Present. /大人が贈るもの
『異世界の人間観』
おおむね地球史における中世と同じ状況にある。
「おとな」
と
「こども」
という概念がない。
知的生物は相手が同種族か確認した後に肉体的な成熟を基準に相手を
「一人前」
と
「それ以外」
に分けて考える。
「一人前」とは肉体的精神的な強度が平均値前後で安定している個体を指す。
「それ以外」とは老人や病人、そして成長過程ないわゆる子供である。
いわば「一人以前」である彼らは「母体の本能的な擁護が行われる幼児」や「相手に有用な知識や技能を持つ」など特別な例外を除いて社会全体からの義務や保護はない。
ただし農耕社会では村落共同体の中で「村の資産」として扶養可能な数が曖昧ながらも管理されており、家畜と同等程度には保護されている。婚姻という概念はないが一種の雑婚であり、健康でさえあれば血統には誰もこだわらない。数が少なければ他の村や街から調達するし、村の生産力が落ちれば売却か殺処分される。
※狩猟採集から農耕生活に移行した異世界人は、深度にもよるが全体の半分程度と考えられる。
これが一般的。
以下例外。
貴族や騎士、富裕商人など一部の特権階級は別な社会を築いている。
彼等は権力資産の拡大に伴いそれを管理する力を必要としており、それはまたさらなる発展の条件でもある。
故に氏族血族を基幹として組織力を得ようとする。そこで同族の「こども」は組織の中での役割を定められて育成される。
「こども」の育成成果も氏族内部の評価の一つとなる。
「こども」は将来への投資。
それが経験則により浸透していく。
機能的な必要性と遺伝的類似が生む親和性が、「こども」への執着を産む。それが現代社会で言うところの「こども」という概念を萌芽させつつある。
そして氏族組織内部での小組織として「こども」の育成を軸にした極小血族集団が生まれはじめる
――――――――――「家族」の誕生だ。
「ねえ、ひどい話だと思わない?『決定の結果』とでもいうのかしら、言葉に無知すぎるわよね」
「出来は最悪だと思いますけど。犯人の頭の悪さを強調している・・・・・・だと筋立てに合いませんし」
「原作もこのありさま?読む気にもならないけれど」
「っていうか、編集者が仕事してませよね。これをチェックしないってアタマ悪すぎます。それとも、別につくったコピー?なら頭が悪い対象がさらに」
「ふつーチェックするわよね。昔、会計検査院の役人が主人公の謎映画で『予算は我々が認めるんだ!』って」
「・・・・・・・・・・・・・議会も民主主義も無視で、そんな脚本をだれもチェックしなかった、わけですか」
「ここは懐かしのソビエト連邦かしらね」
「基本的な知識がないんですね・・・・・・小学校で勉強しないから」
「それもあるけど、人物像が腐ってるわよ。家族と社会を護る父親が、なんで妻と子供の側にいるわけ?妻と子供に常に同伴する父親ってニートじゃない。ってか、物心ついてずっと父母が側にいたら気が狂うわよ。親がそろって引き篭もり?生産が必要な社会じゃねいけれど、それならそれでやることが別にあるでしょうに」
「三佐のお父上は」
「家にいるわけないじゃない。政治家よ?自称じゃなくて。選挙活動以外で一緒に出掛けるなんてありえないわよ」
「まあ、それはそうですね」
「子供を育てるのは選挙区の支持者。誕生日プレゼントは豊かな社会。先祖代々引き継ぐ家業。兄姉弟そろって自衛官になったし、最初から継がせる気はなかったみたいだけど」
「ソレも変ですね?」
「平和な世界ができれば、うちの一族は用済みだもの」
「創るんですか?」
「いわれたもの」
プレゼントにしようと思っていたが、仕掛けが止まってしまった。
だから、お前たちも使うことにした。
―――――平和と繁栄のピタグラスイッチ―――――
【太守領西部/西の山/その麓で一番風光明媚な隠しスポット】
俺は、開いた弁当箱に向き直る。
箸を入れる一瞬でわかることがある。入れる前から全面インパクトで埋まっているのだが、だからこそ、細部に宿った魂が俺に呼びかけているのかもしれない。
何もかもピンク一色に塗りつぶされる前に、気がついてくれ、と。
俺は、その叫びに応えたい、答える、けっして別な回答を求められているから逃げているわけじゃない。
一番下には御飯。
白い御飯。
いわゆる米、みたいに見える穀物。もちろん、異世界原産。この邦では野菜扱いらしい。
その扱いは俺たちの世界でも一般的だよな。
炭水化物主体でも、芋だって野菜カテゴリーだしね。
米は他の栄養も豊富だし。
しかもこの、異世界のお米、に類似したナニか、いや、もう国連軍作戦資料では、米(異)、呼ばわりで定着してるけど、これは・・・・・・・・・・・・・・・・・
短粒種である!!!!!!!!!!!
粒が短いお米。
いや、別に長粒種もあるみたいだけどね?
調理方法が正しければ、嫌いじゃないけどね?
だが、ここは喜ぶところだ。
俺たちの好みに合わせて、用意してくれたのだから。
ネット閲覧を好きにさせているシスターズ、特に小さい二人。
着々とニート教育が進んでいると思っていたら、料理サイトを中心に覧していたらしい。
働いちゃいけないと言っているのに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・履歴なんか見ていないですよ?
女子供のネット閲覧履歴は不可侵不可逆不可視だって、かーちゃんがいってた。
だがまあ、マメシバ三尉によると、その助けを借りて二人が調べていたのはソッチ系だった、と。
特に教えていないのに、画像でお米の粒の違いに注目していたらしい。
魔法翻訳をColorful再翻訳などで確認した結果、米、と書いても長短の概念は浮かばないらしい。ということは、本当に画像だけで確認したのだと言い切れる。
どうやらそこまで見て取ったのは魔女っ子、一般的な種類ではないと判断したのはエルフっ子だったらしい。
よく気がつく妹に物知りな姉。よくできた家族だな。
それだけでもすごいが、小麦中心でこの邦ではなじみがない米。それを探し更に品種まで選別したっていうのがお嬢。
魔女っ子にエルフっ子が識別した特殊な食材を、短期間なんてもんじゃないくらいの速度で用意して見せた。
国内有数の商家の娘。
そのネットワークがなければできなかっただろう。
そのネットワークさえあればできるってもんじゃない。
商家の跡取りではなく、実績がある一人前でもない。
それでも、従業員だか奉公人、爺やみたいにも見える幹部職員を命令一下、走り回らせる、走り回るべきだと考えさせるカリスマ性。
俺が10歳(魔女っ子の年齢)12歳(お嬢の年齢)の時にこんな力があっただろうか?
いや、ない。
凄い子たちだよ全く。
「ご領主様、だけの、ここにいらっしゃるあなた様だけの、お好みに合わせるのは、淑女のたしなみですわ」
胸を張るお嬢、に引っ張られて俯きながら俺をチラ見する魔女っ子。
そっぽを向きながら耳がこっちに固定されているエルフっ子。
海外に行った時には、こーいう友人が欲しいところだ。
なにかおれい
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マメシバ三尉に殺されるから、止めよう。
「いえいえいえいえ、お気にならず」
なぜわざとらしく、M-14の装弾を開始するのかな?
「戦場のたしなみです」
最初から装弾してたよね?
わざわざ抜いて詰め直してるよね?
軍事パレードみたいなこと止めない?
「穢らわしい不純な気配がしたんですよ?」
隠す気なし??
恫喝威圧脅迫強迫???
「助け合い、とか、共同作業、とか、お礼とか、とかとか互いの都合を交換しようという邪悪で不穏で汚怪な
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・愛、恋、恋愛の尊厳を全否定する商業主義者の陰謀が!!!!!!!!!!」
あー、うん、純愛ドクトリンから見れば、ね。
意図的に労力や配慮を交換すれば、利害打算の取引関係。
なんと言い訳しようが、愛情や友情とは言わない。
それは、わかった。
わかったが。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・子供が打算的でも、構わんがな。
潔癖症なマメシバ三尉には許せないのか。
「閣下が彼女たちを純粋に愛でて尽くして捧げるなら、歓迎ですよ?」
純粋ないかがわしさ。
しかも、たち、って、たち、って。
「身も心も精も命も比喩じゃなく物理的に喜捨しましょう!愛があれば生きる必要なんか無いよね!ささ、ささ、ささ、さささ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪」
セルフ炎上ギャラリー引っ込め!
みちゃいけません
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・騒がしくて悪いな、子どもたちよ。
【太守領西部/西の山/その麓で一番風光明媚な隠しスポット/青龍の貴族、その右ゼロ距離】
「好きです」
わたしは、ちいねえ様を見てしまいました。
その、失礼ながら、まじまじと。
ちいねえ様は、ご主人様を、まっすぐ、見つめながら。
ご主人様が、好き。
お気持ちは、解りますけれど
――――――――――ご主人様の視線に引き込まれ、止まらなかった、言之葉。
ちいねえ様が、だんだん赤く
「知ってる」
で、ですね
――――――――――ご主人様の、その、まっすぐな、返答というよりも、返し。
どうしましょう?
羨ましいんですけれど!!
どうしたらいいのでしょうか???
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お客様の前では、わたしには、無理です。
ただ、ちいねえ様は、ご主人様に髪を撫でられ舞い上がってしまわれました。
うらやましい、です。
【太守領西部/西の山/その麓で一番風光明媚な隠しスポット】
俺はなんか、嬉しい告白をされてほのぼのしている。
いや、だってねえ?
全国のお父さんの気持ちがわかった気がするよ。
良い父親になれそうです。
結婚が先ですけどね?
「よし!!」
ガッツポーズする元カノ
・・・・・・・・・・・・・・・・・はい、スルースルー。
いーよ、姪っ子を可愛がるから。
「え?高校生でしたよね?」
元カノに聞いたか。あの二人仲がいいからな。
「誰が!あんな・・・・・・・正直に言って怒らない?」
嘘ついてろ。
まあ、娘扱いじゃ無理だな。
妹に近いか?
「HEY!Comrade。転んだロリに明日はないぜ?」
だ・ま・れ・よ。
それに、女の子じゃなきゃいけない、ってわけじゃ
「What!!!!!ショタだと!!!!」
「ちょーっと!!!絶対ダメとは言いませんけどアプローチは殺してでも阻止しますよ????もし相手側から挑まれても先着組をコンプしてからにしてください余力が残らないように配慮してもらいますから!!!!!!!」
仲良しだな貴様ら一緒に黙れ!!!!!!!
子どもの話だ子供の!!!
甘やかすだけなら性別なんかどーでもいいだろーが!!
俺はお嬢に給仕されながら、本筋に戻す。
――――緑茶か!やるな――――――
弁当、再度、慎重に、確認。
炊きたて作りたてを盛り付けたて。
だがしかし問題なし。
弁当箱に入っていれば、お弁当だ。
御飯の上に牛肉そぼろ。
煮染めたお肉がいい感じです。まさか今煮たわけがない色合い。温めなおしたのかな。
エルフっ子と元カノが立派な胸を張っている。ああ、原材料調達は二人だったね。その態度は子供っぼい、胸以外の点が、だがまあよろし。
いや、そこで喜ぶ小さい二人。胸のサイズのことじゃないから
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・凹まない凹まない。
大きな胸を抑えてショックな顔をする大きい人。Colorful、エルフっ子、含む元カノ。胸の事だけじゃない、年齢的に。
いや、また誤解してるみたいだが、年齢が高すぎるって意味じゃやない。
もーう、突っ込まないぞ~~~~~~~~~~。
「ロリに墜ちたのね!!!!!!!!!!」
元カノの暴走トーク。
煽る神父。
「HAHAHA!最初からソッチにイマセーン!」
「騙したな~~~~~~~~~~おっきくしたのに」
どうやって??????????
その秘技があれば世界を半分こできるぞ!
「根性で!!!!!!!!!!」
――――――――――世界の半分以上を敵にまわしたな?
シスターズの小さい二人は、さすがに真に受けない。
こころなしか、胸を張る。
何故か神父も。
「天は人の上に人を創らず、人の下に人をつくりません」
テン?
てん?
点?
天?
何を道教っぼい説法始めているのかカトリック!
「おっ○いは等しく尊く貴く気持ちよいのです」
ナニを語り始めているのかエセ神父!!!!!
「主は想いました」
言ってねーのかよ!
「なだらかだから好いんじゃな――――――――――い?」
疑問形????
渋い劇画顔で!!!!
おかしな嗜好を!!!!!!
「「ダメですか」」
はい、小さい二人は食いつかない食いつかない。ここで問われているのは俺の嗜好じゃない。神父の性的思考の嗜好。
「「ダメじゃないですよね??????????」」
いや、いや、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダメじゃないよ?
「むしろイイYO!」
「大きいことは善いことよ!」
「「おっきくなりますから!」」
日本人は、なだらか、が普通だからね?
小さいことに稀少価値を見いだすなんてありえないけれど。日本国内基準でカップを決めてるのをみると、まあ、本音がだだ漏れ。
だが、大丈夫!!
西洋準拠な君たちは異世界標準で考えれば、平均日本女性よりは大きくなるよ。
「「待つのヤダ!!!」」
「大尉殿は全方位対応済みですから大丈夫!」
そんな日本標準狂犬マメシバが吠えた。
オマエはいつ自衛隊を退職して国連軍を脱走して販売員になったかマメシバ元三尉!!!!!!!!!!
誰に何を売り込まなくていいから??????????
「わたしはご主人様を信じております」
キッパリ言い切る魔女っ子。
「ですわですわご領主様」
と、お嬢。
二人とも、スッゴく胸元に詰め寄ってるよね?
俺の。
かなり必死?
大変気持ちはわか
「いいんですよね????」
間違ってない、か?
いやマメシバ三尉、わかる、気持ちがわかる、一生懸命なのはわかるけど、内容は後程要確認。
「Veryキモチガヨロシイ」
とても嬉しい、だ神父!!!!!!!!!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・帰っていいか」
お客さん退いてるよ!!!!!!!!!!
気まずそうな、よそのドワーフの顔。
――――――――――最初から居たから、念のため。
ドワーフ全員祖勢ぞろい。
よその子分たちはギャラリー。
元カノの子分たちと同化している。
こまり顔の、よそのドワーフ。
戦士長だっけ。
真面目な顔が出来るドワーフは1%未満だが実在した
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ待ちたまえ、ここからだここから。
エルフっ子が背後から囁いた。
(どっちが好きなのよ)
さー追い詰められてしまいました。リングサイドでグロッキーにみたいな俺。産まれたての小鹿のようにフラフラです。
【太守領西部/西の山/その麓で一番風光明媚な隠しスポット/青龍の貴族、その背後】
あたしは、凍りついた。
――――――――――き、聞こえちゃった??????????
あたしには、有り得ない失態!!!!!!!!!!
思った事を、そのまま呟いちゃった!
あたしは自覚出来るほど真っ赤になり、彼、青龍の貴族、その背中を見
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・てすぐに視線を逸らした。
――――――――――聴かれた。
しかも、微妙に肩が震えて、笑ってるわね
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・遊ばれてる。
なんか、腹が立つ。
いつもいつもいつもいつも!
からかって、弄んで、あたしには指くらいしか触れない!
いい加減にしてよね!
あの娘も、妹分も、あたしも、全部、貴男のおもちゃじゃない
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・のよ!
貴男の好みなんか視線でお見通しよ!!
気持ちは、あの娘優先なのよね!!!
悔しいし嬉しいし????
結局、貴男が意地悪だから!!!!!
――――――――――って、あたしは泣き喚いて澄まして微笑む愛しい顔に詰め寄りたい!!!!
出来ないけどね!!!!!!
よそのドワーフたちの前で、恥をかかせるなんて出来ないからね!!!
ふんっ!!!!
みてなさい!!!!!!
今夜こそ何が何でも決着つけるんだから!!!!!
我慢しないしさせないから!!!!!
【太守領西部/西の山/その麓で一番風光明媚な隠しスポット】
俺のお弁当はこれからだ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・打ち切りじゃない。
新連載でもない。
なんか、覚悟完了している感がすごいエルフっ子。
こまり顔
・・・・・・・・に見えて、なんか苦笑になりつつある客のドワーフ。
そのドワーフは、俺には正確な分類ができないクリームスープ、を一気に飲み干す。
美味しそうだ。
話しかけるなら、まずは食ってからかな。
俺の手元のお弁当は、いわゆる三色そぼろ御飯。
昨日穫ったばかりの肉は、まだこなれていないとかなんとか。たぶん、肉の熟成の事なんだろう。まあ、とれたて焼き立てでもいいが、そこにこだわる小さな主婦、家庭のお姫様、魔女っ子。
それに習うお嬢にエルフっ子。
勝手に続く元カノ。
料理全体はこの邦の、魔女っ子プレゼンツの家庭料理が並んでいる。
もともと予定外の西の山ドワーフを抜きにしてさえ、元カノの子分ドワーフは最初から想定済み。
来るなと言ってもついてくる。
遊びに行くとなれば、連中の分も用意しないわけにはいかない。幸いに、西の山のドワーフたちは遠慮深い。
一緒に食事を始めたのは戦士長以下10人だけだ。
他の100人以上は、持参した酒と肉で勝手にのんでいる。
奴らが俺を見ているのは警戒しているからだろう。そうだ、そうに決まっている。奴らを率いる戦士長が、仮想敵たる俺の側にいるのだ。
警戒しないわけなんかあり得ないと信じてる!!!!!!!!
ニタニタ笑って、シスターズ&Colorfulを指差しながら、最後に俺を見る。
・・・・・・佐藤、芝。
恐れた事態は起きてないが、俺がバカにされてますよ?
お前たちもですかそうですか。
俺は、弁当に向き直る。
まだ食ってないし。
うん。
異世界でレーションじゃない和食を食べる喜び。
うちみたいな小所帯じや糧食班なんか無いから、戦闘糧食をそのまま食べるのが前提。まあ、早めに王城の厨房が復旧したことで食生活は改善したが。慣れ不慣れはともかく、歓迎すべき点だ。
だが、これは格別。
御飯、そぼろ、炒り卵。
甘い匂いは砂糖、いや、プラス出汁かな?
これは凄い。
多層構造御飯。
三層のみでは終わらない。
最上部が、必殺の破壊力。
必殺の周りが、縁取る緑のサヤインゲンっぽいなにか。
そのシャキシャキ感が想像出来る緑。
きっと味の濃い肉に合うだろう。
イヤが応にも、盛り上がる、ギャラリー。
特にマメシバ三尉。
「お任せください!お医者さんに!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「痛みは全て無効化出来ます!医学の先端!!科学の勝利!!!」
などと供述しており。
だが、しかし、問題と言っていいのかアレだが、焦点は別にある。
むしろ、マメシバ三尉がヤバい扉を解放しているのは、俺がきっかけもしれない。
弁当箱には、蓋が、ある。
中身を見ている、ということは?
俺は、蓋を開けたのだ。
恋愛脳マメシバ三尉の魂を内包する
――――――――――――――――――――――――――――――深淵の。
変則多積層三色(艶のある茶、ふわふわの黄、瑞々しい緑)ご飯の、中央を彩る四色目。
必殺の多層構造弁当最上部中央の必殺。
―――――――――ピンク――――――――――
サーモン?
赤身の魚、では、あるのかな?
――――――――――これは、彩り、ではない。
中心だ。
明瞭な、誰にでも伝わる、異世界伝承には在るのか無いのかしらないが、地球に伝わる伝承。
蓋を開けると。
そこに、中央に、鮮やかに彩られた。
大きな、大きな、だが、弁当のバランスを崩すことがない鮮やかな。
ピンク。
――――――ハートマーク―――――




