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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第一章「進駐軍/精神年齢十二歳」

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18/1003

愛されるな。憎まれるな。畏れられよ。



「マスタードある?」

「ケチャップもマヨネーズも揃ってますよ!」

上官を見上げる女性兵士。三佐の階級章を付けた上官は信じられないモノを見る視線。

「マヨネーズ?」

「あー何ですか!おいしーじゃないですか!」

可哀想なモノを見る直滑降な眼。

フランクフルトにマヨネーズは是か否か?

兵士にとってそれは重要な問題だ。

「あーアレですね!三佐殿は御飯にシチューが許せない方なんですね!」

「当たり前でしょう!牛乳に白米なんて冒涜です!」

キレた。

「ドリアはどーなんですか!」

パワハラには屈しない!

労働者の鏡。

「御飯と米を一緒にするんじゃありません!」

「どーちがうんですか!」

攻勢と防戦。

「米は素材!御飯は料理!料理に手をくわえるんじゃありません!」

大攻勢。

「じゃあカレーはどうすんですか!」

反撃。

「カレーとカレーライスを勘違いするんじゃありません!」



まさに、文明の衝突。

エスカートするままに最終戦争に至るまで。

キノコとタケノコいずこにありや。


ちなみに

『文化的(宗教、慣習、法律)禁忌への抵触を回避するため』

『化学薬品ほかの体質適合、アレルギーの判別方法がないため』

地球産糧食を現地人に提供することは禁止されている。


四足がダメ、デビルフィッシュ禁止、アルコール、一見豚肉、一見牛肉、魚、調理法や屠殺方法や収穫方法などなどなど可能性を考えたらきりがないため。

逆に地球人が現地食材を摂取する分には判別管理が比較的容易なために手順を踏みながら拡大している。


それでも「テイク・ユー・プリーズ・チョコレート!!」をやらかすバカはいるが少数派。


おかげで『キノコ×タケノコ戦争』の異世界拡散は阻止されている。

いまのところ。



「糜爛性ですか」

将補が一言。

「シチューライスなんか・・・そうソレ」

「は?」

見つめる女性二人。

「水脈は?」

気を取り直した三佐が質す。

「深いです。井戸を除染処理しますが、影響はあり得ません」

三佐が指差す。

「2~3千ね」

将補が頷いた。

「逃げ場は塞いで時々牽制していますから」

「戦意十分」

そして、天候も安定。

「明日」

将補は頷いた。

「街道から歩いて見られる距離、ですか」

女性兵士が呟く。

「看板設置に最適でしょう」

帝国軍の殿部隊がたて籠もる古城。街道を管制可能な位置に居座り、国連軍を引きつけ、本隊退却の時間を稼ぐ。

「立派な人たち、なんでしょうね」

鍛え抜かれた精神と肉体。

死を覚悟してなお使命を果たす意思。

時代が時代なら、愛国の象徴、軍神、英雄・・・それらをまとめたものだろう。


「なすすべもなく封殺されても」


電子的偵察に発見され、圧倒的な火力に追い回され、対人地雷で閉じ込められる。

国連軍は意図的に彼らを放置して前進していった。

数日たてば、彼らも失敗を悟るだろう。


「犬死」

「・・・そういう言い方は」


異議を言いかける兵士。

三佐に本気で睨みつけられ声が出ない。

偶然が招く成果もあり、最善が起こす災厄もある。

過程と結果を混同すれば現状判断を誤る。


「誰も結果を保証できない」

立派な人たちが、優秀な人たちが、誠実な人たちが。

最善を尽くしても、だ。

ならば結果論など意味がない。


「犬死で、無駄死にで、敵を利しただけであっても」

三佐は部下を見つめる。

「彼らは立派だった」


真似るべきでもなく、学ぶべきでもなく、感謝するべきでもない。


過程など気にするな。

今を受け入れろ。

未来を切り開け。

どうしても過去が気になるなら。


「敬意を」


三佐は敬礼。

兵と将が続いた。




翌日。

ホスゲンオキシム着。

FH70に装填。


とある古城に地獄が蓋を開けた。


おぞましくただれた人とも思えぬむくろの行列。

立ち入りを禁止されながら除去された地雷。

呪われる、歩いて届く世界の果て。


あえて立ち入った、幸運にも街まで生き残った者たちが、末代まで語り継ぐべき恐怖の記憶。




【太守府中央街区/一行の末尾】


あたしは頭が痛かった。比喩的な意味で。

あの娘が楽しそうなのはいい。すごく良い。

もう一人の妹分が不機嫌だったが、左腕に組み付いて治ったから、よし。


気安く手を引いているのもいいだろう。

最初あの娘は手を引かれてはにかんでいたが、不案内なのは当然で、自然に手を引く方になった。

あたしが一番後ろ、あの娘達が先頭に進む。

こうしてみると『あの娘には父親が大切だったのだな』と思う。


で、まあ、何が問題かと言えば・・・。



「ずいぶん静かだな」


視線を感じる。

固く閉ざされた扉から。

鎧戸の隙間から。


「普段は露天商が並んでいるんですが」

右腕を引きながら不思議そうなあの子。


視線はチラリとかすめて消える。

鎧戸の隙間から。


「昨日の今日で出歩くのは、賢明さを持つ資質に欠けていて不運極まりない」

淑女のたしなみ通り殿方の左腕を組む、

「とてもとても恵まれない人だけですわ」

いや、背丈が足りないので半ばぶら下がる妹分。


視線は恐怖を映す。

息を殺すしぐさが石と土を越える。

誰も見えない街中で、街中の視線を集めている。



その、何が問題かと言えば・・・・・・・・・・・・・・・。


妹たち二人に挟まれた、青龍の貴族だろう。




【太守府中央街区】


俺は思い切り伸びをしたような爽快感を味わっていた。魔女っ子の引っ越しを手伝うというのは我ながら良い考えだった。

大荷物なら後で執事さん達に頼むところだが、大掛かりな引っ越しをするつもりは無いようだ。男手ひとつで足りるだろう。


さてさて。


まさに「見るもの聞くものすべて」が楽しい。

建物の外観から文化を割り出す知識など俺にはないし、それは本土の専門家の仕事だ。

だからピンカメラが俺の視線に合わされている。


単純に観光気分でみるとやはりヨーロッパ風。レンガ主体の建物と砂利道。初夏の風が心地いい。ヨーロッパでも南側かな。

風があるので両サイドの魔女っ子シスターズの体温が気にならない。このまま遊園地に行けそうだ。


人がいないのは嬢ちゃんの言うとおり、市民が怯えているんだろうな・・・いかん、ポジティブにいこう。

侮られるよりはマシだ。近付かれなければ防げる摩擦もある。


なにやら住宅街らしき街並み。さっきまでの階層建築が減り、一軒家が増えて来た。




【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)】


わたしは家の前でご主人様を振り返った。ちょっとドキドキする。


「ここが父の家です」

ご主人様は元から細い目をさらに細めた。

・・・不快な様子はない。


「急ぎましょう」

と、ねえ様。

わたしは手をかざして、詠唱。

結界がズラされ門が開いた。


「声紋認証か」


やはりご主人様は驚かない。でも視線が暖かい。

わたしたちはご主人様をお通しした。


わたしの、お父様の家。まだ1日だというのに懐かしさを感じる。

少し寂しい、かな。

「お茶を入れます」


「ああ・・・家長の椅子はここかな」


ちいねえ様が頷いた。

お父様の椅子。

ご主人様はその横に腰をおろされた。私はお湯を沸かすため炉の火を起こした。


さて、どうしようかな・・・よく考えなくても、ご主人様の前で込み入った話はムリ。

ご一緒できて舞い上がってしまったけれど・・・反省。


「お茶はわたくしが入れますわ。二人は用意を」


ちいねえ様がご主人様と一緒に台所へ。

気を使ってくれた・・・。


「ご領主さま。殿方が手を出すものではございません。ご覧になられるなら、そこでお座りください」


ご主人様は居間に戻られた。

この隙に、ねえ様と二階に行く。




【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/二階私室】



わたしの部屋。

ねえ様の部屋は隣。

わたしの帰れた場所。


衣装部屋から移した衣類、書庫から持ち出した紙束、ベッドと椅子、窓際の文机。


お父様を亡くしていらい納屋も工房も閉ざし、母屋の部屋は半分以上閉めきってしまった。


知識は覚え、枕元に路銀、文机に布袋。袋の中は携行食と魔法道具。

わたしが逃げるはずの場所。


「衣類とお金、書物は?」

ねえ様が当面いる物を確かめた。衣装部屋から覗いている。

わたしは意を決した。ねえ様に向き直る。ねえ様はわたしを見て、これで二人きり。

「ねえ様、この家を貰っていただけますか」




【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/二階衣装部屋】


あたしは予定通りに首をふった。あの娘も予想していただろう。


「・・・わたしには必要ありません」

「あたしにも必要ない」


睨み合い。目線は穏やか。だが、睨み合い。


「なら、焼いてしまいます」


あたしは目を見張った。頑固だと思ってはいたけど。

妥協できると思っていた。あの娘を読み間違えたのははじめてだ。

わかりきった事をあえて聞いてみる。


「忠誠、かしら」

あの娘は頷いた。やっぱりか。


「わたしの帰る場所はご主人様のお側にしかありません」

あってはならない。だから家を捨てる。まったく『らしい』潔癖さだこと。


備えをしておいて良かった。

「おまちなさい」

妹分の声。

こんな仕掛けは本意では無かったけど、ね。




【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/一階居間】


俺は手間のかからない子守をしながらサボ・・・息抜きをするつもりだった。


「ご領主様に決めて頂きましょう」


お嬢の一言で過去形に決まってしまった。

異世界に侵略したあげく、人生相談である。相手は身よりのない子供。魔女っ子だ。


「・・・です」


たどたどしいのは俺への遠慮。

俺への配慮で話をまとめようとして失敗。

謝罪と罪悪感で涙目なのはどうにもこうにも。

本来年長者のエルフっ子がまとめるべきだろうに・・・いや、いくら『おかん』気質の数え256歳とはいえ、一見子供に押しつけ過ぎか。


しっかりしろ俺。



まあ、なんというか、こういうことか。


自分の家を捨てようとする魔女っ子。

反対なエルフっ子。

俺に丸投げなお嬢。


って訳だ。


つくづくこいつらは年長者に恵まれてないんだな。

居合わせた俺にふるとは。

よくわからんところもあるが、今すぐに街を出ようというわけじゃないらしい。

ならば俺の『仕事上』は困らない訳だが・・・ビジネスライクに済ませる訳にはいかんわな、やっぱり。


もともと魔女っ子は『故郷』に受け入れられていない。

排斥されている。

迫害に近い。

しかも成り行きで俺達に関わり現地代表に仕立ててしまった。



俺が。



風当たりもさらにキツいだろう。

街を引き払う気にもなるだろう。


だが正直な気持ちってのはたいてい間違ってる。

若いうちは行動に走りたがるモンだ・・・経験かって?警察や裁判所と違って俺の中には黙秘権というものが有ってね?


ともあれ決断を今する必要はない。

当面、城に居れば良いとはいえ、俺たちがいつまでもいる訳じゃない。

ろくでもない、とはいえ、勝手の解る、故郷を捨ててどこに行く?って話だ。


覚悟は見上げたものだが、『覚悟』になぞなんの価値もない。


何故か魔法に縁がないのに俺たちはこの世界のどこでも(大陸の東側で確認した限り)喋る読むに不自由はない。

まあ、これが何がしかの『魔法』なんじゃないか、っていう見方はあるが、今は関係ない。


だが、魔女っ子たちの言葉は旧太守領以外ではやはり通じないらしい。魔法がつかえるのに、だ。

青狸の低カロリーペーストの発明はよ。


まあ地域別に言葉や文化が別れているのは地球と同じ。

帝国公用語は大陸中原で共通語として普及しているそうだが、征服十年ほどの地域、まあ、大陸沿海部ではまだまだだという。


中原以西は終わり、って三佐が言うから論外。


言葉も文化も違う異国で暮らすのは辛かろう。

その一点を考えても故郷を捨てるハードルは高い。


それでもなお捨てるとしても、家産を捨てることはない。

所有と売却の概念はあるのだし、ここはどうやら街の一等地、売れば良いだけだろう。

世情が落ち着けば、不動産も動くはずだ。


異郷に行くなら語学よりむしろ資金が絶対必要なのだから。



(・・・って利害だけで子供は止まらないんだよな)



経験者は語る。過去を嫌いまつわるもの全てが汚濁のように感じられ・・・うん、俺にもささやかながらやらかした歴史があるのだよ。

だが報道産業と違ってプライバシーという概念が俺にはあってね。


さておき。


とにかく子供が『売り払う』じゃなくて『捨てる』気持ちもわかるような、わからないと言えないような。


(なら言霊に訴えるか)


大げさに言えば、だが。

約束の言葉。過去と未来を縛る言葉。

昨日の今日だ。

言葉尻を捉え、潔癖さを利用。自縄自縛にしてしまおう。

今すぐ出る様子じゃないところを聞き逃せば、動きを止められる。

動けなくすれば情熱も落ち着く。


人、それを「大人になる」と評する。




【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/一階居間/青龍の貴族の前】


ご主人様はお茶の香りを楽しみながら、わたしの拙い話を聞いてくださる。

黙したままのお姿。

わたしは既にご主人様が承知されている事を繰り返しているような気がした。

話が終わると、ご主人様はゆっくりと茶を干された。


一息。



「誓いを」



問い。

わたしにとって誓いとはただ一つ。


『始まる前から、終わりの先まで、我と我が身のすべてを捧げます』



そう。




うなだれてしまう。


わたしは何に怯えていたのだろう。


お父様との日々。

生まれ。

馴染み。

失う事を恐れた家。

わたしに逃げ場があるような気がした。


恐ろしかったのだ。


これから『なすべきこと』を見失うのではないか。


異世界の理。

異世界の力。

圧倒的な異存在。


わたしは弱いから。

耐えられる訳がないから。

だから逃げ道を無くそうとした。

逃げられないように。


お仕えすべき方から、離れられないように。


仕方なく、他に方法がないから、逃げ込むために・・・それは冒涜。

ご主人様は見通されている。

わたしが見失っていることを示されている。



誓い。



わたしは望んだ。

わたしは願った。

わたしはかなえられた。


ご主人様に従う。

ご主人様にとともにある。

ご主人様は・・・。


だから。

わたしは逃げられないのではなく、逃げない。

わたしは受け入れるのではなく、迎え入れる。

わたしは連れられるのではなく、先導して見せる。


わたしはご主人様のものなのだから。




【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/一階居間/魔法少女前】


ヤバい。

魔女っ子が顔色を変えたと思ったら、うつむき、泣き出すかと思ったら、嬉しそうな涙目。

どーゆーこと?


「お心のままに」


お、おぅ。


いやまて。

誤解が広がっている。

話し合おう。

話せばわかった気になる・・・あ、ダメ?そう。


俺は思わず視線をはしらせた。



エルフっ子が窓に駆け寄る。


俺、放置?空気読もうよ?


「ねえ様?」


ほら、みんな困ってるよ。特に俺が。

『だからどうした』って言われそうだから、言わないけどね。

さりげなくエルフっ子から目をそらし、魔女っ子たちに。


「チッ」


うわ!エルフっ子!読心術?おじさん泣いちゃうよ!!




【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/一階玄関脇窓際】


あたしは聴いた通りのモノを見て舌打ちしそうになった。

頭が沸騰するのを抑える。


あたしと同じように青龍の貴族が横で同じモノを見ていた。

エルフほど感覚が鋭いわけではないが、勘は悪くない。


その表情は『困惑』。

やはり青龍の行動原理では理解出来ないでしょうね。


「アレはなんだ?」

解らなければすぐ質問。素直で結構。


あたしはさて、なんと答える?




【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/一階玄関前】


俺はホッとしつつ困惑。

家の前に集まった人数は十数人。


暴動ではなさそうだ。


若者ばかりでやや見慣れない装束だが兵装にはみえない。

攻撃ではあるまい。


だが野卑な叫びと手に手に鈍器状のなにかを持っている。

友好使節団ではない。


「聞いてみれば」

エルフっ子の答え。よほど機嫌を損ねたか。

他の皆はわかっているっポィ。

大人には見栄がある。

鷹揚に(見えるように)頷いた。


さてと戸口へ・・・なぜ魔女っ子が付いてくるか。




【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/一階居間】


あたしは慌てた。

青龍の貴族はときどき馬鹿馬鹿しいほど素直だ。

しかもあの娘が止めずに後に続く。


まちなさいよと動く前に貴族が動いた。

あの娘の両肩をつかんで回頭。

背を押して手近な椅子に。

両手を後ろに組ませ、素早く両脚を束ねる。


「え?」


手足を椅子に固定。透明な蔦?紐?のようなもので一息に留められていた。


無造作に見えて機敏、無防備にしか見えないのに尊大。

どこでもいつでも態度が変わらない。


「外す時は切れ」


あたしに言う。


「ここで待て」


妹分に釘をさす。あたしを見たのは『見張ってろ』という事だろう。

なんでなんでと騒ぐあの娘は無視。




【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/正面】


俺は扉をしっかり閉じると庭先に出た。

100歩程度先の連中が何か言っているようだか、よく聞こえない。


「っとしろやー!」


門を出た途端に聞こえた。音響フィルターみたいだな。

魔法だろうけど。


「おう、赤目だせや、アー?」

「ご主人さま呼んでらっしゃい」

「コイツナニ?」

「キショイ色だな?新しい奴隷か」


音が聞こえた途端に後悔。

妙にボロ布チックな衣装を身にまとっているが、昨日広場で見た市民のセンスとかけ離れている。

顔にペイント、鋲付きの腕輪ってナシだろ。


なにこの世紀末な雰囲気。

血色が良く飢民の暴徒ではないらしい。


うん、膝が震えそうだけどね。弱みを見せるとかえって危ない。

その程度はわかる。


「まあ、そうビビるなよ」


ご配慮どうも。

バレてるね。


腰の拳銃が無かったら逃げ出してるよ、こりゃ。




【太守府高級住宅街/魔女っ娘ハウス(青龍側呼称)/一階居間】



わたくしはご領主様が食卓に置いていかれた鉄塊を見た。


「ねえ様、コレの使い方わかりますか?」


ねえ様は視線を外からそらさない。


「ジュウのこと?見てたからね。ただ上手く使う自信はないわ。せっかくの配慮だけど」


ねえ様は短弓を構え外をうかがいました。


「ご主人様は丸腰じゃないですか~」


あの娘の泣き声は無視。


ご領主様があんなクズに傷つけられる訳がないじゃない。

わかってはいるんでしょうけど、髪先ほどの危険でも耐えられない、か。

あなたは本当に、なのね。

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