表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第五章「征西/冊封体制」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

177/1003

ダンジョン・クエスト/Sold Out.

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします


【用語】


『青龍』:地球人に対する異世界人の呼び名。国際連合旗を見て「青地に白抜きでかたどった《星をのみほす龍の意匠》」と認識されたために生まれた呼称らしい。


『赤龍』『帝国』:地球人と戦う異世界の世界帝国。飛龍と土竜の竜騎兵と魔法使いを組み合わせた征服国家。70年ほどかけてユーラシア大陸に匹敵する面積を持つ大陸の東半分を征服した。特段差別的な国家ではないが、エルフという種族を絶滅させる政策を進めている。


『魔法』:異世界の赤い目をした人間が使う奇跡の力。遠距離の破壊、伝達、遠隔視、読心などが使える。魔法使いを帝国では組織的に養成しており、貴族に準ずるものとして扱われる。


『科学技術』:異世界ではすべて魔法として理解されている。ゆえに地球人は全て魔法使いとして見られる。



なるほど。

降伏する、とおっしゃる。


いえいえ、謝罪は結構。

我々を帝国と誤認したのは承知しました。


誰にでも間違いはありますよ。


あー、そうですか。

貴女の首を差し出される。


他の、皆さんはそれで?

あ、ご納得、ですか。貴女の、その部族は、私どもに従う、と。


・・・・・・・・・・・それはそれは。


土地も差し出す?思い切りましたね。帝国に従わなかったのは、この土地を奪われたくなかったから、でしょう?

いや、お答えいただかなくて大丈夫です。


はいはい。

半減済みですからね、残りの皆さん逃げ場の無い迷宮で、全滅するよりは

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・苦渋の選択ですね。


お察します。


あの、貴女方の、神聖っていいますか、崇拝してらっしゃる、あの置きモノはよろしいので?

迷宮から貴女方のご先祖が持ち出され、帝国が接収し、我々が帝国から獲得した、それ。

あーはい、わかりました。


帝国が居なくなりましたからね。

シンボルを取り戻しに来たら、ユネスコ、我々がそれを分解しようとしていた。

いやいやいや、カッとなりますよ。


わかります。


我々が帝国軍で、撤退時に破壊して行こうとしているように、見えますよね。

帝国軍は捨てていったんですが。


数十人しか居ませんでしたし、止まっている車は竜じゃなくて馬車に見えますしね。優位と勘違いして襲いかかってしまうのも、仕方がありません。


お辛いですね。


末端の群集が暴走してしまった、というのは。


え?

追加条件?

我々からは、なにも条件などありません。


では、お帰りはあちら。




いやいやいや、頭を上げてください。

安心してください回答は、もう出てますよ。

待たせたりしません。



あ、そうだ、個人的な質問が一つ。


よろしいですか、そうですか、よかった。

いや、最期に知りたかったんです。


なぜ、その、降伏が





――――――――――受け入れられると、思ったんです?


《地下迷宮第一層にて》





さて、此処が地下迷宮の入り口です。


地上部分三層は開放型の神殿(状の建造物)となっており、特段仕掛けのようなものはありません。この大陸の各所に点在する神殿の拡大版とでもいうべきでしょう。


もっとも、構造が似ているだけなのか、本当に神殿なのか、未だに判っておりませんが。



その辺りの調査はいまもUNESCOが進めています。

ここでも、ああして

・・・・・・・・・・・・・ああ、あれば、発破を使っていますね。振動センサーを各所に仕掛けて、意図的に振動させることで構造解析しているんです。


主に地下構造を把握するためによく使われる手段です。



音?


おや、削岩機の音を聞いたことはないんですか?

それに、ああ、あれはウォータージェットでバラしてますね。

あ、崩れ・・・・・。





さて。

肝心の地下構造ですが

・・・・・・・・・・・この迷宮に関する周辺住民の口伝は、帝国が遙か昔に調査。


今は、証人抹消済み。

まあ、基本を抑えているわけで。


よって、何もわからないも同然です。



まずはわざわざ抹消されなかった、異世界の一般論でご説明します。つまり、帝国が、そして領民たちも、誰もが隠さず隠されずに公にされていた事実です。




帝国は支配領域の地下迷宮を放置しません。


まあ地下迷宮に限りませんが、割愛します。

今は地下迷宮、ここの位置付けを。



帝国軍はこの地方を支配下に置きました。するとすぐ数に任せ、人材に任せ、技術に任せて地下迷宮を踏破します。

幾度となく繰り返された、一般的な措置です。




まずは、数。

難民や捕虜、足りなければ近在の領民を集めます。


領民については貧困層、子供、老人、中高年、などの中で技術の無い者たちが選抜されました。


何のために、は、おわかりですね

――――――――――――――――――――地雷犬の代用品です。


コストパフォーマンスを考えると、どちらが有用とも言いかねますが。




そして次に、少数精鋭の攻略チームを複数用意します。

これが人材ですね。


もちろん主体となるのは帝国軍の専任チーム。

対人対軍対城塞とは全く異質な部隊です。


近衛の一部隊のようですが、詳細はわかりません。魔法使いのトップである魔法元帥と繋がっているようですが、指揮下にある訳ではない。

周辺で活動していた、していたことがある帝国軍関係者を何人も捕らえ尋問しました。

しかし、貴族や将軍すら、詳しい事は知りません。



よほど特異な存在なのか、特別な組織なのか、

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・帝国の組織自体が未分化な面を持ちますから、むしろ、あいまいなグループ、なのかもしれません。

解明はアカデミックな役割になるかもしれませんね。



ただ、編成の基本的な形はあるようです。


攻略チームの主体は帝国の要員、それに専門の迷宮探索者が雇われて加わります。



さてここで言う、迷宮探索者、とは何か。

この異世界は、いわゆるファンタジー世界の印象があります。が、創作で頻出する職業、冒険者はおりません。

地球と同じ経済原則が成り立つ場所には、冒険者なるモノは成り立たないので。

まあ、ファンタジーのギミックにすぎない、ソレだけです。



説明は要しませんね?




ただ、地下迷宮近くには迷宮探索の専門職がおります。


それが創作で言われる冒険者に、類似しているかどうか?

知識不足でわかりかねますが。



こうした専門職が成立する。

その程度には、迷宮に価値がある、と。


つまり迷宮には様々な工夫が凝らされ、様々な品々がしまわれています。ゴーレム、落とし穴、呪い、魔法非魔法トラップ、金銀宝石有価鉱物、各種記録に知識が記された書籍の一種。



それらの価値は昔から、異世界でも、ある程度は認識されていました。とはいえ国を上げて研究探索しているのは、帝国くらいしかいなかったようですが。


知識に重きを置く魔法使いが、国家中枢を掌握したこと。

知識が国力そのものである、それを事実で証明したこと。

そんな考え方の、異世界史上初めての例が帝国だからでしょう。



しかし国家規模の介入があろうがなかろうが、迷宮探索を狙うトレジャーハンター、趣味で調べる学者なども昔からいました。


ただ、いるにはいても、極々々々々少数ですが。

それはコストパフォーマンスという概念を、多世界が共有している証拠です。まあ迷宮を探索する技能があれば、他に利益率が高い仕事は異世界にいくらでもありますし。



迷宮で一番利益となるのは貴金属や宝飾品。


しかし、単なる貴金属ならば一般的な鉱山で産出されますし、ドワーフメイドの精緻な細工物も生産されています。

迷宮では他で手に入らない髑髏の水晶のように、オーパーツじみた品も時には見つかります。が、そうなるとかえって値が付きません。


相場となる基準がありませんからね。


そのあたりの事情は情報や現象についても同じです。

失われた文字で書いてあると思しき資料を見つけても、普通は解読などできません。ロゼッタストーンのように、まだ記録に残っている古代文字との対訳状態で見つかる、などという奇跡があれば別ですが。


そして解読できたからと言って、役に立てるとは限らない。単なる個人の日記かも知れないし、失われた時代の現在とは無関係な記録である可能性は大いにあります。


迷宮をなにがしかの理由で踏破しようとする者たちは、仕掛けを尽くされた様々なトラップや魔法を解除しようと死力を尽くします。

しかしそれらの侵入者を排除するギミック自体に価値を見いだして、外で活用できると考えた者はいませんでした。


つまりまあ、トータルで見て、割が合わない。



よって、迷宮を探索出来るスキルを持ってなお、迷宮に挑むのは変わり者だったわけです。異世界には、彼らを示す一般名詞はありません。


ほぼ専業で従事している数が、少ないからですね。一握りの変わり者ならば、職業職能名は要りません。確認するには、個人名で済むわけです。



地球史上で類例を探せば、ピラミッド近くの墓荒らしでしょうか。地球各地で盗掘を生業にする一族の説話もありましたし。

説話、とさてしまうくらい、レアな存在なのは何処も同じと言うことですね。



これがトレジャーハンター。

なおトレジャーハンターとは、国連軍のつけた呼称です。


そしてトレジャーハンター以外ならば、学者。



これはたまたま関心の対象が迷宮であるだけで、異世界一般の学者と変わりません。

学者とは、職業的な専門職ではありません。

本業は別にあります。


これも一般的な話で、近世以前の学問は概ね好事家の趣味でした。



近世日本の数学、和算が農閑期の農民たちの暇つぶし、パズルゲームだったのはご存知の方もいらっしゃるのでは。

その在り方は、異世界でも変わらないようです。


もっとも、異世界は西欧、ないし中世以前の日本に近い生産力しかありません。娯楽にいそしむだけの余力に乏しい社会です。

とりわけ帝国の統一前は、経済規模が小さい分、余力に乏しい状況が恒久化しておりました。社会的な余力の吹き溜まりに偶発的に発生する学者は絶対数でみて、自然発生する魔法使いより少ないようです。



とても一般農民、都市住民が関わるものでは

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ましてや江戸期日本のように寺社仏閣のコミュニティーで楽しむようなレベルでは、ありえません。


まあ、絵馬にかけて数学の証明問題を掲示したり、旅の趣味人が解を再掲示したり、自然科学の発見を誇示したり。


絵馬を利用して、通りすがりの好事家同士が勝負するような世界。

まあ数学が囲碁や将棋の様に遊びとして普及したのは、地球史上でも江戸期日本にしか在りませんけれど。




ここ異世界は西欧世界に近い歴史を歩んでいます、いえ、いました。故に学問と名付けられそうなことは一般に、限られた富裕層の中でも少数派の娯楽です。


その例外が、帝国なのですが。



迷宮探索に関わる学者というのもそのたぐい。

好きが高じて迷宮周辺にまで居を移し、手間暇かけてトレジャーハンターを雇って協力して、地下迷宮に侵入を試み続ける好事家。


帝国はその二種類の人材を事前に把握しておきます。概ね、秘密の存在でもありませんから、可能ではあったでしょう。




かくして地元にしかいない、極めて希少な、その迷宮に一番詳しい人材が帝国軍に集められます。

褒賞に糸目はなく、罰則の程度範囲も際限なし。



報奨が資産で済むなら、金貨宝石債権証書。

不動産なら奴隷農場、鉱山、都市や港の蔵や邸宅に工房。

幾らでも、すぐに支払われます。



なにしろ必要な必要なだけ、その地方の街々から、帝国軍がすぐに集めますし

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・略奪とも言いますが。



一方の罰則は、拒否の素振りで友人知人どころか街中が磔

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・で済むかどうか。


帝国は異世界一の拷問職人を抱えて、魔法でアレンジした唯一無二の芸術を常に更新していますから。技能を傷つけないように、精神を責めるなどお手のもの。


まず親しい友人を吊し、顔見知りの腕二本も落とすのが定石とか。




帝国が必要とした人材から熱心な協力が得られなかった事は

――――――――――ないようです。



これで数と人材がそろいます。



そして準備が整えば迷宮攻略に入ります。



ここで帝国が培った技術が生きてくる、と。

つまり帝国の土木技術戦闘技術、そそてなによりも帝国らしい、組織構築運営技術。それが、定型化されたプロセスを進めることで迷宮が探索されていくのです。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ