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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第四章「後宮物語/奥様は魔女?」

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トランプ・ゲーム/Prototype of planB

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします


一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。

次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。

以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。

(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)


【登場人物/一人称】


『俺』

地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿》

現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様/我が君》

?歳/男性

:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。


『僕』

地球側呼称/現地側呼称《若い参事、船主代表》

?歳/男性

:太守府参事会有力参事。貿易商人、船主の代表。年若く野心的。妹がいて妻の代わりに補佐役となっている。昔は相当な札付きであったようだが、今は特定の相手以外には紳士的。



【登場人物/三人称】


地球側呼称《新議長》

現地側呼称《バカ女/新議長/議長》

?歳/女性

:太守府参事会議長。参事会を、すなわち太守領を経済的に牛耳る五大家、その当主の一人。地球人来訪後の混乱の中、引退した祖父から当主の座を引き継ぎ、参事会議長にも就任した。実家は先代の失策で没落進行中。



【用語】


『合衆国大統領』:女性初の元合衆国軍統合参謀本部議長。駐日大使。次期大統領候補と目されていたが、異世界転移後、緊急時の継承順位に従い大統領に就任。


『国際連合軍』:国連憲章第七章に基づく人類社会の剣と盾。と国連総会で決まった。黒幕は元在日米大使の合衆国大統領であるとマスコミに報道されている。


『佐藤』『芝』

:主人公『俺』の部下。選抜歩兵(物語世界での選抜射手)であり、異世界転移後の実戦経験者。曹長に次ぐ軍政部隊戦闘作戦の中心



合衆国大統領選挙というのは、市民がホワイトハウスを狙うテロリズム。



官僚主義が試験貴族制になっているのは、君らの国だけじゃない。大統領が指名出来るのは、各省庁の首だけ。

連邦政府と呼ばれた氷山。

その下には不動の連邦官僚機構がある。

その牙城をきずつけ「られる」と見なされれば、FBIに逮捕される。

選挙中を狙って、ね。


ケネディ暗殺事件を追求した地方検察官は、検察官選挙中に告発された。告発したのは、大統領暗殺を見逃した連中だ。

もちろん、無罪になった。

だが、選挙では落選した。

無力化すれば殺したのと同じ。


この手口は、市民に直接選ばれる選挙公務員、全員に利用できる。

議員、検察官、知事に大統領。


影響が無いのは?

影響を及ぼせるのは?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・選ばれなかった連中だ。


選ばれることがない連中が選ぶ者が、キャピトル・ヒルやホワイトハウスに放り込まれる。

サインして、謝罪して、代わりに辞職するために。

選ばれなかった、選ばれることがない、常に選ぶ連中。その連中は、陽の光に弱いから物陰に隠れる。君らの国でも、よくある話だろう。


別に日米だけじゃない。

タイのように選挙で勝つと必ず勝った政党が解散させられる国もある。



合衆国の生活水準は半世紀もの間下がり続けている。

敗戦だけが続き、コインの裏表レベルの差で極貧層と富裕層に分かれ、日米欧世界経済サイクルで一番弱いポイントになっている。

人類社会を巻き込んで破綻するのは時間の問題だ。

しかし、解決策を求めて民主党と共和党、どちらに変えても状況は変わらない。

ならば原因は、変わらない部分にある。

極めて簡単な切り分けだな。



だから、だ。

選挙民に出来る事はなんだろうか?

預かり知らぬところで、社会の実権を握られたらどうすればいい?



バカを使う。

バカなら、連中も許容する。扱いやすく、見えるからだ。どうせしくじっても、被害を被るのは連中じゃないから。

だからこそ、バカの極めつけを送り込む。無能な働き者、最高の逸材。ソイツは市民全体を傷つけながら、連中も翻弄する。


市民は傷つき疲弊する。

絶対的に見れば被害は大きい。

それでも相対的に見れば、連中のほうが弱まる。

・・・・・・・・・賭けるに足る可能性。



その後は?

言わずもがなでしょう。


世界とともに滅びるまで維持される、自己保存体制。

それを物理的に除去する。



非民主的?

そもそも合衆国憲法には民主主義の根幹である国民主権という規定がない。代わりに、武装した民兵が自由を守る規定は、ある。

憲法が構想され、修正条項付けることで認められた。


第一条は連邦議会を定め、修正第一条は連邦議会の権限を制限する。

権利章典とも言われ「市民の権利を守る」修正条項。

二つ目で市民への武装を呼びかけ、以後で裁判を定め、連邦政府の権限を制約する。


憲法を認める前提条件で、

――――――――――民主主義には全く触れていない。



建国当初。

合衆国の偉大なる先人たち。


何が起こるかわかっていたわけじゃない。

何かが起こると知っていただけ。

何かが起きたとき、何が必要か、それも知っていた。

すくなくとも、投票用紙が必要だとは思っていなかっただろう。


国家が目的を失い、それ自体の維持に狂奔する未来。



合衆国憲法は、体制の破たんを最初から織り込んだプログラム。

その選択を否定できるものは、いない。

例え同意できなくても、ね。


これが、プランBの原型。


《インタビュー15with合衆国大統領(女性/65歳)》




【太守領中央/太守府/王城内郭中庭】


僕の朝は、あいあんくろー、から始まる。青龍は、女の顔を掴むことを、あいあんくろー、と呼ぶ。


「いたいいたいいたいいたいいたいいたい」


面倒くさいから、専門の係を用意したいが。

小顔は僕の手のひら程度。ならば係りも僕くらいの体格が必要。同性嗜好がない女。

さて、どこで手配出来るだろうか?


「うぅ――――――――――」


本来、僕は教える方であり、躾は苦手だ。

幸いにして金があるから苦手な事は他人任せ。嫌いなこと、苦手なことには手を出さない。得意なこと、好きなことしかやらない。

効率と言うのは、そういうこと。

その方が結局は儲かるのだ。


だから今までは、殴る蹴るはやっていない、僕自身では。

水夫長、メイド長、執事長、奴隷頭

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・僕の代わりに殴る、専門職に不自由した事はない。


おっと。

僕はつかみなおした。


「つひゃみなほふな」


喧嘩なら刺すか斬るだし、チンピラ狩りに行くときも変わらない。

身構えられる前に、振り向かれる前に、注意をそらした時に。

掴み合いになるほどマヌケじゃないのだ。


そもそもが五大家の一つ、僕はその直系。ならば、殺してマズい相手とは上手くやれる。殴る前に互いや周囲が気遣うからだ。

まあ人間ならば、だが。


「――――――――――」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・落ちたか。


僕はメイドを視線で呼んだ。

殴ってマズくない相手なら、殴る手間など犯さない。拳が痛む。痛いのはまっぴらだ。棍棒や鞭だって、振るう側に反動がある。

良い剣を正しく使えば必要な手応えだけで済む。


身の回りはそれで十分。

だから剣は富者のたしなみ。そのために剣を研がせているのだから。

そこを押して殴る蹴るなら、特殊な性癖だろう。


僕は趣味嗜好に理解は広い方だ。

だが、理解と共感は別。


さも感心したように話を聞きつつ、商品や便宜を売る自信がある、だけ。

さておき僕は周りを手で制して、お湯を汲んだ。

なかなか熱い。

だが、熱すぎない。


そして落とす。


「カマダマァカナハサャ」


起きたな。

引き上げて放り捨てると、王城のメイドたちが受け止めた。

十人、か。


女一人、ずぶ濡れだと女手には重い。

それを見越した配置。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・優秀。


王城の奉公人と親しくするのは、いろいろな意味で価値がある。太守の一族がずらかる前に、伝手を作っていればな。

僕が当主になる前、父が手を打っていれば

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つかみ取りだったのに。


まあ、誰でも穴はあるものだ。

僕にも。

父にも。

妹にも。


きっと、青龍にも。


港街、太守府、なによりも青龍

――――――――――うちだけで抑えるには、広すぎる。


郎党が育つ時間はない。

同盟者が必要だな。


僕は皆にお辞儀する。

相手が参事なら、ここまで頭は下げない。

他の五大家当主相手なら、そもそも頭など下げないが。

頭というのは見下している相手にこそ下げるモノ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・あとは、比較にならないバケモノ相手、とかな。



「着替えさせて、連れてきていただけますか」


僕より更に深々と頭を下げたメイドたち。街の者に隔意がある、旧太守に連なる者。

参事会とて他人事じゃない。

彼らが新しい支配者のそばにいる以上、懐柔しなければならない。


王城の奉公人たちも、それと知っている。僕ら参事会が、自分たちを取り込もうと狙ってる、と。気がつかないほどの馬鹿ならば、太守の側で生きてはいけない。


だからこそ、彼らは必要以上に丁寧に僕に向き合う。

距離をとる為だ。


平参事の使えない馬鹿は、彼らの物腰に有頂天。

太守時代の慇懃無礼から、扱いが良くなったように受け止める馬鹿。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、そんな馬鹿でも囮にはなるか。


王城の奉公人たちが、僕らの扱いに成功している、そう思わせないとな。

僕は馬鹿を盾にして策を練る。

馬鹿に紛れて距離を詰めるには、馬鹿に溶け込まなければならぬ。


だから、敢えてメイドたちの手を借りる。迷惑をかけて、丁寧に扱い、折をみて誠意を見せよう。

誠意には、換金しやすい酒がいいか。

皆さんで、とでも言いつくろって、人数分と少し余分にビン詰めで。

この程度で、意外に人は気を許す。


お詫びであって、お礼ではない。

過剰なお詫びはお礼と同じ。

賄賂を渡す古典的な手口。


してみると、バカはバカなりに使いようなのだな。ぼくは、やっかいごとを増やしたバカ女が運ばれていくのを放っておく。


バカ女、参事会議長の躾を任せる調教師を探さないと、な。




【太守領中央/太守府/王城内郭/外殻側バルコニー】


バカと煙はなんとやら。

俺はそんなポジションをキープ。


見下ろすのは王城外郭と内郭の狭間。

広い広い狭間。

王国から帝国時代は騎士団の演習場。


俺たちに騎士団なんかない。

だから、下に広がる宴会場。

下から上に、弓矢が届かない高見から、まさに高みの見物中。


え?

魔法?

・・・・・・・・・・・・・まあ、あれだよ、なんとなく大丈夫かな、って。


色とりどりの華やかな衣装は参事たち。その家族、ご婦人方も混じっているな。

地味に手堅く重厚なのは農民たち。

ところどころに鋼色、衛兵たちだ。

そして誰より素早く巡り回るのが、執事にメイドが六種類。


なにゆえか

――――――――――園遊会、らしい。


ともあれ、ドワーフはまだかいな。




【太守領中央/太守府/王城内演習場/園遊会端】


僕は頭上の騎士団を見ないように気をつけた。


青龍の騎士団。

睥睨する青龍の貴族、その両脇に青龍の騎士

――――――――――槍を下に向けて立つ。


あからさまに僕ら全てを手の内に。

青龍の槍は雷を噴く。

人一人、皆全員。

主の気が向けば、僕、僕らは殺される。


ソレを理解出来るのは、事情通だけ。



園遊会に訪れた市民と農民、その主だった者たち。


太守府の、そして有力な街々の市民はすなわち参事会参事とその家族。

皆、知るまい。だが知っていても、参加はする。例えばその場で皆殺し、例えば自分だけ殺される、かもしれなくても。

――――――――――参加しない、などという不届き者はいない。


有力農民は、ようは最近まで太守府を包囲していた連中、の中で名の知れた者。

手持ちが乏しい大半の者たちは急ぎ帰郷していった。

懐に余裕がある一部が様子見をしていた。


その背後の村が大きい。

目ざとく太守からの課役を避けて蓄えがある。

巧みに村々をまとめて分担させ、負担が少ない。


そんな一部の農民たちを園遊会に引き込んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・渡りに船だったろう。


こいつらにとっては、な。


農民たちは青龍がどう殺すのか、なぜ殺すのか、噂しかしるまい。青龍の貴族がふとしたことで人々を殺すとは、それ自体は知っているようだが。

だからこそ、その青龍を確かめたい、と思うわけだ。


身をもって確かめたときには、誰の役にも立てまいが。自業自得はいくらでも。絶対に巻き込まれる僕はどうなる?


市民に農民、いままで直接近くで青龍を見たことはない連中。

こんな奴らに、僕の運命を託す羽目になろうとは!

不用意に青龍を刺激しなければ、それで十分だ

――――――――――と思っていたが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今更、青龍の貴族を見上げるな、とは言えない。


そのためだけに、きているのだ。

因果を含ませる時間がなかったのが悔やまれる。


「アタクシの趣味にないのよ!わかんないっっっっ」


僕は、この騒動を起こしたバカ女をつねり上げていた。さすがにこの場で殴り飛ばすわけにはいかない。人目がどうとかいうよりも、女を殴ることに、どう反応されるかわからない。



園遊会を見渡すバルコニー。

その端で寝椅子に身を預ける青龍の貴族。

青龍の貴族に身をもたれ胸に甘える魔女。

両脇には面貌で顔を隠した青龍の騎士。


緑の騎士服に身を委ねる、金糸に黒衣の魔女。


騎士たちの青い兜、緑の甲冑は陽光のなかですら、鈍く輪郭が霞む。

光るわけでもなく、闇に溶け込むようでもなく、陰に伏せる様子もまるでない。

なのに、どうして、見えるようで見えないような。


水平線の彼方に浮かぶ、蜃気楼のように。


青龍の騎士

――――――――――本当に、いるのか?




【太守領中央/太守府/王城内郭/外殻側バルコニー】


俺は魔女っ子を時折なでた。


背後の二人を気にしてるからだ。

まあ、佐藤と芝だけどね。


耐弾プロテクターが鈍い色合いを見せる。光を散乱する塗料で、視認性を落としているのだが。春の陽差しの中で意識して見ると、異様だな。

少し離れるか、意識してみようとしなければ?


気が付き難いだけになるのに。


選抜歩兵の二人は背後で待機。

俺の両サイド立哨は他の一般普通科隊員が交代で行う。


世話好きなんだな、この子は。

魔女っ子としては、立ちっぱなしの隊員や、佐藤に芝に、お茶やお菓子をもって行きたい。

佐藤や芝、はじめ隊員たちは魔女っ子の気遣いを有難く思うけれど、それだけはご遠慮したい。


そりゃそうだ。

お茶やお菓子は、大人が子供にあげるもの。子供からもらうモンじゃない。


「奥方からいただくわけにはいきませんよ」


快活に笑う芝。

あわあわとしている魔女っ子。


子供を困らせるんじゃない。

芝はあとで自動監視システムの標的実験な。

独りで全部。

手を抜けない性格だ。

夜までかかるぞ。


曹長に睨まれて、不平顔も出来まい。


芝くん!

やったね!

残業手当てが入るよ♪




【太守領中央/太守府/王城内演習場/園遊会中心】


上より前後左右。

僕が見るのは頭上を見上げるバカ共だ。


青龍の気に障る視線を向けるなよ?

青龍に馴れ馴れしく振る舞うな?

青龍の眷属にそもそも触れるなよ?


僕は園遊会に混じっている衛兵、を囮にした殺し屋たちを見た。

盗賊ギルドの専門家。


ギルド頭目は青龍の情人。

だが別に、頭目とは付き合いが長い。

船主を仕切る僕のうちと、港の荷役人足や臨時雇いの船乗りを仕切る盗賊ギルド。

長い長い付き合いの中、ギルドの連中を見知ってはいる。

だから、こうして手を組める。


臣下として青龍を守る頭目。

領民として青龍の怒りを買いたくない僕ら。

青龍への無礼や非礼を防ぐ

――――――――――それだけなら同じことだ。手を組めないわけがない。


僕が事前に注意して、防ぐ。

ダメなら僕が隠しているすきに、暗殺者が殺す。


これだけの人数、視線を操るのは造作もない。

ギルドの一流どころなら、始末も容易い。声も上げさせずに刺し殺して、僕や配下が人当たりした客を介抱するように見せかけて、王城から連れ出す。


これでバカは片付くだろう。

取り分けバカなバカ女、参事会議長は紐に繋いでいる。

僕が腕を組んでいる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんとか、縄と手枷が見えないように。


バカは殴っても蹴っても意味がない。

縛られていることすら、忘れて笑ってる、のか?

僕は縄を引いてみた。


「?」


僕を見た。

気づいてはいるらしい。


昨夜と同じバカ面。

園遊会をかってにしつらえたバカ。

青龍の貴族が社交に興味がない、なぞ考えもしない。

言って置いても覚えない。



バカ女は社交界の毒キノコ。

コイツや同族に取って、園遊会茶会夕食会は呼吸と同じ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、小金をもった家の娘なら、珍しい話じゃないが。


当主や実権を握る支配人などにとって社交界は、互いに顔をさらして安全を買う、首実検。


こいつ等はウチの人間だ。

手を出すときは覚悟しろ。

知らなかったは通じないぞ。


――――――――――と言うわけだ。


たが、バカ女のような(あぶく)にとっては?

社交と銘打つ闘鶏場。

金を浴びせあって、飼い主を喜ばせる。

ソレを息抜きにする家長も少なくない。

首実検を隠す天幕のようなもの。


つまり、青龍には縁がない。


青龍が誰かを殺す時、殺されるバカの前後左右を気にするものか。

――――――――――絶対者に腹芸や虚飾は不要。



だがしかし、一週間前から準備されていた園遊会。

いまさら中止に出来るモノか!

参事会の、僕の参事会にキズがつく。

参事会議長の名前で、支度されてしまったのだから。



力が弱くなり利用価値が減じれば、青龍は参事会を切りすてる。



かと言って青龍に何かを頼める訳がない。

参事会のメンツを保つために、ご臨席ください。

言って見るか?

・・・・・・・・・・嗤われれば、命だけは救われるのだがね。



参事会は、この邦を支配するのに便利ではあるのだろう。

だが、支配、の意味が僕らと異なる青龍。


金はおろか、物も、女も、領地も領民も必要ではない。賛美も怨嗟も感嘆も、誰が何を感じても気に留めることはない。



従えるのは必然。

奉仕されるのは当然。

生かすも殺すも偶然次第。



参事会は、あってもなくても、構わない。



そんな青龍に、何を求める?

嘆願?

哀願?

希望?

熱望?

泣き落とし?


・・・・・・・・・・・・眼も向けられまい。


だから、僕は賭けに出た。出ざるを得なかった。青龍に、この園遊会は役に立つ、と提案するしかなかった。




【太守領中央/太守府/王城内郭/外殻側バルコニー】


俺は人を見下ろすのに向いていない。

まあ、そりゃそうだ。


高見に立てばいい的だ。

何が楽しいっての。

人見知りする魔女っ子に、ちょっと共感してしまう。

まあ、現地代表だから隠してもおけない。

人前に出さざるを得ない。

だが人に接したくない。


ならばってことで、バルコニーに出る案が通った。


これなら他人は届かない。

視線はまあ、高さの文だけ距離があるし、俺が付き合うことで、かろうじて許してもらった。


異世界では珍しいどころか、有り得ないのが黒髪黒瞳。

だから俺は注目を集めてしまう。

視線が分散すれば魔女っ子の負担も減る、といいな。




【太守領中央/太守府/王城内演習場/園遊会内郭側】


僕は、バカが始めて自分で後押しした(せざるを得なかった)園遊会を指揮しながら、後悔をかみしめる。

何時でも介入できるように、常に手が空いている。

だから自然に思い返す。


昨夕刻。

僕が女も酒も部屋の外に置き、考えを整理するために書付ていた時だ。

バカ女、参事会議長がその部屋に走り込んで来た。


もちろん、部屋は王城の塔、その一つ。五大家ごとに与えられた塔がまるまる一つ。青龍の貴族、その命令。

各家の当主は王城に居を構えるべし。

参事会を跪かせるために、王政府から帝国太守までがあの手この手でかかってきたが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この発想はなかった。


もちろん、いずれは、かいくぐって見せる。


ともあれ与えられた塔は、各家の当主が収まり、使用人やお抱え職人に護衛等が詰めている。

誰何無用で出入り出来るのは、王城のメイドに執事だけだ。

だから当然、参事会議長でもあるバカ女は、誰何を受けたはずだが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さすがに誰も止められなかった、か。



このバカ女を殴るのは、僕だけだしな。

僕は使用人の考課を書き換えながら、相手をしてやった。

バカ女、議長閣下の。

そして一言。


「アタクシは緑のドレスにするから合わせるのよ?」


――――――――――とりあえず、僕は、バカ女を縛り上げて猿轡をかませた。


けっして普段から縄や手枷を常備している訳じゃない。相手の着衣で縄や轡代わりをしつらえるのは、意外に簡単だ。

慣れてしまえば荷物が減らせる。

剣や斧、灯りや細工棒。気付けと手当てに使う酒などを抱えて荒事をする時に、縄や手錠まで持ち歩くのは御免被る。


でまあ、バカ女から急ぎ事情を訊きだして、走り出した。

――――――――――参事会召集。


使いをやれば夜中のこと、無駄な時間が行き過ぎる。入れろ、入れない、理由は、事実か、などなど無駄を楽しむ時間はない。

僕は各当主の部屋に、誰何を無視して押し入り投手を連れ出して走りながら説明。慌てて集まる各当主周りの連中にも聞こえるような声量で。


我らが、はっきりさせるが我が、ではない参事会議長閣下が明日昼より参事会主催の、議長主催ではない、園遊会を王城にて、街でも参事会でも議長の邸宅でもなく、行う。


既に話が街中ならまだしも、近郊の街はおろか滞在中の有力農民や街々の顔役にも回してある

――――――――――全員、理解して、ポカーンとした。



僕は睨んで無駄な確認を封じた。


最後に押し入った大先輩参事、つまりは青龍の貴族に娘を差し出した、のか、召し上げられたのか、娘が絡まなければ偉大な先人の部屋で怒鳴った。


「ご領主様はご存知ない!!!!!!!!!!」


部屋に集った参事会の、眠れぬ夜が始まった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・議長?


僕の質問に是非のみで答えさせた後、放っておいた。

王城のメイド長が、面倒をみていたらしい。

ほどかないまま。


朝、恨みがましく僕を見て怒鳴る。


「どんな趣味かしら?????????」




【太守領中央/太守府/王城内郭/外殻側バルコニー】


奴隷の気持ちが解るのは、皇帝だけだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とかなんとか言った人がいた。

俺、わかるわ~~~~~~~~~~。

見せ物って、面白くないよな。

見るほうじゃなくて見られるほうのこと。


普通のサラリーマン、特別職国家公務員には無理。

かといって、千客万来そっちのけで書類処理も出来ない。

暇つぶしの定番、将棋、チェス、トランプ。

ゲームも読書も映画もまずい。

いや、投影ディスプレイでなら下に気づかれずに鑑賞

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・みんなが仕事中だと、気が退ける。



だから、やることが全~~~~~~~~~~くない俺は、昨日のコトを考えた。

つらつらと。




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