敵というモノ
登場人物&設定
※必要のない方は読み飛ばしてください
※すでに描写されている範囲で簡単に記述します
※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします
一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。
次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。
以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。
(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)
【登場人物/一人称】
『俺』
地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿》
現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様/我が君》
?歳/男性
:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。
『あたし』
地球側呼称《エルフっ子》
現地側呼称《ねえ様》
256歳/女性
:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。姉貴分。ロングストレートなシルバーブロンドに緑の瞳。長身(数値不明)。革を主体とした騎士服にブーツに剣が常備。
【登場人物/三人称】
地球側呼称《元カノ/団長/だんちょー/一尉/一尉殿》
現地側呼称《青龍の女将軍/団長/主》
?歳/女性
:国際連合軍大尉/陸上自衛隊一尉。国際連合軍独立教導旅団団長。『俺』の元カノ。ドワーフやエルフに異世界人と地球人類が同じ戦列を組む、初の多世界複合部隊「黒旗団」指揮官。
地球側呼称《三尉/マメシバ/ハナコ》
現地側呼称《マメシバ卿》
?歳/女性
:陸上自衛隊三尉。国際連合軍独立教導旅団副官。キラキラネームの本名をかたくなに拒み「ハナコ」を自称している。上官の元カノが勝手に「マメシバ」とあだ名をつけて呼んでいる。
【参考:再確認世界設定】
『偵察ユニット』:ラジコン機4機と制御装置がセットで一ユニット。部隊の作戦行動中は常に周辺上空にいる。詳細スペックは「第110部分 DRONE WARS/ラジコン戦争」参照
『哨戒気球』:国連軍作戦地域上空で常に滞空している気球。異世界転移に伴い、人工衛星のサポートを受けられなくなった地球人類が生み出した代用品。単機能複数期の各種があり、偵察衛星替わり観測機能、通信衛星替わりの中継機能、GPS代わりの測位機能(複数の哨戒気球の位置から任意の場所を特定できる)などなど。
恨みも憎しみも、決して絶えることはない。
どれほどの恩恵を与えていようと、必ず生まれる。
どれほどの償いをしても、決して赦されない。
貴方を恨む者は、いつまでも、貴方を恨み続ける。
憎む者もまたしかり。
故にこそ、
『赦された』
などと逃げることなく、怨嗟と憎悪に向き合わなくてはならない。
――――――――――ニコロ・マキャベリ
然り。
故に『発想の転換』が必要です。
予防も根治も不可能。
ならば?
問題を解決するのではなく、問題を解消すればすむ。
恨み。
憎しみ。
それは放置する。
よって、これを根絶する。
恨む、者を。
憎む、者を。
【太守領西部/西の山/その麓で一番風光明媚な隠しスポット】
俺の思考は空回り。
30秒で決断しな。
んな無茶な!!
さあ、知ってることを整理しよう。
あの山は西の山。
西の山々、そこは鉱山であり、百年以上前から一帯に広がる鉱脈の採掘が続けられている。
百年以上にわたって掘り進められた地下構造。
突端は鉱脈で採掘継続中。
それ以外の採掘済みエリアが居住区となっていて、この邦のドワーフたちがたくさん住んでいる。
OK、いいだろう。
そして、その中で、ガス化合物封入コンテナが起動してしまった。今この瞬間も、反応を続けておりガスは坑道全体を満たして噴出している。
山肌を縫ってだんだん降りてきているが、幸い、ここまでは届くまい。
OK、いいだろうか良くはないが、まあ、最悪ではない。
さーて、つまり、なんも判ってない?
OK、だめだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺は冷静に、落ち着いて、心から、声に出さずに、叫んだ。
状況知らせ!
っと、目がチカチカする。
左目に映像。
偵察ユニットのカメラか?
あ、これマジだ。
マメシバ三尉が指向性画像を飛ばして来たらしい。
単純な理屈。
映像ってのは光だ。
見えるというのは、太陽の反射光やディスプレイなど光源からの光を、網膜が認識すること。
レーザーポインターで特定の目を潰せるならば、特定の網膜に映像を送り届けることもできる。
まあ、普通の戦場で使うようなもんじゃない。俺だって、軍政官教育まで知らなかった。もちろん、軍政部隊専用装備。
またの名を、アンチョコくん。
多種多様な状況に、ぶっ放さずに対処する機会が多い、ハズ、な軍政官。遠く本土の専門家からでも、リアルタイムで助言を受けられるツールが山ほどある。
現地住民に悟られると、権威に傷が付くから、こっそりと。エラそうに、見せかけるためには工夫が必要なのである。エラそうに、見えさえすれば、実態は問われないともいう。
骨伝導マイク&スピーカーで十分?
な訳がない。
個人差はあれど、図表や文章を見て読み、自分なりに教えられた内容を咀嚼しないとボロが出る。しかも時間をかけず、その場で理解しないといけない。
明日まで待って、などとのたまえばバレバレだし、突発的事態には一夜付けも使えないからな。
それが、ここで役に立つとは。なんでマメシバ三尉が軍政部隊装備品を利用法まで知悉してるのかは、まあ、いいや。
ただし今回俺が見ているのは解説もなんもない、偵察ユニットの空撮映像。
偵察ユニット、と称するラジコン機。
四機一セットで三機が部隊上空で哨戒、一機は王城の屋上で待機。
哨戒飛行は部隊が停止していればその周辺を、移動していればその進行方向に向かう。待機は哨戒中の三機のうち一機に異常動作が生じた場合に、屋上コンテナが開き離陸して、自動的にカバーに入る。
こちらが指示しなければね。
偵察ユニット自体は昨日から、山の上を哨戒している。もちろん今回もいつも通りに自動モード。指定されたポイントを、多少幅を持たせたスケジュールで、自動的に撮影しているだけ。
ただ、今は、煙に反応して警戒モードに切り替わっている。これも規定動作だ。特に指定しておかない限り、噴煙や轟音に反応して軌道を変えるようになっているからだ。
異常と規定される映像や音響を、偵察ユニットのセンサーがセンサーが拾う。
すると部隊にはアラートが鳴り、一機が高度を下げてそこに向かい、二機目が高度を上げてそれをトレースし、三機目が高度を保ち哨戒範囲をできるだけカバーし続ける。
哨戒範囲の偵察密度を落として、異常地点に集中させるのだが。
もちろん、偵察ユニットは反応しているだけで、判断はしない。対艦ミサイルが、画像のパターンや赤外線から煙や爆発を感知するようなもの。
ミサイルが無駄を防ぐために煙を上げている目標を避けるならば、偵察ユニットは煙を上げている場所に向かうだけ。
山のあちらこちらから煙が上がっている。しかし俺と違って機械はぶれない戸惑わない。一番大きな煙や事前に規定してあった偵察ポイント近くの煙、つまりは異常にまっすぐ向かう。
だから俺の眼に映っているのは、事前にポイントしてあった、鉱山出入り口付近。
多数のドワーフが映っている。喉を抑え、目を抑え、せき込んで吐いて大騒ぎ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こりゃ、ダメだ。
サプライズプレゼント、って理屈は通じない。
坑道入り口でかつメインの出入り口であろう、山の大きな開口部。そこから噴き出す煙は、オレンジ色の警戒色から見て、無味無害無臭有色の、開口部確認用ポイントガスかと思ったんだが。
いや、他人の家に着色ガスぶち込むだけでダメだけどね。
着色よりもっとひどかったら、もっとダメですね。
無害に見えないね、こりゃ。
どう見ても、トロイの木馬よりひどい、奇襲攻撃。
っていうより、騙し打ち。
やった責任者は俺です。
『責任とるってば♪』
元カノの能天気な声。
声帯の振動を、頭骨経由で拾ってスピーカーで再生している割には、ニュアンスまで伝わる高音質。
おー勝手に戦争始めたからには、働かせるからな絶対に。
いろいろ余計なことまで押し付けてやる。
能天気な元カノは、事態を把握してないわけじゃない。
戦闘中の方がこんな感じなのだ。
戦場は解りやすいから、気楽。
後方は判らないと解っているから、ダレている。
占領地は訳が分からないから、ワクワクするとかなんとか。
『異世界に住むならさ~!白い小さなお城の庭に可愛いケルベロスを飼って、アタシは山に狩りに行き、料理洗濯 はドワーフが』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・風味がおかしい乙女チック。
何の話だ。
何の責任をとろうとしているのか。
責任を取って、結婚する話につなげるな。
『あんたは塔の一番上のお部屋』
ミザリーか!!!!!!!!!!
※監禁ネタで有名な映画
その話もう終わってるから!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いかんいかん、シスターズに気付かれる。
さっさと動け!!!!!!!!!!
『りょーかい、旦那様』
【太守領西部/西の山/その麓で一番風光明媚な隠しスポット/青龍の貴族、その前】
あたしは感じる。
あたしたちを包む青龍の陣形が変わっていく。
サトウ、シバの両卿は、Colorfulの前に。
黒騎団のドワーフたちは、西の山のドワーフ達の側。
傍らには大きな鉄塊、つまりは一つでここにいる全員を皆殺しにできる、竜殺し。
これで、Colorfulは安全。
ドワーフたちはドワーフたちが抑える。
そして、あたしの、前。
一振りで斧が届く範囲に、ドワーフの戦士長。
問題は、戦士長の腕と斧の範囲。
その範囲には、あの娘、妹分
――――――――――――――――――――――――――――――青龍の貴族。
【太守領西部/西の山/その麓で一番風光明媚な隠しスポット】
俺は杯を置いた。
なんか自然にのんでいたが、気つけ酒とは好都合。
おかげで頭と体が再起動出来たよ。
たぶん。
俺の前にはドワーフの戦士長、ひとり。
間にエルフっ子。
下手に動けば危ないな。
前に出るのを止めるべきだったが、もともと風より素早いエルフっ子。止められるような力が俺に在るわけがない。
だが、幸い元カノが側にいる。
如何に屈強な戦士でも、45ACP弾を連射する元カノにはかなうまい。ドワーフの戦士長の傍らの斧は、地面に置いたまま。
元カノのガバメント、抜き撃ちの方が早い。
なら、エルフっ子は任せていいだろう。
シスターズのちびっこたちは、まあ、俺の腕の中だから、何とかなるかなこの位置なら。
煙が上がる前はColorfulの一人が入れ代わり立ち代わり、ここに来ていた。が、たまたまシチューを取りに行っていたおかげで、離れた調理場所に集まっているのが幸い。
まあ、直後は、こっちに来そうになったので、ついにらんでしまった。おとなしく、佐藤と芝に守られてくれている。
耳が垂れて、涙目でこっちを見るのはやめて欲しい。
Colorfulたち、あれ、俺を見てるよね。
また恨みを買って
・・・・・・・・・・・・・・・・・いやいやいや。
それより後で謝るとして今はそうじゃない。護るべきものが護られているなら、考える必要はない。
今は、ほらあれだよ。
状況の把握。
はい、ここから先は試験に出るよ?
ガスが、というより化合触媒が圧縮封入されたコンテナ。が、ちゃくちゃくと被害を拡大している、よその山のドワーフたち。
山のドワーフ坑道、その奥でコンテナは開けられた、ようだ。
すくなくとも、偶然に開いてしまうような造りじゃない。
崖から落としたり、斧や戦槌で乱打しても壊れたりはしない。だが、手で留め金を外せば、簡単に開く。
なぜ、誰が、いつ、開いたのかはどうでもいい。
どこで、が、重要だ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もし捨てようとしたならば、山の中腹にあるゴミ捨て場に運ばれたろう。
それなら始末も簡単だったのに。
西の山、ドワーフ達はゴミを坑道外に出す。
まあ衛生を考えたら、当たり前だが。
痕跡から見ても、西の山のドワーフたちは異世界標準仕様で間違いない。
俺は昨日、陽向ぼっこしながら見てたからな。
西の山の偵察映像を。
見た感じ、西の山のドワーフたたいは、国連軍が知っている他のドワーフとあまり変わらなかった。まあ、国連軍の知識はここ数カ月に実地確認したものと、現地住民から聞き出したものでしかないが。
いや、チガウですよ?
昨日は休日でしたからね??
働いてないですよ???
昨日、炊事洗濯お茶くみ掃除狩りなどなど、働くシスターズやColorfulやメイドさんたち。その傍らで、王城のバルコニー的な場所で偵察映像を見ていた俺。
俺も、働いていたように聞こえるが、もちろん、違う。
俺はこの職場(軍政部隊)の管理者(司令官)だ。
自分を含む全員を、働かせない責任がある
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・働かせる責任もあるけど。
チッ!!!!!!!!!!
さておき、俺は義務に忠実なまじめなサラリーマンである。だから部下の仕事を止めもするし、俺の仕事を止めもする。
言うまでもないのに、何故か理解されていない。
労働量と時間には上限も下限もある。
常識と法律の問題だ。
下限は多少融通してもいい。
人間の活動には振幅があるのが当たり前。調子が良い時もあれば悪い時もある。効率を落としても、それで傷付く人間は居ない。
だから当然常識的にためらわずに止める。
え?
仕事が進まなきゃ職場が困る?
それは、それを織り込んで計画しない、職場の管理者が無能なだけ。
無能は速やかに引きこもろう。
社会に出てくるな。
無能じゃないなら、違法前提で事業計画を練る、犯罪者だ。
犯罪者は速やかに閉じ込めよう。
刑務所に。
バカか?
犯罪者か?
いずれにしても通報は最寄りの労働基準監督署か弁護士会まで。
残業代を払えば、そのぶん働かせてもいい?
などと、本気で考えるバカも多いが、んな訳がない。
本人が働きたがってる?
働きたくない、って言ったら認めるのかバーカ。
これは選択の問題じゃない。
社会を効率的に動かす為の原理だ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・日本が労働生産性世界底辺の理由は、そこに無理解だからだろう。
それで世界経済の3/1握れたんだから凄い。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・効率的にやれば、もっと高みに昇るか、もっと楽に達成出来るってのに。
結果が出たんだからその働き方は正しい。
というキングオブバカもいる。
前後関係と因果関係を混同しやすいのがバカの特質。
あるあるネタ。
祈った後に天が降ったら、雨乞いは有効だといえるだろうか?
ってはなし。
十回祈って十回雨が降ったら、それは梅雨時だと考えるのが科学。でも、占いや迷信やジンクスはなくならない。
よくよく考えるのが苦手な人はいるモノだ。
過労死するほど働いて、日本は経済大国になりました。
はい、因果関係なし。
死ぬほど働きゃ経済発展できるなら、働き死にが一般的な貧困国なんかあるわけないのにありふれてる。
ともあれ、俺は潔白だ。
昨日は確かに遊んでいた。
準待機任務でもあり、シスターズの小さい二人やColorfulが常に近距離で行き来していて、しかも時々話しかけてくるから、ずっと寝るわけにいかなかったけどね?
それはプライベートの範疇なので。
本当に本当だ。
仕事なんかしてない信じてくれ!!!!!
管理職が率先して違法行為をするなんてよくあるけど俺は違う!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いずれにせよ、労働者が関与してはいけない領域だ。
よって職場の管理者は、残業をさせてはいけないし、残業しないで終わる業務量を配分しなければならない。
それはもちろん、管理者自身も含む。
な、わけで、俺は昨日、ゆっくり休んでいた。
哨戒気球越しに西の山、ドワーフの居住地を見ていたのは、完全に趣味だと言い切れる。
いやまあ、ピクニック前日だからね?
今日の話に戻すけれど、そもそも今日だってあまり仕事じゃないはずだったんだよ??
職場仲間(部下の佐藤、芝、軍属のColorful)、取引先 (シスターズ)、同業者(元カノ、マメシバ三尉以下黒旗団ドワーフ)の慰労会的な?
みんなでお弁当を広げるのに、良さげな場所を探していたのだよ。
結局、ピクニックする場所は現地ドワーフに紹介されたけどさ。
しかも、その恩を仇で返しているけどね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・言い訳に聴こえるから、ほどほどにしよう。
そんな訳で、西の山周辺を眺めていた。
軍事参謀委員会の資料でドワーフの生態を読みながら。
それが仕事の役にたとうとは。
今日、今から始まる、やばいお仕事の。
でまあ、今、考えるべきは、ドワーフライフだが
――――――――――生ゴミは焼却するから、火事にならないように、麓の開けた場所まで運ぶ。
塵芥に石片土砂などは、山肌に放り出す。
そういう場所は、事前に偵察ユニットで場所特定済み。
焦げ跡に堆積物で、どちらも判りやすいからな。
コンテナが、どちらかに捨てられたなら、被害は無かったのに。
コンテナは坑道の、ドワーフの根城の中枢に持ち込まれたようだ。煙が山々の各所から出てるってことはそういうこと。
穴は奥に向かえば向かうほどに、集約されていく。奥の一点からならば、坑道網全体に空気の流れが繋がる。
コンテナは、その一点、あるいはその近くで開けられたのだろう。おそらくは、貴重品などがしまわれている、居住エリアの中枢部で。
かなりの振動を伴う、爆発に近いガス発生。
俺たち国連軍が調べた限り、ドワーフの地下住居はかなり頑丈。
この程度の振動ならば、落盤は無いだろう。
ないといいな。
だが、振動を麓で感知するには十分
――――――――――――――――――だから気がついた、マメシバ三尉。
俺は煙を見るまで、異常に気がつかなかった。
地震計にアラートを仕掛けていたに違いない。地震計自体は、偵察がてら、昨日のうちに空中散布させておいたのか。
気がつかなかったけど、チヌークを飛ばしてたんだろうな。それでいち早く、結果を知り、誰よりも早く元カノが反応した。
そして今はみんなが知っている。
俺は、つまり国連軍は、ドワーフたちの西の山を攻撃した。
俺の手元のカード。
この辺りに国連軍部隊は他にいないから、手持ちの戦力は相変わらず。
黒旗団は元カノ以下十名の戦闘員。
一人一人が豆タンクじみた武器弾薬積載戦闘量を誇るドワーフ歩兵の力で考えると、これだけで一個中隊相当。
選抜歩兵の佐藤と芝。
空輸してきた重火器積載HMMWV二台。
近場にチヌークが2機。
非戦闘員がシスターズ&Colorful、8名。
戦力外は俺と神父。
対する西の山のドワーフたちのカード。
この場には、総勢100名あまり。
ガスで混乱している山の地下要塞には数千人あまり。
可能なことは?
西の山それ自体への対処は、手元の戦力ではできない。
今、この場だけで考えよう。
俺たちは、自分たちの非戦闘員を護ることはできる。
この場の味方以外すべてを殺すこともできるだろう。
いずれにしても、この場は離脱するべきだ。
状況は判りました、っと。
よってココからは、とってもつらくけわしくやりたくない、試験時間。
決断タイム。
やだな~。
元カノは、俺に視線を向けた。
準備は整った。
どうする?
逃げる。
なら、西の山、ドワーフ達を、どうするか。
まず、今、目の前にいる、ドワーフの戦士長とその一党。
殺して逃げるか。
置いて逃げるか。
それとも――――――――――




