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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第四章「後宮物語/奥様は魔女?」

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140/1003

おそろしきこと

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします


一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。

次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。

以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。

(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)


【登場人物/一人称】


『俺』

地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿》

現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様/我が君》

?歳/男性

:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。


『あたし』

地球側呼称《エルフっ子》

現地側呼称《ねえ様》

256歳/女性

:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。姉貴分。ロングストレートなシルバーブロンドに緑の瞳。長身(数値不明)。革を主体とした騎士服にブーツに剣が常備。


『わたし』

地球側呼称《魔女っ子/幼女》

現地側呼称《あの娘》

10歳/女性

:異世界人。赤い目をした魔法使い。太守府現地代表。ロングストレートのブロンドに赤い瞳、白い肌。身長は130cm以下。主に魔法使いローブを着る。


『わたくし』

地球側呼称《お嬢/童女》

現地側呼称《妹分/ちいねえ様/お嬢様/愛娘》

12歳/女性

:異世界人。大商人の愛娘。ロングウェーブのクリームブロンドに蒼い瞳、白い肌。身長は130cm以下。装飾の多いドレスが普段着。


『あたくし』

地球側呼称/現地側呼称《メイド長》

?歳/女性

:太守府王城に奉公する女性たちの長。ストロベリーブロンド、碧眼、白肌。異世界でも地球世界でも一般的な、ロングスカートに長袖で露出が少ない普通のメイド服を身にまとう。まだ年若いが、老人の執事長とともに王城の家政を取り仕切る。

初登場は「第11部 大人のような、子供のような。」



【登場人物/三人称】


地球側呼称《神父》

現地側呼称《道化》

?歳/男性

:合衆国海兵隊少尉。国連軍軍政監察官。カトリック神父。解放の神学を奉じる。


『佐藤』『芝』

:主人公『俺』の部下。選抜歩兵(物語世界での選抜射手)であり、異世界転移後の実戦経験者。曹長に次ぐ軍政部隊戦闘作戦の中心。


地球側呼称《新議長》

現地側呼称《バカ女/新議長/議長》

?歳/女性

:太守府参事会議長。参事会を、すなわち太守領を経済的に牛耳る五大家、その当主の一人。地球人来訪後の混乱の中、引退した祖父から当主の座を引き継ぎ、参事会議長にも就任した。実家は先代の失策で没落進行中。

一人称が「アタクシ」だがメイド長とは別人なのでご注意。




ヒトラーを禁止するなら民主主義を禁止しなさい。

―――――――――――――――――――――アドルフ・ヒトラー


よってわが国にはヒトラーは出現しない。

―――――――――――――――――――――ヨセフ・スターリン


規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを侵してはならない。

―――――――――――――――合衆国憲法修正第二条




【太守領中央/太守府/王城内郭/正面玄関前/軍政部隊先頭】


「お帰りなさいませ」


おかえり~。

おい、誰か帰ってきたの?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え。

出迎えだ、と。


俺か。

俺だな。

俺が?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうか。


俺は思わず涙ぐみそうになってしまった。

出迎えてくれたのは、仮住まい先の王城。お世話になっているメイドさん。


まあ、俺自身は今のところ、数日しか関わっていないが。

そんな縁無き俺を、お出迎えである。「つらい日々が、走馬灯のように駆け回る。逃げられて、恐れられて、嫌われて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しかも自業自得っていう、ね。そこに向けられる平静な視線。職業的な笑顔には自信が溢れ、地球の街々に溢れる労働者のごとき怯えも恐れ諦めもない。ああ!!!何ということだろう!!!!彼女の瞳!!いや、全身から醸し出されているのは、敬意。雇い主への敬意。雇用の安定を目指して実現し、正しい給与を期日金額耳を揃えて支給し、悪逆非道普遍一般社畜鬼畜なる規定外労働を断固阻止する、人間として最低限守るべきことを当たり前に守る相手に向ける視線。人間として当たり前のことを、ただ、当たり前に行うと聖者になる。そんな現人邪鬼に溢れ出した末法の世に、まぶしすぎるぜこの瞳ゆえにしかして必然に

――――――――――結婚します!」


なげーよ!!!!!!!!!!

流暢な日本語でなにを前世紀以降アメリカと21世紀日本の特殊事情モノローグまでいれとるか

!!!!!!!!!!

メイドさんにルパンダイブする神父


――――――――――ルパンダイブとは?


日本の古式ゆかしい床入りの作法であり、準備万端整えた成人男女の交わりにおいて、男性側が全身全霊をもってベッドの上で待つ女性に飛び込む手法。

跳び着く、のではなく、飛び込む。だが何故か、この作法で床入りに成功した事例はない


――――――――――を、ガバメントで撃墜した俺。


王城の内郭、正面入り口前。

綺麗に整えられた砂利道を転がる神父。

平常運転かと思って初弾装填忘れてたじゃねーか??????????


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・撃ってないよ?


元カノじゃあるまいし、相手の回避能力なんかよめん。

銃の基本的利用法。


銃と言えば撃つ!

――――――――――違うんだな~。


銃は鈍器。

テストに出るよ?

(国際連合軍軍政官教育課程豆知識/誤回答は鬼軍曹の罵詈雑言、決して落第はないから、エンドレス)

銃身部分をつかんで台尻をハンマーの槌に見立てて思い切り振りぬく。


つまり空中神父を殴り倒しただけ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・金鎚で殴るようなものだがら、殺したくない相手には禁止。



いや、国際連合軍事法廷では、基本が死刑だから拘束しても良いんだが。

軍政作戦は24時間常時戦闘中扱い。

だから即決裁判適用。よって、その場で射殺してもいい。


これは地球人も異世界人も同じ扱い。


だが、処刑は事後処理が厄介なのだ。

記録が総チェックされるからね。

だから、事故の方が

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・叩けば埃が出る身なれば、俺がね。



Colorfulの魔改造婦人自衛官制服(マメシバ印の最高級コスプレ)など、立派な経費流用だ。

チヌーク部隊の逃亡農民狩り動員がバレたら、南の大森林が焼き払われかねない。

魔女っ子10歳現地代表に至っては、参事会の裏工作がバレる。


あれやこれや――――――――――太守府殲滅、って事になりかねん。


・・・・・・・・・・・・・Cool Down.Cool Down.

無理は承知で何も無いフリ。

進み出たメイドさん、あ、メイド長か、が左側から深く一礼。


――――――――――視線斜め下45°じゃない。

そして、まっすぐに向けられる瞳。


――――――――――つまり、向き直られている??????????


眼を見て話されるなんて!!

俺は思わず握手握手!!




【太守領中央/太守府/王城内郭/正面玄関/青龍の貴族の前】


「ご配慮、御礼申し上げます」


あたくしは、また助けていただきましたことに、深く深く礼をいたします。

不甲斐なき我が身が口惜しく。


先だって、御領主様に初めてお目通りを許された日。同じくご配慮を頂きました。その時も御領主様は、柔らかな笑顔でこちらに

――――――――――手元の鉄塊を、その柄を向けられます。

これは、たしか

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゅう。

ちまたでの呼び名は、竜殺し。




【太守領中央/太守府/王城内郭/正面玄関前/軍政部隊先頭】


俺はとっさにメイド長を支えた。

卒倒?


神父に迫られた≧襲いかかられた(前回も今回も未遂)のがトラウマに?

メイド長と神父の(メイド長にとって)不幸な遭遇。


神父に両手を握られたのが、前回。

神父に跳び付かれそうになったのが、今回。


――――――――――よし「殺そ」なんで俺の思いを代弁するか元カノ。


って、おい!




【太守領中央/太守府/王城内郭/正面玄関/青龍の貴族の胸】


BAM!

――――――――――あたくしは、あの、轟音を聴いた気がいたしました。


いえ、実際に聴こえてはおりません。あの、恐ろしい音。実際に聴こえていれば、気がするなどと思えよう筈がございません。

ただ、思い起こしてしまいました。それだけで、鼻を突く香りが思い出されます。


前回、御領主様に手を添えられて、黒い柄を握った感触。


あの時、青龍の道化様に向けられた穴から炎が放たれましたわ。あたくしが気付いた時には、地面が穿たれた痕。

竜を殺す為にあつらえられた、魔法道具。

何も気付かぬ間に、何もかも終わっておりました。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すんでのところで、あたくしが、青龍の道化様を討ち果たすことに、なるところでした。


今、思い出しても気が遠くなります。

御領主様に連なる方を、あたくしが手にかけるなど。


不作法な道化様。

その不作法を罰する権は、御領主様にある

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とは、青龍の皆様はお考えになりません。

不作法を受けた者が殺せばよい。

そうお考えです。


・・・・・・・・・・・・・・・・・お考えに異を唱えるなど、お仕えする者の分を越える、無礼。

されど、あたくしどもから見れば、有り得ません。

・・・・・・・・・・・・・・思い起こせば、身が縮む思いでございますわ。


御領主様に連なる方に、あたくしどもが手を下すなど。

なればこそ、無礼を抑えて最悪でも不作法な範囲で、ご領主様にお伝えすべきでした。



――――――――――有難きご配慮でございます、されど。

誰かを裁く力など、お与えにならないでくださいまし。

あたくしどもには果たせぬ役目にございます。

力無き身でいさせてくださいまし。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――と。



恥ずかしながら、お伝えできず・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・御領主様の意をおもんばからす、反射的に殺すことを、厭うてしまいましたのに。


その時、あたくしは混乱しておりました。ゆえに更なる無礼を重ねてしまいました。

せめて伏してその儀に容赦を願い申し上げるべきところ。気を失い、御領主様に支えていただいた、その挙げ句、



――――――――――あら?

あたくしは、気がついたことに気がつきます。卒倒している間に、あたくし自身の悔恨に溺れていたのでしょうか。

見回しますと

・・・・・・・・・・・じゅう、は、ありませんわね。

御領主様の、黒光りする、ソレを思い浮かべるだけで

――――――――――震えが走ります。




あたくしには過ぎた、強い力。

御領主様から与えられそうになった、恐ろしい力。

手を添えられて、ふるってしまったチカラ。

恐ろしくなくなりそうで

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あたくし、また、気を失ってしまいましたかしら?

いけません。

じゅう、については考えないようにしませんと。

考えなければ


「大丈夫、ですわよね?」


あたくしをのぞき込まれる青い瞳。

本日もまた、お嬢様がお気遣いをしてくださいます。


先だっても、今回も。

あたくしが気を失うと、真っ先にお気遣いいただきました。

本当に利発なお嬢様。お父様たる参事会参事様に似て、お歳を窺うことすら及ばぬ方。


「お気を確かにされておりますわよね!!!」


メイド長たる者、のようなところで正体を失うものではないのだと教えてくださいます。あたくしにはそれができると信じてくださいます。あたくしの力を買ってくださいます。


お嬢様と想い合う御領主様に、ご迷惑をかけてしまっておりますのに。

過分なるお言葉。

過分なるご期待。


他家のお嬢様とは申せ、頂戴いたしましたわ。お応えできねば女がすたります!!

あたくしはシャンとし


「まだ、動かないでください!」


はい?

赤い瞳が、あたくしをのぞき込まれましたわ。


あらあら!

御領主様の寵愛をうけておられる魔女様!

あたくしごときに、お心がけもったいのうございます。

不甲斐なき身が恨めしく

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ご安心くださいませ。


ここでお二方にすがったままとあっては、御領主様に顔向けできません。すぐに役目に戻ります。あたくしは、腕に力を入れて、御領主様の胸を支えに身をおこ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あら?

御領主、さま、の胸元???????

あたくし、どこに?


「「動いちゃダメ!!!!!!!!!!」」




【太守領中央/太守府/王城内郭/正面玄関前/軍政部隊先頭】


俺は自分を客観的に眺める。

得難い機会だね。

得たくはない機会だが。



つまり俺はいわゆる、とらわれの人質のような状態である。



前はメイド長。

背後にエルフっ子。

左右がお嬢に魔女っ子。


まず、エルフっ子に背後から拘束され、その右手で顔の下半分を塞がれている。その上にエルフっ子は、左腕と全身で俺の体を固めている。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺より遥かに強いって今更?


エルフっ子の意図はともかく、一瞬で捕まったよ俺。

一応、成人男性ですよ?

職業兵隊さんですよ?


派遣前訓練では、新兵くらいには見えなくもない、と鬼軍曹の吐き捨てるようなお墨付き有り。


はい!

エルフっ子に襲われたら負ける自信があります。

――――――――――素手で。


いま、いま、襲われて、負けてるね。


口を塞がれ羽交い締めされて身動き取れません。

うん、ここで一番弱い戦闘員は俺だな。

非戦闘員や子供と比較されるほど落ちぶれてない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と自分に言い訳する時点でアレだ。


エルフっ子ひとり、完璧に決められてるってのに。

しかも動けない俺の正面はメイド長。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・メイド長を抱いているのは、彼女が俺のすぐ前で立ち眩み、たぶん、を起こしたからだ。


神父の突撃がトラウマになっているんだな。

前もあったから。

とはいえ、目を覚ましたような?


メイド長から感じる重さが、軽くなった。意識不明な人間はすごく重い。目覚め、意識がはっきりするに伴って、軽くなる。だんだんと自分で体を支え始めるからね。


だがしかし、顔色ひとつ未確認。


エルフっ子に首を決められてるから、顎下のメイド長を見ることも出来ない。掴まらせて置くだけで、精一杯。

何故にこのタイミングで捕まったのか俺は?


しかし俺の代わりにシスターズの小さい二人が、メイド長の様子を見てくれている。

お嬢と魔女っ子が、俺を軸にピョンピョンと。


小さい二人、呼ばわりは伊達じゃない。

二人とも身長140cmない。だから、俺の体に掴まりながらピョンピョン。優しい二人は盛んに声をかけ、メイド長の様子をみている。

メイド長とシスターズの小さい二人には、20cm以上の身長差。

俺の胸元にあるメイド長の顔を覗く為には、ジャンプ必至。


・・・・・・・・・・・・・俺が覗き込めば済むんだが。

現地住民、メイドさん執事さん、他。その真ん中で無力を晒して原因不明の人質中。



この絵面はマズい。



外周警戒態勢の佐藤、芝。二人が背中で笑ってる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・上官がピンチですよ?


戦えとは言わんが。

――――――――――俺にも羞恥心があってね?


最後の手段、その一。

骨振動マイク!!


完全に口をふさがれていても、口の中のつぶやきがあごの骨振動させる。接触式マイクがそれを音に変換して部隊通信系に無線で伝えてくれる優れもの。


『マメシバ三尉』


まずはメイド長を医者に任せないとな。

―――――カシャ―――――


「ハーレムいただきました~~~~~~~~~~大尉殿」


何故撮影?

それ個人の携帯だよな?

ハーレムとな?


「ハーレムだよね。生殺しじゃないリアルなやつ。誰からヤルの?」


ちょっと待てシュリ!

お前の店のサービスか??

俺が拘束されている間にそんな不届きなことをしている部下が???

いけないとは言わないが、おいくらですか?

お高いんでしょうね??

教育上よろしくないので後程ゆっくり事情聴取を!!!!


「な、な、な、めないで」


ん?

エルフっ子から苦情が。

おっとつい、離せないのに話しそうになってしまったぜ。

口をふさがれているから苦情を言われる・・・・・・うん、言えないから言われるのは納得だね。


「ウケるウケる♪♪」


腹を抱えるシュリ。俺たちの周りを楽しそうに回る。


「胸元に抱くストロベリーブロンドの美女、背後から腕を絡めて肢体を押し付ける銀髪の美少女、左右の腕にぶら下がるブロンドとクリームブロンドの幼女に童女♪♪そこにしびれて♪あこがれない♪♪♪♪」




【太守領中央/太守府/王城内郭/正面玄関/青龍の貴族の背中】


あたしが凍り付いたのは、言うまでもなく

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だってだってだって!!!!!!!!!!

どうしよう??????????


とっさに跳び付いた、あたしたち。

我に返った、あたしだけ。


あたしは、青龍の貴族に、背中から抱きついたまま

――――――――――どうしよう。

固まったまま。


あの時。

青龍の貴族がメイド長を抱きしめた

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう、おもったんだもの。


今から考えれば、抱き止めただけなのだけれど。


その瞬間に浮かんだのは、青龍の貴族とメイド長の、口づけ。

――――――――――判ってる。


16日前、あたしたちが初めて青龍の貴族に出会った日。

あれも、口づけなんかじゃない。

ただ、抱き留めただけ。


青龍の貴族とメイド長は、抱き留められた女と抱き留めた男は、互いの様子を確認しただけ。

胸元のメイド長が仰ぎ見て、青龍の貴族は胸元に俯いた。

だから、たまたま、偶然、意図しない形で、互いの意思に関係なく、不幸にしてかどうかは判らないけれど

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・唇が触れただけ。


弾みで、唾液が着いても、口なんだから、仕方ない。

だから、あれは、口づけじゃない。

だから同じことが起きると思ってしまって

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あたしたちは止めにはいってしまった、のよね。


――――――――――そう!!!!!!!!!!


事故を防ぐ、その為に。

青龍は、青龍以外の女と接触しちゃダメなんだから!!!!!!!!!!


だいたい、あたしが止めなかったら、絶対また口づけ、じゃなくて、接触してたし!!


青龍の貴族は、意地悪で、あたしの指に・・・・・・・・・・その、いろいろ。


あたしは、彼の背中から視線をそらす

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・青龍の娼婦が、笑い転げていた。




【あたらしいけんぽうのはなし】


人類史上初の人民革命。

これをフランス革命と誤解する向きは少なくない。だが、最初はアメリカ革命であり、フランス革命はアメリカを手本としていた。



合衆国憲法修正第二条。


日本では誤解が多いが、これは

「個人が国家に対抗する権利」

を担保した規定である。


武装権という勘違いが多いが「革命権」が正しい。


三百年近い安定と繁栄の中で誕生した「日本人」には理解出来ない。

武装難民が建国した合衆国には、最初期から体制や国家への絶望が刻まれている。


合衆国憲法は


「その憲法から生まれた体制の破綻や暴走を防ぐ方法がない」


という前提で、対抗策を組み込んでいる。ゆえに憲法が当然のように、民兵を想定して保護している。だから現存する無数の民兵達(Militia/ミリシア)の大半が、連邦政府を仮想敵としている。


彼ら民兵はテロリストでもなく、反政府主義者でもないし、今の合衆国を否定しているわけでもない。


単純に


「国家/体制は必ず暴走する」


という常識に基づき、


「いつかかならずやってくる」


その日まで、未来永劫、準備し続けているだけなのだ。そして、その日にだけ備えているわけでもない。その日を遅らせるためでもある。


無論、「対抗する力を持つ者をたやすく抑圧しようとは思えない」という抑止力の面もある。訓練のない民間人ならばたやすく絶滅収容所に送れるが、民兵と言えるレベルであればそうはいかない。

差別を越えて迫害しようとすれば内戦だ。



例えば。

1940年前後の欧州で600万人中の10万名程度が、軍と同じ装備を持ち訓練を積んで組織化されていたら「絶滅させるべきだ」などと誰が言えただろうか?


・・・・・・・・・・・・・・それでも差別自体が無くならないことは、懐かしき祖国が証明しているが。



だから、銃乱射が起きようが、銃犯罪が日常化しようが、合衆国市民は修正第二条を支持する。



テロリストや犯罪者ごときが、何千、何万人を殺そうがが問題にならない。

暴走した国家は何百万、何千万を殺し、人類すら滅ぼせるのだから。



「国家が市民の自由を否定するならば、何度でも建国しなおしてやる」



一人一人の市民のために国家はある。

その逆ではない。


要らなければ捨てる。

いくらでも作ればいい。

その程度は誰にでもできる。


それを保障するからこそ、合衆国市民は今日も「憲法に」忠誠を誓う。

国家を否定する権利を守る憲法に、修正第二条に永遠に忠誠を誓い続ける。





「これが我が国で一番価値があるモノだ」

「「「「「・・・・・・」」」」」


「独創的ですね」

「前衛的と言いましょうかしら」

「君らが独立した理由がよくわかるな」

「合衆国で唯一価値があるというのは解りました」



「実に興味深い」

「だろう」

「では」

「うむ」

「興味深いことをもう一つ聞いてみよう」

「ん?」



一時間前の同時刻


日本列島。

政権与党最大政党、幹事長私邸。



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