笑顔です/Ｑｕｅｓｔｉｏｎ Ｔｉｍｅ．

前回、いや、半月前までの、あらすじ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・その、前に。

キミに折り入って聞きたい。

突然自宅に催涙ガス弾を投げ込まれたら、どうする？

どう思う、とは聞かない。

言わずもがなだしな。

どうする、が重要なんだよ、マジで。

え？

俺だったら？

ちょっとバットをもって、行ってくるかな。いや、自宅にガバメント無いし。それがまあ、半月前に起きたことだ。

起こしたこと、って言い方もあるかな。

キミなら

――――――――――どうする？

【七日と七日の間の話】

馬車の数は百台。六頭立ての大型。

幅広い車輪、実は複数の車輪を束ねているのだが、は砂利を弾きながら進む。脱落した車輪や車体を補修、交換する為の部品を積んだ荷馬車が別につく。

さらにそのあとに続くのは、千頭に届こうかという馬の隊列。

曳き馬６００頭、その交代用の馬だろう。

普通の馬車は、馬が疲れたら休ませる。交代させてまで輸送量か輸送速度、いや、輸送力を維持しようというのは戦時（前線手前の後方地帯）でもなかなか実行されない発想。

荷馬車に支援される前提で、馬を交換しながら走る大馬車隊。

その長く幅広い荷台は、高い幌ですっぽりと覆われていた。

砂利敷き石積みの街道は、竜の騎乗にも耐えるように整備されている。大馬車は街道の中央を諾足で一列に進む。重量物を運ぶ荷車特有の動きだ。

端を進み街道をはみ出したら、二度と道に戻れない。

車輪は土に沈み、荷台は地にめり込み、馬車は家になる。

そして馬は牽くのではなく繋がれる。

だから、街道の中央、一番丈夫な部分を、諾足で進ませる。

街道を行く人々の、集まる視線。

皆が思う。

この規模の馬車ならば、何でも運べる。

荷台いっぱいに何かを積んでいるのは明らかだ

――――――――――では、何を？

諾足。

駆け足でもなく並足でもない。

全力疾走ではなく、ゆっくりと進むでもない。

それなのに、馬の筋肉は張っており、汗をかいている。交代用の馬があれだけ豊富に用意されているのに、だ。

そしてその足元。

砂利を弾くだけではなく、砕いている。かさばるだけの積み荷、例えば穀物や酒ではこうはならない。

広い荷台を占めるくらいに、かさばるもの。

荷台を車輪を街道を軋ませるほどに、重いもの。

例えば？

山で掘り出され選別された鉱石。

鉄材、銅材、鉛、錫など精錬された金属。

金銀水銀など比重の重い貴金属。

普段ならば、鉱山と精錬所を兼ねる山から運び出されるのは、そんなところか。

普段、なら

――――――――――では、今は？

常と異なる馬車列の、常と異なるところは三つ。

多くの積み荷。

重過ぎる積み荷。

多数に代え馬に表されているのは、可能な限り急いで、確実に、進む。

つまり

・・・・・・・・・・・・・・・命がけ。

まるで、興廃がその一事にかかっているかのように。

――――――――――皆が知っている。

邦中が知っている。

新たな支配者、青龍の貴族を。

太守ではなく、将でもなく、騎士でもない。

土地にも、麦にも、宝物にも、領民にも無関心。

前にあれば、気が付かずに踏みにじる。

立ち塞がれば、追い立てて皆殺し。

街中を殺し合わせるほどの狂気をまき散らし、幾千の骸を灼熱に包んで眉一つ動かさない。

気が向けば殺し、気が変われば殺させ、思いつけばたたき伏せる。

奪うことなし。

命じることなし。

従えることなし。

ただただ

――――――――――君臨する。

その青龍の貴族が、西の山に親征した。

それはもが知っている。誰が教えた訳ではない。

西の山は邦の半分から見える。

見える範囲の、邦の西半分。そこに住まう領民たちは、轟音を聴いていた。日の出と共に起き出した皆が、食事を終えて外にで終わった頃合い。

西に向かう青龍の飛龍。

地に這う皆を圧倒する翼音。

そしてほどなく起こったナニか。

見ていた、見てしまって、いた。良く晴れた空、見渡す西の山々

――――――――――が異様な噴煙に包まれる姿を。

そして、皆が一日中、西の空を見上げて、見て聴いた。

夕日に背を向けて飛びさる青龍の飛龍、その禍々しい姿と翼音を。

それから七日間。

街道沿いの街々は早馬が、常にあらざる規模で走り回る。

村々には何も知らされない。

だが、聞こえては、くる。

西の山、そこに住まうドワーフたちが、青龍の貴族に

――――――――――従わなかったこと。

青龍の貴族が西の山に

――――――――――「遊びに行った」と称していること。

西の山、そこに住まうドワーフたちが、血相を変えて走り回り

――――――――――生きている、まだ。

そして村々のみならず、邦中が知っている。

西の山は、帝国に守護されていた、ドワーフたちの領域。

彼らは貴金属を鉱石から精錬する。

それを守る武力を持つ権利を、帝国から認められていた。

ドワーフは、独りで人間十人分の力を持つ、と言われる。山に住まうドワーフは数千はいる、と言われている。

前太守の帝国騎士団がいない以上、この邦最大の戦力は、彼らドワーフだろう。

そして、７日前。

西の山のドワーフたちが、出発した。

東へ。

青龍は東から西へ。

ドワーフは西から東へ。

青龍は帰ったけれど、ドワーフは、西に戻る、戻れるのだろうか？

【太守府/王城/王乃間/国際連合統治軍軍政司令部】

る～～～～～～～～～～るるる～～～～～

～～～～～るる～～～～～

～～～～～涙が止まらない～～～～～～～～～～心の涙が。

俺は表情を造り、冷静なフリ。

指揮官とは役者でなくてはならないとか何とか。指揮官じゃないけど、いや、名目上は軍政部隊指揮官だけれども。

実質的には違うけどね？

指揮してるのは、曹長か元カノだし。

暗躍してるのは三佐だし。

皆さんよくご存じだ。

――――――――――公然と暗躍とはこれ如何に。

三佐は父親似だな

――――――――――誰もが知ってる政界の黒幕。

まあ、自称じゃなくて他称だし、ネーミングは例によってマスコミだけどさ。

ともあれ、俺が柄にもなく、自分を偽るのは致し方なし。

なにしろ、シスターズがそばにいる。

大人が慌てて狼狽えて呆然として立ち往生して諦めてじたばたするわけにはいかない。

いや、していないとは言わないが

――――――――――と、まあ、その醜態を、みせる訳にはいかない。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌも見てるしね。

兵の不安は誰かが何とかしてくれる。

曹長とか曹長とか坊さんとか

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・意外に隊員たちは平静。

だが、子供はそうもいかない。

俺以外に誰が出来るというのか誰かやってくれないかなでもこういうの肩書やスキルじゃなくて行掛りや付き合いの長さやなんかで決まるから仕方がないんだよねこれ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この子ら、誰もまともな保護者がいないんだよな。

いや、唯一、お嬢には立派なお父さんが

・・・・・・・・・・俺を敵視してますねすいません。

それに、お嬢だけ引きはがして親元に、なんてのは可哀相だし。

そうだ！

シスターズごとお嬢のお父さんに

・・・・・・・・・・・・ダメだダメだ。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌはシスターズを頼っている。

その証拠に、俺を見て、シスターズを見て、それから近づいていくる。いつの間にやらそんな体制ができていた。

何らかの指揮系統があることは間違いない。

俺は直接、Ｃｏｌｏｒｆｕｌに業務を割り振ってるし、ソレに文句を言われたこともないけれど。業務っても軍事参謀委員会から割り振られてくる翻訳作業だけどね。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌに与えられている任務。

魔法翻訳が勝手にニュアンス修正してしまう異世界言語と地球う言語の相互訳。

話し手書き手聞き手読み手、それぞれの気分が翻訳結果に反映してしまうために、生まれる祖語。

異世界言語を複数操るマルチリンガルなＣｏｌｏｒｆｕｌに、感情の影響を排して翻訳再翻訳再々翻訳

・・・・・・・・を繰り返させることで、正確な異世界単語の意味を読み取る作業。

※詳細は「第53部分 読んで。書いて。話してみる。」へＧｏ！

そんな任務は、まあ、勤務時間中だけだが。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌはシスターズを見てから行動する。近づいて来たり、話しかけて来たり、その辺に座ってお茶を飲んだり、姿勢を崩したり。

・・・・・・・・そんなことを、好きにやれないんだから、なんぎというかなんというか。

別な意味で、目頭が熱くなってくる。

結果としてＣｏｌｏｒｆｕｌの、自由行動的な何か、を仕切っているのがシスターズ。

仕事を全部なくすくらいなら、一時的になら、俺でもできる。

職場の管理者として、部下の健康を守らないといけないからね。

仕方ないね。

しかし仕事が無くても、自由なくつろぎの時間が無ければＣｏｌｏｒｆｕｌが死んでしまう。シスターズからＣｏｌｏｒｆｕｌを引き離すわけにはいかない。

よっぽどの緊急事態でもない限り。

そういえば、Ｃｏｌｏｒｆｕｌがシスターズの指示を仰ぐのは、業務外の活動中かな？

勤務時間外とか休憩中とか、退勤時間以降とか。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌはハーフエルフだからな。

異世界で安全に過ごすためには地球人の側から離れることができない。まあ、メイドさんたちは大丈夫な気もしなくもないが、俺には異世界の常識が判らないから何ともかんとも。

だから、彼女たちの判断に任せてエルフっ子の助言を加味するしかないのだ。が、そうなると結局地球人と一緒ということになって、結局それは俺になる。

異常に艶っぽい、そーいう方面に特化して心と体を磨き上げてきた少女たちを預かれる者がいない。俺だって信用できないのに、部下に任せるなんて鬼畜過ぎる。

その辺りは曹長にくぎを刺されているのだ。

いわく、部下に軍務以外の責を与えませぬように、と。

軍政部隊は女手がいないからね。

アムネスティは、身寄りのない少女たちが身を寄せるのに一見ふさわしいように見える。

アムネスティガールズ（プロフェッショナルな女性たち）から師匠呼ばわりされているＣｏｌｏｒｆｕｌ（目的特化型愛玩奴隷）。

机上知識でガールズを上回り、実践経験で言えばガールズが圧倒

・・・・・・・・・・ガールズに遊ばれるような気もする。

それはそれでいいのかもしれないが、彼女たちは国連軍じゃなくて配慮すべき民間人。

負荷を増やすだけでも問題なのに、緊急時の対処までは期待できない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いざとなれば現地住民を一方的にかつ先制的に射殺しないといけないわけだし。

非政府非武装組織に負わせる責任じゃないよね。

ならばといって、黒旗団というより元カノ＆マメシバ三尉は適切な様で適切じゃない。

身も心も嫉妬心で出来ている元カノは、再会以来異世界流にバージョンアップ＆ヒートアップ。そもそも嫉妬されるいわれがどうとか理屈をこねても仕方がないのは判っている。

しかしそもそも、前提が間違っている。

俺はこまめに声をかけない時に女が寄ってくるような特殊少数派ではない。

今は、三佐のせいで仕事が忙しく、三佐のせいで仕事の悩みが深く、三佐のせいで死地に追い込まれている。

当然、女を口説くどころじゃない。

筋論なんかどーでもいい。

少なく薄いお付き合いしかしてない俺には一生解らんから、元カノが見えない誰かと戦い始めるのはまあ、昔馴染みのよしみでスルーしよう。

だが、相手が悪い。

子どもと角突き合わせようというあたり、元カノは幼児退行でも起こしているのかもしれん。

心は子供。

体は大人。

銃と銃剣と魔剣と軍隊を持った女児

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・余計にマズい、最悪の組み合わせだ。

子供に持たすな銃と権力。

アレは間違いなくいつか人を殺す

・・・・・・・・・・・・・・・・・戦場以外で。

もう殺ってるとかないだろうな？

戦場以外で。

その最初の一人目が異世界ハーフエルフ美少女ってのは、歴史に残る気がする。

やらせはせん！

やらせはせんぞ～！！

ちなみに異世界住民への人権規定は未だに国会で議論中。

生態すらわからない相手に人権を認めた場合、生存権から公民権、婚姻やら国籍法やら、将来的に発生するであろう問題を上げていったらきりがない。

異世界で奴隷産業を花開かせようとする経済界。

異世界を植民地化しようとする官僚機構。

異世界を票田に数え始めている国会。

一つ問題を議論するたびに、国連加盟国１５０オーバーからツッコミが入るありさま。

・・・・・・・・・そして相変わらず何も語らない三佐の親父

当分何も決まらんな。

だが、Ｃｏｌｏｒｆｕｌは国際連合軍軍属として雇用契約済み。

故に軍法の保護下にある。

ので、不測の事態があった場合

・・・・・・・・・・・元カノに面会に行く羽目になる。

うん、絶対だめだな。

俺を刺すくらいなら、誤魔化しようもあるが。

マメシバ三尉は恋に恋してプロデュースまで手を広げているから余計にヤバい。

現状でもＣｏｌｏｒｆｕｌに様々な影響を与え続けているくらいだから、すでに手遅れかも知れないが、諦めては試合終了だ。

どんな未来をたどるにせよＣｏｌｏｒｆｕｌにはなんとかなってもらおう。最低限、幸せでなくもない、というところまでは、しなくてはなるまい。

いっそ仏門に預ければ、とも思ったが、坊さんにも諭された

――――――――――煩悩を受け入れて初めてそれを解き放つことができるのですよ――――――――――

とかなんとか。

なぜだ。

一時のことだし、還俗させればいーじゃん。

とか考えたのが悪かったのか？

任せれば安心なんだがな。

坊さんの貫禄は文官一、二人しかいない中での序列はさておき、曹長に次いで部隊内での重みがある。

・・・・・・・・・・俺は、うん、いーんだよ、うん。

結局！

消去法で俺の周りに子供たちが集まるのである。

いや、一番暇だろう、ってことかもしれないが。

その分目が届く。

――――――――――――――――――――――――――――――お互いに。

大人は常に知ったかぶり。

余裕綽々、泰然自若、天網恢々疎にして漏らさず

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シスターズ＆Ｃｏｌｏｒｆｕｌが見ているうちは、常にそうしないといけないのだよ。

もともと、ずっと、見られているだろう、って？

いや最近は、今までより、もっと距離を詰められた。

いや、今までゼロ距離だったじゃないかと言われたら、まあそうだ。

だが、先があった。

マイナス距離。

グリグリとしてくる。

子供と猫の共通点。

甘える時、かまって欲しい時、体を擦り寄せてくるよね。

まあいいが。

・・・・・・・・・・・・・エルフっ子まで便乗するのはどうかと思うが。

エルフっ子。

見た目は十代後半。

だが、日本の中高生と違って、子供って感じがしない。まあ体の成長だけ考えたら、女は中学生がピークだけどね（文部科学省統計より）。

――――――――――――――――――――――――――――――と言ったら、元カノに泣かれた。

中学三年生（統計上のピーク）の時だ。

胸がどうであったのかは言うまでもない。

普通はそれで一生過ごします。

男はそれ以後がピークだけどね

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いえ、例外は、ありますよ？

非常に限られたあまりない例外的事例によって、高校生以降に大きくなる事例もね？

確認されてますよ？

だから豆乳を飲むのが無駄なんて、けっして言葉にあまりしない、と思いますが、一切記憶にございません。

――――――――――――――――――――――――――――――と言ったら、元カノに涙目でキレられました。

高校一年生の時だ。

だが、一念で生理学を貫いて、その一年後には立派に成長させて見せたのだから、なんともはや。一将功なりて万骨枯る、の言葉通り。

同年代で元カノと同じことを試みた多数の女子がいたことは記録されてもいいだろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さて、諦めなければ夢は叶う！

とキレイにまとまったところで、異世界のエルフっ子の話に戻そう。

けっして逃げてはいない。

つまり、エルフっ子が大人っぼく見えるのは、肉体的な問題じゃないだろう。

ならば肉体（外見）年齢より実年齢２５６歳が生きてくるのか？

いや、俺より人生経験積んでる相手に失礼だけどさ。

だから、察して欲しいです。

シスターズの小さい二人と、今はまだ違いがあるが、だんだんスキンシップが似てくるのはどうかと思います。

ダブルＧで無邪気に背中におぶさらないでください何でもしますから。

キーボードで爪をとがれないだけましか？

まあ、特に猫は、甘えたくなくてもアピールしてくる時もあるが。

それはつまり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・他の事に気をとられていることが、バレている。

たしかに、ここ半月はそうだ

――――――――――俺が。

仕方がないことだが、子供にそうも言えない見せない悟られた。

つまりは見せなくていいところがばれているわけで

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・失敗。

こんな時は

――――えーと――――――

笑顔だ。

笑ってごまかせる時代は終わったって？