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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第五章「征西/冊封体制」

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167/1003

集積・隔離・殲滅/UNF doctrine.

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします


一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。

次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。

以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。

(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)


【登場人物/一人称】


『俺』

地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿》

現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様/我が君》

?歳/男性

:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。


『あたし』

地球側呼称《エルフっ子》

現地側呼称《ねえ様》

256歳/女性

:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。姉貴分。ロングストレートなシルバーブロンドに緑の瞳。長身(数値不明)。革を主体とした騎士服にブーツに剣が常備。



【用語】


『青龍』:地球人に対する異世界人の呼び名。国際連合旗を見て「青地に白抜きでかたどった《星をのみほす龍の意匠》」と認識されたために生まれた呼称らしい。


『赤龍』『帝国』:地球人と戦う異世界の世界帝国。飛龍と土竜の竜騎兵と魔法使いを組み合わせた征服国家。70年ほどかけてユーラシア大陸に匹敵する面積を持つ大陸の東半分を征服した。特段差別的な国家ではないが、エルフという種族を絶滅させる政策を進めている。



『国家』:国土と国民と政府によって成り立つ組織。異世界に転移した日本列島には国交の数だけ国家があり、人類社会を網羅している。大使館が国土であり、在日国民がいて、大使館関係者が設立した政府がある。日本の衆参両院が承認している。


『国際連合』:the United Nations/連合国、の超訳。異世界転移後の人類社会の総意を体現する組織。と国会で決まった。加盟国のほぼすべての外交防衛権を委託されている。黒幕は日本の一衆議院議員であるとマスコミに報道されている。


『国際連合軍』:国連憲章第七章に基づく人類社会の剣と盾。と国連総会で決まった。黒幕は元在日米大使の合衆国大統領であるとマスコミに報道されている。


『軍事参謀委員会』:国際連合の参謀本部。


『安全保障理事会』:国連実質的決定機関。もちろん、総会の承認を得てこそ正式な決定となる。異世界転移後は全て一任されている。でも、理事会の要請で総会決議がされることがある。


『常任理事国』:合衆国(米)、連合王国(英)、第五共和制(仏)、共和国(露)、統一中華連邦(中台合併)、日本。




正義とは何か。





・・・・・・・・・・・・・・ですか。


これはこれは。

いやいや、コレは考えつかない遊びですな。


正義とは。

今、この瞬間に、貴方が感じている、それです。


眼に映り、耳に聴こえ、言葉を発し、心想う。


なにか判らぬことがありましょうか。


ただ生きておるものでさえあれば、知っておりますよ。

それが悪行をなしておっても、です。



いやいや、精神異常者であれば、その症状によっては、判らぬ、ということもあるのやもしれませんな。ふむ、興味深い。


悪を滅ぼしたる後に、確かめてみましょう。魔法使いならば心を読めますし、化学と合わせればなさざるほどのことではありますまい。




一人一人にそれぞれの正義がある?


独りでそこに在る人間などありえましょうかな。

およそ非科学的な笑い話。

いやいや。

それは狂気ではなく、恥知らずの逃げ口上。


してない。

言ってない。

決めてない。

だから、悪くない。



異なる意見を尊重するとは、綺麗にまとめたモノです。


何もかも、みな認める、ソレすなわち、何も認めぬということ。

内なる正義が認めても、相手を尊重するためと口上をつけて、己が正義を閉め殺さんとする無様。

必死ですな。



正義を見つめれば、為さざる不義を、己が責める。



誰よりも厳しい、何よりも敏い、そんな己から逃れられる道はただ一つ。

思考停止です。



正義に撞着し、痛みにおびえて煩悶し、迷いに飛び込む卑怯者。

首をすくめ、顔を隠し、頭を抱えて隠れた気になる愚か者。

正義に甘え、正義を背負わず、正義に逃げる臆病者。



いやいや、イーサーは良いことを言いました。


「神を試してはならぬ」



しかり、しかり。

どれほどどれだけ試そうと、己が心を偽れましょうや。

試せば試すだけ、試しをこしらええた己が責める、内奥が産み続ける煉獄にとらわれるのみ。



ただただ、試す。

試すために試す。


続ける限り、逃げられる。


答えから。

正義から。





いやはや。

やつばらには、尋ねてみたいものです。

ふさわしきは、まさに愚問。





正義を知らずに、なにゆえに、ヌシは生きておる?





※イーサー(イエス・キリスト)。ムハンマドへ至る道を示した預言者。イスラム教の偉い人(人間)。



《インドネシア軍人との雑談》





【太守領西部/西の山/その麓で一番風光明媚な隠しスポット/青龍の貴族、の前】


あたしは目を疑った。

疑いながら一挙動で、前に出る。


あの娘と妹分、そして彼、青龍の貴族の盾になる位置に。その場所は青龍の貴族の視線を遮らず、敵を斬殺出来る。


あたしの肢体は反射的に緊張を解く。神経だけがつま先まではっきりと感じられ、考える前に肢体が反応することは間違いない。

筋がほぐれ関節が緩み頭が

――――――――――――――――――――――――――――――堅く澄み渡る。


そうなってから思った

・・・・・・・・・・・・・すごく久しぶり、なんじゃないかしら?


この感覚。

何一つ考えずに、何一つ備えずに、何一つ漏らさずやり遂げられる。


いつもの、あたし。

久しぶりの、あたし。

もう忘れていた、あたし。


十年間一度も途切れることがなかった感覚。

当たり前のように再現できるけれど、ソレが意外。


わずかに半月。

たったそれだけで、以前の自分を忘れていたんだから、あきれちゃうわね。

ソレは自信につながる。


あの娘の姉として。

妹分の手本として。

彼の女として

――――――――――――――――――――――――――――――でも、いいわよね?


集中集中。

考えても考えなくても、完ぺきにこなせるのは変わらないけれど。

自分でも露骨なくらいに眼をそらす。

そらした先に、敵がいる。



耳が風を捉えて、眼が眼を捕らえ、鼻が皆の感情を嗅ぎ分けた。


呆然

――――――――――あの娘、妹分やColorfulは当たり前だけど。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・敵味方のドワーフたちまで、固まってる、わ。

コイツラの仕業じゃない、か。



そんな中の例外。


嗤いをかみ殺した、青龍の女将軍。

頭を抱えそうなマメシバ卿。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――知ってるのね、何が起きたのか。



その、何か、が起きている場所。

遙か先、山のあちらこちらから吹き出している。

柑橘のような色をした、煙。


あたしには、それは煙ではないのだ、とわかっていた。わかっていなくても、ソレを煙と言い切れるのは、よほどの愚か者だけ。


むしろ愚かな方いいのかも。

無駄なことを考えなくて済むから。



己が城に等しい山をみて、その想像が及ばない異変を見て、微動だにしない西の山のドワーフ達。

冷静で、頭が良く、突発的事態に経験がある

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――でもコレは初めて。


だから、動けなくなる。


それはそうでしょうね。

あたしはソレと同じものを見たことがある。見たことが無ければ、むしろドワーフよりの反応をしてしまったかも。



アレが煙なら、戦か事故だと思うでしょう。そ

れなら対処はいくらでもある。


だけど煙には見えない。

でも煙にしか見えない。


ソレは煙に似た、柑橘を思わせる色の、山肌から吹き出しながらたゆたう、ナニか。


危険なのか、敵なのか、異変なのか。事態がのみこめないから、何も知らなければ考えることすら出来ないわ。

ソレが行動をためらわらせる。余裕があるから、能力が高いから、持てる余力を浪費して。



青龍の騎士、サトウ、シバの両卿は、主を見た。


いつものように、意図を察するためじゃない。

手馴れているように、黙認を求めるためじゃない。

どうするという前に、動くか動かないか、判断を求めてる。


この、ぴくにっく、を始めてから、初めて

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もしかしたら、主の指示を仰ぐのが、人生で初めてなのかしら。



あたしが知る限り、青龍の貴族は、ほとんど命令しないから

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰にも。


それでも長くはかけない。


サトウ、シバの両卿はいち早く考える事を止めた。双方のドワーフたちも続き、互いに主君、そのような者、の気配を窺っている。


主!!!!!!!!!!

青龍の貴族は??????????

例外中の例外、慌ても笑いも茫然ともし得ない彼は

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?



ただ独り


――――――――――空白――――――――――




【太守領西部/西の山/その麓で一番風光明媚な隠しスポット】


俺はゆっくりと酒をのみ込んだ。



――――――――――地下要塞攻略戦――――――――――



国連軍はドワーフの坑道に限らず、地下陣地にはよく出くわした。


帝国軍は近代火器の特性を素早く掴んでしまったからだ。

長射程、大破壊力、高々度、重装甲。

ならばソレを使えなくしてやればいい。



――――――――――本当に中世の軍隊か?


当時って、軍隊以前の、現代から見れば武装集団くらいのモンなハズ。


まあ、ローマ帝国やモンゴル帝国なら組織学チート国家だしな。

帝国も、それに近い。

事前の偵察で、見当はついていた、らしい

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・軍事参謀委員会は。



転移直後から偵察を続けた成果だとか。


もちろん国連軍は機械的な偵察で済ませるような、手抜き軍隊じゃないよ。異世界の方々には気の毒な事に、ヒューミントを最重要とする。


ようは外見的事実じゃなくて、キチンと証言をとる。


そのために、軍事制裁決議前から潜水艦や空挺降下で部隊が送り込まれているわけで。最低2ヶ月以上に渡り

――――――――――拉致したり誘拐したり自白剤の容量テストしたり集落ごと消滅させたり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・その程度で、帝国軍のチートさが、わかるのかね?


まあ、わかったって言うんだから、良いんだろう。

――――――――――善くはないが。



末端の俺たちが知る必要はない。


だから、戦争計画の中枢以外は知らなかった。

中枢っていうのは?


合衆国大使館に在日米軍の司令部。

日本の与党連合幹事会。

その周辺ブレーンたちだ。


彼らが情報を独占したことが正しいのか間違いなのか。

そんなこと俺は知らん。

その結果は知ってるがな。



帝国軍事組織は現代軍事組織と比べてある部分で劣り、ある部分で優る。

トータルで現代軍隊と、あまり変わらない、か?


だからコレは、帝国が俺たちより優れた部分。


余りにも適切なの対処内容と、対処に至る、余りにも素早い判断。まるで、手慣れた対応のように感じる。これまでも俺たちと、同じ様な敵と戦った経験があるみたいだ。


――――――――――そう考えたのは、俺だけじゃない。


まあ、これも当たり前だ。

俺が考える事なんか、どこかの誰かがとっくに考えついている。だから、俺は安心して何もしないで過ごせる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・のに、野暮な嫌がらせのせいで、誰にとっても不必要な労働を強いられているが。


憲法改正が必要だ。

まあ労働の義務を廃止するのは、俺以外の誰かに任せるとして。

考えを戻す。



この異世界に、現代軍隊が攻め寄せたのは、俺たちが初めてらしい。

捕虜を尋問した限り、現代軍隊と戦った経験はないようだ。捕虜は嘘をつかない、信用してもいいだろう。過去の戦歴をわざわざ隠す必要はないからな。



べ、別に、マメシバ三尉が日夜調合、もしかしたらもしかすると、投与も繰り返しているかもしれない、お薬のせいじゃない。


マメシバ三尉も断言していた

――――――――――――――――――――体に悪くないですよ?



直ちに健康に影響しません

すでに手遅れで致命的に汚染済みであり死ぬより辛い人生をお約束しますし、遺伝子への悪影響は子々孫々に続きますからよろしく!



とは違いますから♪


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だ、そうだ。



しかし原因はどうあれ、帝国軍は効果的に対抗してきたわけだ。


射程が生かせない狭い空間。

破壊力が自殺行為になる密閉空間。


恐れるべき空がない場所。

装甲兵器を運用するスペースがない場所。


巨大な地下要塞。


帝国に友好的なドワーフの居住地。

謎めいていた(過去形)なダンジョン。

最低でも山を一つくり抜いて造られた、地下構造。



もちろん、巨大とはいっても戦車が入れる場所じゃない。巨大なのはその総延長や地下全体に占める割合のこと。


地下要塞であるから内部はつまり、何t何十t何百tの岩やら土やらの中。


地上の市街戦よろしく鬼は外、内で死ね、的な手榴弾で豆まきはできない。崩落、落石、落盤、などなど悪い可能性ばかり山ほど考えられる

・・・・・・・・・・・・・・自殺行為が好きな兵士はいない。


砲撃や空爆を夢想するのはバカばかり。


火炎放射器?

チンケでチンプなトーチカじゃないって。

敵味方が向かい合って空調もない密閉空間でゲル化燃料を瞬間燃焼。

どちらも酸欠熱死する。


縦横に走る通路の中にはそれなりに広い場所もあるが、無理にジープを持ち込んでも持てあますだけ。通路は最大直線でも500m以内、平均10数m。

車両の装甲は頼れない。



とまあ想定戦場は、近接戦闘をお約束しかねないありさま。



そんな場所に帝国軍殿部隊が盾籠もりやがったのである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・頭いいよね。


近接戦闘は避けなきゃならないが、地下要塞の中では避けようがない。



避けるために完全包囲、なんてバカを国連軍はしない。

そもそもどうやって包囲するんだって話。



山一つの地下がまるまる要塞ってことは、、山を包囲しないといけないわけで、どれだけ兵力が必要かってわけで。

・・・・・・・・・・・・・・そもそも国連軍に一番たりないモノ。

百万を再動員する帝国軍。

十万程度で後がない国連軍。

――――――――――数。


それでも包囲するなら、科学技術に基づく機器を使うことで、出来なくはない。

戦場を各種機器包囲して皆殺し、ならよくやってるしね。


だがしかし。

地下構造全体を振動感知で探り出して、地雷を撒く?

時間がどれだけかかるか、地雷がどれだけ必要か、包囲の外までトンネルを掘られるまでどのくらいもつか。

戦場や都市を広範囲で包囲できるのは、見通しが利く平野部だからできること。森丘陵荒地などなど見通しが利かない場所で包囲するには人でも機器も数倍必要だ。


つまり、方位なんてできない。



盾籠もる敵を放置なんて論外だ。

帝国軍は、正面から戦っても無駄だと学んでいる。俺たちが地下要塞を無視して進めば、少数部隊で後方攪乱。それぐらいは考えつくだろう。


ソレだ

――――――――――国連軍が一番恐ろしいのは。


合衆国大統領いわく、近代兵器に負けないだけなら原始人にだって出来る、そうだ。

※プランBであるうちは、って話。


――――――――――常敗の米軍を率いていただけに、説得力あるなあ。


中東で、中央アジアで、アフリカで、自国内で。

練度も装備も桁違いに低い相手に犬死無駄死浪費と徒労を繰り返してきて、異世界転移が無けりゃずっと繰り返し続けたろうからな。



戦場で勝って、戦争で負けて、無駄死に狂乱して勝利を妄想

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・合衆国の歴史でした。



まあ、辛辣すぎる見方かもしれない。


敵対国を大抵は滅ぼしているのだ。

それが何の利益にならなくても。

敵と一緒に自滅するのが勝利だって言うなら、別に病院に行けとは言わない。



選挙に行くな

――――――――――医学の限界。



そんな国で、軍人のトップをはるのは、そりゃ辛かったよね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・懲りりゃあいいのに。


だがしかし、今度こそ、今回こそ、合衆国史上初めて戦争に勝つために、最後の最高司令官が炎上中。いや、この戦争をデザインしてるのは、日本の国会だから文句も言い難いが。


かくしてゲリラ戦を防ぐために、皆殺し。それが命令、軍令、国際連合決議に派生した結果発令されたからには、人類の意志。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・軽く言ってくれますね。


近代火力が通じない、地下要塞に籠もる、近接戦闘最強の組織的軍隊、帝国軍を、ひとりのこらず全部殺してこい。



はい、たいへん

――――――――――――――――――――簡単ですね。



俺には思いつくのが難しいいだけで、俺ですら実行可能なほどに簡単だった。

ありとあらゆる戦争の最終形態

――――――――――――――――――――国際連合軍。




国連軍は、敵が頑丈な地下要塞に撤収し籠城準備を進めるに任せる。

これで近隣の帝国残党は全部居なくなる。


まあ、帝国関係者にすれば、目論見万全な要塞が近くにあれば呼ばれなくても逃げ込むよね。


帝国軍殿部隊も、多大な犠牲覚悟で戦っている。むしろ全滅前提で時間を稼ぐためだけに、予備戦力は多ければ多いほどいい。

兵糧も兵器も余りあるし、防御戦に徹すれば非戦闘員にも使い道はある。


それを邪魔するフリをして、頃合いを見る国連軍。最期まで、蓋を閉じるまで、気付かれてはいけない。そして阿吽の呼吸で動き出す。


圧倒的火力を生かして、地下要塞の出入り口を制圧。


ここまで帝国軍もあまり抵抗しない。誘い込みたいのだから、当たり前だ。お互いがそこまでは、望んでいる。


ここまでは仲良く殺し合う、敵味方。


おおむねほとんどほぼすべて、国連軍が殺してるだけとはいえ、ソレは結果。帝国軍だって、逃げ込みながらこちらを殺す努力は惜しんでいない。ブービートラップで、国連軍に死者が出ることすらある。

だから、殺し合い、で間違ってはいない。


ここから、互いの思惑がすれ違うんだが。


国連軍は、地下要塞の入口を出口にはしない。

空気流入流出遮断用ビニール隔壁をつくる。あとは隔壁内外に自動機銃、地雷、マキビシ、電撃鉄条網に音響制圧まで各種実働試験兵器を配置。


自動機銃はいつもの。

地雷はクレイモアを中心に、外側メイン。

マキビシは神経毒付。

トゲトゲ針金に絡まったまま感電死するのは、死体蹴りでしかない。

音響兵器は二種類。

国連軍部隊の進撃音を偽装して響かせる間接利用。

接近するとスタングレネード並みの大音量を響かせる直接攻撃サーチライトをプラス



かくして入口を確保したら、その口にコンプレッサーを設置。

一気に高圧で注入

――――――――――毒ガスじゃないよ?


いきなりそんなバカはしない

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・反省したからね。


無害無臭無味有色ガス。


蛍光はオマケ。

空気より重いガスが、流し込まれて地下構造を満たす。

中の人、たちは最初慌てるが、すぐに落ち着く。視界が悪くなるだけで、他になにも起こらないからだ。

よく知る地下要塞の中。

闇を利用するより、なお近接戦闘に向いた環境になる。


よって、中の人からの苦情は、まだまだ出ない。



地下要塞には出入り口以外に様々な開口部がある。空気取り穴、忘れられた通路や坑道、落盤や崩落の穴隙間。


着色ガスは観察されている。

中には確認しやすいように、微量の放射性物質が混入されたものもあったとか。

まあ、概ね放射線感知器は使わない。


哨戒気球に偵察ユニットや、目視確認でガス漏洩地点が確認される。


そこから先は結果次第。


例えば漏洩規模が小さければ、塞いで回る。

隙間にガラス樹脂や速乾性コンクリートを流し込む。


大きな出入り口は制圧し、爆破か封鎖。

爆破なら隙間埋めはやり方が同じ。

封鎖ならやっぱり入り口の時と同じ。


かくして完全に密閉された地下要塞。


多少の隙間は注入する物量でカバー。

何を?

いや、補給に優しく現地で合成可能な、一酸化炭素。


コレはクリーンで毒性がなく、始末が簡単。

しかも空気より重く、血液に溶け込むと酸素を無視して取り込まれていく。

ヘモグロビン、とは酸素を体内で循環させるために使われる大切なたんぱく質。それは、人間以外の多くの動物が同じ用途で利用する。


ソレは異世界でも同じ、ようなもの。


この世界でも生物の多くは酸素による化合エネルギーで生存に必要な力を得ている。

そして異世界動物の血液にヘモグロビン、のようなものが存在しており、それは一酸化炭素を与えれば酸素なんぞ目もくれない。


どうなるかはわかっている。

高濃度の一酸化炭素を短時間ですっった、瞬く間に生物は昏睡状態に陥り無力化。エルフやドワーフに効くかどうか以前に、死後の血色がよいところまで、何度となく確認済。


ゆっくりと静かに息を引き取る。

それまで念には念を入れて、一酸化炭素の注入を絶やさない。

終わったら、換気用の無害無臭無味無色ガス、べつに普通の大気でもいいが、を同じように注入すればいい。


地球で言う中世の技術を超越した、異世界の地下要塞。

そこには隔壁もなく、呼気モニターもなく、強制排気装置も空調コントロールもない。

酸素ボンベも対ガス攻撃自覚症状を列挙したマニュアルも。


それは、誰のせいでもないだろう。



数千人が数万人でも、多ければ多いほどいい。

命以外に何も変化はない。


一次作業(殲滅)完了にかかる時間は?




三日。







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