情報戦(標的検閲済)/Friendly Fire!
登場人物&設定
※必要のない方は読み飛ばしてください
※すでに描写されている範囲で簡単に記述します
※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします
一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。
次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。
以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。
(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)
【登場人物/一人称】
『俺』
地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿》
現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様/我が君》
?歳/男性
:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。
『あたし』
地球側呼称《エルフっ子》
現地側呼称《ねえ様》
256歳/女性
:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。姉貴分。ロングストレートなシルバーブロンドに緑の瞳。長身(数値不明)。革を主体とした騎士服にブーツに剣が常備。
『わたし』
地球側呼称《魔女っ子/幼女》
現地側呼称《あの娘》
10歳/女性
:異世界人。赤い目をした魔法使い。太守府現地代表。ロングストレートのブロンドに赤い瞳、白い肌。身長は130cm以下。主に魔法使いローブを着る。
『わたくし』
地球側呼称《お嬢/童女》
現地側呼称《妹分/ちいねえ様/お嬢様/愛娘》
12歳/女性
:異世界人。大商人の愛娘。ロングウェーブのクリームブロンドに蒼い瞳、白い肌。身長は130cm以下。装飾の多いドレスが普段着。
『僕』
地球側呼称/現地側呼称《若い参事、船主代表》
?歳/男性
:太守府参事会有力参事。貿易商人、船主の代表。年若く野心的。妹がいて妻の代わりに補佐役となっている。昔は相当な札付きであったようだが、今は特定の相手以外には紳士的。
『あたくし』
地球側呼称/現地側呼称《メイド長》
?歳/女性
:太守府王城に奉公する女性たちの長。ストロベリーブロンド、碧眼、白肌。異世界でも地球世界でも一般的な、ロングスカートに長袖で露出が少ない普通のメイド服を身にまとう。まだ年若いが、老人の執事長とともに王城の家政を取り仕切る。
初登場は「第11部 大人のような、子供のような。」
【登場人物/三人称】
地球側呼称《神父》
現地側呼称《道化》
?歳/男性
:合衆国海兵隊少尉。国連軍軍政監察官。カトリック神父。解放の神学を奉じる。
地球側呼称《元カノ/団長/だんちょー/一尉/一尉殿》
現地側呼称《青龍の女将軍/団長/主》
?歳/女性
:国際連合軍大尉/陸上自衛隊一尉。国際連合軍独立教導旅団団長。『俺』の元カノ。インドネシア軍ベテラン兵士の副長(褐色)、筋金入りの傭兵エルフ(白ローブ)。黒副、白副の二枚看板に支えられ、ドワーフやエルフに異世界人と地球人類が同じ戦列を組む、初の多世界複合部隊「黒旗団」指揮官。
地球側呼称《三尉/マメシバ/ハナコ》
現地側呼称《マメシバ卿》
?歳/女性
:陸上自衛隊三尉。国際連合軍独立教導旅団副官。キラキラネームの本名をかたくなに拒み「ハナコ」を自称している。上官の元カノが勝手に「マメシバ」とあだ名をつけて呼んでいる。
味方の事は、敵に聞け。
―――――――――古典的命題――――――――
【太守領中央/太守府/王城内郭/三階内側回廊/神父とメイド長の間】
大切なことは、見つからないこと。
大切なことは見つからない、ではないので念のため。
戦場の基本について、である。
すなわち!
俺の現況説明。
ステージボスをクリアしたり、ダンジョンしらみつぶしでアイテムを稼ぐ。
なーんてゲームだけの話。
実戦においては、如何に見つからないか?
がポイントだ。
轟音をたてて低空侵攻するF/A-18ホーネット?
地響き上等!陸上自衛隊ってゆーか国際連合軍、主力戦車90式?
チヌーク改造どころかAC-130ガンシップは上空から105mm砲を乱射してMLSRに155mm203mmは耳をつんざく砲声
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?
うん、ウルサいね。
さて、みつからないたいせつさをりかいしてもらったようだね!!!!!!!!!!
俺たちは回廊沿いに息を殺して、ゆっくりと進む。
俺を先導し、俺よりも音を立てない黒猫のごとき神父。
自然にゆっくり歩くことで、何一つやましいことは断じてなく日常的でとるに足らない平凡な業務をすぐにさっさと済ませにいくだけですよ、とさりげなさ全開でアッピールする俺。
ごく自然にゆっくり優雅にきびきびと進むメイド長。
俺には前後を進む二人のようなスキルはない。
神父は存在すれども音も匂いもしない。まるで特殊部隊隊員のような動作。夜の公園や夏の海辺で大活躍しそう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・その首もとに高性能デジタルカメラをなぜ下げている?
民間で手に入る最高品質の画像と動画、録音音声はシャワーの音から吐息を確認可能
・・・・・・・・・・・・・・・・・・などと鼻高々。
再度、何に使うのかと聞いたら、信仰上の理由だと抜かしたから間違いなくバチカンに火炙りにされる。
点火は是非、俺に任せてくれ。
朝の火炙りは最高だな!!!!!!!!!!
そして対照的なのが俺の背後。
メイド長は微かな香料が薫り、衣擦れをBGMのように奏でる所作。おそらくエプロンよりドレス寄りなメイド服、王城メイドはみな同じ香を焚きしめるらしい。
俺は独特な香りしか気がつかなかったが。
この香を教えてくれたお嬢には、かなり食いつかれた。
隠れキリシタンが宣教師に出くわしたような、同好の士と書いて同志と読む肉食獣の眼。
香水香料香合わせ。古典的な趣味の世界。ハイソサエティなお嬢なら、マニアでもおかしくはない。香料の重量辺りの値段は黄金以上、この世界でもそうだ。
貧しさには遠いが慎ましく生きている魔女っ子達。
一番、お嬢と親しい二人には通じまい。
あるいは太守より金持ちかもしれない富商の愛娘。
仲間が居なかったんだろうな
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だが俺はそういう素養がない一般庶民
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と最後まで言えなかったが。
いやね?
瞳を輝かせて話し始めたお嬢がね?
俺は、のあたりで、絶望した笑顔にね?
それってどんな表情って話だけど、絶対に見せないよ?
俺は、興味があるけどまだ知らない、に転進。
お嬢がまた輝いて、それは大変心地よい笑顔だが、こんど各種香料を試させてくれると迫られたくらい。ニッチなマニアが仲間を創る時の肉食獣の眼。
某フルーツ社のパソコンを素人に奨める奴がこんな目をしている。
お嬢自身は普段、香料を余り使っていない、とか。そこに活路を見いだした俺は再び転進。決して撤退でも退却でも玉砕でもなく。
なんとか、使わない方が良い香り、で交渉妥結。
【王城内の厨房】
「ふひゃん!」
「ちいねえ様?」
わたくしは視線で、あの娘の心配を抑えます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大丈夫、ですわね。
恥ずかしいくしゃみが、お料理を台無しにしてはいけません。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お料理については、あの娘の領分。
わたくしは、お茶。
給仕はみんなで
――――――――――お手伝いを許されたのは、あの娘の優しさ。
ゆめゆめ仇で返してはいけませんわ。
おねえさん!
なのですから。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いくら、わたくしの、わたくしの肢体の薫りを好まれるご領主様でも、そーいう意味な訳がありませんし。
そーいう意味でも
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いけませんわ。
踏み越えてしまいそう♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
【太守領中央/太守府/王城内郭/三階内側回廊/神父とメイド長の間】
俺は、自然にさりげなく視線を戦況ディスプレイに走らせた。
IFFで味方の位置を確認。
表示されるのは味方と味方以外。
味方には索敵/攻撃レンジ。
残弾まで含めた装備、そしてバイタルが簡略化表示。
味方以外は暫定的な脅威判定。
映し出した範囲が王城内郭の極一部。現地雇用済みの王城使用人しかいない。
Colorfulたちと違って、使用人たちは軍属じゃない。
だから、味方以外、とされる。
敵を発見するにははなはだ怪しい戦況モニター。
解析ソフトが金属反応の有無や画像処理による銃器類似形状有無を判定。
港街にいる黒旗団のオペレーターが訓練代わりにタグをつけている。
簡単なセンサーしかないから、王城使用人たちの不審者目視報告の方が確実。
この類の警戒システムは、敵条件設定が難しいのだ。戦場、もといココも国際連合決議的には戦場だ、での設定は簡単。
――――――――――味方以外の動体は敵。
まあ、有り余る弾薬も無限じゃない。人類50億時代に、全人類殺傷分しか無い兵器、その一部。
日本列島、米軍最大の補給廠は伊達じゃなさ過ぎる
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・仮想敵はユーラシア大陸の半分だからな。
仮想敵一人一人に10発以上撃ち込む覚悟完了。とは言え、有限。だから、多くの場合、動体目標の速度に優先条件を付ける。
一定速度以上、速度以下
――――――――――が敵。
ゆっくり動き過ぎるか、素早く動き過ぎるか。まあ、どっちにしろ敵だけど、優先順位に従って後方安全地帯のオペレータにリストが回され脅威判定がされる。
だから、戦場では普通に歩いた方が死ににくい。
自動判定に一任する兵士なんかいないけどね。
各兵士もフルフェイスヘルメットで同じ機能が利用可能。たたし俺、将校にしかない出来ない事がある。現場最高指揮官の権限。
それは表示指定。
誰に何を見せるか見せないか。
兵士に部隊の全容など知らせてはならない
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・死守命令が出せなくなる。
孤立無縁殿捨駒なんて自覚したら、誰でも逃げる。
一人逃げれば皆が続く。
逃亡者を下士官が殺せば、士官ごと兵に射殺されるだけだ。
初期、大げさにもサイバー歩兵なんぞと呼ばれていた、ハイテク装備の致命的欠陥。
――――――――――悪い意味でド素人の、考えなしな妄想の産物。
兵士を人間だと考えない。
人間の戦場での振る舞いを知らない。
ゲームユニットにすら実装される、士気崩壊が考慮されない。
命令が絶対で、弾薬体力尽きるまで、最善を尽くす軍人
――――――――――夢見てんじゃねーよ。
そりゃ、捨てられるわ。そんなしょーもない構想が試験予算がついただけでも奇跡。ましてや普及するわけがない。
情報を共有する軍隊なんぞ有り得ない。
事実を必要とする兵士なんぞいやしない。
味方を思いやる戦争なんか成り立たない。
敵を欺くには味方から。
常識以前。
軍が兵の命を大切にするのは、金を大切にするのと同じ。戦果を挙げる為の道具だから大切なのだ。
常に数を数えて大切に大切に管理する弾丸を、目標に撃つのをためらわない。
それと同じ。
だから、兵を最高のコンディションで死なせる為に手を尽くす。
例えば、情報を制約して。
増援はいます。
増援が行きます。
増援が向かいました。
増援が向かっています。
増援がもうすぐつきます。
増援が支援でもいいが
――――――――――敵中孤立玉砕必至などと、判らせるものか。
だから、指揮官は兵士に与える情報を制限できる
――――――――――から、する。
将校の任務はまずもって味方兵士をだますこと。
士官以上は役者でなくてはならない。
・・・・・・・・演技に酔わせた兵士を死地に連れて行くんだから、役者ってより詐欺師だろ。
肝心な情報を与えなくても、普通の兵士は疑わない。
通り一遍の情報で十分、十分。
前線兵士に必要以上の情報を与えても、処理限界で邪魔なだけでもあるしね。
ベテラン兵士なら、その中で生き残る為に、普通の兵士を利用する。
・・・・・・・・・・・・だから、事実をばらしたりはしない。
それを、一歩すすめれば?
――――――――――架空の情報だって与えられる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・間違いなくやってるだろう。
ここぞという時に、上位指揮権限で兵の認識を操作出来れば。
一人一人の兵士が、互いを逃がすために進んで玉砕、なんて状況を創れる。
簡単だ。
自分が持ち場を離れたら、仲間が全滅する。
そんなシュチュエーションデータを、微妙に加工したそれを、一人一人に見せればいい。
平均的兵士なら、最期まで士気を保って死ぬだろう。
仲間を護る為に死戦して、全員が、仲間だけは助かったと思い戦死する。
将校はそれを記録して、上位指揮系に提出。
ハイテク歩兵構想が、バカの愚考で破綻した。
そのあとで基本的に変わらないシステムが先進国軍隊に急速に普及した。
その原因は?
穿ちすぎ、
――――――――――だったらねぇ。
事務担当が目にする不都合な真実。
だから日々、隊員同士の人間関係を重視する訓練を見るのがキライだ。
だが、大キライなコンセプトの、ろくでもない兵器が初めて人(俺)の役に立つ。
今日俺がそう使う。
胸を張ろう!
間違いなく平和利用だ!!
俺が万難を排しておねーちゃんたちに会いに行くために!!!
蔑み上等!
説教後で!!
上官なんかこわくない!!!
(いまは)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・このタイミングで、上位指揮権限がある三佐が介入する訳がない。
故に味方兵士の位置は確実に判る。
ヤツが上層階にいることも。
天井兼床の大理石の厚さも。
動く様子がないことも。
その位置から階段を降りても間に合わない。
距離がある、元カノと俺。
動けば動く、追いつかれるもんか。
先手は俺。
能力で後れを取っても、情報戦で優位に立つ。
そしてヤツが、唯一のチョークポイントを抑えていないということは?
真っ昼間からまさか??????????
明るいうちなどありえない!!!!!!
ふっ愚かな
―――――――――――常識に捕らわれたのが、うぬが不覚よ。
我、勝てり。
空間投影ディスプレイ上の輝点がニアミス前。たとえ無害と解っても、近づくだけで心のアラートが止められない。
今カノじゃないくせに、俺が女遊びをしようとすれば絶対に妨害に出てくる。
俺は元カノに理解させる気など全くない。
っていうか、女の論理に口出しをするのは野暮ってもんだ。
正邪論理筋道道理。
・・・・・・・くっだらね。
だがしかし。
元カノの論理に屈する気などない!!!!!!
もう少し。
あと少し。
今ちょっと。
直接距離1m以内。
5、4、3、2、1
「ハロー♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪」
「Hello??????????」
――――――――――俺はとっさに窓側から離れる。
!!!!!!!!!!
上層階から、一足飛びに突入して来た元カノ。
腕力だけで??????????
ロープもウィンチも見当たらない。
間違いない。
真上の回廊から、腕で体を保持して真下へ。縁を掴んだ手を支点に、外に飛び出した力を転換。下層の回廊、俺たちがいる場所に飛び込みやがった。
オマエはパルクールの選手か!!
※パルクール:人間業には見えないが人間の体だけで出来るアクロバットな障害物競技。実物を見ると度肝を抜かれます。
【王城内の厨房】
わたしはとっさに扉の方を見ます。
なにか、大変なことが起きている気がしたのです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・きゃー!
お鍋!!
お鍋!!!
【太守領中央/太守府/王城内郭/三階内側回廊/神父の陰】
俺は元カノから視線を逸らさぬようにした。微笑んでいるつもりだろうが、俺以外には、不敵に笑っているようにしか見えないぞ。
猫なで声で近づいてひっかかれるタイプ。
だがまだ、いける。
こちらを懐柔しようとしてる。
だから俺は、茫然としているフリ。それに気付かれたら先手を打たれる。
そう。
直前、奇襲を受ける前を思い出せ。改めて見回せば、気がつかれる。俺があきらめてないとわかれば、そのまま拉致されかねん。
攫われるのは俺。
攫うのは元カノ。
見送るのは神父。
・・・・・・・・・・・神父、おねーちゃんたちを独り占めさせてなるモノか!!!
やらせはせん!!!
混乱するな!
俺は見ていた!!
冷静に考えろ!!!
改めて見回すまでもない。
元カノに通路外周側が塞がれ圧迫されている。一見、俺たちは壁に追い詰められたように見える。
だが、元カノは一人。
上背は多少あるが体格、いや、肢体の幅は小さい。
両サイドは空いている!!!!!!!!!!
そしてこちらは二人。
神父が元カノ側にいるのはこうつ
「フッ」
不適に微笑みかけ
―――――誰だコイツ―――――
前に出た神父。
メイド長はゆっくりと下がる。
「任せな」
キラリと輝く白い歯。
すっげー。
光る、じゃなくて輝きやがった。
「先にヌキな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰に言ってる?
俺の背後は壁だ。
誰もいないぞ?
そして俺の前の神父の前。
元カノは普通にM-14を肩に担いで、笑っている。
ガバメントは三人とも抜かない。
抜いてたまるか。
「Brother?女を待たせるもんじゃないぜ」
カメラ目線って、監視カメラをなぜ意識?
だが、奴は大切なことを思い出させてくれた。
そう。
俺には待ってくれている女がいる。
タダなどという不心得を気持ちだけ受け取った俺たちが、正規料金をチップとして直接渡すことで諸々な問題を回避して見せかけたような気がするお嬢さんたち。
――――――――――すまん――――――――――
神父が殺られている間に、俺は店に飛び込む。
管轄権が違うアムネスティの施設だけに、踏み込もうとすれば三佐が止めてくれるかもしれないししてくれないかもしれない。
だが、そこから先はまた考える。
俺はヤツの思いに応えなければならない。
男の絆に。
男同士の友情に。
俺と貴様の仲だ。
必ず
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――骨は隠滅してやる。
【王城内の厨房】
あたしはちょっぴり、悔しくなる。
野山で狩りをして、鳥を捌き獣を解体、魚をおろすことはできる。
のに、なのに、料理となると
・・・・・・・・あの娘の足元にも及ばない。
「ねえ様は盛り付けがお上手ですよ」
ちょっと、嬉しい。のが、悔しい。
それが求められていなくても、こんな風に感じるなんて思わなかったわ。あたしの取り柄は強さだけど、青龍の貴族から見ればあってもなくてもどうでもいいわよね。
何かをしたい。
いまよりも、もっと。
もっと、もっと、もっと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・何一つできなくなっても、気にもされずに、側にいられるだろうけれど。
【太守領中央/太守府/王城内郭/三階内側回廊/マメシバ三尉の前】
「計画通り。ニヤリ」
俺は見ない。
左手、俺が向かうべき方向から響いた、判りやすい声。
ニヤリ言うなニヤリ。
マメシバ三尉だ。
悪い笑顔を浮かべようとして失敗、ドヤ顔なのが目に浮かぶ。
「無視ですか!!!!!!!!!!」
おじさんたちは忙しいから、表で遊んでなさい。
でまあ、プンプンとはさすがに言わないマメシバ三尉。進行方向を塞いでいる。体格的には標準的。回廊を物理的には塞いでいない。
だがしかし、元カノとタイマン張れる戦闘力
――――――――――勝てん。
軍政部隊最弱は伊達じゃない、俺だが。
進行方向はマメシバ三尉、側面は元カノと壁、ならば後退?
それは敗北を意味する。
万事休す!!
「男には進まなければならない時がある」
・・・・・・・・・・・・・誰このイケメン。
元カノとマメシバ三尉を見渡す神父。
「いやむしろ!男には後退はない!!!!!!!!!!」
おーオリジナル。
「言ったろ?」
苦味走った微笑み。
「必ずお嬢ちゃんたちの所に届けてやるさ♪」
まて!お前はどーする!
神父は振り返らない。
背中で語る。
――――――――――オレにまかせて先にいけ。
【太守領中央/太守府/王城内郭/三階内側回廊/御領主様を視認できるギリギリ】
あたくしは、その背中を観ているしか出来ませんでした。
距離をとって。
御領主様を騎士のように庇って、道化様は仰います。
「相手にとって不足なし」
そして、騎士物語のような口上が続いたので御座います。
「初体験で四十八手からカーマ・スートラをフルインストールした勇者よ!!!!!!!!!!」
この大一番、覇気が辺りを圧っしました。
――――――――――圧しました!
――――――――――圧しました。
――――――――――圧しました?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・皆様、如何されましたのでしょう。
「いゃゃゃゃゃゃゃゃ――――――――――」
目を見張る女性の悲鳴
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マメシバ卿は額を抑えてらっしゃいます。
あたくしは、何も申しておりません。
メイドたちも
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おりませんわね。
あのお声は
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――崩れ落ちられた、青龍の女将軍様、の方から、いたしましたかしら。
!!!!!!!!!
お立ちになりましたのですけれど、手も足も使わずに立たれたような気がいたしましたが、あたくしの錯覚で御座いましょう??????????????????
【太守領中央/太守府/王城内郭/三階内側回廊/左にマメシバ三尉、前に神父】
メイド長は回廊のほぼ反対側に避難済。そして元カノは
・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、これ、泣く寸前だ。
俺は少し距離を空けた。
「魔法使いか」
「Why?」
なに?
うつむき顔を見せぬまま、神父を詰問する元カノ。
いや、詰問と、神父に伝わったかどうか。
アメリカンジェスチャーで両肩をすくめる神父。
「いやいやいやいやいやいや」
マメシバ三尉が割って入る。
声だけで。
腰が引けてる。
「監察官権限でしょ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺と元カノの思い出を知っているのは、当事者のみ。
いや、あの様子なら、マメシバ三尉は聞いててるな?
恋愛応援が趣味で元カノの相談にのっている
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あり得なくない。
つーか、人に話すなよ。
だが解った。
三人しか知らないことを知っている四人目。
つまり神父はどこから知ったのか?
――――――――――魔法で心を読んだ、と元カノは判断。
まあ、魔法使いを待機させ通信越しに魔法を行使させるのは、国連軍が進めているやり方だからな。むしろその実験部隊を兼ねるのが、元カノの黒旗団。
だから、ありえない情報漏えいをしてそれを連想したわけだ。
だが、魔法遠隔行使実験など、うちの部隊じゃやってない。神父にはそんな環境はない。だから結論は、監察官権限。
軍政部隊の監察官、つまり神父。
軍政部隊と同行している部隊を含め、通信傍受権限がある。
元カノとマメシバ三尉のガールズトークを盗み聞き。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・部隊通信系でガールズトークすんな。
「しねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
――――――――――キレた。
「陸軍特殊作戦群認識番号・・・・・・・・・・ヒョ――――――――――――――――――――――――――――――」
逃げる神父。
追う元カノ。
なんかついていくマメシバ三尉。
うん。
逆上して原始退行した元カノは、M-14を振り回してる。こん棒として使っていれば発砲はしまい。マメシバ三尉に任せておけば、何とかするだろう。
埋めたり焼いたり事故死たり。
より大切なことは。
半日はゆっくりできるということだ。
おれは、いつの間にか側に戻っていたメイド長に頷いて、ゆっくりとアムネスティのお店『蝋燭亭』の扉をくぐった。
さあ!
ショータイム!!!
大人の時間だ!!!!!!!!!!!!
シスターズ。
Colorful。
アムネスティガールズが満面の笑顔で、扉を閉じた。
外から。
「「「「「「「「「おかえりなさいませ」」」」」」」」」
はかったなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ




