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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第五章「征西/冊封体制」

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The Firm/誰が悪いことにしようか?

『合衆国大統領』

?歳/女性

:駐日大使、国連大使兼任。

女性初の合衆国軍統合参謀本部議長で次期大統領候補と目されていたが、祖父以来の縁がある日本へ大使として赴任。その際に家族も連れてきている。

異世界転移後、緊急時の継承順位に従い大統領に就任し在日米軍並び領域の軍を掌握。合衆国市民の統率者となる。

代々続く軍人の家系。

娘は文民(弁護士)になったが、孫は軍務(空軍F-16パイロット)についている。

普段から合衆国陸軍将官の礼服を身にまとう。



『三佐』

?歳/女性

:陸上自衛隊三佐、国際連合軍事参謀委員会参謀、WHO防疫部隊班長、他いろいろな肩書を持つ。日本の政権与党を支配する幹事長の娘で、父親と連携して戦争指導に暗躍している。




世界は物理と哲学で出来ている。

――――――――――物質と概念と言ってもいいけどね。



問題。


人類史上、もっとも多くの人間を殺した凶器を知ってるかい?



大砲?

銃?

刃物?

石?

棒?

素手?

――――――――――おっしい!!!!!!!!!!




核兵器?

じょーだん。


答えはね





【国際連合法務部法律顧問事務所】


国連軍の虐殺について、でしたね。


ああ、虐殺、と私が認めているのが意外ですか?

私は広告屋じゃありません。

国際法の実務家です。


レトリックなら事務局広報部へどうぞ。著名な、といいますか、悪名高い戦争広告代理店がまる抱えです。様々な技法を楽しめますよ。


――――――――――なら、始めましょう。



その通りです。

ここには国際法に関する実務家が全て、全地球人類から集まっています。国際司法裁判所を再建するにあたって、専門家は除外しました。


学者は要りません。

司法の独立など、ありません。


御国を見本にしましたが、まあ、暫定的なものですよ。国際連合はまだ再建されたばかり。どうしても、今まで通りになりがちです。

再編成まで20年はかかりますが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・日本人以外に認めさせるのは、無理ですから。


裁判所と弁護士が、勅撰検察官の支援組織になっている体制など、とてもとても。

文明人には

――――――――――ああ、虐殺の話でしたね。




虐殺には二種類あります。

善い虐殺と悪い虐殺です。


――――――――――おや、気がつきましたか?



感情的にならないところは、さすが。

カタリベに選抜されただけはありますね。

ええ、続けましょう。



善い虐殺。

それは、行うべき、義務であり責任であり権利でもあります。


悪い虐殺。

それは単なる犯罪。

法律に基づいて行われる場合も多いですが、そもそも法の根本原理に反します。

故にその法律は無効となります。

よって、犯罪ですね。



実例で説明しましょう。


まず、前提の確認。

前提がすれ違い、意味の無い罵り合いになるのは日本だけじゃありませんよ。徒労好きは、洋の東西を問いませんから。




虐殺とは何か?


社会的な組織が関与した、特定条件下における不特定複数殺人

――――――――――と、しましょう。


ここでは、ね。


次に、良い、あるいは、悪い、とはどこで区別できるでしょうか。



悪い虐殺はおなじみですね?

民族的文化的政治的相違で選別。本来行われるべき、社会的調整を無視。条件に合致した、合致した可能性がある人間を殺害します。

莫大なコストをかけ、その社会を自滅か弱体化させます。


合法的?

民主的?

正統的?


法律とは形式から発するものではありません。


手続きを踏んで、合意を得て、慣例に従えば

・・・・・・・・・・・・そう考えられがちですけれどね。


手続きの源はなんなのか?

合意したからどうだというのか?

慣例というなら最初の一度目をどう説明するのか?


法の源とはつまり

――――――――――自然権の話は跳ばしましょう。




その時にその社会が合意したとしても、法律は何もかも決めて良いモノではありません。

故に、法律に従った、は言い訳になりません。


まあ、その場合には個人の責任を問うべきではありませんが。

ここまでが悪い虐殺です。




では、善い虐殺。

率先して誰もが積極的に行うべき虐殺。


自分の、自分たちの安全を守る為に必要な、合理的な結論。それが良き虐殺です。ああ、多数を救う為の少数、なんて勘違いした話じゃありません。


法律の根幹は個人から発します。

貴女や、私、一個人の安全の為で十分です。



解りやすく例をあげましょう。

例えば、戦時下の、まあいろいろありますが、非戦闘員への虐殺にしましょうか。



戦時下における非戦闘員の保護。


これは解りやすく明文化されており、かつ、古典的慣習でもあります。交戦当事者すべてが、その義務を負っている。

そう言って良いでしょう。


ハーグ条約を、ジュネーブ条約を、批准しているしていないという話じゃありません。慣習が法としての強制力を持つことは、常識です。


非戦闘員とは、自国他国敵国を問わずに、守られるべき対象である。

そういうことです。



故に必然的に、交戦当事者は、非戦闘員と戦闘員を区別出来るようにする義務を負います。

つまり互いに支配下の非戦闘員を明示しなければならない。



当たり前ですね。

非戦闘員を保護する。ならば、非戦闘員を識別できるようにしなければならない。でなければ、非戦闘員保護義務が、成り立ちません。


また、当たり前ですが、実行不可能ならばそれは法ではありません。


実際的には、戦闘員を明示する事で非戦闘員を明示しますけれど。中立国民間人や占領下の敵国民などを統制するのは困難ですから。

指揮下の軍隊を明示し、それ以外は非戦闘員

――――――――――と言うわけです。


よって、戦闘員以外を殺傷すれば、保護に最善を尽くさなければ、悪い虐殺が発生します。


では、非戦闘員に対する、良い虐殺はどのように生じるのか。

これも法理上の必然から生じます。

非戦闘員保護規定そのものが、非戦闘員の殺傷を生む

――――――――――判りませんか。



では、こう考えてください。

とてもありふれた事例です。



――――――――――非戦闘員と戦闘員が区別出来なければ?


非戦闘員保護義務は解除されるのでしょうか。

違いますね。


戦闘員の可能性がある者を、非戦闘員を含めて、殺害する義務が生じます。


自らが生きる権利と義務。

これはあらゆる権利の根幹であり、法の源ですから。


これが予防ゲリラ戦と呼ばれる考え方です。


しかし、誤解しないでください。

最初に申し上げた通り、非戦闘員保護義務は、無くなりはしません。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかりませんか?


替わるんですよ

――――――――――責任を負う主体が。



歴史の事例をあげましょう。


南京大虐殺。

ああ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無少中大極大

――――――――――主義者は無駄なところにこだわるモノです。



そこに固執するのは、その責任を負う者だけで十分ですのに。

情状酌量を求める犯罪者の発想ですね。


第一級殺人罪か否か。

それは重大でしょうね、犯罪者には。

故に、ソコにこだわる方々には自覚が有るのでしょう

――――――――――罪人としての。


これから話すのは、罪状認否以前、起訴にすらいたらない、前提段階の話ですから。




まず、非戦闘員の虐殺は犯罪です。


では非戦闘員と戦闘員が混交してしまった場合、その責任を負うべきは誰であり、どこでしょう?


混交させれば非戦闘員が虐殺されるのは論理的必然です。故に、非戦闘員保護の責任は、その事態を生じせしめた者が負います。


負えるかどうかは問題ではありませんよ?

賠償能力が無くても、賠償責任がなくなるわけじゃありませんから。



他の交戦当事者には、非戦闘員識別不可能になる。

故に、彼らは非戦闘員保護義務を免除されます。

よって、法理は彼らに命じます。


非戦闘員を虐殺する権利と義務の遂行を。

戦闘員が混合されている可能性を排除できない限り、疑わしきをすべて、殺せ、とね。


それを防ぐ義務、防げなかった責任は、その状況を生み出した者だけが負います。



また史実に当てはめましょうか。



南京大虐殺の刑事責任を追求されるべきは?


毛沢東です。


何故なら、彼が非戦闘員と戦闘員を混交して識別不可能な状態を、意図的に作ったからです。歴史書でなじみ深くも「人民の海で侵略に対抗する」としてゲリラ戦を主導していたのですから。


犯意があり、犯行があり、犯罪が生じた。

どこかおかしなところがありますか?


もっとも訴追はできませんが。

被疑者死亡により処分保留、日本の司法紛い風に言えば書類送検

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・というところでしょうか。


彼個人以外のだれも裁くことはできません。組織的に行った以上、共産党兵士個々の責任はありません。ソレが法律です。


では、民事上の賠償責任は誰にあるでしょうか。これは法人格が負うべき責任ですから、共産党が賠償責任を負います。

国共合作が正当なものと認めるならば、国民党も責任を負いますね。



――――――――――その通りです。


南京で、何人、何百人、面倒ですから何億人、日本帝国軍に殺されたとしても。そこでどれだけ凄惨な殺され方をしても。


刑事責任は共産党指導者個人にあります。

賠償責任は共産党という法人にあります。



なぜなら、彼は非戦闘員を盾にして戦ったからです。

なぜなら、彼らは指導に従い非戦闘員を盾にしたからです。



――――――――――侵略に対抗する為?


それとこれとは別な問題です。


「侵略者に対抗する為に、無辜の市民よ、兵の盾となれ」

と言い張るのならば、いえ、言い回しが違っても同じことを唱えて実行したのなら、もはや議論の余地はありますまい。



殺され虐待された国民が納得するなら、和解斡旋もあり得ますが。


いずれにせよ生存権を守る為に、虐殺を遂行した日本帝国軍は本件に無関係なのです。第三者、証人として被害認定に参加するのなら、否定されるべきことではありません。


一般論はここまで

――――――――――これが、法律からみる《良い虐殺》のロジックですよ。



では、虐殺の一般論が終わったところで

・・・・・・・・・・・・・・・・





――――――――――インタビュー後――――――――――




年齢的に、日本列島だけで活動する老婦人。

一人のカタリベは思う。



(人間は――――――――――もう少し、マシになるべきね)


完全な法治主義が生む虐殺。

法治を偽装した人治による無法。

近代西欧哲学と、明治日本の慣習。



(人類史の汚点、滅びてしまえばいい

――――――――――その前に、産まれ出でたるべきではなかったのよ)



「アナタが殺したのかどうか、それは関係ありません」

合衆国の法律事務所ではよく使われるロジック。


左翼、右翼、中道、中空、様々な立場がある。

どのような立場をとっても、日本人には、きっとついていけない。



予防ゲリラ戦(虐殺)の指揮官を無罪放免した国。

その国で育ち、法律の実務家として慣らした彼女。

法律を時に嘲弄するように、しかして法律に従う。


その論理は、今、この瞬間も、列島以外で遺憾なく発揮されている。日本人を含む十数万の軍事組織を戦わせているロジック。


(・・・・・・・・・・それが異世界を制圧した後も、列島以外にとどまるのかしら、ね)



もちろん、予防ゲリラ戦は必要ない。

今の国連軍は予防予防ゲリラ戦とでもいうべき戦いを進めている。


彼女は法律、彼女の母は軍事。

実務家たる二人は、認めて認めない。


責任はとるが、無能を赦さない。

ゲリラ戦、テロリズム、反乱、不服従

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それが生じたら、負け。



負けた後、どれだけ足掻いても無駄。

負けた後は、それを認める以外に選択肢はない。


キチンと敗北しないと、次に勝てない。


その負け戦に家系こぞって付き合わされた、現合衆国大統領一族の怨念を感じる。


だが、とカタリベは思う。

敗けた、のではなく、終わった。そう言い張っている者もいる。


大洋を挟んだ双子邦

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダメなほどに可愛くなるのは、歳のせい?)



どこかで他人ごと、カタリベもまた日本人であった。




【異世界某所】


先手をとったから勝利する。

そんな理由はない。

だが後手に対して決定的に有利な点がある。


コトを起こした人間だけが、手に入れる。

コトが成功しても失敗しても関係ない。

コトを起こすだけで得られる優位。




その時、その場で、ナニかが、起こる。

――――――――――その未来を作ること。





「アレは?」

「アレ呼ばわりはないでしょう、三佐」

「コレが言うわね」

「コレ呼ばわり??????????


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



「――――――――――変化ありません」

「動けないのは、アチラだけでしょう?」

「まあ、避難、ガス抜き、暫定的な生活再建まで半月はかかりますね」

「では、動かない?」

「出方待ち、ではないかと」

「待つ、ねぇ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふーん」

「すごく悪い顔してますよ、三佐」

「想定外♪」



予定できることには価値がない。

―――――――――いくらでも代わりがいるからだ。


予測できない事には価値がある。

―――――――――そこに何かが生まれるからだ。



「自分も他人も裏切れない、立ち尽くす、不動不変の、臆病者」



決まりきった世界の中で、あえて生み出す予想外。


三佐は確信している。

アレは、きっと、間違える



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