お弁当作りと洗濯機

「男子厨房に入らず！！！！！！！！！！！！！！！」

わーい。

今日も絶好調ですね。

マメシバ三尉。

「あの娘たちがお料理したりお洗濯したりお掃除したりしている時に、きっと大尉殿なら余計なことをしてしまうでしょう」

わーい。

大尉って覚えててくれたんですね。

「絶対にダメです！！！！！」

俺、君より階級高いんですよ？

「顔を出すな！！！口を出すな！！！手を出すな！！！！」

あ、階級なんてどーでもいいですかそーですか。

「いいですね？」

Ｙｅｓ,Ｍａ'ａｍ.

「愛は与えるモノ！

負担を分かち合うような、互いの利益を交換するような、ともに協力するような、そんな俗なモノじゃありません！！！！！

嘆かわしくも昨今、気遣いと称して受けた奉仕を等分にして返そうとするかのような、卑しい振る舞いが増えてます！！！！！

そんなことが気になるならさっさと別れろ！！！！！！

等価交換ごっこが好きなら男も女も互いに買いあえばいいんです！！！！アムネスティのお店みたいに！！！！！

自分の方が負担が多いの少ないのと、物乞いか貧乏人の自滅思考にすぎませんだからオマエらは底辺なんだよっていう」

ア、ハイ。

「男とはなにか？」

はぁ。

「女の愛を無限に流し込まれる肉袋！！！黙ってお世話されなさい！！！！」

おい！

「あ、すいません。うーん、単語が良くないですね。

・・・・・・・・・・・・・・・・と、いうわけで、あの娘たちの想いをすべて余さず受け取ってなおつぶれないだけの甲斐性を見せてもらいますからね♪」

《マメシバ・ドクトリン》

【太守領中央/太守府南方/森林】

獲物は南。

風は東。

あたしは右側に大きく迂回。

青龍の女将軍は

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まっすぐ？

下生えも樹木、あ、斬った、倒れってそこっは！！

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――落ちた。

まあ、いいのかしらね。

高低差も大樹も岩もなにもかも。

飛び越え切り裂き踏み越えて。

・・・・・・・・・・らしいっ、ていえば、それらしい。

あたしは、風の流れと大地の響きを読みながら走る。

下生えを跳び越えて。

大樹を乗り越えて。

腐葉土を避け固い足場を跳び、風穴をくぐり抜け段差を滑る。

風が教える獣道。

耳が捉える獲物の吐息。

糞や足跡が教えてくれるのは、獣たちの生活範囲。

獣も人も、危険を感じれば、同じように動く。

あたしは樹の上で弓を伏せた。

矢をつがえられる姿勢。

眼を開き耳を澄ませ肌で感じる。

人も獣もみな変わらない。

青い龍以外はみな同じ。

【太守領中央/太守府/下町/職人街】

僕は店の前に立つ。

材料を運び込む荷車。

樽を運び出す人足。

他の店とは違い、呼び子はいない。

「地びーる♪」

青龍の娼婦が、くったくなく笑った。樽の匂いで察したようだ。小づくりな鼻をヒクヒクさせて、店頭に駆け寄っていく。

麦の発泡酒造りだけではない。

近在の農園を直接管理して、毎年仕込ませたワインも保管している。

青龍の騎士たちの注文。

良い店。

良い酒を買える店

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よい酒を揃え、試しに含んで選び、好みのままに買って、後から王城に納められる店。

それが、ここだ。

「あ、サンジ、ドヤ顔～～～～～～～～～～」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・僕の事か。

店先を飛び回っていた青龍の娼婦が、いつの間にか戻って、僕の顔をのぞき込んでいた。

青龍の騎士たちとは違い、背丈が低い、まだ少女。

ここは、笑顔で受け流す。

「ささ、お試しあれ」

青龍の娼婦はまた店先に戻る。

僕が案内した店。

取り扱い量で言えば下から数えた方が早い酒蔵。

だが、売上高では中堅どころ。

粗利率で言えば一、二を争う。

酒造ギルドの運営には関わらない。

だからこそ、余計な金を浪費せずに品質を追及できる。

誰の息もかからない、だから安全な味。

僕のことも、馴染みの客として扱うが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ニヤリと笑うくらいは許されよう。

いつも取り澄ましている、店主。

無愛想な職人オヤジ。

両方とも、むき出されそうなほど、目を見開いていた。

青龍の騎士の笑いをたたえた黒い瞳。

無邪気にはしゃぐのが恐ろしい、青龍の娼婦。

オーガに笑いかけられ、トロールにじゃれつかれた方が、まだ信じられるだろう？

うちの酒なら龍も酔わせる、と抜かしていた店主に職人。

さ、青い龍を酔わせてもらおうじゃないか。

【太守領中央/太守府/王城内郭/外殻側に面したバルコニー】

俺は魔女っ子、お嬢を撫でながら思う。

お手伝いする子供の姿は和むな、と。

いや、今みたいにごろごろ喉を鳴らしそうな、そんな寛いだ様子もいいけどね。

驚くべきことに、今干されている洗濯物、シスターズの小さい二人が洗ったのである！！！！！！！！！！

――――――――――洗濯機で。

俺たち軍政部隊は当然、長期間の駐留を前提としている。

何週間か、何ヶ月か。

それにみあった装備は与えられる。

現代的軍隊は任地に関わらず孤立してなお、現代生活が成り立つようにする。

それはつまり、インフラごと戦場に乗り込むということ。

まあ、現代における現代的な軍隊なんか、数えるほどしかいないけどね。

日本、アメリカ、西欧の一部程度。

未だに任地のインフラ、消耗品を含む生活物資に依存しないと作戦不可能な近代～中世軍隊の方が現代でも多数派。

幸いに、国連軍はそうじゃない。

ってか、要は自衛隊と在日米軍だしね。

よって進駐に成功すれば、どの任地でも施設科が乗り込んでくる訳だ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・断じて、贋札工場設置が施設隊任務のメインではない。

たぶんオマケではある。

よって、施設科が引き上げに入っているこの邦は、俺たち用のインフラ設置が完了したということ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・麻薬工場のことではない。

今！！

重要なことで言えば、洗濯機は当然に配置済みである、ということ。

ココ、中世のお城の中心に、である。

いや、中世っぽく見えるだけで時代カテゴリーは国際連合教育科学文化機関（ＵＮＥＳＣＯ）で審議中だけどね？

湧き出る温泉直結で、汚れを吹き飛ばす常時温水洗濯機！

ミネラル分が薄い温泉で良かった良かった。

業務用洗剤が混じった洗濯排水、その濾過システムの方が設置困難だったていう、ね。

普通は給水設備の設置の方が大変だし。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だからか？

三佐がうろちょろしてるのは？

怪しい工場や奇怪な活動拠点を運営するために、基礎インフラ設置の手間が省けるうえに、省けた手間で余計な部分の設置作業が目立たなくなる、しかも本隊とはるか離れて目が届きにくい辺境

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっはっは。

そんな訳ないよね。

そんな訳なら、今後もますます、余計な厄介ごとがもちこ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さて、異世界洗濯事情。

魔女っ子にお嬢、部屋付きのメイドさんたちが使っているのは、俺専用洗濯機。

謎名称、俺専用。

なにゆえ。

普通、こういう設備は共用だ。

戦場では利用すら分担制で、個々人で行ったりはしない。

全員分の汚れ物を一緒くたに処理する。

潔癖症じゃ最前線にはいけないよ？

しかし。

部下たちと俺は何故か別の洗濯機にされてしまった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、全員野郎だからね？

思春期の娘的な話じゃないし。

繰り返すが。

基本的に洗濯など生活任務は兵士の交代制。

士官に従卒が付くような部隊規模じゃないから。

当たり前だが洗濯作業自体、任務、だから勤務時間に有給で行う。

残業代もつく。

だから、拒否られる理由も権利も無いんだが。

曹長も。

坊さんも。

なぜかしゃしゃり出た三佐も。

俺だけ隔離決定。

っていうか、施設科が施工した洗濯機の配置に意図を感じる。

イジメ？

逆パワハラ？？

三佐がいるから単純パワハラ？？？

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・遠征帰りで、まあ、多少は汚れが酷かった、かな？

馬を飛ばすだけで、むき出し地面だらけの大陸じゃ土埃がつくしね。

いやいや、ドンパチしていた佐藤に芝のほうが汚れていたはず。

だが、それだけのはず。

第一、毎日水浴びしたしな。

太守府帰還前日はお嬢の別宅で、湯治しつつ洗濯もお願い出来たし。

あれ一昨日じゃん。

はて？

ハブられの理由は不明。

だがしかし、なんか見てたら、シスターズが洗濯機を回していた。

ある意味でハブられて良かったか？

男所帯の洗濯を、シスターズに任せる気にはなれん。

というか、触っちゃいけません。

俺の分は良いのかといえば、良くはないが、手遅れだった。誰が洗濯機の使い方を教えたんだか。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌは洗濯シスターズ（小さいほう）を遠巻きにして、メイドさんたちも拍手。

みんなの心が一つになった！

他の仕事、掃除とかは、いいのだろうか？

メイド長は、俺が振り向くとなんか納得していた。

私室以外では常に俺の斜め背後をとっているメイド長、慣れてきたのが怖い。

仕事柄、メイドさんたちが洗濯機に興味津々なのは解る。

まあメイドさんとは家政婦みたいなものだろうし。俺だって新しい備品管理アプリケーションが出たら、個人的にいじってみるだろう。

え？

新しい兵器はって？

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・軍隊にとって、新兵器ってのは鬼門だよ。

開発者の趣味丸出しで、実用性皆無。

慣れる時間、再配備する時間、初期故障事故行き違い

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・新兵器は敗北フラグ。

あらゆるジャンルで一番優秀なのは、型落ち直後の最新旧式装備だ。

さておき、こんなに喜ばれるなら今度は掃除機かねぇ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・自動掃除ユニットは、嫌がられるかな？

勝手に床をうろつくアレ。

王城は広く、段差が無く、障害物がないからぴったりだ。

だがしかし、メイドさんたちの立場は

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ラッダイド運動が起こりそう。

いわゆる一つの、機械打ち壊し運動。

その趣旨は、人間が働きたいから機械を壊す。

機械が人間に代わって生産する。

なら、肩代わりされた人間はどーしよう？

遊べばいーじゃん

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とはならなかった、何故か。

人間が働かなければならない（？）、だから、人間の代わりを務める機械を壊す。

爆笑するいしかない

――――――――――史実っていう、ね。

笑えるなら、産業革命以後の植民地時代なんか全部、大笑い。

インドを支配した英国は、インドの織物職人の腕を切り落とした。

物理的に。

そこで重要なのは、残虐とか、非人道的とか、そーいう話じゃないと思う。

俺が注目したのは

――――――――――何故？――――――――――

回答。

人件費の分安い現地の織物産業を潰して、英国の工業織物製品を買わせるため。

英国では、インドに押し売りする織物を造るために、英国人が人死にを出しながら１日２０時間労働

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どっちが奴隷で支配者だ？

支配下のインド人の仕事を妨害して、死にながら宗主国の人間が奴隷労働。

――――――――――誰の為の侵略戦争？――――――――――

まあ、俺たち地球人には珍しくもないバカ話。

産業革命以後日常。

掘って埋めて、造って壊して、皆さんおなじみ公共事業。

仕事を創る？

需要を生む？

消費を高める？

――――――――――誰か言い出さなかったのか。

仕事をサボろう。

生産を止めよう。

備蓄分でいーじゃん。

生産コストが半減したら、労働時間を半分に。

――――――――――誰も言い出さなかった。

いや、オーウェル（有名な作家。代表作は《１９８４》）は言っていたか。

生産が増えれば余暇が生まれ、誰もが最小限の労働で生活を満たせるようになる、と。だが、ソレが実現可能だからこそ絶対に決してそうはならないのだ、と。

その通りになったのかどうかは知らないが。

生産量を倍増させた上に、それを延々と続けたのが地球の歴史。

余剰を壊す為に戦争した。

余剰を捨てる場所欲しさに他国に押し入った。

余剰を始末しきれずになお有り余る資源を浪費して生産を続けた。

資源を奪わなくてはいけません

――――――――――――――――――――――――――――――作り続ける為に。

市場を奪わなくてはなりません

――――――――――――――――――――――――――――――消費を続ける為に。

みんなでみんなと闘わなくてはなりません。

――――――――――――――――――――――――――――――休まず働き続ける為に。

生産物を破壊しきれなければ、それを世界恐慌と呼ぶくらいに。

飽食しながらダイエットに励むようなものだ。

なら食うな、と言っても、皆食べるよね。

さて、俺たちは異世界転移で謀らずも無駄生産を止めたが。

まあ、異世界に来なくても、高齢化と少子化とニート増加（←ここ重要）で過剰生産は自然に解決したろうけれど。

世の中ってのは、まわりまわって理屈通りにしかならないもんだ。

・・・・・・・・・・・・・・回り過ぎるわ！！！！！

俺たちが二百年はさまよった袋小路、まだ抜けられたかもわからない泥沼。

異世界文化へ干渉出来ない俺。

異世界の君たちは、どう転ぶのかな？

――――――――――シスターズ＆Ｃｏｌｏｒｆｕｌには暇つぶしの方法を教えるか。

明日のニートを育てなければ！！

【太守領中央/太守府南方/御料森林】

あたしは獣道に線が見え、点が映る。

向かい風だか、樹木と下生えが空気を鎮めている。

大樹の枝、足場は十分。

固く広い。

数を数えて。

弦を引き絞り。

――――――――――放った。

鏃の先、牛の目が正中線に現れて、全力で矢に突っ込む牛。

鏃はまっすぐにその脳を貫く。

　穫った！

「殺った！」

野牛が両断される。

胴体の前と後ろが二つに分かたれて、臓物をまき散らしながら大樹の根元に衝突。

あたしは衝撃が伝わる前に跳び退いて、眼をつけていた斜め前の木から蔦を伝って地に降りる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・危ないじゃない。

獣道を無視して下生えから飛び出した、刀。

黒く光を集めて影となる刃先。

野牛の厚い皮を。

固く太い骨を。

全力疾走の勢いを。

あたしの五倍は重い肉塊を両断して、斬り抜いた。

【太守領中央/太守府/王城内郭/外殻側に面したバルコニー】

魔女っ子、お嬢、Ｃｏｌｏｒｆｕｌは、食材が届くまでお城で留守番だ。

俺は明日の仕事は忘れ、ピクニックを楽しみにしておく。

しかし、みんな陽向ぼっこすきだね。

洗濯はすぐ終わったしね。

いつのまにか、みんな（Ｃｏｌｏｒｆｕｌ＆シスターズ-エルフっ子）集まってしまった。

全員休日だってのに

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・外出も出来ない、か。

ハーフエルフだから、地球人同伴じゃないと殺されるＣｏｌｏｒｆｕｌ。

魔女っ子は現地代表、俺たちへの不平不満がぶつけられるかもしれない。

お弁当の食材集めで、頼れるエルフっ子（おかん）が外出中だし。

お嬢は、外出出来ない親友の付き添いか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・配慮不足だったな。

俺はとりあえず、Ｃｏｌｏｒｆｕｌにも好きに過ごすように、命令。

シスターズはだいぶ慣れて、好きに過ごすようになってきた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・膝が痺れるけどね？

Ｃｏｌｏｒｆｕｌは相変わらず、強制しないとくつろがない。

くつろぎを強制とはこれいかに？

でも、どうやらＣｏｌｏｒｆｕｌは、俺に逆らうのを強迫神経症並みに嫌がるようだ。だから俺に、くつろげ、と言われたら理性を押しのけ、自制も我慢もできない。

――――――――――みたいである。

・・・・・・・・・なんか怖いが。

エルフっ子に言わせると、Ｃｏｌｏｒｆｕｌのタガが外れたら殺し合いになりかねない、とか。

うん、好きなようにしろ、とは言わない様にしよう。

殺される覚えが

・・・・・いろいろあるし？

俺はＣｏｌｏｒｆｕｌからみて主人。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌは自分を奴隷だと自己規定している。

――――――――――――――――――――普通、俺、つまりは主人は奴隷に殺されるよね。

国連軍的には軍属だし、現地の規定通り解放しようとしたのだが、むっちゃ拒否された。

いや、アレは俺がバカだったんだが。

いや、ほんとーにバカでした。

解放、と言いかけただけで、Ｃｏｌｏｒｆｕｌたちは青ざめて涙目になりましたから。

周囲のみなさんの視戦がたいへん痛かったけど、罪悪感で死にそうでした。

マメシバ三尉がすぐに間に入ってくれて、永久に俺のものだ、と命令させられた時はどーなることかと。

そりゃそうだよね。

ハーフエルフである以上、俺の奴隷である方が安全なんなんだ。自由民となり自分の体の持ち主となれば、どんな目にあわされるか考えたくもないことになる。

別に異世界の住民が異常なんじゃない。

八つ当たりは、なされなくてはならない。

集団を維持し続ける為に。

異世界はソレが必要、その段階にある、というだけ。

俺たちの世界には、その段階を越えてなお、目障りな残骸がいやがるんだが。

ともれ、Ｃｏｌｏｒｆｕｌは当面、俺の印がついた奴隷。

国連軍の武力を背景にした俺、その持ち物であれば異世界のだれも傷つけられない。

帝国は除くが。

だが帝国軍の密偵がいても、わざわざＣｏｌｏｒｆｕｌを傷つけたりはしないだろう。常に俺の側にいるんだから、Ｃｏｌｏｒｆｕｌを傷つけるくらいなら俺を殺した方が早いしね。

まあ、慣れだよ慣れ。

人間、たいていのことに、慣れられるもんだ。

今は俺にしかできないなら、仕方ない。

などと、陽向ぼっこにふさわしくない、余計なことを考えていると

――――――――――なんか、距離を詰めてきたＣｏｌｏｒｆｕｌ。

背後から肩越しに身を乗り出す白（Ｆ）、翠（Ｅ）の巨乳組。

橙（Ｃ）と朱（Ｃ）が俺の両端で、遠慮がちに手を添えてくる。いや、それぐらいで俺の顔色を伺わなくていいから。

蒼（Ｄ）は俺の足に寄りかかる。

俺、埋まってないか。

正面両ひざがシスターズの小さい二人だし。Ｃｏｌｏｒｆｕｌに全周包囲されてるし。

それでいいのか君たち。

「「「「「「「お心のままに」」」」」」」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・次の休みは、一緒にお出かけが必要かな。

【太守領中央/太守府南方/御料森林】

あたしたちの前、前後に分かたれた野牛。

「どっちが早かった」

あたしに決まってるじゃない。

「えーと」

詰め寄る青龍の女将軍。

言葉を濁すマメシバ卿。

その眼は野牛の目から脳を貫いた、あたしの矢を見ている。

風向きを無視した青龍の女将軍。

野牛の群れに、突入出来たのは凄い。

危険を察した獲物たちが、逃げ出す前にたどり着く。人の手が入っている分、進みやすい森だけど。それでも十分に命知らずな直線突破。

あたしはそれを見込んで、野牛が逃げる道に控えていた。青龍の女将軍とは違って、野牛が森の中で通れる場所は限られてるから。

恐怖にかられ、見知っていて、しかも全力疾走出来る獣道に逃げ込んだ野牛。

後は骨や皮を避け、獲物の突進力を利用して打ち込んだ矢一つ。

脳を潰せば一呼吸で倒れてしまうだろう。

・・・・・・・その前に、野牛は惨殺されたけれど。

「引き分け？」

「なんでよ！！！こいつの心臓止めたのはアタシ だろ！！！！！！！」

「どっちが殺したか、なんて、写真判定でも無理ですよ～～～～～～～～～～」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一呼吸前に斬ったのは認めてあげる。

「オマエも何とか言え！！！！」

あたし？

そうねぇ・・・・・・・・・。

「それ」

青龍の女将軍が担いでいる、刀。ドワーフ刀かと思ったけれど。

「魔剣？」