幕間:言葉は神なりき/The Rule of Law
Wikipedia(日本語版)に格言を記載したあなた。
早め早めの修正を提案します。
「ペン」に報道機関を表すような意味はありません。
報道機関、例えば官公庁の広報組織、例えば報道企業、それらごときモノには、なにがしかの概念を代表したり体現したりすることなどできないと知りなさい。
子どもが本気にしたら困ると思いませんか?
ペンは剣よりも強し。
真に卓越した支配のもと、ならば。
――――――――――――――――――原典
エドワード・ブルワー=リットン作史劇「リシュリューあるいは謀略」より
※「ペン」は命令書へのサインを意味し「権力」の暗喩
ペンは剣よりも強し。
――――――――――――――――――パロディ。
一般的な言い回し。
※「ペン」は文筆活動を意味し「自由な言論」の比喩
真に卓越した支配が完成する、までは剣の方が強いんですね。
――――――――――――――――――揶揄。
※「いつか完成するといいですね」の婉曲表現
「シェークスピアでもトマス・ピンチョンでもいいんです」
英語で書いてる、って以外、共通点ねーぞ。
難読世界一(俺調べ)と英語例文集をどうしろと?
ピンチョンなんか、三佐に借りた1984年(世界の名著)後書きを読むまで存在知らなかったくらい、マイナーだし。
「異世界に、まあ跳んだり移動したり門をくぐり抜けたりですね」
た・だ・い・ま・た・い・け・ん・ち・ゅ・う!
日本列島内居住者地球人みんな味わってるから!
「そんなこんなフィクションはありふれてまして」
なら俺たちみたいなモンか。事実は想像より奇なり。伝承や伝説じゃなくて、100%保証付きの、フィクション
―――――――――SFに在りそうな設定では、ある。
該当作が思いつかんが
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あー、火星と名乗るファンタスティック謎世界に地球人が謎転移する話があったな。
どー読んでも火星じゃない。
時代的に言っても火星じゃない。
あれは異世界って言ってもいい。
俺が許す。
アメリカの作品だっけ?
えらく古い
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70年代くらいの。
「そんな異世界で、日本のサブカルチャーが大ウケ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っていう、お約束」
ん?
「サブカル、わかります?」
メインカルチャーが科学、技術、社会体制にイデオロギー、経済システムに金。
サブってなら、それ以外の全部。
趣味嗜好に関わるすべて。
だろ?
「まあ、それでいいです」
で、俺たちが侵略中みたいな、異世界で日本の?
「小説やらアニメやらが大ヒット!!!!!!!!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「という作品はありふれてまして
――――――――――あくまでもフィクションですって。設定設定。有り得ない、って、みんな思ってますよ」
当たり前だ。
メインカルチャーの興盛に伴って、海外に無いよりましなユーザーを得た日本のソレ
――――――――――だが、それだけだ。
世界経済そのものと化した日本。
その急速な勃興に弾き出された飛沫に過ぎない、サブカルチャー。
役所がクールジャパンなぞと言い出したところが、なによりも雄弁に物語る。
――――――――――はい、終了。
日本が合衆国、西欧と合わせて人類社会のコアになれば、それは陳腐な日常に過ぎない。
異常だから注目される。
平常なら無視される。
世界になるまでは注目されるが、世界になってしまえば空気のようなもの。
たいせつな空気に毎日注目し続けるのは学者かマニアだけ。
――――――――――おーまさにそれか。
ジャパン・パッシング、これ、マイナー歴史用語。
誰か知ってる?
成り上がり特有の自意識過剰で、外国が注目してくれないよ~~~~~!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、騒いだ奴らがいたのだ。
例によって、日本非公共広告、公僕のシモベたるマスコミ各社により。
寒い寒いわ~~~~~~~~~~。
国辱もんだわ~~~~~~~~~~。
ちょ~~~~~~~~~~ク~~~~~~~~~~ル
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・頭にクるわ!!!!!!!!!!
無駄審議会が繰り返され、無駄な広告予算が組まれ、目立つためだけに自衛隊が海外に出張らされた。
その流れは今も、今もって、続いている。
クールジャパンのことじゃないよ?
転移後のお話し。
お話で終わるといいな。
異世界文化交流審議会だとかなんとか。
この前、どっかの省庁が、何についてか知らないが、何かについての有識者を招いて金を配ったとかなんとか。
金の前に配られた官僚の作文に向かって一直線。
え?
そう。
作文=審議会の有識者による自主的かつ熟慮された結論。
異世界に日本の文化を紹介するとかなんとか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・国連決議、覚えてる?
異世界への文化的干渉は厳禁。
違反者は未遂でも平和に対する罪/人道に対する罪。
国際連合軍事法廷で即死刑。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・官僚が国連決議を覚える訳ないか。
見て読まず、聞いて聴かず。
字面を追って、形を覚え、その措置の意味など考えない。
仲間内の内輪ウケ以外、ただファイルしただけで満足。
――――――――――官僚とは、そういうものだ。
「ま、官僚がわいてくる、って事は末期なんですけど」
あー、寒い日本、ね。
マジ止めて。
国策になるって事は、時代に落ちこぼれた証拠だね。
だが、サブカルチャーが普遍性を持たないのは、当たり前ではある。別に日本原産に限った話じゃない。
物語は文化を基盤にしている。
学校制度が無けりゃ学園モノは理解されまい。
結婚制度が無けりゃ、不倫モノは成り立たない。
有力氏族同士の報復というレベルでしか、殺人が問題視されない世界で推理小説が理解されるか?
共通の了解が得られない人たちに、物語が伝わる訳がないのだ。
日本の一大娯楽産業ゲーム界。
RPGがほぼスルーされても、アクションゲームなら海外でも売れる。
――――――――――物語が無いから。
物語があると、異文化に受け入れられない。
あまり。
ハリウッド映画だって同じだろう?
そもそも世界市場に乗り出せたのは、合衆国の勃興が注目を浴びたからだ。
大戦まではデカいだけの中進国。
サイズがデカくて資源があり、人口が多い地域なんかありふれている。
その、一つ。
それが半世紀ほどで超大国、成り上がったんだが、他が落ちぶれたのか。その大躍進(大破局と紙一重)によって、合衆国の端っこ(サブカルチャー)が注目された。
映画と言えばハリウッド!!
ってね。
そして陳腐化以下略
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・天がしたに新しき事なし。
以降のハリウッドは、合衆国映画界は、生き残った。
――――――――――産業として。
世界セールスを狙うのは、バカでも楽しめる、あるいは感性だけで済む作品だ。背景の無いフィールドでひたすらハデなスペクタクル。
例えば超絶宇宙人か大怪獣が来襲。
圧倒的な力を見せつける。
みんなが力を合わせてやっつける。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・三行かよ!!!!!!!!!!
どこぞの宣伝相は、あらゆる宣伝は大衆の最底辺に合わせ無くてはならない!
、と喝破したが、そういうこと。
それこそが普遍性というものだ。
生き残る、ってのはこういうこと、だった。
HOLLYWOODの看板は、な。
俺が知ってる範囲で、まだ、崩れてなかった。
だが、過去形。
いま残ってるか怪しいし。別にすたれたわけじゃない。日本が無くなった世界で地球人類がまだ生きてるか怪しいだけで。
ともあれ歴史はいずこも同じ、文化に普遍性などない。
日本の小説やアニメから物語を取り除いたら、何が残る?
物語の秀逸さにコンテンツの価値を依拠するなら、普遍性は持ち得ない。ローカルミクロミニマム先細りで当たり前。
もっとも、文化の存在理由は普遍化でもあるまいが。いや、むしろアイデンティティを文化の基軸とするならば、普遍化など文化の自殺行為だろう。
だから産業化した後のアレなことアレなこと。
銀行のアナリストが分析し、脚本を削りキャストを替えてスケジュールを整えて、どーでもいいト書きに配給地域に合わせた配役でちり紙一つまで伝票を切って製造されるヒット映画。
ヒットしなければ保険で賄われる、規格生産品。
対象の情動を、計画的に刺激するための、処方箋。
――――――――――まさに、文化だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・その生産システムは、な。
産業というメインカルチャーに生産される製品は、なんと呼ぶべきか?
口汚くならない程度の名称募集中。
「マニアの憎悪がキッツイですね」
マニアゆーな。
だが、日本のサブカルチャーは幸いだろう。文化として衰退できる。滅びる事ができる。名前だけ残り残骸を継ぎ接ぎしたバケモノが見せ物になる。
そんなの考え得る最悪だろ。
「でしょう、か」
門に向かう、道すがら。ゆっくり歩く、俺とマメシバ三尉。例によって、女とするような話じゃない気がする。
「大尉殿は女と話す目的がはっきりしてますからね?」
俺は後ろのシスターズ&Colorful連合を振り返る
――――――――――全員と目が合うって、ナニ!!!!!!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・女と話す目的?
言わせないでください。お願いします。言わないでください。心からお願いします。特にシスターズに。Colorfulにも。
「なるほど、アドレナリンですか」
俺のジェスチャーは通じただろうか?マメシバ三尉は頷いているが。
「如何です?」
お・れ・は!
ご遠慮いたします!!!!!!!!!!
ハイスペックに、こだわりは無いんでね。ローリスク、ローリターンで十分。
可愛らしく横から前に回る仕草が熟練のハンターみたいで、あざといってより、怖いです。
・・・・・・・・・・・・男を手玉に取っていた、ってのは嘘じゃないなこりゃ。
「ナンパの話じゃなく、てー♪」
指差し確認させるマメシバ三尉
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・逆ナンかと思ったぜ。
ってか、ナニを知っているのかな?
キミは?
まさか異世界転移前のあれやこれや
「転移後に変わりました?」
いやいやいやいやいや。自衛官は忙しくなったからね?
遊びまわる時間は最小化したのだよ?
企業活動がほぼ止まったから、世間に暇な若い女性が増えたじゃんか、などと揚げ足をとってはいけない。仕事が忙しい公務員であることが、ステータスになるなんて思いませんでした。
「イーですから、それは。後にしましょう」
後で尋問する気か警務隊かMPか!
だがここは話に乗るべきだ。
載っていればそのうち忘れてくれるかもしれない。多趣味で活動的なマメシバ三尉なら、他のことに手を出しているうちに俺のことが後回しになる可能性は大いに期待できる。
・・・・・・・・・・・寿命まで逃げきれたら勝ち。
「まずは御覧ください♪上官サマ♪」
で、まあ、マメシバ三尉に指し示された、その先は
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・食い入るように、じゃなくて、喰い入って手元のビラを読みふけるおっさん。
まあ、異世界の農民たちだ。ビラは国際連合からのお知らせ、免税措置の布告解説。
そりゃ喰い付くわ。
俺が太守府に帰還する前に、役人と坊さんがこしらえた力作。
俺は知らなかったが、Colorfulもチェックしていたらしい。
語感や言い回しを確認する作業、基本的に軍属Colorfulたちのお仕事。軍事参謀委員会からも、他の占領地で使われる様々な文章が回ってくる。
国際連合、いや、異世界で戦争している国際連合軍が備えて使うすべての異世界向け文書。実際に使われるもの、使われる予定なもの、想定事例として一応作られているもの。
Colorfulチェックをするために。
「謎はすべて解けました!」
何の?
「謎カルチャーがファンタスティック世界でウケる理由!!!!!!!!!!もちろん、異世界のみなさんに与えたら、ですが」
メイン/サブ問わず、地球文化の流出は禁止。
地球人類は、異世界の文化に干渉してはならない。禁を犯そうと考えたら、死刑。平和と人道に対する罪。対異世界戦争全力遂行中の国際連合が、方針を変える訳がない。
言語解析の為に異世界のフィクションは大量に収集されている。が、逆は無い。相互理解などハナから想定外だからな。
異世界言語解析は、魔法翻訳の失効対策だ。
「わけわかんないですものね」
まったくだ。地球人は異世界の言葉が判る。読む聴く話す。
「誰の何の意図か知りません。でも、異世界の魔法使いたちすら知らない力で、異世界人は地球人の言葉が判る
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・読める」
つまり――――――――――ザワザワするな。
「地球の言語、だけ、読める」
――――――――――文盲率!!!!!!!!!!
異世界の識字率は10%に満たない。地球の中世欧州では、宗教が識字率を支えた。それでも、識字率は5%以下だろう。
在る程度の単語が判る、を数に入れればマシにはなるが意味がない。あくまでも、現代の基礎学校教育を受け終えたレベルを基準にした場合。
自分が考え感じたことを、文、文章に書ける
――――――――――転移前の地球世界においてさえ、少数派なのに。
「異世界の皆さんは、既に識字率100%!」
魔法翻訳は、地球人の言語を、すべての異世界人に伝える。
「文盲って漢字、良くつくりましたよね?そう!目が見えなかったんですよ!
異世界の皆さんは!!!!!!!!!!」
つまりそれゆえしかりして
――――――――――「光あれ」――――――――――
異世界の識字率が驚異的に高いのは、帝国の世界征服のせいだ。
ユーラシア大陸に等しい世界を席捲せんとする巨大な版図。
それを覆う支配。
即ち、命令。
魔法、飛竜、馬が運ぶのは?
――――――――――文だ。
文字であり文章だ。
帝国を築いた騎竜民族、それに合流した大陸中原の知識階級
――――――――――魔法使い、たち。
彼らが生み出した帝国、すなわち大陸、公用語。
征服戦争で既存の支配階級が没落した大陸諸国、いや、旧諸国。
帝国の征服に抗った為に根絶された貴種、王族貴族たち。それゆえに、他の有力者たち、富商豪農知識人、すべてに開かれた
――――――――――――――――――――権力への道。
皆が垂涎とする道をたどるために必要な、ガラスの靴。
――――――――――――――――――――帝国公用語の習得。
それだけではない。
初めて生まれた大陸市場、統一された世界。
一つの支配者、一つの法律、一つの通貨。
――――――――――――――――――――莫大な富。
各地で、それこそ村から出たことがないような人々を分断していた、言葉の壁。
それを超越した世界へのアクセス権。
見ず知らずの陸の果て。
品物を受け渡し、代金を払い、代金を受け取る。
それを保証するのは
――――――――――――――――――――帝国。
帝国の庇護が無くては、契約は成り立たない。庇護を得る為には、帝国官吏に契約の内容を理解させなくてはならない
――――――――――――――――――――帝国公用語で。
かくして、帝国の、帝国に支配された地域全体で、帝国公用語を必死になって学ぶ人々。
もちろん、言語の習得には、向き不向きと大変な苦労があるが。
多少なりと金があり、知識の下地があるならば、これほど割の良い投資はない。
――――――――――――――――――――今まで、魔法翻訳は無かったのだから。
そして、日本列島の出現。
すべてのルールがリセットされた。
だから、異世界の特権階級は、気がつかない。
もう既に、眼が開いた事に。
この世界の誰もが、生まれつき、文字が読める。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ようになった。
彼らは、自分たちの土地で書かれている文字は、読めない。
いや、存在に気がつきさえしない。
これまでも、これからも。
新ルールによる、征服。
最初から、何一つせずに読める文字があるのだ。
誰が好き好んで従来の文字を学ぶ?
自分たちにまったく無関係な、金持ちが使っている文字を?
父祖代々、知らずに不自由が無かった代物。
使われず知られず支障がなかったのならば、そもそも、彼らの文字ではないだろう。
この先、どうなるのか、当たり前に判る。
地球でも同じ事があったから。
――――――――――ラテン語。
欧州文明の祖たるローマの話し言葉。
誰もが当たり前に使えた言葉。
千年を経て、誰もが忘れた。
ローマの継承者たる自負をもつ誰もが、その文化を賛美し懐かしみながら、言葉を失った。
故に彼らは、ローマ人ではなくなった。
異世界でも同じこと。
異世界固有の言語から、文字が消える。
最初からなかったことになる。
そして誰もが、日本語を使う。
侵略者が一番多用する言語である。だから、異世界の人々が一番目にしやすい。目にしたら最期、彼らは気がつく。
読める、と。
それ以外に理由はない。
些細な、くだらぬ、偶然で、人の中身が塗り替えられる。
文字を読めない、9割以上の頭の中身が、切り替えられた。
一方的に。
俺たちは、少なくとも日本にいる地球人は、読み書きができる。できるようにするシステムが整えられている。
異世界の文字が解っても、それは日本語への置き換えに過ぎない。置き換えるべきものがない、彼らとは違って。
彼らは、いずれ、日本語で物思う日が来るのか?
そんなことが、あっていいのか?
あるいは
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そのように、手順が進んでいる、のかもしれない。
マメシバ三尉は嬉々として語り続けた。
生まれつき全盲で、ある時、突然、見えたら
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・感情を揺さぶられるに違いない。
初めて触れる物語。
見て、聴いて、今その時以外の、別世界。
一瞬の今しかなかった彼らに、悠久の過去と未来、無辺の果てなき世界が、何一つ失わずに与えられてしまったら。
それが例えば、納税通知書であっても。
「だから、本来あり得ない地球文化の異世界普及、ってことがあり得るんです!!
いわゆるライトノベルやアニメで描かれていた、
現代と似ても似つかぬファンタジー世界で日本のサブカルが大人気!!
っていうのはこういうことだったんですよ!!!!」
なるほど。
異世界は既に滅びていたのか。




