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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第三章「掃討戦/文化大虐殺」

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132/1003

始業/In time

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします


一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。

次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。

以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。

(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)


【登場人物/三人称】


地球側呼称《神父》

現地側呼称《道化》

?歳/男性

:合衆国海兵隊少尉。国連軍軍政監察官。カトリック神父。解放の神学を奉じる。アフリカ系アメリカ人。



地球側呼称《坊さん/係長》

現地側呼称《僧侶》

?歳/男性

:国際連合出向中地方公務員。得度した僧侶。浄土真宗らしい。軍政司令部文官。


【ゲスト】


『ちぬーくさん』:CH-47輸送ヘリの各種バージョン一般。異世界の住民からは「飛竜」と認識されているが、外部スピーカーで呼びかける現場に居合わせた住民は「チヌークがしゃべっている」と解釈し「飛龍」と認識している。


『龍』:基本的に巨大爬虫類の外観を持ち、「炎を吐く」など特殊な能力を付け加えている異世界生物が「竜」。中でも人語を操り高い知性を持つといわれるモノを異世界では「龍」と呼んでいる。



人は奴隷にされたとき、奴隷頭になりたがる。




【太守領中央/太守府壁外門前/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】


かくして、まもなく、午前9時。


国際連合軍、勤務時間開始。

9時から17時まで。拘束時間が8時間。当たり前の、8時間労働。

まあ、文官は、だけどね。


特別職国家公務員は、労働者の権利が制限されているのだ。

勤務時間が終わったから、戦場から引き上げる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・出来たらいいな。



兵隊さんは月月火水木金金

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・非人道的なお仕事です。


もちろん、基本勤務は拘束8時間労働。

待機任務中も拘束時間とみなされ手当てがつくが。


給料増えなくていーよ。

時間が欲しい。

人生を換金するなんて、あり得ないよね。



現地のみなさんと対面中、あまり、時計を気にしちゃいけないんだが。

さておき始業まで

――――――――――あと、少し。




【太守領中央/太守府東街道/青龍の騎士団本陣/馬上/青龍の貴族の乗騎前/エルフっ子に抱かれて】


ご領主様は呆れた様子。

頬が心持ち動かれたので、間違いありません。


わたくしは、思わず睨んでしまいます

――――――――――お父様を。



一週間程の間を与えられながら、為すこともなく漫然と過ごす。農民達が街を囲むに任せて、手に負えなくなってから、ご領主様にすがる。


一触即発な農民たちと市民たち。


今日まで保ったのは、両方、ご領主様のお帰りを待っていたから

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何を、期待してるのかしら?


――――――――――なんてみっともないのかしら!!!!!!!!!!



このまま、暴動?鎮圧?皆殺し?


あの娘が悲しむじゃない!

だいたい、我が家は太守府が王都になる前からの老舗。

太守府は庭のようなモノ。


庭の前をカラスに荒らされて、見てるだけなんて軟弱な!!!!!!!!!!



ご領主様みたいに気が付く前に踏み潰す、なんて、期待はしませんけど。

でも、村人は五月雨式に集まった、のよね。なら、個々に話をつけて追い返しても良かったじゃない。こんなに大勢集まる前に、防げば良かったですのに。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、問題が起きてから、の方が、手柄とわかりやすいけれど。



目の前で山と積まれた荷物を、お片付け。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ううん、違うわ

――――――――――それは邪道。



わたくしなら、どうするかしら?

メイドが一人で苦労して片付けをしていたら。


別なメイドを呼び、終わったら二人をねぎらって、メイド頭に確認させるわね。

苦労するほどに、役目が滞っていたのは何故か。


普段からこまめに片付けを出来なかった、のかしら?

任された役目が能力を超えていた、のかしら?

不測の事で対処出来なかった、のかしら?


怠惰。

無能。

不運。


いずれにしても、メイド頭には暇をだすけれど。



怠惰を放置した無能。

無能を矯正しない怠惰。

不運を補強しない愚劣。


主人を煩わすなんて、有り得ない。



――――――――――わたくしが、ご領主様を煩わせるなんて、有り得ない。


見えないところでお好みを把握して、お見せするまでに整え終える。

それこそ、お仕えする、わたしの目指すところ。

あら?これは商いの基本かしら。


まあ、見えようが見えまいが、同じことよね。目立たなくても、ご領主様は見ていらっしゃる。例え隠しても、暴かれますわ。


さり気なく、お役にたち、暴かれるなんて

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいわ♪


――――――――――いえいえいえいえ。

そうじゃないわよ、はしたない・・・・狙うのは。



ご領主様は、何もおっしゃらない。

でも、意を汲む、わたくしを、きっと愛でていただける。

お父様が太守府を、さりげなく、守って見せれば

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わたくしも、いっぱい撫でていただけるわ。


あの娘よりいっぱい、責められる。

少しでも永く頑張れば、ご領主様もお悦び

――――――――――はともかく。



わたくしの実家も、わたくしはともかく、ご領主様の覚えが良くなりますのに。

――――――――――――――――――――――――――――――わたくしは大丈夫。

お役に立たなくても、ご領主様は手放したりなさらないし。それはそれとして、褒めてはいただきたいだけで。


つまり、その、わたくしは、ご領主様だけがお喜びになればいい。

とまでは割り切りません。


あの娘、ねえ様、あとはお父様。

わたくしの家が、ご領主様のお役に立てば、お父様にとっても良いことがあるわ。

きっと。



なのに、お父様ったら、何もされずに傍観したままなんて!

まったく

――――――――――――――――――――――――――――――へん、だわ。


お父様らしくないわ??

商いならば、わたくしごときに気遣われるような、雑魚じゃありませんのに。ここ半月位、どこかおかしいわ。

お身体、は大丈夫、よね。


何か、他の大事に気をとられていらっしゃる。

今も

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ご領主様を、睨んでるのは、なぜ?




【太守領中央/太守府壁外門前/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】


お、時間だ。


俺は時計を見る。

重要な事は、時間だ。


そう!


労働基準法にのっとった労働時間。

忙しいから時間外労働して

――――――――――――――――――――――――――――――有り得ない。


俺は犯罪者じゃない。


会社は仕事が忙しい。

だから、どうした。

雇用主、法人か私人か知らんが、俺たち被雇用者が、なんで貴様の都合などおもんばかる?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、もんである。



最大限好意的に返せば、大変だね頑張って、かな。

俺は頑張らないけどね。


別に協定を結ばない限り、一分一秒でも働いてはならない。

働かなくていい、ではない。

犯罪に荷担したくないなら、働いてはいけない。


それは善良な市民の義務。

崇高な使命。

大切な責任だ。



残業が認められるのは、予測し得ない業務の増加に対する一時的な措置、だけ。

今日は、明日は、明後日は忙しい、から、残業しろ?


予測出来てるからアウト!


もし勤め先に労働組合が無ければ、踊っていい。

協定がないから、まったくもって、残業は出来ない。


ハラショー!


残業が無くなったら、仕事が終わらない?


ちっちっちっ。

労働法の主旨はこうだ。



予測される業務に労働力が足りないならば、人を雇いなさい。



法は社会の為にある。

法が雇用を増やし、労働を減らし、我ら同胞の福利向上を目指す。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・不思議なところがある?どこどこ??



もちろん、そんな事をしていたら、人件費コストがあがり、企業が成り立たない/競争に負ける――――――――――――――――――――――――――――――で?だから?



法の目的は、明快だ。

たかだか、私企業如きの都合など、考慮に値しない。


我らが同朋を、奴隷にしなくては維持できない企業?

おお!!

敵だ!!!

Public enemy!!!!

内憂死すべし!!!!!

諸君!祖国の敵がそこにいるぞ!!!断じて倒産させなくてはならない!!!!国民の崇高なる義務として!!!!!!



公正な条件で運営に足る利益を上げられない企業は、潰れなくてはならない。



そもそも設立するな。

それが資本主義なのだから。


それが嫌なら、共産主義国にでも行け。


破産も廃業も、労働組合も労働基準法もない、ノルマ強制と成果捏造!!!!!!!!!!

理想の為に犠牲上等!!!!!!!!!!

昇給もストライキもない!!!!!!!!!!

ブラック企業のパラダイス!!!!!!!!!!


起業家のみんな!!!!!!!!!!

イデオロギー的同志と握手!!!!!!!!!!



さて、正しい労働に思いをはせたところで、始業時間だ。

異世界に誇るホワイト法人、国際連合の力を御覧じろ。


御覧じろ。




ごろうじろ?




ごらんあれ?



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?



まだかな?

そろそろだよね?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9時じゃねーか!!!!!!!!!!




【太守領中央/太守府東街道/青龍の騎士団本陣/馬上/青龍の貴族の乗騎前】


あたしは父親をどやしつけにこうとする妹分を止めながら、青龍の貴族を見る。


(ねえ様!お父様ならお役にたてますわ!わたくしの将来、わたくしの子供たちの未来がかかっていると、わかっていただければ、ぜったい!!!!!!!!!!)


ぜったい、ダメ。

貴女のお父様、今、この邦で一番、畏れ知らずになってるから。


(ねえ様の子供にも関わりますのよ?)


あたし?

と・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・の、子供。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!


その、あの、あれ、あたし、たちの子供たちの為にも、今は、抑えなさい!!!!!!!!!!




【太守領中央/太守府壁外門前/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】


「Head down!Head down!Head banging!!ズガタカーイタカーイ?」


なんでHead bangingだ?

コンサートじゃねーぞ。



騒ぐ神父。

困る俺。



あれ~~~~~~~~~~9時5分だよ~~~~~~~~~~??????????


社会人は時間厳守。

時間を守らせるのは職場管理責任者の仕事。


チッ!俺かよ!!


出勤時間を守るように指導し、退勤時間になったら速やかに退出させる。例えドMが嫌がろーが泣こーが追い出す。

勤務時間中に終わるよう、任務量を調整するのも俺(管理職)の任務。



めんどくさー!!!!!!!!!!

辞職しても良いですかダメですかそうですか三佐。


五分前に仕事の準備に入る待機に入る。

五分前に退勤処理の待機に入る。

定時出勤定時退社、基本だよ基本。


初めての就労後3ヶ月以内なら、習得期間だから待機時間は大目にみてもいい。

うちの職場にそんなピュアな奴は

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


『閣下』


お?


『9時から業務開始、ですよ』


おう?


『業務の下準備は、趣味ではなく、業務の一貫です』


あ!


『軍政執務室(太守府王城王の間)からヘリポートに出発するのが9時なら』


皆まで言うな。

勘違いしてた。

俺は、坊さんに、謝罪した。


・・・・・・・・・ていうか、ヘリ使うんだ?


そう。

業務に必要な、職場内で移動。それは当然業務である。趣味なわけがない。当たり前すぎるが、業務は業務の時間中に行わなくてはならない。


大きなお城のど真ん中。

そこが軍政部隊の職場。

そこが出勤場所ね。


皆が出勤し、王城中枢からヘリポート(に指定した王城内の前太守の竜発着場所)まで移動するのに何分かかるのか?


移動に10分、離陸に10分、かそこら。


「HAI!eye close!みんな目~閉じて~!センセ怒らないから正直になりなさい~ワシントンは小学生でCherry blossomをキメて」


正体不明の神父MCで、何分持つかな?

小学生がカクテルを飲むのはどうなのか?


・・・・・・・・・・シスターズはマネしちゃいけません。


そろそろ群集が顔を上げ始めて、ざわめきが。

さすがに不条理トークの限界か?

間に合わない???????


『今朝はヘリポート出勤です』




【太守領中央/太守府東街道/青龍の騎士団本陣/馬上/青龍の貴族の乗騎前】


あたしは直上から迫る音を聴き、妹分を外套に隠した。

青龍の貴族は最初から、あの娘を隠しているけれど、更に隠した。


青龍の貴族と、あの娘。

あたしと妹分。

青龍の公女、青龍の女将軍は、馬を飛び降りた。

馬の尻を叩き走り去らせる。



――――――――――轟音!!!!!!!!!!



叩きつけられる翼風。

土、草、小石が巻き上げられる。

地に伏していた群集は、自らの頭を抑え、地面にしがみつく。


ちぬーくさん、と、その仲間。


青龍の使役する飛龍。頭を掠めるかのような、低空に羽ばたきながらとどまる。


『全員、傾注!!!!!!!!!!』


殴りつけられるような翼風と翼音。轟音を切り裂く龍の声。上空から轟音を圧して皆の耳に突き刺さる。


『拾い見ろ』


一際甲高い音が全員を圧して、ちぬーくさんたちは空に舞い上がった。

バサバサと音をたて、風に舞う白い羽

――――――――――――――――――――――――――――――羽毛?ちぬーくさん、龍に、羽毛?


大隼、じゃなかったわよね????


ばさばさと舞い落ちる白い――――――――――――――――――――

布?


四角い

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・か、み?


やたらと白く、輝く、薄い、紙かしら?

が太守府城門まえ、群集の上を、くまなく覆い尽くして降り注いだ。



あたしは、うち、一枚を中空から摘み取る。




頭に触れるかと思わせる中空から、豆粒のような高みへ。

龍の威圧から解き放たれた群集。

皆が慌てて、白い紙を拾い集め始めた。




【太守領中央/太守府壁外門前/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】


俺は紙を視界に掠めさせた。

別に拾う事もない、のだが、胸元の魔女っ子が目で追っている。

中空の紙を掴み取って、見せた。


「あ、ありがとうございます

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・本年度納税免除のお知らせ」


抱きかかえられたまま、慌てて礼を言う魔女っ子。


「あふぃやぁ」


おなじみな撫で撫で。髪が乱れるからか、もじもじしてるが。


「ご領主様」


お嬢が抱きついてきた。俺を見上げ頭を突き出した

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、うん。

俺は前線にはあるまじき事に、魔女っ子とお嬢、二人を同時に撫でるという謎な状況。


あーあるある。

うちの実家の猫がね?


同時に撫でないと爪をたててくるんだ。


まあ、シスターズは

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、はい。




【太守領中央/太守府東街道/青龍の騎士団本陣/馬上/青龍の貴族の乗騎前】


違うわよ!!!!!!!!!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも、言ってあげない。


あたしは青龍の貴族に、髪を梳かれるに任せていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・恥ずかしい、けど、気持ちいい。

決して、おねだりしたわけじゃ、ないのに。


ただ、なぜか、あたしが側に行くと、青龍の貴族は、あの娘と妹分に頷いた。

二人は訳知り顔で、少し、離れる、と、あたしを背中から押した!!!!!!!!!!



――――――――――だから、抱きしめて、もらう形になったのだけど。



「~~~~~~~~~~ぐるるるるる!」


青龍の女将軍が、青龍の貴族に背中をあわせて威嚇してくる。青龍の騎士二人だけでは、警戒に足りないと思っているのだろう。手が離せないから、吠えて威嚇。

だから、邪魔が入る前に、愉しませてもらうわ。


でも、てれるから、事の顛末を訊いてみた。


「予定通りなの?」


!!!!!

あたしが顔をあげたら、予定外に青龍の貴族が、近かった。


「ある意味でな」


とっさに、手に力を込めながら、顔を逸らしてしまう。


「命じていたんでしょう?」

「いや」


・・・・・・・・・・・・・・・え?


ちぬーくさん達を呼び、事前に何万枚もの布告文を筆写して、群集が貴男に注目すると同時に、開始。

不意をつき、全員を同時に威圧して混乱を封じる。


全員に告文をバラまき、皆が、一生懸命、手元の告文だけを読んで理解しようとしている。

群集は個々に答えを、全員が同時に、手に入れた。


もう、誰かと争ったりはしない。

それどころじゃないほど夢中に、告文を読んでいる。

まあ、自分たちの今年一年がかかっている、もしかしたら村の存亡すらかかっているから当たり前ね。


これだけの紙を調達して、これだけの枚数に書かせるのに、どれだけの時間がかかるのかしら。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それが、貴男の仕掛けじゃない、の?

あたしはとっさに振り向き見上げ、彼の唇が見えて、固まってしまう。



「問題を把握出来る時間があったのだから、対処出来るに決まっている」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「俺が何も知らなくとも、部下は太守府に帰還していた」


・・・・・・・・・・・・だから、か。


青龍の貴族が南部の農村を始末している間。

何日も前、先に帰還していた、青龍の部下たち。

青龍の騎士長や、青龍の僧侶、青龍の役人。

太守府にいたかれらが、何が起きているか気がつかないはずがない。気がついて調べないはずがなく、調べて把握できないなんてありえない。


だ・か・ら。


青龍の貴族が命じる必要はない。



対処の準備が整っていない、はずがない。


今朝まで対処しなかったのは、青龍の貴族を待っていたからだろう。この時この場に、青龍の貴族が、立ち会う必要があった。

だから、青龍の騎士団は、準備を整えて待っていた。

青龍の貴族、その帰還を。


準備の終わっている仕掛けをまわして、対処を終わらせるために。




わざわざ、青龍の貴族に、報告するわけがない。

彼はただ帰ってくればいいのだから。

対処できないならともかく、たやすく片付くことに、主を煩わせるなんて考えない。



青龍の貴族は、臣下を知っている。

青龍の騎士団は、主君を知っている。


だから、連絡する必要なんか、ない。確かめる必要も、ない。



あたしは、思わず脱力してしまった。


「「ずるいです!!ねえ様ばっかり」」


違うわよ!

胸元に顔を埋めたのは、その、偶然よ!!!


「なら離れなさいよ!!!!それはあたしの男だ!!!!!!!」


もう周りが見えなくなっている、青龍の女将軍。

まあ、もう安全ではあるけれど。



・・・・・・・・・・・・・あたしは、おびえることにして、顔をもっと埋めた。


心音だけが聞こえ、ざわめきが遠くなる。









――――――――――バカな――――――――――――――――――――

―――――――――――――よめる―――――――――――――――――

―――――――――――――――読めるぞ――――――――――――――

――――――――――――――おまえもか――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――どうなってるんだ?



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