ヒャハハハハハ!」
なるほど。
よく判った。
第二次世界大戦の記録映像。『解放』直後のパリ。丸刈りにされて街中で暴行され晒された女たち。
『ドイツ軍人と付き合った』罪で『ドイツ軍人に服従していた市民』にリンチにかけられた。
数ある歴史の醜悪映像で、掛け値なしに、一番、醜いソレ。
同じ景色、吐き気がする光景。俺はつぶやいていた。
「死ね」
『Sir!Yes,Sir!』
は?
【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/一階玄関脇窓際】
あたしは理解した。
あのクズどもは危険だ。自分たちが相対している存在を理解していないバカ。
何も知らないからこそ、たやすく暴力をふるう。
青龍の貴族とて人間。
ナイフが刺されば死ぬ。
あいつが危ない!
とっさに飛び出し矢をつがえ、凍り付いた。
【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/正面通り】
のしかかるようにこちらを睨みつけていた大男をとっさにかわす。
いや、突っ込んできたからね。
だが、そうではないとすぐにわかった。振り返れば胸にザックリと開いた穴。
射出孔。大口径小銃弾頭。
「アニキ!」
喚いたひとりが駆け寄る。俺の傍らで潰れた体の下から広がる血潮。
「テメー!!」
駆け寄った男のタガがはずれる。棍棒をふりかぶって爆散。
弾頭変えた?
胴体だけが倒れ込んでくる。反射的によけた。血を浴びるわけにはいかない。
ドッジボールは得意だったのだよ。
小学生以来だが。
「ヒャー!!」
ヤバい。
奴らの真ん中に出てしまった。怯えたバカの真ん前。
振り下ろされる角材を左腕で防ごうとしつつ腰の拳銃に手を伸ばす。
骨折コースにはならなかった。
バカは背後から突き飛ばされた。身を低くしていた俺はそのまま受け流し側背にやり過ごす。
グチャリと嫌な音がして背中に射入孔を空けたバカが口から血を吹き出した。
軟頭弾かよ!
周りを見回す。左手のナイフを構えたバカが震えながら固まっている。
胴体が千切れ崩れ落ちた。
銃を替えながら撃ってる?曲撃ち射的か!
その隣のバカが奇声を挙げてこちらに走りだそうとして顔が砕ける。
血を飛ばすなって。
前の三人はすがりつく女を引き剥がし逃げ出したら、揃って右足が千切れ地面に転がる。
そのまま縫い付けられるようにトドメ。
標本みたいな最期だな。
【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/庭】
あたしは聴いた。
「死ね」
青龍の貴族がつぶやく。
目の前にいたチンピラの首領。胸をえぐられ臓物の破片を撒き散らして倒れた。
眼にも止まらない動き。貴族は他の連中をゆっくり眺める。
激昂して殴りかかるチンピラの頭を一振りで弾く。
そのまま奴らの中に踊りこんだ。
襲いかかるチンピラ。下からすくい上げるように胸を穿ち背後に振り捨てる。
ナイフを構えた相手をしばらく見つめた。チンピラはナイフを捨てる頭も回らない。
おもむろに胴を千切る。
悲鳴をあげて刺しかかるひとりは一睨みで顔を砕かれた。
青龍の貴族は逃げ出そうとした三人には目もくれなかったが、女の悲鳴に視線を向けた。
連中が自分たちの女を突き飛ばして行くのを見る。
ため息をつきながら三人の足を砕き、のたうち回る一人一人にトドメをさした。
【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/正面通り】
俺は深く息を吸う。ふかーく息を吐く。
深呼吸。
スッゴくドキドキしてるよ。
目蓋を閉じている。
みていたら叫び出す自信がある。
Cooldown、Cooldown.
軍政地域交戦規則。
治安維持に関する規定は・・・司令官判断による強制力行使「全兵装使用自由」。
よしっ。
・・・よくねーよ!だからフラグたつんだよ!!虐殺フラグ!!!
ルール通りだから僕わるくない・・・絶対つうじねー。
交戦規則のハードコピーくれなかったしね!!
腐れ役人が「個人的判断と本人が自供しました」って言うのが目に浮かぶよ!
視線を逸らしてピンマイクに集中。オンだった。
「レコン」
『Sir.Yes,Sir.』
「よくやった」
『・・・YA!』
『こちらレコン1。狙撃は3の功績です』
「感状を申請する」
『背後からエルフ、左手角から騎馬のお迎えです』
【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/正面通り/人体破片外側】
あたしは銃を持ってゆっくりと歩み寄る。
「もういいわ」
青龍の貴族が食卓に置いていった銃を渡した。
昨夜、寝る前に「銃に触るな」と言われ名前がわかった。あたしが戦場で見たシロモノより小さいが、使い勝手は良さそうだ。
騎士達が持つのも銃なのだろうか?
まあ見様見真似で使う気にはなれないが、気持ちだけ感謝。
周りに敵はいない。馬が5頭、人が5人近づいてくるが会話(怒鳴り声)からして問題ない。
青龍の貴族もわかっているのだろう。身を隠さずに見据えている。
まあ、敵が相手でもこうかもしれないが。
ゆっくり見聞。
もの言わぬ8体。胸や背中を抉られたもの。頭を砕かれたもの。脚を砕かれて頭を潰された者。
刃金の抜き手を刺され、内臓を握りつぶされて、抉り出されたような。
生き残り。
縛られ組はともかく、腰を抜かした女どもは怯えきっており動けないから無害だ。
そして青龍の貴族の動きを思い返す。
最初は無関心。
チンピラどもの戯れ言を気にも止めなかった。見下しすらしない、見たまま無視。
無視されたチンピラはわざわざ青龍の逆鱗に触れた。
一瞬の殺意。あたしはそこで凍り付いた。
三人を瞬殺。
殺意は消えて戸惑いが走る。
まるで『なんで死んでる?』と言いたげな。
『わざわざ挑んできたのだから、対抗し得る力をもっている』
と考えた、のね。
降伏しない一人と逆上してかかってきた一人を瞬殺。
そして、青龍の貴族はチンピラどもへの興味を失った。
殺意や敵意はおろか、視線すらむけない。
期待ハズレどころじゃなかったろう。
無視されたチンピラ三人が逃げ出す。
女の悲鳴。
すがりつく女たちを振り払って逃げ出す醜態。
青龍の貴族は、ため息。
そして『見るに堪えない』風に視線を泳がせながら三人を潰した。
八人。
最初から最後まで、竜殺し、いや、ジュウも、剣も弓も何も使わずに。
力の差がありすぎて『殺す』感覚もない、のか。
だからやる気をなくしてから全く殺気がなかった。
最初の一瞬の殺気、だけ。
その後、あたしが感じたのは、べつな、そう・・・害虫を潰すような嫌悪感。
『足の下で潰れた虫が視界に入った』感じ?
青龍の貴族がゆっくり、深く、ため息をつくのも納得だ。
バカばかり。
泣いて許しを乞えば助かっただろう。
ただ逃げれば無視され、結果的に見逃されただろう。
そもそも家に閉じこもっていれば良かったのだ。
赤龍が青龍に逐われたのに便乗し、欲に任せて狼藉三昧。
当の青龍の外見も動向もを全く知らずに。
挙げ句の果てに青龍そのものに喧嘩を仕掛けた。
殺し合いしか眼中にない相手に喧嘩。
生まれてくるなバカ。
【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/正面通り/人体破片中心】
俺はレコンに言われた通りに目を凝らす。
までもなかった。
街角から現れた騎馬。
剣を馬に、だが防具はつけていない。
衣装もまちまちだが丈夫そうで動きやすいところが揃っている。
周りに散乱しているものの生前とは違い、手ごわそうだ。
まあ、どっちにしろ、俺はかなわないけど。
目の前の惨状。
血溜まり。
散乱する死体。
血まみれの女たち。
縛られ怯えた女たち。
ただなかに立つ俺。
銀髪の少女。
・・・どう見えてるんだろ。
騎手たちは手前で降り、ゆっくりと近づいてくる。
血まみれの女達が転がるように騎手にとりすがる。
ヤバいか?
「助けて!」
「バケモノよ!」
「人殺し!」
うーん、否定できないね。でも意外と傷つくね。
いままでフィクションで散々見た『バケモノ扱い』って、こんなにクルもんだったんだー・・・はぁ。
足元に這いつくばる女を抱き起こし、先頭の騎手が俺を指差した。
「バケモノで人殺しでキミを脅かす訳かな?」
女は頷いた。
「す、素手でみんなを引き裂いたのよ!人間じゃないわ!!」
支えの手を離された女が足元に崩れた。
「え?」
え?
俺、フリーズ。
バクァ。
女は大きくのけぞって後頭部から道に叩きつけられた。蹴り上げられた顎は砕けただろう。
取りすがった女を全力で蹴り上げるってナニモノ!?
「無礼者を捕らえろ」
他の女二人も、騎手達に腹や顔を蹴り上げられ、踏みつけて抑えられた。
騎手はゆっくり歩み寄り恭しく跪く。
俺に。
何故。
「ご領主様、ご無事でようございました」
俺?
フリーズ中。
跪いたまま顔を上げた。
ごついおっさんキター。
「わたくしどもは参事会衛兵にございます」
背後の四人を指した。
「あれなるは我が配下にて。礼を略す事をお詫びします」
二人が女を抑えつけ、二人が周りに視線を走らせていた。抜けるように構えているが、剣を抜いてはいない。
こりゃ手ごわい。
【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/正面通り/人体破片外側】
あたしは騎手たちを見た。
普通ならチンピラが敬遠する衛兵の紋章付に女たちがすがった。そして容赦ない、手馴れた暴力。
なら衛兵を率いる男は顔役だ、裏側の。
チンピラに顔が利く者が参事会衛兵を名乗るなら盗賊ギルドか。
あたしが知らないってことは不在中の短い間に台頭した?しかも新領主護衛という最優先任務にあてた。
ならギルドマスターの直轄だろう。
「あれを城へ」
青龍の貴族が縛られていた女たちを指した。
「それの片付け」
死体の山には目も向けない。
「かしこまりました。して・・・」
取り押さえられている女たちを見る衛兵頭。
「誘拐犯だ。この土地の決まりで裁くといい」
「かしこまりました」
訴追も判決も領主の権限、つまりは有罪確定。刑罰は領主から特段の指示がない限り先例に従い執行される。
誘拐は絞首刑。
「城に帰るが準備はできたか」
貴族はあたしに向き直った。
【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/正面通り/人体破片中心】
俺は惨状に目を向けないように視線を集中。濃厚な血の臭いが鼻を蝕む。
くしゃみがでた。
もう、ホラー映画には復帰できないな。B級特有のスプラッタ。出来映えと血肉描写は反比例。
アア!マヌケが作ったカスフィクションを楽しめないなんて!
労災だ!労災だ!
まったく、ついてない。
派遣適応訓練で豚の臓物をまき散らしたフィールドで野営や食事をした。
『人間も豚も同じ』
臓物の色と感触は、なんて無駄知識を得る羽目になろうとは。
色も臭いも吐き気も慣れやしない。
変わったのは我慢出来るかどうか。
兵士の前で士官が醜態を晒せば死ぬ。
自分も兵士も。
ましてや子供を巻き込めない。
あーニートになりたい。
誰の役にもたたずに気軽に死にたい。
仕方ない。
俺は血を避けながら・・・血の海に浮かぶ小島のようなナニを踏みつつ・・・まあ体内に取り込まなければパンデミックは大丈夫だと言い聞かせ・・・血と肉片を避けつつ、魔女っ子の家に戻った。
このまま家に入るのはまずいよね。
バケツに水でも頼もうかな?
【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/正面通り/人体破片外側】
あたしは昨日を思い出した。
自分の命を狙った暗殺者を殺し、その遺体に敬意を払い、遺族を傷つけることを禁じた青龍の貴族。
今日、同じ青龍の貴族がチンピラを潰し、その死骸を不快感も露わにして踏みにじる。
敵に敬意を。
愚者に侮蔑を。
理解出来なくは、ない。
力を尽くし戦った相手に敬意を抱く。
反対はないだろう・・・実際に行動出来るのは少数派だろうが。
愚かにも天に唾する無知蒙昧に嫌悪を。
これも反対はない・・・皆殺しにした上で力いっぱい踏みにじるのは、大人気ない、か?
あ、ああ、そうか。大人、ではない、か。
おそらく、青龍とあたしたちの感じ方は近い。
快不快、美醜、尊蔑・・・そこから至る行動が違う。
開けっぴろげな賛美。
真っ直ぐな侮蔑。
拘らず。
根に持たず。
子供、だ。
無表情で。
無口で。
強大で。
無頓着。
そして、子供。
あたしは、知っている。
似ている、いや、同じ、ような、存在。
親から、長老から、書物で、そして・・・・・・・神殿で崇められていた。
【日本列島/東京/国会議事堂衆議院議場】
国際連合平和創造活動における作戦内容、作戦結果、彼我の被害損害現地における民情その他は国際連合の活動でありまして、その詳細な分析報告や数値データ、観測結果などは国際連合軍事参謀委員会が管理するものであります。
日本の公務員、特別職国家公務員も含みますが、国際連合に派遣された上では国際連合の守秘義務に制約されます。国政調査権が国外に及ばざることも付言しておきます。
日本政府は国際連合規約の尊守を条約で国際社会に対して約束しており、その義務履行を規定した条約は国権の最高機関である国会の承認を得たものであります。
日本国政府が憲法の規定を一字一句たりとも違背すべからざることは、議員諸氏らも同意いただけるものと確信しております。
よって、外務省、防衛省、その他日本の省庁は開示すべき情報を持ち合わせておりません。
国際連合の活動は国際連合にお尋ねください。
内閣各省庁への請求喚問質問主意書などは、はなはだ残念ながら、立法府議員たる諸兄の労力をいたずらに空費することであり政府活動のささやかな浪費であります。
国際連合広報担当へ質問し、ご希望の回答が遅延調整整理待ちであろうとも
「再建間もない国際連合の事情を反映している止むを得ざる状況あることをご理解くださいますように」
と国連事務総長より説明を受けておりますことをご報告させていただきますとともに、安全保障理事会理事国各々より懸念が表明されており、各国の賛同を得て国際連合軍の基本方針を策定している合衆国大統領より
「戦略判断に必要な情報以外の整理をすれば在日米軍はすべて事務に当たらざるを得ないがよろしくて」
と確認を求められております。
当然、政府はそのような必要がない旨回答いたしました。
国際連合広報担当がチュニジア出身で日本語が堪能ではない旨に疑義を挟む言葉がありましたが、差別的、そうみなされかねない言動は一考を願います。
更に、日本語の優先的導入に関しては、汎人類的組織である国際連合にわが国だけの都合をゴリ押しするかのごとき様相と見えまして、いかがなものかと思われます。
国際連合公用語すなわち英語、仏語、露語、北京語、スペイン語、アラビア語で質問されることをお勧めいたします。
無論、常任理事国として、国連加盟国の一つとして、国際連合、総会、安保理、事務局、軍事参謀委員会並びに広報部へさらなる一層の広報努力を求め、皆々様方の知る権利を尊守すべくこれまで同様かつなお一層の努力をお約束するものであります。
そしてなお、現在の状況、我が党の国連中心主義が国民主権を阻害するとの疑義がありますれば、与党連合代表者会議の賛同を持って、民意を問うことをためらうものではありません。
その時は、立法府の一員、一衆議院議員として解散決議に賛成票を投じるものであります。
【日本列島/東京/国会議事堂衆議院議場傍聴席】
ナニ言ってるかわかります?
「一切記録にございません」さ。
あ、始まった。国対のブロックサイン。
(拍手と賛同する与党連合議員の歓声で何も聞こえなくなる)
ナニ言ってるかわかります?
「採決」さ。起立採決で決議が却下される。
予算委員会から回ってきた「国連平和創造活動に対する調査/情報開示請求決議」はこれでお終いですか。
通年国会で会期が変わらない以上、同じ決議は出せないからな。文言を変えて提出しなおすことはできるが、同じことの繰り返しだ。
却下では?
いや、幹事長は疑惑追及派に無力感を焼き付けるために、ワザと本会議まで開いたんだ。心が折れるまで何度でもやって見せるだろ。
民間人殺傷疑惑や国連軍活動への調査は?
有権者が気にしない限り議員たちも気にしない。与野党の選挙情勢調査で今週も与党圧勝だそうだ。
統一地方選挙から流れ変わらず、ですか。
マスコミも報道しないだろ。
あれは、官庁から情報と指導がないから身動きが取れないだけでは?
それもあるが「ニーズがない」ってのも事実だ。
解ってないんですかね。
バカ言うな。みんなわかってるさ。
みんな?
選挙権があるほどの常識があれば、な。
なら・・・。
国会議員は知らないふり。有権者は気が付かないふり。お互いに何が必要かわかってるからこそ暗黙の了解。
「選挙民以上に賢明な集団はいない」。
どこぞの幹事長の迷言だな。まったくもってその通り。爺婆から少年少女まで大方の日本人は大陸で何が起きてるか察している。それが自分たちに必要な結果をもたらすことも解っている。
いつもそんなに賢明でしたか?
まったく平常運転さ。他人の戦争には冷淡でできるだけ非協力を貫く、自分の戦争には熱心でできるだけ協力する。これほど正しい利己主義があるか?
え?
「自分の戦争」だ。久方ぶりの、間抜けな他人の尻拭いのお付き合いではなく、日本の戦争というわけだ。
ああ、なるほど・・・戦後初の自分事、というわけですか。
我が同朋が、エゴに徹しない利他主義の国家だとでも思ったか。
察しの悪い連中をあたたかく見守る度量もある?
そいつらはいざというときの免罪符になる。
いざ?
暗黙の了解が壊れたときに、そいつらの追及に便乗して、「なかったこと」にするのさ。
・・・・・・大衆は賢明だ。




