No, thank You!
登場人物&設定
※必要のない方は読み飛ばしてください
※すでに描写されている範囲で簡単に記述します
※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします
一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。
次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。
以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。
(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)
【登場人物/一人称】
『俺』
地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿》
現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様/我が君》
?歳/男性
:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。
【登場人物/三人称】
『あたくし』
地球側呼称/現地側呼称《メイド長》
?歳/女性
:太守府王城に奉公する女性たちの長。ストロベリーブロンド、碧眼、白肌。異世界でも地球世界でも一般的な、ロングスカートに長袖で露出が少ない普通のメイド服を身にまとう。まだ年若いが、老人の執事長とともに王城の家政を取り仕切る。
初登場は「第11部 大人のような、子供のような。」
【用語】
『レコン』:合衆国軍長距離偵察兵。太守府には三名が確認されており、リーダーのレコン1以外は姿を現さない。時々狙撃で『俺』を助けてくれる。たぶん。
「亜人マニア、か?おいコイツ等は、なんだ」
「バカです。考慮する必要はありません」
ここは植民地省設立準備事務局。東京都千代田区大手町一丁目3番2号、経団連会館の一室である。亜人、とは人間の亜種を意味する官僚用語。
国際連合ではそもそも、人間とは何ぞや、という判断を保留中。戦争中は保留し続けるだろう。その後で定義づけるとは限らないが。
「だが、バカの後ろは?」
「同席しているのは泡沫議員、組合青年部の跳ねっ返り、市民運動崩れに過ぎません」
集うのは各省庁の参事官と審議官。
課長や課長補佐の大半は別室で実務調整を続けている。
「こんなものが放送されていいのか?」
「TV局の会長が謝罪に訪れていますが。担当者は解雇したそうです」
「待たせておけ、道路でな」
一部のディレクターが独断で放送した、と言ってはいる。もちろん、一人の暴走で放送できるわけがない。だが、謝罪する者も謝罪を受ける者もそんなことは知らない。
現場を知っている者たちは、皆が口をつぐんでいる。
ある者は上司の怒りを恐れ。
ある者は上司のやり口に反発し。
またある者は立ち去りゆく当事者の笑みに気がついて。
「本題に戻ろう」
「夏にはパイロットファームを造りたい。犠牲は問わない」
「国連軍の勢力圏ならばどこでもいいでしょう」
「訓練は一月あれば十分です。警備と監視の役目だけですからな」
「現地人相手はともかく、中心には軍人を据えないとな」
「パージ可能と不可は選別します」
「プランテーション自体、半分は失敗してもいいでしょう」
「人材は」
「反応は上々です」
「異世界経営に関与してくる企業を勝手に特定して、派遣登録しているくらいですからな」
彼らは知らない。
死体は末端から腐ってゆく。
地方と呼ばれる場所には、仕事がない。
大都市圏の最低時給すら得られない、いつ消えるとも知れない、そんな少数の正社員に自営業。
都市部から、最低時給の下限を求めて流出した非正規社員管理会社、その餌食となる多数の若者たち。
一番豊かな地位が公務員だという、資本主義を標榜する不思議世界。
彼らは知らない。
ここ30年ほどで、彼ら自身が生み出した世界。
責任を負わないものが、過去の遺産をくいつぶす世界。
合理性とは無縁の場所で選抜された、不思議な彼らの住む世界。
一つの商店が閉まるのは
――――――――――――――――――――悲劇だ。
百万の商店が閉まればそれは既に
――――――――――――――――――――――――――――――社会ではない。
彼らは知らない。
彼らの世界認識は、彼らが関与していない世界。
一億総中流と言われた安定社会で、意識が止まっている。
記者クラブに造らせた報道。
審議会に読ませるシナリオ。
ノンキャリアに造らせた書類。
鏡の国からやってきて、鏡の国にやっていく。
だからこそ、異世界転移ですべての問題を除去しようとする意図の存在に、気がつかない。
「税金ドロボウの無職どもが」
「大陸派遣社員の生存率試算を知らんのでしょうな」
「保険にも入れまい」
「派遣会社が入りますよ。一人殺されたら一銭五厘でね」
皆が憫笑を浮かべた。
そこに通産省課長補佐が話題を振った。
「そんなことより、餌が足りません」
各省の高官は一斉に顔をしかめた。寄生虫どもの図々しさに辟易しているのだ。
我々が生かしてやっているというのに
――――――――――商人どもは。
「サンプルかね」
課長補佐が曖昧に頷いた。
「エルフ、無傷、躾が済んでいる女」
「男も多少は」
参事官の顔が露骨に怒りを見せた。
「まあまあ、あいつ等の品性はこき使っている連中と同じレベルですから」
「紙一重で使う側になったからと、調子にのりよって
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・くれてやれ。亜人なら寄生虫にお似合いだろうよ」
これ以上話したくはない。
露骨にそう見えている。
課長補佐とて、情けないのだ。
なんで女衒の真似事をしなくてはならない?最高学府を出た自分が何故?
ノンキャリアの部下に命じる時の恥ずかしさと来たら!
「これも日本の為だよ」
外務省審議官が肩を叩いた。
「豊かな日本を守る為、誰かが泥を被らなくては」
外務省にすれば、慣れたもの。名ばかりの要人に女を世話する程度、なんだというのか?という表情だ。
「講和交渉はどうなっている」
高官たちは外務省の事を思い出し、話題を変えた。
「順調だと報告を受けております」
「戦争を終わらせなければな」
「平和な日本の為に、努力しようじゃないか」
口直しに走る彼らを後目に、課長補佐は一礼し、退出。防衛省の同期から統幕に手を回さなくてはならない。
エルフの密輸は手間がかかるのだ。
「密輸、じゃなくて 、標本確認だったか」
《軍事参謀委員会ファイル――――――――――削除》
【太守領中央/太守府/王城内郭/幕内仕切り前】
「こちらが先の太守様、御一族様方の幕内に御座います」
などとメイド長に説明されているが、俺はそれどころじゃない。
「御覧ください」
幕内とは帝国の用語で領主のプライベートな領域を指す。遊牧民由来の帝国だけに、天幕からきているのだろう。
「私物は全て確認し収納いたしました」
俺は背後が気にかかる。
「明日、御一族が戻られても変わらずに暮らせますわ」
背後から、何故かメイド長への怒りの気配。いや、オーラやフォースじゃなくて、視界の隅に見えてるけどね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺を英雄のように、疑いなく見据える、娘さんたちが。
【太守領中央/太守府/王城内郭/幕内/ご領主様の前】
――――忠義を知らない娘たち――――――
あたくしは、涼しい顔で受け流します。あたくしや執事長さんのように王城に残っていなかった者たち。とりわけ彼女たちが、先の太守様、その奥方様方を良く思わないのは知っておりますので。
先の太守様、その奥方様方が帰る、事を思わせる言動が不敬に聴こえたのでしょうね。
それはあたかも、青龍の、御領主様の没落を疑わせますから。
あたくしの言葉は、他の者でも戸惑います。
あたくし以外が口にすれば、非難されましょうね。特に御領主様に心酔しているこの娘たち。殺意を抱くのもむべなるかな、ですわ。
あたくしの言葉でなければ。
当の御領主様がお楽しみでなければ。
――――――――――――――――――――つかみかかってきたのではないかしら。
あたくしが御領主様の信を得て、この娘たちを一任されているのですわ。それを知る以上、あたくしの言動を糾弾するに躊躇いが生まれますわよね。
その、不遜不敬な言の葉。
それを聴いてなお、御領主様が楽しまれている。
だから、この娘たちは感情を押し殺して、佇むしかありません。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・御領主様に捧げるならばこそ、あたくしではなく
――――――――――御領主を見なければいけませんのに。
【太守領中央/太守府/王城内郭/幕内/前にメイド長、後ろにメイドたち】
先ほど五体倒地の勢いで俺に感謝してきた5人の娘さん。
俺を見ると完全に陶酔した眼がいたたまれない。要はアレだ。命の恩人的なポジションなんだろう、俺が。元凶じゃないが元凶に近い俺たちが。
俺がこの邦に来て三日目。
部下を使って10人くらい殺した。殺した連中に捕らわれて虐待されていた娘たち
――――――――――が、今メイド服を着てメイド長さんの後ろに立っている。
いや、今朝がた王城帰還護、メイド長について歩き始めた時から5人は居たけどね。
ぜんっぜん、判らなかった。
あの時の、初対面の印象とは全く違ったから。
初対面は血の海の中。
いや、娘さんたちの血じゃないが。
憔悴し青ざめ、虚ろな目をして剥き出しの肌には血と痣が目立ち、裸同然で数珠繋ぎにされて
・・・・・・・・・・・・・・・・・思い出したら、気分が悪くなった。
その後に殺したバカ共を思い出そう。
未だに姿を見せない米軍長距離偵察兵(陸軍が海兵隊かも不明)のスナイパーに殺させた
・・・・・・・・・・・・ひとふたみー・・・・・・・・・・・・・・・・・・
思い出したぞ、狙撃させた男のチンピラ8人。
現場で参事会の衛兵にボコられて、後で縛り首にされたチンピラ女が何人か。
帝国撤退後に愛国心(笑)に目覚めたカスども。
旧王国が滅びた頃に物心ついていたかも怪しいバカ餓鬼。
小金持ちの子女で、誰かの威を借りて非武装の相手すら殺せないクズ。
わざわざ女の後は子供を襲いに来た、殺されるために産まれてきた肉片。
相応しい最期だったな
――――――――――――――――――――気分がマシになった、うん。
最期の後で他人の役にたったか。
で、俺になにやらひれ伏したメイドさんたち。
害虫が誘拐して連れまわしていた、娘さんたちだ。
前太守に雇われて王城に勤めていた、ってだけで襲われた。害虫駆除後に保護されて、それから半月。今朝、そうとは知らずに俺が再会してた被害者の会。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・当たり前ではあるが、初見とまったく見違えた。
血色の良い艶々した肌、ちょっとまっすぐ過ぎる力強い眼、ピシッとしたメイド服に似合ったシャープな仕草。
概ねよろしい
――――――――――眼がこわーい。
いや、あの後もその場に居合わせた被害者について報告は見ていたから、驚くべき事ではないのかもしれない。
文章で確認しただけだが。
画像なんか見ない。
だが把握はしていた。
被害者たちを王城で保護するように命じたのは俺だし、うちの衛生兵が手当てしたし、加療後の対処を全て整えるようにメイド長にお願いしたのも俺だ。
その後、俺は港街の帝国資産接収で王城を離れた。被害者たちは、王城や太守府の留守中管理ごと三佐に引き継ぎ。
三佐が率いる、やろうと思えば治療も出来る、WHO医師団
――――――――――――――――――――治療をやろうと思ったことがあまりない連中にまあ、委ねたのだが。
連中は地球人のみならず、異世界種族全般に詳しい。
体構造や生理機能に感染症まで網羅しつつある
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何故か非公開に。
わーざわーざ、俺に教えてくれた三佐。
どうやって異世界種族の構造を調べたのか?
――――――――――教えてくれるのを断固拒否。
非公式ながら、医学者医学生の国連軍志願兵/志願職員が、WHOに限れば、少なくないようだ。知識欲にのみ忠誠度MAXで解剖学にステータス全振りな、クリーチャーが悪魔の食い倒れにレッツチャレンジ!
――――――――――は、さて置き。
地球人最高の医師団に犯罪(現地に置いて間違いなく犯罪なのは確認済み)被害者を委ねたのが、心配なかったとは言わないが。
三佐の趣味嗜好からみて、イケる!!!!!!!!!!
と踏んだのだ。
うちの衛生兵は軍政部隊維持の為に、港街に連れて行かないとならなかったし。
まだマメシバ三尉
―――――地球人類トップクラスの異世界軍医―――――
の存在すら知らずに合流する前だったし。
だからあえて三佐に賭けた、俺が。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・人の(異世界種族の人権認定は4月時点で未了。だからどーした)命を賭けに使うなって話ですね。
だが、勝った。
多分。
俺に一方的にレイズされた彼女たち。
これにより、治療から血液解析から組織分離に至る検査リハビリテーションまで完璧に設えられた。
被害者たる彼女たちの診療治療結果。
肉体的には打撲と裂傷以外ありとあらゆる意味で問題なし。全治半月、入院一週間コース。
俺の港街からの帰還が遅れている間に、皆さん治り終わった。
あとは身の振り方。
家族係累の類はいない、と断言された。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・彼女たちが攫われる時に、見捨ててかかった、とかで。
シスターズを見ていると忘れそうになる。
あるいは、そもそも血が繋がらない関係たからこそ、睦まじいのかもな。
まあ中世では、家族、って概念が未発達なことを痛感
――――――――――――実質、天蓋孤独よりなお悪い。
だが彼女たちは、元々が城勤めのメイドさんだったということ。だから、元上司による身元保証は受けられた。
よってめでたく生活は成り立つ。
いやまあ、現代日本の感覚で言えば異常だけど。異世界じゃ、いや、中世準拠な世界なら普通。殺されかけて、そのまま日々の糧を得るために働き始める。
――――――――――よくあることだ。
今は亡き地球だって、先進国以外、人類の9割方はそんなもんだった。
21世紀は人類の一割以下が住む世界。
異世界転移後は一億余りの21世紀になり果てたがな。
まあ、働き口が無ければ無いで何とかする。
坊さんが。
――――――――――で!!!!!!!!!!
俺、じゃなくて国際連合統治軍の太守府占領作戦。
王城管理組織再編成の中で元被害者へ再雇用の道が開けた。
この辺りは、人事を任せたメイド長が手を尽くしてくれたらしい。
でまあ、怪我は治り生活が成り立つなら、まあいいや
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺の中では全て終わってファイルを閉じていたのだが。
【太守領中央/太守府/王城内郭/幕内/ご領主様の前】
あたくしは、御領主様に確かめていただけますよう願いあげます。
先の太守様、奥方様、姫様始め一族様の部屋を改めて頂きました。御領主様の視線は、こころここに在らず、ですわね。
あたくしどもに一任。
それでよし、とされておられます。ご信頼いただくこと有り難きこととは申せ、今しばらくお付き合い願わしく
――――――――――そのあたり、無駄を我慢なさらない御領主様の気質は仕え甲斐がありますわね。
あたくしの申し上げた見分に、付き合っておく要あり。
御領主様は、そうお考えですわ。
「こちらには、騎士様、家宰の方々の品を収めました」
先の太守様、御一族様方の営み、の跡。
普段、主に使われていらした部屋々以外の予備の部屋。造りを多少変えた会食間、茶室、遊技室などなど
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・縦横奥行きとても広いで場に御座います。
王城全体から比べれば小さな場所ですけれども、生かさぬことは御座いません。
先の太守様に仕えられた二千を超える騎士様方他、御一族以外の連なる皆様の私物の数々。
主に、衣服、日用品。
ある程度の宝飾品や金貨銀貨。
今は亡き方々の住まいは、王城の中に御座いました。それら兵舎に宿舎は全て青龍の騎士団に接収済み。
そこから掃き出された品々を、御領主様が、持ち主毎にまとめるよう下知なさいました。
騎士様方だけではなく、奥方様や姫様、先の太守様の持ち物まで。
お一人お一人の品々をまとめ、見分けがつくように
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・慣例では、みな全て戦利品になるものなのですが。
建前では、国や都市の資産のみが軍や戦勝国の物。
敵領主敵将敵兵の持ち物は、個々の戦士が得るものです。
もちろん、建前ですわね。
略奪中に、線引きに、幾ばくなりかこだわるのは帝国くらい
――――――――――青龍の皆様は、それどころか、お一人お一人で戦利品を得る、というお考えが最初から無い様子。
逆に、敵領主、騎士に兵士の私物は不可侵とお考えですわ。
例外は、文字の書いてあるもの。それは公私、書類書付物語を問わずに集めてしまわれます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こうした機微を察するように、皆がならなくてはなりません。
それはなかなかに難しいこと。
あたくしたちの常識に反すること。
あたくしたちは常識を知りつつ、御領主様に総て併せなくてはなりません。
常識を捨てることなく街の者たちと伝手を持ち、常識をふり捨てて御領主様の意を察する。
まずは、この娘たち。
仕える方と命の恩人が等しい、彼女たちに期待いたしますわ。
【太守領中央/太守府/王城内郭/幕内/前にメイド長、後ろにメイドたち】
命の恩人、ねぇ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺は、そもそもの元凶、の端っこ、なんだがな。
やっと回復したとはいえ、どんな痛みを抱えているか見当もつかないメイドさん5人。
そもそも城勤めは帝国支配の端っこだろう。
俺たちが攻め込まなければ、安泰な暮らしがあった訳だ。
将来の夢もあったろうし、友人知人家族に手の平を返される事も無かったわけだ。
戦争は国家の決断。
有権者として以上の責任は感じない。
俺たちが選んだ議員は皆、仕事をしている。
この戦争の行方は、当然、明言されない。
だが、だんだん見えてきている
・・・・・・・・・・・・・・・幸いに自衛戦争じゃない。
追い詰められ、仕方なく始める戦争
――――――――――最高の暗愚がもたらす最悪の愚行。
目的の無い暴力。
計画のない未来。
準備の無い浪費。
――――――――――破滅への一本道。
今の俺たちには関係ない。
差し迫った脅威もない。
長期的な欠乏も有り得ない。
在るのは充分な備蓄と計画的開戦。
不正義なのだが
――――――――――――――――――――正義に仕立てるだろう。
誰も文句のつけようがない。
文句をつければどうなるか、わかるからな。
俺は歯車の一人として、ソレに加担している。
勝利を誇りもしないが恥入りもしない。
だが、感謝されるのだけは
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いやだなあ。
まあ、それを上手く伝える自信もない。
石を投げられても困るが。
三佐が邦ごと始末にかかりかねないし。
敵意を向けられても困るが。
国連統治軍の規定で即処刑だし。
人殺しより、感謝される方がキツイってどゆこと?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やめやめ。
せめて、ここにある私物を家族か遺族にわたしてあげられると良いが。ほぼ全部、国連軍に殲滅された兵士の遺品。
・・・・・・・・・・・残ってないかな、遺族?
前の太守、の家族くらいは
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・たどり着けたとは限らない、か。
【太守領中央/太守府/王城内郭/幕内/ご領主様の前】
あたくし、いえ、皆、凍りついてしまいました。
御領主様は、検分を終えられ、ふと一言。
「いずれ帝都に届けることになる」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ていと、とは、先の太守様、の奥方様方が向かわれた、その、一度は大陸を征服した帝国の首都のこと、でしょうか。
半年足らずで領土の半分を失った、とはいえ、未だに青龍の皆様と世界を二分している、百万を超える住民がいると聴いております、帝都
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・で、御座いましょう、か。
こともなげに、昔の記録を読むように、おっしゃいました。
「一人でも生き延びていれば、だが」
――――――――――皆殺し――――――――――




