ひとのいかりのしずめかた

誰にでもあることだろう。

突然、相手が怒り出す。

不機嫌も含む。

――――――――――もちろん、俺に向けて、だ。

それはなぜかと聞いてみる。

よけいに怒られました。

泣かれたこともあります。

キレてくることも珍しくはありません。

最後は

・・・・・・・・・・・・・・謝罪までされました。

――――――――――――――――――――いたたまれませんでした。

そして、機嫌が直ったところを見計らって、ソレがなぜかと確認。

再発防止に努めたい。

怒られるのも泣かれるのもキレられるのもよろしくない。

何故そんなことを聞くのか？

相手は質問に質問で返してくる。

そこにツッコむほど子供じゃなかった俺。

ソレはなぜかと訊かれたら、そこは無難にまとめる。

笑顔以外は見たくない。

――――――――――そういうもんだろ？

友達ってさ。

むっちゃ、怒られました。

むしろ、一足飛びにキレられました。

もっといえば、号泣されましたよ人前で。

教訓。

訊いてはいけない。

だがしかし、聞き出せさえすれば、解決できるんだよホント。

金とか暴力とか法律とかね？

人間が考える悩みなんかたかが知れている。

何とかなるって。

何とか訊き出さないとな。

魔女っ子。

お兄さんに話してみなさい。

・・・・・・・え？

ああ、そういえば、よそのドワーフも怒ってたね。

【太守領西部/内陸との境・山脈の始まり/西の山/その麓/青龍の貴族の前】

うぅぅぅ～～～～～～～～～～

――――――――――やっちゃいました――――――――――

ご主人様は、それでも、わたしの手を握って髪を撫でて下さいましす。

「では、出直すとしよう」

西の山のドワーフさんたちに、優しいお声で伝えられます

―――――――――――――――――――ご主人様の、ご意思を、台無しにしてしまいました！！！！！

――――――――――わ、わたしの、せいです～～～～～～～～～～。

西の山のドワーフさんたちを、わたしはこわごわと窺いました。

お気を悪く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・されてます、よね？

わたし、お行儀が悪いです

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも、まっすぐに、西の山のドワーフさんたちを見る、勇気がありません。

そして、うぅ、わたし

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ご主人様に、どう思われるか、

そればかり気になってしまいますぅ～～～～～～～～～～。

われを忘れて、でしゃばって、図々しくも、ご主人様と西の山のドワーフさんたちの間に割って入る、なんて！！！！！！！！！！

なのになのになのになのになのに

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わたしを、ご主人様が赦してくださるかどうか、それだけがクルクル回ってます！！！！！！！！！！

卑しいです嫌らしいです恥ずかしいです！！！！！！！！！！

なにもかも見透かした、ご主人様の眼が、怖くて怖くて・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ご主人様にしがみついてしまいますぅ～～～～～～～～～～～

捨てられちゃうぅぅぅぅぅ――――――――――。

【太守領西部/内陸との境・山脈の始まり/西の山/その麓】

いつもと同じく、俺は魔女っ子に甘えられたまま、話を進めた。

おーよしよし。

子どもは子どもで、辛いこともあるんだろうね。

相談してくれたら解決するよ？

だめ？

イヤイヤしてるな。

じゃあ、あとで尋問。

俺は、そっとしておいてあげる、タイプじゃないのだよ。

友人から家族から恋人まで、心の内をこじ開けて問題を解決する。いや、対策がない問題なんかないしね。マジ。

世の中どーにでもなる事ばっかりだ。

俺だって、三佐からまだ逃げ延びてるだろう？

生きてるし。

まだまだ、元カノからも逃げられる。

まだ、生きてるし。

というわけで、魔女っ子の問題くらいどうにでもなる、と言い切れる。

本人の希望はどうでもよろしい。

本人に解決できないからこそ周囲が気づく。解決できない問題に、当事者の希望や意思なんか役に立たない。せいぜいが参考情報だが、必須ですらない。

・・・・・・・・・・マメシバ三尉が、アンプルを取り出してる。

それなし。

え？

体に良いドーピング？

自白剤だろ？

素直になる薬？

医療治療薬より体に負担がない、ほう。

薬が体に悪いなんて時代遅れ、いや、しってる。

国連軍の前線部隊では、すでに日常的に処方されてるしね。赤血球を増やして持久力を上げるお薬とか。心臓筋肉の強化薬とか。化学成分で筋疲労を解除したり、電気信号を強化したり弱めたり。

魔女っ子の顔を覗き込む。

・・・・・・・・・・ほう。

「ごごご、はいりょかんしゃいたします、でも、けっしておつたえできないことも、たくさん、すこし、すくなからずあるんですぅぅぅぅぅぅ」

例えば？

「はずかしくていえません！！！！！！！！！！！！！！」

なら、問題ない。

「ふふだん、ごしゅじんさまを、おもってる、わたしをみないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

俺の肩に顔をうずめて、ポカポカとジタバタする魔女っ子。

なにを思われてるんだろうか。

いやいやいや、そんなには、嫌われてないだろうよね？

・・・・・・・・要検討。

ニコニコしてるマメシバ三尉。

医師としての患者を救えるに決まっている喜びが表情に出てるだけ？

ほう。

勝手に使うなよ？

守秘義務があるから、俺には教えないよね？

マメシバ三尉なら、大抵のことは解決できるものね？

なんなら、三佐とか叔父とか役に立ちそうな人材を紹介するから。

ＧＯ！

『お任せあーれ』

不敵にほほ笑むマメシバ三尉。

高い能力と自負に不安を感じさせるその、マッドサイエンティストみたいな笑顔。

出来る子だって信じていたよ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・映像付きで何もかもかくさずどんな恥ずかしいことも微に入り細に入り解説を本人の口で言葉にさせて、俺だけに教えてエンドレスリピートする、とな？

悪魔か！！！！！

――――――――――――――――――――魔女っ子が失神したじゃねーか！！！

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・任務継続。

ハイホーハイホーと謡いながら、うちのドワーフたちが背後の林から出てくる。

八人の小人はワッショイワッショイ御神輿状態で荷運び。御神輿状態は何故かと言えば、奴らが持ち前の馬鹿力でデカい荷物を担いでいるからだ。

低音美声で唸るうちのドワーフたち。

ワッショイかハイホーかはっきりしろ。

謹製の楽しいメロディーを奏でてるマメシバ三尉。緊張状態を吹き飛ばす、朗らかな演出。

――――――――――朗らか？

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・バカにしてるように見えなくも無いこともない、ような？

――――――――――いやいやいやいやいや。

プラス思考だ！！！！！！！！！！

で、でかい荷物、つまりは手土産をよそのドワーフ達に渡した。

いや、コンテナを、ただ地面に投げ出しただけだが。

【太守領西部/内陸との境・山脈の始まり/西の山/その麓/青龍の貴族の側】

「手土産だ」

青龍の貴族は、西の山のドワーフたちに言い放った。あたしは、彼、青龍の貴族に抱かれた、あの娘の涙を拭う。

（――――あざとい――――――）

なにがよ？

怨念に満ち満ちた、声

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小声。

泣いてる、あの娘を慰めるのは、異論がないみたいね。

あたしは青龍の女将軍をちらりと

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・スッゴく睨んでる。

あの娘を。

――――――――――異論を我慢してるだけかしら、ね。

おあいにくさま。

あの娘が一番、彼に近いものね？

心も肢体も。

（羨ましい）

――――――――――そうね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・率先して口に出す気は無いけれど。

（あんたは、しっかり、便乗してんじゃん！！！！！！！！！！）

はぁ？

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、ちがうし。

あの娘が彼に抱かれたから、様子を観るためには、近づく必要があるだけだし、涙を拭うなら、たまたま、その、寄り添う姿勢になるのも仕方ないし、親子みたいに見えるのは、あの娘に悪いけど、必然よね？

「敢えて身を寄せるなオッパイを押しつけるな頬ずりするな！！！！！！！！！！

あたしもする――――――――――」

【太守領西部/内陸との境・山脈の始まり/西の山/その麓/青龍の貴族の左側密着中】

「あ・と・に・し・ろ」

ご領主様に叱られた、青龍の女将軍。

そして、さりげなく、あの娘を受け取って離れる、ねえ様。

これは？

――――――――――どちらの勝ちかしら。

後の確約を得て、頬がふにゃふにゃに緩んでいる青龍の女将軍？

叱責を逃れて、あの娘を慰めつつ距離を取らせて、最接近を狙う、ねえ様？

青龍の女将軍、これは間違いなく、拡大解釈して何もかも押し付けてくるわね。

おっきいから

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わたくしたちが隙を見せると、とりあえず、受け取ってしまわれるかも

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おっきいから。

昔の女、む・か・し・の女ってゆうのは、距離を縮めやすいですし

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ご領主様も、お嫌いではないでしょうし。

――――――――――――――――――――わたくしたちを大切にするのは、どうかと思いますわ。

ご自分のモノなんですから、もっと、お好きにされたらい宜しいですのに。

でも。

だからこそ。

む・か・し・の女ってゆうのは、厄介ですわね。

古くは、その、かんけい、

――――――ギリッ――――

いけないわ、歯軋りなんてはしたない。

歯が欠けたら、ご領主様の肌に傷を付けてしまいますわ。

真珠の粉で

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いえいえ、傷なんかないわよ。

わたくしの肢体が、ご領主様以外から傷つけられるなんて、あり得ないし。

ともあれ、古い女を、わたくしの目に留めるにやぶさかではありません。

むしろ、当たり前ですわよね。

たかが、その、女が、な・ん・に・ん・も

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いても。

その中の一人が未練がましく、ずっと付け狙っていても。

愛人程度なら、目零ししてあげなくもなくも、無いことはありませんのに

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

わたくしの、ず～～～～～～～～～～っと後、なら。

わたくしが受け止めきれない事が、未だに、後しばらくおっきくなるのに時間がかかる、その部分についてだけなら、すこしの間だけ、分けてあげなくもないですわよ？

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

わたくし、寛大ですから。

【太守領西部/内陸との境・山脈の始まり/西の山/その麓】

俺は話を進めた。

よそのドワーフの中心人（？）物はきっぱり回答。

「いらん」

「なら捨てろ」

男同士は話が早い

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小さい二人も、謎の結界を作る感じが、女の子なんだな～と。

「い・ら・ん」

よそのドワーフは、あくまでも手土産を拒否。

はて？

我が親友の一人から聴いた話と違うな？

まあ、現場とマニュアルじゃ、齟齬は付き物だ。それをなんとかしてこそ、現場の判断。なんとか受け取らせないとな。

「ヌシらの長に見せれば喜んで巣穴にしまってしまうからの？」

ニヤニヤ笑う、うちのドワーフ。

馴れ馴れしくも厭らしい表情は、誰かをムカつかせるために生まれてきたようです。

みんな、こっちに来てるな？

しかも、よそのドワーフの肩を叩いている。馴染むのが早いっていうか、いつの間にかゼロ距離。でも、決して仲良くなっているようには見えない。

ただ逃げてきただけか。

よりマシな敵を求めて。

ボスの元カノが女の闘い中、関わらないという、男の本能。

気持ちはよーく解ります。

おっと、お客さんを放置しちゃまずい。怒っている怒っている。だが、俺に向けてじゃないな、この怒り。

「なんだと？」

「貰えるモノは嬉しかろ？」

百を超える完全武装ドワーフＶＳ空気を読まない八人の小人。

槍と剣を抜き身で構えるあちらさん。

Ｍ-１３７の砲口を敵に密着させているこちらさん。

一触即発の両勢力。

その先頭に立つ二人は？

あちらの戦士長らしいドワーフにしては巨漢、こちらは俺。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぜ俺。

ドワーフ同士の煽り合い。

手土産なんかいらねーよ！

ＶＳ

口だけだろ？ほんとーは欲しいんだろ？？

めぐんでやるから受け取れよ。

いらねーってんだろ！！！！

ＶＳ

お前が言ってるだけで、仲間は欲しがってるぜ？ビンボーな家族にくらわせてやんな？

ほーれカッコつけないで仕方ないって顔しろや。

食い物だったのか？

手土産はドワーフにチョイスさせたのだが。昨日の今日で、中身を確かめなかったからな。

こいつら（うちのドワーフ）らしい選択ではあるが。

しかし会話が

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヤンキー？

殴り合い一直線。

「わかった」

俺は台無しになりそうな話を断ち切る。

「総意だな？」

俺は割り込んだまま続けた。よそのドワーフは重々しくうなづく。

「無論」

その率いる連中と違って、冷静なようだ。眉がヒクついているが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いくぶんはね？

ドワーフ同士だと、すぐに殺し合いになりそうだ。

同族意識に期待して同行を許したのは、失敗だったか？

まあ、いまはこのまま進めよう。

「なら、捨てさせろ」

俺は相手の言葉に便乗。

手土産がいらん、というのが、よそのドワーフ戦士長の独断でないなら？

それを証明するには、戦士長たち以外に、彼の身内に捨てさせないとならない。

そうじゃないと、独断ではなくよそのドワーフたちの総意である、とは証明できない。

そのためには、手土産を一度、受け取らないとならない

――――――――――論理のアクロバット。

よーは、受け取らせりゃいいんだ。

一度手に取らせてしまえば、どうなったってかまわない。

手土産なんかそんなもの。

突き返されなければ、捨てられたってかまわない。

むしろ歓迎。

捨てられてしまえば返せないからな。

無かったことにはできない。

むしろ捨ててくれ。

うちのドワーフたちの様子を見るに、ちゃんと喜ばれるものを選んだのか不安にもなるし。

俺の返しに、考え込む、よそのドワーフ。

それらしく聞こえる筈だが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さて？

「賭けるかの？」

「賭けにならぬ」

「中身を抜いて、懐に納めようぞ」

「それよそれよ」

おいおいおいおいおい！

煽るドワーフ、うちの連中。

よそのドワーフ、戦士長は平静、を、装っている。

あ、やばい。

眼に力が込められ始めた。

俺はフォロー。

「貴様は捨てるだろう」

意訳。

嘘をついてるなんて思ってないよ？

「なんだと！！！！

我らが同朋は！！！！！！

おまえたちの賄を！！！！！

知らぬフリで懐に納めると言うか！！！！！！！！！！！！」

貴様は、と限定したようにうけとられた。

結局、誇りを持ってるのはお前だけだろ、って聞こえたらしい。

めんどくさいな。

「言わん」

って、ぶっきらぼう過ぎたか。

・・・・・・・・・・・・・・・・むしろこれ、言わないだけって聞こえるか？

あーこりゃ誤魔化せんわ。

いつの間にか、鼻先３ｃｍで眼が座っている、よそのドワーフ戦士長。

誤解が誤解を生んでいるから、捕捉が必要。

言葉をつけたす。

「思っている」

口先だけじゃなくて、キミが本当のことを言っている、と思ってるよ。

少なくとも、俺は、とアピール。

（プー、クスクス）

・・・・・・・・やめんかわらうな、うちのドワーフたち。

嗤い方もキモイ。

ほら、怒った！

「よーし！！！！！！！！！！」

あ、キレた。

俺、死んだ？

「受け取ろう！！！！！！！！！！しかして焼き捨ててくれるわ！！！！！！！！！！」

は？？？？？？？？？？

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・手土産渡せたし、成功、かな？

【太守領西部/内陸との境・山脈の始まり/西の山/その麓/青龍の貴族の胸】

わたしはご主人様が殺されてしまわないかと、胸が潰れそうでした。

ご主人様は、お強いです。

でも、斬られて刺されたら死んじゃいます。

もの凄く強い、青龍の御技

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぜか、護る魔法がありません。

軽く丈夫な鎧はあるのに

――――――――――まるで、常に攻める側であるかのように。

「開け方はわかるかの？」

きゃー！！！！！！！！！！

ドワーフさんたちが、西の山のドワーフさんたちを、罵倒されてますー！！！！！！！！！！

ドワーフさんの特徴は、鉱石掘りよりむしろ、その細工の腕前。

造れぬ工芸はなく、解らぬ仕掛けはない。

みなさんも、ソレを誇っておられます。

宝箱の開き方。

錠前の構造。

箱の仕組み。

それを解るか疑うなんて、ドワーフさんたちの存在を疑うようなことなのに！！！！！！！！！！

「知ることもない！！！！！！！！！！」

開けないから、と言い放った西の山のドワーフさん。

もー！

なんで、失礼なこと言うんですか？？？？？？？？？？？

「では」

ご主人様？

【太守領西部/内陸との境・山脈の始まり/西の山/その麓/青龍の貴族の側】

「昼餉に付き合え」

あたしは、二度、見返した。

二人。

青龍の貴族。

西の山のドワーフの、たぶん、戦士長。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いつ名乗るのかしらコイツ。

つまり青龍の貴族は、西の山のドワーフ、その戦士長に、こい、と。

手土産を運び込む間、始末がつくまで一緒に居ろ、と。

それは、賭けに通じている。

賭けの内容。

青龍の貴族から与えられた宝物。

それを受け取るか捨てるか。

西の山のドワーフたち、その戦士長は捨てると断じる。

自分たちは施しを受けない

――――――――――誇りの為に。

青龍の貴族は、受け取ると断じる。

貴様等は賤しい

――――――――――乞食め、と。

賭けをする両者は、宝物から離れる必要がある。

互いに、結果に干渉出来ぬように。

青龍の女将軍は、手を叩いて笑い出す。

配下のドワーフたちは、歓喜を爆発させた。

そして、西の山のドワーフたちは

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・？

「馳走になる」

西の山のドワーフたち、その戦士長は胸を張る。

配下の美々しく武具を整えたドワーフたちは斧を打ち鳴らした。