継承者/Super Dreadnoughts Sadist.
登場人物&設定
※必要のない方は読み飛ばしてください
※すでに描写されている範囲で簡単に記述します
※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします
一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。
次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。
以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。
(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)
【登場人物/三人称】
地球側呼称《三佐》
現地側呼称《青龍の公女》
?歳/女性
:陸上自衛隊三佐、国際連合軍事参謀委員会参謀、WHO防疫部隊班長、他いろいろな肩書を持つ。日本の政権与党を支配する幹事長の娘で、父親と連携して戦争指導に暗躍している。
【用語】
『ロナルド・レーガン』:合衆国原子力空母。合衆国第七艦隊所属第5空母打撃群/第70任務部隊。異世界転移後の国際連合海軍の中心戦力。緒戦の上陸作戦、沿岸殲滅作戦の主力。以後、異世界大陸東岸沖合にて遊弋。その性質、完全に孤立して活動できる最強戦力、を見込まれ合衆国大統領や軍事参謀委員会直轄の作戦にもよく使われている・・・・・と国連軍内部ではささやかれている。
※「レーガン」とは「小さな王」という意味
『青龍』:地球人に対する異世界人の呼び名。国際連合旗を見て「青地に白抜きでかたどった《星をのみほす龍の意匠》」と認識されたために生まれた呼称らしい。
『国際連合』:the United Nations/連合国、の超訳。異世界転移後の人類社会の総意を体現する組織。と国会で決まった。加盟国のほぼすべての外交防衛権を委託されている。
黒幕は日本の一衆議院議員であるとマスコミに報道されている。
『国際連合軍』:国連憲章第七章に基づく人類社会の剣と盾。と国連総会で決まった。
黒幕は元在日米大使の現合衆国大統領であるとマスコミに報道されている。
『軍事参謀委員会』:国際連合の参謀本部。
『常任理事国』:合衆国(米)、連合王国(英)、第五共和国(仏)、共和国(露)、統一中華連邦(中台合併)、日本。
『WHO』:World Health Organization/世界保健機関。異世界転移後、国連とともに再建される。組織の主目的は全く変わっていないが、未知の生態系から人類を守るための防疫活動が主任務になった。その必要上、化学戦部隊や生物戦部隊を傘下にもち、除染作戦において国連軍より大きな権限を持つ。
「家電製品、食品加工保存技術、科学の発達は女性を家事から解放しました。誰もが自由に働けるようになったのです」
《とある大学教授の講演会草稿より抜粋》
「家畜から社畜になったんですね」
《とある中学校の講堂内に響いたハナコ(仮名/当時14歳)さんのつぶやき》
「家畜や奴隷は主人に大切に世話されてたじゃないか」
《とある政府審議会委員の大学教授へ官僚が示した結論に無修正賛同したことへの報酬(贈賄)を払う為に設えられた講演会に動員された事務職自衛官によるフォロー(?)》
「あたしはね?持ち主を決められるのよ!!!もう決めてある。あたしはあたしの持ち主を大切にするからね!絶対絶対に約束するからね!!!!!!」
《とある高校二年生女子による最初のプロポーズ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二年生時点に置いては初回であると証言アリ》
【太守領中央/太守府南街道/青龍の騎士団本陣/馬上/青龍の貴族の乗騎斜め後】
(ふゃ・・・・・・・・・ふ・・・ゃ・・・・・・・・・・・・・・・ふ・・・ゅ・・・・・・・・・ふゅ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
――――――――――沈黙――――――――――
あたしは早鐘のような鼓動を気付かれないよう
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・表情を消した。
「こわれちゃいます、わ、わたくしたち」
妹分の妙に平坦な声。あたしたちには、最初から最後まで、斜め後ろから見えていたのだけれど。
――――――――――――――――――――どうしたら、いいのかしら。
あの娘はすでに
――――――――――失神してる?
馬上で疾走中でも、子猫のような悲鳴、というか、声は、聴こえていた。
必死に押し殺していても、ね。
彼、青龍の貴族は、まったく構わずに責める、攻め続ける。
そして。
あの娘は髪を梳かれながら、緩急を付けて徐々に強く抱きしめられ、首筋に指先がふれ
・・・・・・・・・・・・・墜ちちゃう訳よね。
あの娘は、その直前、反射的に、なんでしょうけれど青龍の貴族にしがみついていた。潤んだ目、あれは涙目?で、哀願するように見上げた。
青龍の貴族は、無視。
肌に触れもせずに責められ、指先ひとつでトドメをさす。
完全に手の内に収め、泣いてもすがっても手加減しない。しかも、自分は息も切らせずに、翻弄しながら眺めている。
まるで意識がココにないかのように、他人事のように何かを考えて、一つ一つ確かめながら。
戦も政も女も。
――――――――――いつも通り、すぎる。
【太守領中央/太守府南街道/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】
魔女っ子の顔色を見て、頭が急に凍りつき歯車が噛み合う。俺自身のことながら、空転していた思考が回転して、状況確認から状況判断へと移行するのが感じ取れた。
俺は馬の速度を落とす。すっかりへたばった魔女っ子。
まずい――――――――――乗り物酔いだな。
『マメシバ三尉!バイタルチェック』
なるべく静かに、喉だけで話す。声帯の振動を拾って、通信で伝わる。シスターズやColorfulのバイタルチェックが趣味の三尉なら、呼びかけなくても気がついているだろう。
だが慌てていたので、つい通信してしまった。
そのマメシバ三尉。
「対処」
『え?ここで?』
何を慌ててるか。
『カクテル投与で正常化してエンドレス
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うっわ~~~~~~~~~~
ドS、でも、大尉は大丈夫ですか?』
何が?
そのまま隊列を止めるにふさわしい場所を確認。えーっと、あれか?街道近くで本隊が入る平坦なスペースがあり射界が広く取れて・・・・・・元カノに任せよう。
『イってもイイノヨ』
混ざるな神父!
俺は平気だ。
なにやら
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・熱も冷めた?、気がするしな。
さすがにさっきまで、健全異性交遊について頭を悩ませてないように、作戦を必死で反芻していたとは言えない。
中学生かって話だなまったく。
・・・・・・・・・・・・・・墓場まで持って行かなくてはいけない黒歴史。
悪いものでも食ったかな?
魔女っ子スープで心が洗われたのか。
気絶してる魔女っ子の頭を撫でた。
思い返せばずり落ちそうな、不安定さは感じていた。だが、いつものことだと思い、つかみ直すだけだった。
女っ気から目を逸らすのに夢中で、魔女っ子の体調に気がつかなかったとは
・・・・・・・・うわ、最低。
かく言う俺も子供のころ酔いやすく、ドキュメンタリーの映像、世界各国の鉄道紹介で酔ったくらいだ。列車の窓から流れる風景で、ね?
FPSゲームは指を加えて見てるだけ。
歩兵訓練のシュミレーターを放棄出来てラッキー♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
と内心ニヤリとしていたら、野外演習時間に充てられたのは最悪の思い出だ。
任官配置後もわーざわーざ演習場を天気昼夜を問わずに抑えてくれたのは三佐です。
――――――――――ドSめ。
などと、マメシバチェック待ちの間に考えていたら、エルフっ子まで!!!!!!!!!!
耳がへたばっている!!!!!!!!!!
【太守領中央/太守府南街道/青龍の騎士団本陣/馬上/青龍の貴族の乗騎斜め後】
あたしは眼のやり場に困った。何も知らなければ、あの娘を馬上で抱きしめる、青龍の貴族。
それだけ。
それだけ、なのに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っていうか、なんで馬上!
昨日の昼間だって夜だっていい、ううん、普通はその時よね。
――――――――――際限なく、焦らすため、よね。
やっぱり彼、青龍の貴族は
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いじめる方なの、ね。
いじわるでイジワルで意地悪で
「次はおまえか?」
ゃ!!!!!!!!!!
【太守領中央/太守府南街道/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】
「言うの??????????」
俺が声をかけると、耳がピンと立ち、顔まで真っ赤になったエルフっ子。
どこまでガマン強いのか?
戦場で耐えるな!
死ぬぞ!
大丈夫大丈夫と必死なエルフっ子。
涙目じゃん。
断固停馬拒否なエルフっ子に、俺は馬を寄せた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・仰け反りながら、同じように馬を寄せてくるのは、何故だ?
まずは降りたほうがいいのだが。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうしても?」
「答えろ」
俯くエルフっ子。
――――――――――吐くの?吐くの?
「我慢するな」
お嬢が目を見張る。
俺は水筒を用意。
酔ったら吐く!これは原則。
楽になるぞ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・吐かないね。
我慢しなくて良いんだが。
エルフっ子が不老、ってことは、体は子供、って程じゃなくとも少女なはず。戦闘力は俺より上だが、耐久力はそうでもないんじゃないか?
まあ、乗り物酔いは体の丈夫さとは関係ないが。
俺の視線に気がついた元カノが支える体勢に入る。普段、敵視していても、それはソレ。
大人になったな。
よろしい、よろしい。
「――――――――――さすが、ご領主様」
俺?
【太守領中央/太守府南街道/青龍の騎士団本陣/馬上/青龍の貴族の乗騎横】
あたしが、言わされそうになった瞬間。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――耳の奥、高らかに響く音。
あたしたち、あたしと妹分は飛び上がった。
あの娘は墜ちたまま。
ナニかが近づいてくるコトを物語る、音?不安を伝え、破滅を予告し、絶望を知らしめる。
――――――――――だけど、曲だ。
何を思って奏でられるのか判らないけれど、音楽でありながら、明確な言葉。
あたしたちは、青龍の貴族を見た。
【太守領中央/太守府南街道/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】
着信、あり。
『アリじゃないですよね鳴ってる鳴ってる・・・・・・?女の子のことは任せてい~ですから』
野暮な
『え?』
さすがに戸惑うマメシバ三尉。憐れみの視線を逸らした元カノ。俺の携帯から響く、歴史に残る名作BGM。
そのタイトルが、巨大な人喰い鮫そのものを意味するようになった。
――――――――――と言えば名作たる所以と伝わるだろう。
本当は、大きく開いた口、という意味なのだが。
今流れるメロディーは、タイトルを知らなくても簡単に調べられる古典映画。その映画そのものとさえ言える、この楽曲のメッセージ。
約束された絶望の時。
あらかじめそれを伝えながら、その瞬間をぼかす残酷さ。
――――――――ドSのテーマ――――――――
連隊で、この音が響く。
すると皆、立ち上がりゆっくり散開。
近すぎず、離れすぎない。
独りになりながら、己が携帯を確かめる。確認前に誰かがダッシュしたら、そいつを止める。逃がしてなるか、共に逃げるか。
いや、俺はバイブレーションを設定していたからね?
自分なら判る。
バイブが鳴らなければ全力離脱。
巻き添えはゴメン被る。
バイブが鳴れば自分の番だ。
嫌いな奴らに全力突撃。
巻き添えにしてみせる!!!!!!!!!!
もちろん、自分じゃないフリでダッシュするのも有りだ。
自分は助かりたい奴らが釣れる
――――――――――――――――――――なんの駆け引きか?
って
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう、悲しいかな。
人間は悲しい生き物です。
共通の恐怖を前にしてなおいがみ合い、足を引っ張り、巻き添えにしようとしてしまう。
そんなサガ、テンプレ、ルール。
そんなルールを知るものは、俺しかいない。
つまり、俺が被害者だ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・此処では。
裏切られる希望。
最初から絶望。
――――――――――どちらがマシだろう。
え、早く通話とれ?
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・繋がらない?』
全くもっともだ。
マメシバ三尉の疑問。
上官からの通信は、自動通話。コール後、ほどなく、無操作で通話状態になる。戦闘中に受信着信操作など出来ないからだ。
だがしかし、通信システムは指揮管制権限の中にある。
上位権限で、どのようにも設定可能。
個々の通話を第三者に傍受させたり、自動通話をOFFにしたり。
部下に通話切替を、その意志と決断で、あえてさせたいヤツがいる。
処刑ボタンを、本人に、敢えて直接、押させたい。
余命告知を文にしたためて、見出しを付けて、かざして手渡し開封させる。
妻の浮気を疑う夫を、嬌声が響くラブホの扉の前に、娘息子と親戚一同呼び集め、ドアに鍵がかかっておりません、と大書された看板を釘で打つ。
目の前で。
腹に刀身がしっかりはまってなお、首をはねないドSの鏡。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っていうかマメシバ三尉、上官からの着信って、何故わかった?
いやまて、携帯電話なんか戦場にあるものか。
少なくともここ、異世界を進む軍靴、国際連合旗の下にはない。鳴っているのは部隊通信のコール。ヤツはわざわざ、PtoPで呼び出している。
士官全体でコールを共有してないはずだが。
『いえ、当たり前ですよ』
呆れ声のマメシバ三尉。
世界に当たり前などない!!!!!!!!!!
『さっさと三佐に応えてください。大尉殿』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誤魔化されてくれなかったよ。
ドSよドS、なぜドS。
汝を三佐と呼び給う。
俺はやむを得ず仕方なく、顎下の骨伝導イヤフォンを二回指でつついた。
アレ~オカシイナ~~~ツウワニナラナイゾ~~~~~~~~~~。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見られてますよ』
子供の目を忘れてた。
なに?
コール音をシスターズに聴かせてるだと?
上官権限の無駄遣い。
俺以下、部隊全員の呼び出しに通話機能を自在に操作可能。
まさか、Colorfulたちにも聴かせてないだろうな???????????
この極めて心臓に悪い楽曲を!!!!!!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺の選曲だけどね。
着信音をいつものに変えたのが、裏目に出た。
端末が支給される度に、機種変更をする度に無意識に設定を変えてるから。
いや、まさか、個人的に三佐とアドレスを交換した訳じゃない。
自衛官だからね?
いつでも招集出来るように、私的携帯データを職場に押さえられてるのだよ。もちろん、上官といえど、いや、上官なればこそ、公務以外で連絡して来てはいけない。
――――――――――ことに、なっている、という噂です。
理由め説明もなしに呼び出されたりしてません。
ポストの裏にカードを貼り付けるように命じられたりも、一切記憶にございません。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いかん。
走馬灯が走っているうちに、魔女っ子が回復。
いや、多少、顔が赤く息が荒いか?
だが、伸びてたのが回復したのは良かった良かった。
だが、着信音に怯えて身を寄せている。
しかも涙目。
「お待たせしました三佐」
俺は急いで通話に切り替えた。
「30コールくらいね」
チッ!
日本標準のワンコールは約3秒、合計約90秒、いや、切れよ。
だから電話は嫌いだ。
【太守領中央/太守府南街道/青龍の騎士団本陣/馬上/青龍の貴族の乗騎横】
あたしたちの前で、緊張感に満ちた会話、ううん、駆け引きが続く。
「いきなり舌打ち?」
「埃がひどくて口の中に入ってくるのですよ」
「あら大変」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・周りは草原、木立、道は砂利。
言い訳のフリ。
ものわかりが良いフリ。
「元気そうね」
「先ほどまでは」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・サンサ、青龍の貴族、その上位に立つ、青龍の公女。
たがが上級貴族ではない。
青龍の帝国を統べる宰相の娘、というだけでもない。
宰相たる父、その信任を得て、世界戦争の実務を取り仕切る。
邦を灼く大魔法を操り、龍のみならず大隼、大胡蜂、海龍の王ろなるど、などなど超常の化身を召還使役する。
大陸の邦々を消すのは、サンサに限ったことではないけれど。
彼女が公女たる所以。
――――――――――青龍自身の粛清――――――――――
―――――青龍の生殺与奪を握る絶対者―――――――
なのに、その絶対者に面と向かう、彼、青龍の貴族ときたら――――――――――
「御下命に従い、帰還中です」
――――――――――命令に従ってやってるんだから、失せろ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、言わんばかり。
【太守領中央/太守府南街道/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】
俺は三佐の位置を探りながら、言い訳を連ねた。作成済みの報告書を送信。ツッコまれるタイミングを測り、手元に残していたのだ。
「詳細は後ほど」
三佐が暇ならすぐにチェックする。
暇じゃなけりゃわざわざ通信してこない。
時間を稼いで状況の変化を待つ。
「作戦中につき通信終わります」
なんの、とは言わない。さっさと通信を切った。だが、作戦中の説明は省略上等。一方的通信断も定石だ。シカタナイネー。
もちろん作戦ってのは、三佐出し抜き作戦。後でも何も、言えたもんじゃない。
バレたら怖い?
大丈夫大丈夫。軍政作戦は銃火の無い戦い、が多い。事前申請無しの作戦は、最前線より更に多い。
三佐が戻る前に、さっさと太守府に
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シスターズの体調次第、か。
「で、言い訳は決まった?」
三佐、バカを言わないでください。魔女っ子やエルフっ子の体調次第でスケジュールが決まる。それにあわせて、その場しのぎ通信は間違いなくキレテマスネ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――アレ?
体温が感じる近さに、この匂い・・・・・がしない、という人にあり得ざる、いや、俺の周りでは一人しかいない特徴。
無言にして雄弁な、含み笑いが耳朶を打つ。
やっと気がついたのか、と。
背後から。
五感の一つが潰されているかのような、存在を誤認してしまいそうな、
――――――違和感―――――
「可愛い部下の顔、見たかったのよ、ちょくせつ、ね♪」
―――――その絶望を―――――
【太守領中央/太守府南街道/青龍の騎士団本陣/馬上/青龍の貴族の胸元】
わたしが意識を取り戻すと
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・青龍の公女さま。
あ・・・・・・・・・。
――――――――――また、意識が戻ると、背後から、あの、気配。
ご主人様は深くため息を吐き、わたしを抱き直してくださいます。ご主人様の香りは、わたしを落ち着かせてくださいました。
!!!!!!!!!!!!
やっと、わかりました。
公女さま、サンサさま
――――――――――匂い、が、しない。
青龍の皆さまは、匂い、というか、体臭が薄いので気がつきませんでした。
でも、ない、というのは・・・・・・・・?
やっと、わたしも向きなおれました。わたしに微笑まれる、青龍の公女、サンサさま。何が起こっているのかは、わかりません。
目をつぶり、ゆっくりと、呼吸して
・・・・・・・・・やっぱり、しない。でも、体温が感じられますから、いらっしゃる。
わたしは、ご主人様の首筋、肌に手を当て勇気をもらいました。
そして、瞼を開きます。
とてもはっきりとした、目線。
その眼から、わたしは、震えが来ました。
きっと、どこかで見た、からこそ気がつけたのだと思います。
青龍の公女さま。
青龍の公女さまが、わたしを見る、眼差し。
暖かい、気遣いながら慈しむ、子供を見る眼。それは青龍の方々、不思議な不思議な、上から下まで、騎士から道化、貴族に将軍まで種族全体の特徴。
わたしたちの世界ならば、知人か他人か、値踏みか邪魔か、それだけの目になりますのに。
・・・・・・・・・・・・・・・そんな、得も言われぬ温かさが次の瞬間、消え去ります。
同じ人、同じ瞳、異なる眼。
青龍の公女さまが、ご主人様を見る、眼。
そう、あれは
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わたしの、お父さんの眼と同じ。
殺されてしまった、お父さんの。
いつも暖かい、お父さん。
いつも優しい、お父さん。
困った時も、柔らかく笑う、お父さん。
――――――――――魔法を編む時だけ、異なる、誰か。
わたしを見る眼差しとは違う、まるで、同じお父さんだとは想えない、何も含まない
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・瞳。
何かは解ってはいても、創り方が判らない。
大きな大きな、異質で異常な、常世に在らざるナニカを生み出すために。
作業を進め、素材を見る。
それが
――――――――――魔法使いの眼。




