子(娘)連れドラゴン/横山光輝先生記念
登場人物&設定
※必要のない方は読み飛ばしてください
※すでに描写されている範囲で簡単に記述します
※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします
一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。
次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。
以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。
(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)
【登場人物/三人称】
地球側呼称《三尉/マメシバ/ハナコ》
現地側呼称《マメシバ卿》
?歳/女性
:陸上自衛隊三尉。国際連合軍独立教導旅団副官。キラキラネームの本名をかたくなに拒み「ハナコ」を自称している。上官の元カノが勝手に「マメシバ」とあだ名をつけて呼んでいる。「恋する気持ちは地球よりも重い」と真面目に断定できる恋愛至上主義者。
地球側呼称《元カノ/団長/だんちょー/一尉/一尉殿》
現地側呼称《青龍の女将軍/団長/主》
?歳/女性
:国際連合軍大尉/陸上自衛隊一尉。国際連合軍独立教導旅団団長。『俺』の元カノ。ドワーフやエルフに異世界人他と地球人類が同じ戦列を組む、初の多世界複合部隊「黒旗団」指揮官。
【用語】
『シスターズ』:エルフっ子、お嬢、魔女っ子の血縁がない三姉妹をひとまとめにした呼称。
『Colorful』:ハーフエルフの最高級愛玩奴隷たち。髪の色がいろいろなために神父により命名。一人一人の名前も髪の色に合わせて白・朱・翠・蒼・橙と主人公に名づけられた。前領主(帝国太守)が奴隷商人に発注し、引渡し前に戦争開始。占領軍の太守資産接収に伴い軍政司令官に引き渡された。軍属として雇用契約を結んでいるので日本の労働法が適用される。
『ハーフエルフ』:エルフと人間の間に生まれた混血種族。エルフに似た美しい容姿と不老、不妊、それ以外は人並みの種族。異世界全体として迫害される。
ふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっ・・・・・・・・・・。
軍師マメシバ。
八門遁甲の陣、ごろうじろ!!
「マメシバ卿?」
シッ!
見ちゃいけません!!
ちゃんと、皆の分も用意してありますから、ね?
※軍師モード以外は「ハナコ」と呼んであげてください。
【太守領中央/太守府壁外門前/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】
俺たちは、放した馬をドワーフ達に一任。徒歩で太守府正門に向かっていた。
先頭が俺。
背後にシスターズ&Colorful。
左右はバイクを降りた佐藤、芝がM-14を構えてあるく。
佐藤の後ろが三佐。
芝の後ろが神父。
進行方向が尖った五角形。
その頂点が俺。
カワサキKLX250(異世界でも活躍中の軍用、もとい、自衛隊用バイク)はドワーフがトラックの荷台に戻した。
一台の重量が装備無し燃料無しでも100kgオーバー。
一人で二台。
マメタンクor一人フォークリフト、ドワーフ。
ただの固太りで小さい(縦横高さ150cm)オッサンじゃない。
力持ちで固太りで小さい(縦横高さ150cm)オッサンだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、ダブルピースされてもな。
軽装甲機動車の操縦席から、マメシバ三尉が上を指差す。
俺を見てる。
上を見た。
軽装甲機動車上部で全周警戒、しながら、すねた顔してる元カノ。
真下の車内運転席で親指を立てるマメシバ三尉。
車両の内外に部下と上官が喧嘩別れ中。
仲いーな、お前ら。
あ、視線があった。
俺をチラチラと見ている元カノ。ふてくされるとか、そっぽを向くとか、舌を出すとか、いろいろやりようは在るだろう。
――――――――――なんか、期待してる目で、ガン見してる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・近所にいそうだよな~~~~
お向かいのポチ。
俺が元カノに親指を立てると、パッと笑顔になる
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・チョロい。
「オマエガナ」
『うわ~~~~~~~~~~フった女を一生縛りつけておくタイプ』
「釣り上げた後、餌も与えず逃がさないZO!」
外野うるさい。
神父とマメシバ三尉が声と電波で大騒ぎ。
元カノは
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・M2重機関銃にもたれてポージングは止めなさい。
ワンアクションで連射出来る銃口を振り回すな!!!!!!!!!!
ドや顔ダブルピースのドワーフもそっくりかえる。
お前ら、ほんとーに、仲いーな!!!!!!!!!!
ダブルピース以外のドワーフ達が操るトラックは、さらに後ろにいるHMMWVのまた後ろ。
軽装甲機動車を先頭にした車両隊列は、俺たち五角形の後ろをゆっくりすすんでいる。街道をはみ出すと、平伏している農民達を踏んづけてしまうからな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さっさと、どいてくんないかな。
【太守領中央/太守府東街道/青龍の騎士団本陣/青龍の貴族の後ろ】
あたしたちは、五角形の中に包まれた。
Colorfulたちを、安全な土竜から降ろした青龍の貴族。あたし、あの娘、妹分はColorfulの皆を任された。
あたしが全体に目を配り、あの娘と妹分が一人一人に目配せ。Colorfulは皆、必死に二人を見てしまう。
拙いわね。
これじゃあColorfulが奴隷のように見えてしまうわ。
奴隷なんだけど。
でも、Colorfulが奴隷のように見えることを、持ち主である青龍の貴族が望んでいない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・妹分が、身振りでダメ出し。
舞台監督みたい。
あの娘がアワアワして、青龍の貴族、その背中を見る。Colorfulもその視線に続き
・・・・・・・・・・・・・・・表情がほころんだ。
妹分が頷いて笑顔を見せると、Colorfulも笑い出す。
妹たち二人、そして二人が常に気を向ける青龍の貴族。Colorfulは皆、彼女たちの我が君、青龍の貴族だけを見ている。
――――――――――他の全てを忘れるほどに。
Colorfulたちが笑顔を見せ、あの娘も妹分も安心して笑い出した。
【太守領中央/太守府壁外門前/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】
笑い声。
子供は元気だな~。
俺は馴れない乗馬でヘロヘロだ。
なのに何故、子供らが徒歩かって話だよ。この子達を歩かせて、俺だけHMMWVとはいかない。軽装甲機動車は日本車とは思えないほど乗り心地が悪いからヤダ
・・・・・・・・・・・・・・ではなく、車がつかえない理由。
まあ、馬の数が全員分無かったからだ。
馬は四頭。
シスターズ&Colorfulは8名。
別に調達したら、時間がかかる。時間がたてば、ギャラリーが居なくなる。街道両サイドを埋め尽くす農村の皆々様。城壁上や門扉が開いた正門内部から覗いている太守府市民の方々。
いや、さっさと帰って欲しいけれど。
だが、その前にColorfulたちを見てもらう。
――――――――――目に焼き付けさせねばならない。
だが、見せ物を、見せ物と見せてはいけない。
・・・・・・・・・・・・・・・っていうのがマメシバ三尉の見立て。
ややこしいな?
おい!
ならば見やすいように馬上、つまり高い所に置きたいが、無理だった。だったら別な高い場所、車両の上に置きたい。元カノみたいに睥睨しろとは言わないがHMMWVの上で、ジュースでも飲みながらくつろいでいてもらえば奴隷には見えまい。
だが、車両は現地住民にウケが悪い。
大きさに音、排気ガスとガソリンの臭いが災いして、視線を逸らされてしまう。
主役はColorful。
印象に残るのもColorful。
それができなきゃ、作戦は失敗だ。
――――――――――つまりは、御披露目、示威行進、軍事パレード。
ゆったりと、止まらず、見た者すべてによくわかるように。
あくまでも、見せるのではなくて見かけさせること。
客ではなく、物ではなく、俺たちの一部として。
マメシバ三尉が言い出すまですっかり忘れていた。
Colorfulが
――――――――――――――――――――――――――――――ハーフエルフだと。
時々、なぜColorfulたちがいつも一緒なのかも、忘れる。いや、健忘症じゃないよ?うちの部隊はなぜだか子供連れだからね。
軍隊改め自衛隊改め国連軍の戦闘部隊に、子供がたくさんあふれてる。
既に違和感がないのだよ。
いや、ダメ出しは解るけれど。
でまあ、常に響く高い声、時々、元カノと角突き合わせる唸り声、視線を向けるとへにゃりと笑顔が帰ってくる。
シズターズがいてColorfulがいて、この子たちが隊の中央にいるのは非戦闘員だから。
そんな日常は心地よい。
以外に俺は子供好きだったのか、単に、この子達が行儀がいいからか。
ともあれ、子供が視界に入る生活は、日本では普通の事。限界集落でもなく、都市部に住んでいた俺にとって他に意味がない。
――――――――――――――――――――――――――――――と勘違い。
シスターズならば、とくにエルフっ子やエルフっ子とセットなら、手の届く範囲に居れば問題ない。だが、Colorfulは違う。
一瞬として俺たちの視界から消えることは許されない。
この子らは年頃の女の子。
―――――――――なーにが、子、だ!歳を考えろ!被選挙権を持ったら、子、じゃねーよ!とまあ、どやしつけたくなる、なんちゃって女の子、じゃない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いかん、殺意を感じる。
俺が死せると自由も滅ぶ。
ご自愛しよう。
そんな訳で話を逸らすと、Colorfulは常に俺かマメシバ三尉、国連軍兵士の目が届く場所にいる。どうしても見てはいけない時は、シスターズの協力でカバー。
俺がそう命じているからだが。
まあ、常に見られる生活な訳で。それがプライバシーが必要な年ごろの子供たちに、Colorfulに、ストレスをためるとは承知の上だ。
なのになんでと、ふと思う。
俺が、ちょくちょく忘れるからだ。
だから、背後に続く少女たち、に首を傾げる俺がいる。見かけるってレベルじゃなくて、一緒に暮らしている。出歩けば小中高一環教育の女子校の引率状態。暮らしてるってレベルじゃない。
騒がしくないのが何よりです。
十代少女の声は脳に刺さる。
――――――――――だが思い出せば、片時も手離せないColorfulの現実は、俺の胃にクル。
ハーフエルフのColorfulたち。
彼女たちの世界で、常に危険の中にある。命と尊厳は彼女たちからみて、異世界、俺たち地球人の領域にしか、ない。
【太守領中央/太守府東街道/青龍の騎士団本陣/青龍の貴族の後ろ】
あたしは周りに目を配った。危険だとは思わない。
平伏する農民たち
――――――――――――――――――――もう大丈夫。
恐怖が畏怖に変わっていく。伏せたまま、青龍の貴族、その気配を追う。動けない姿勢で固まっている。誰に何の意図があったとしても、すぐに動かせやしない。
城壁上と正門から覗く市民たち
――――――――――――――――――――静かな興奮。
なにもわかって、ない。わからないから、動けない。問題は解決したと、信じ込んでいる。なら、衝動にもかられないわね。
どちらにせよ動かすには相当な手間がかかり、衛兵でも制圧できるでしょう。そしてギラギラとした目で衛兵や私兵を差配する若い参事。
参事会は市民や農民を斬ることに何のためらいもない。
なら、彼ら自身は?
衛兵と私兵。
彼らはこの場にいる、青龍以外で唯一の戦力。
武器をむき出しにして街道両脇を固める衛兵
――――――――――――――――――――――――――――――馴れない任務で緊張中。
他のことなんか、考えられない。買収、脅迫、扇動・・・・・・・衛兵の誰かが動くとしても、全部を操るのは無理。衛兵のまとまりのなさが幸いね。
あたしたち、青龍の隊列に一番近い、この場では一番腕利きの私兵たち。
――――――――――――――――――――――――――――――五大家に別れて、互いに牽制しあっているわね。
私兵は五大家が抱える戦士たち。一人二人、家単位で企んでも、他の家と私兵が潰すから問題なし。
ここに、一番内側に集められているのは、家々でも古くから使える腕利きばかり。その私兵たち主である参事会と参事たちは、私兵の指揮をとっている。事があれば青龍の騎士たちは味方以外を皆殺し。
一番近くにいる五大家当主が真っ先に殺られる。
・・・・・・・・・・若い参事が、当主を一人残らず連れてきた理由、か。
兵力と言えば、さっきから、あたしに手をふる連中。
殺し屋だ。
――――――――――――――――――――――――――――――盗賊ギルドの。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・頭目の仕業ね。
あたしから、青龍の貴族に伝えさせたい、わけか。どんなに離れていても、貴男のお役にたちますよ、って?
恋敵から伝えさせれば、最高に評価が高くなるものね。
あたしがソレに乗るとおもうのかしら?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何も言わない、とは、いかないけれど。
確かに、役にたってるわよ。
今日今朝太守府前に来た、青龍の貴族。
これは偶然。
群集の中に帝国の密偵が紛れ込んでいても、青龍の貴族を想定しないで群集自体の様子を見に来ただけでしょうね。
集まっていた農民たちを調べるための、荒事より潜伏に長けた少人数で間違いない。その程度のことに魔法使いなんか用意できないでしょうから。
偶然を利用して、暗殺を仕掛けてくるかもしれないけれど。即興、少数、専門外
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・青龍の騎士団が出るまでもなく、ギルドの暗殺者が始末する。
その程度なら、出来るわよね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・青龍の貴族、その耳には、入れましょう。
彼がどう感じるのかは、知らないし。
だから、あたしが気になるのは別のこと。
農民の、市民の、衛兵の
――――――――――――――――――――――――――――――Colorfulを見る、その目。
【太守領中央/太守府壁外門前/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】
俺は住民の温度確認を背後のエルフっ子に任せた。現地住民に限らず、顔色を窺うのか苦手なのだよ俺は。もう少し上手ければ立派な失業者に
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いかんいかん。
今は作戦に集中。
Colorfulの笑い声、シスターズの落ち着いた息づかい。
――――――――――――――――――――――――――――――大丈夫だな。
Colorfulが怯えたら作戦中止。
群衆の中、なんぞ、ハーフエルフからすればゾンビに包囲されているようなもの。怖いよね。どーやって笑わせたんだシスターズ。
ハーフエルフである
――――――――――――――――――それだけで、奪われ犯され殺される。
理由?
いろいろ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・思いつく限りの理由とやらが並べられる。
結論からつけた理由、その字面には意味がない。それほどに、ハーフエルフ差別は根深い。
Colorfulが安全に暮らせる時代は
―――――――――――来ない――――――――――――――
千年先に進んでいる、ハズな、俺たちの社会を見れば明らかだ。
出身が○○の奴らは売国奴。
オレたちに逆らうのは、○○人だ。
○○民族だから、オレたちを貶める。
出身地に帰れ!!!!!!!!!!
この国から出ていけ!!!!!!!!!
オレたちに逆らうな!!!!!!!!!!
数の大小はあれど、貧富や貴賤によらずして、落伍者は必ず一定数でるものだ。富豪でありながら、毎日毎月毎年繰り返し繰り返し、差別主義を叫んで大統領選挙に出る奴がいるくらいに。
かくして
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・居場所が無い連中が、他人の居場所を壊して、居なくていい奴らに成り下がる。
異世界でも最低千年は、八つ当たりでリンチにかける奴らは絶滅しまい。
俺たちが証明しているからな。とかく人の世は住みにくい。よって、俺は最終的解決など望まない。奴らを地道に処分するなどたくさんだ。
腐臭にたかるハエ。
触りたくない、見たくない、関わりたくない。
伝染しそうだ。
――――――――――自分が、友人が、奴らになる危険性がない、と、何故言える?
昨日まで親しかった、挨拶していた、見たこともない、相手に
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・憎悪を感じ始めたら?
民族性を揶揄し始めたら??
同類と徒党を組み始めたら???
それに嫌悪ではなく共感を感じてしまったら??
自分じゃなくても構わない。
親しい友人が、ある日そんなことをまくしたて始めたら、どんな顔をすればいい??
憎み、嗤い、怒る。
まるでゾンビ映画のエンディング。
P4隔離が必要だ。
だがしかし、放置するのも体に悪い。イラつきと恐怖が健康に良いわけがない。趣味だけじゃなく、職務上も良くない。
【太守領中央/太守府東街道/青龍の騎士団本陣/青龍の貴族の右】
わたしは安心しました。
Colorfulのみなさんが安心してくれたのも、ご主人様のお陰です。あの広いお背中を見るだけで、十分ですよね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも、胸に抱かれていたかったのは、秘密です。
また、馬にのせて頂ければ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いえいえいえ。
すべてお任せすれば、大丈夫。
『じっと見ていていいんですか~?』
!
マメシバ卿?
【太守領中央/太守府壁外門前/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】
俺には、あるいは、国連軍も、差別の理由には興味がない。
仕組みだけが調べられ、調べ終わった。
だから、調査から対処に移る。
国際連合は、命じた。
あらゆる手段をもって勝利せよ。
国連軍は行う。
邪魔になる前に潰せ。
人類の意思は人類の剣によりあらゆる全てを凪払う。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺は賛成した覚えがないが。
国際連合は気にしていない。
国会は両院の最大多数で議決した。
国際連合決議に従う、と。
俺も日本の一員で、民主主義体制にある。だから、党派に反対する自由はあるが、議会に従う義務もある。だから、俺の意見は聴かれなくとも問題なし、だそうだ。
ざっけんなばーか(小声)。
1939年のベルリンでそれ言えるの?
決まった事に従えって
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、言える?
むしろ、言わないとヤバいが危険?
21世紀が安全だと思った?
――――――――――やだな~。
もちろん、特別職国家公務員たる俺が、議会に逆らう訳がないじゃないですか~。
三佐の目が怖いし。
まあ、考えなくていいよね。目の前の仕事が嫌になるまでは。
かくして私利私欲と議会総会決議が軌跡の一致。
『大尉殿』
マメシバ三尉の合図だ。
作戦のクライマックス。
【太守領中央/太守府東街道/青龍の騎士団本陣/青龍の貴族の後ろ】
振り返った青龍の貴族。
立ち止まる。
そのまま進む、あたしたち。
あたしは彼の背後につき、妹たちは両脇に。
戸惑うColorful。
あの娘の嘆願。
妹分の黙指。
Colorfulはぎこちなく進み、青龍の貴族、その前に、さすがに立ち止まる。
彼は橙の前でかがんだ。
橙はColorfulの中でも一番小柄。
青龍の貴族より、頭二つは低い。
青龍の青い帽子、ベレーを脱がせるなら、青龍の貴族かがまないとならない。
橙はびっくりしたみたいね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・段取りを聴いてないのかしら?
港街で偶然起きたことの再現。
青龍の貴族、その手で、青龍の青を授けられる演出。
(※第46部 「青~単色の世界~」より)
この場所、参事会と農民に市民、その一番大勢が見やすい、ここ。
この時、青龍の貴族が立ち止まり、農民が顔を上げ、市民が顔を乗り出し、参事会の全員が振り返った瞬間。
Colorfulと青龍の貴族に集まる、万を超える視線。
彼女たちがハーフエルフだと知らしめて。
青龍とのつながりを思い知らせる。
橙が帽子を押さえてしまう。
Colorfulは帽子を外したがらない。
エルフと似て非なる耳を、隠したいから。帽子を脱ぐとハーフエルフと判りやすくなるから。青龍に守られていても、蔑まれるから。
特に、耳が短めな橙は嫌だろう。
最初に比べれば、良くなったのにな。
他の誰か、あたしたちか青龍しかいない、と確かめた後は自分から帽子を脱ぐくらいに。
・・・・・・だから辛いのかも。
蔑まれない時間があるから、余計に辛く悲しい。
青龍の貴族が両手の平で、Colorfulの両頬を、優しく包み込む。
・・・・・・・・・・・・・橙はすっかり我を忘れて帽子を押さえていた手を放し
・・・・・・・・・・・・・・・・・我を忘れている。
まるで、世界に二人しかいないみたいね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いーけど。
あたしは軽く視線を走らせる。
近くの農民、Colorfulたちがハーフエルフだって、気がついた。
驚きが伝播する。
でも、蔑みには至らない。
――――――――――まだ――――――――――
青龍の貴族が優しく帽子をとる、その仕草に農民、市民、若い参事と議長以外の参事会、みなが驚愕
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうよね。
知らなければ、そう思うわよね。
青龍の貴族に顔を覗き込まれ、陶然とした橙。
帽子を脱がされ、橙色の髪がおろされ、耳がはっきりと浮かぶ。
『今です』
橙がつま先立ち。
彼の唇に吸い込まれるようぅぅぅにぃぃぃぃぃ――――――――――!!!!!!!!!!




