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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第三章「掃討戦/文化大虐殺」

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122/1003

運命の足音/Checkmate♪

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします


一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。

次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。

以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。

(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)



【登場人物/三人称】


地球側呼称《三佐》

現地側呼称《青龍の公女》

?歳/女性

:陸上自衛隊三佐、国際連合軍事参謀委員会参謀、WHO防疫部隊班長、他いろいろな肩書を持つ。日本の政権与党を支配する幹事長の娘で、父親と連携して戦争指導に暗躍している。


地球側呼称《カタリベ/歴史家》

現地側呼称《青龍の史家》

?歳/女性

:地球側の政治指導者が定めた役割。すべての情報へのアクセスを許可されており、発表を禁止されている代わりにどんな情報も入手可能。軍政部隊に同行しているのはジャーナリスト志望の大学生。


【用語】


『黒旗団』:元カノが率いる国際連合軍独立教導旅団。ドワーフやエルフや獣人に人獣などの異世界人と、地球人類(ASEAN諸国兵大隊)が同じ戦列を組む、初の多世界複合部隊。



「困っている人を助けることに、理由がいるのか」

「当たり前のことを訊かないでね」


銃声。




【太守領中央/太守府南街道/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】


俺たちが出発した街は、現地感覚で太守府から一日行程。だが、それは歩き、での話し。一日、というのも、丸一日24時間じゃない。


中世基準の世界では日没から夜明けまで、身動きしない。いや、出来ない。料理は出来ないし、飲み食いもあまりしない。身支度も家事も息抜きも売るも造るもなにもかも。



――――――――――暗いからだ。


星明かり月明かりを生かしても、焼け石に水。無数の物影、普段の屋内は真っ暗のまま。雲一つで星灯りすらなくなる。

目を慣らしたところでやけいしにみず大差ない。

各種夜間装備は中世にもある。

――――――――――――――――――――ある、だけだが。


松明、蝋燭、その他もろもろ

――――――――――値段が高く、炎は危ない。しかも光量は乏しく光源は不安定。またたく明かりで作業などできはしない。


やむを得ず、仕方なく、断腸の思いで何がしかの灯りを使うときは日常ではない。

戦争か災害か犯罪――――――――――犯罪はない、というのはエルフっ子。



闇は、動く者に危険をもたらす。見知らぬ他人のテリトリーに、忍び入るにも押し込むにも、危険がいっぱいだ。


つまづく。

ぶつかる。

落ちる。

迷う。


昼間の下見など昼夜が変われば役に立たない。


そも、建築技術の限界と建材の節約、個人意識が希薄な中世。

富裕層の一族や街区村々の人々の共同生活の場である建物は大きい。個人住宅や個室と言う発想はあまりない。

担う役割に応じて孤立した場所が与えられるのは、集団の権力者や貴人のみ。



だから建物内を仕切らないかと言うとそんなことはなくて、用途に合わせて仕切る。だが王城や参事会などの特殊な施設でなければ、建物内部に壁はない。


部分部分の用途に応じて場所を仕切るのは家具や荷物だ。

誰かが家具を動かしたら、いや、行李箱を置いたら?


トラップ完成。

迷宮リセット。


それを推して押し入ったり、忍び込んで家人が目を覚ましたら?

敵味方不明の、夜戦装備なしの、陣地戦。


防御側圧倒的有利。



こんなシュチュエーションでの夜襲、夜盗というのは、盗まれる押し込まれる側に内通者がいないと成り立たない。


――――――――――というのは、エルフっ子の受け売り。



いや、内通者がいなくても夜目や耳が効くエルフや獣人、人獣がいれば

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、疑わないから。



失言でした。

その時は、つい思いついたことを言ってしまった。


夜盗に関与するエルフがいても、エルフっ子には関係ないから。



つーか、そもそも、俺たちは侵略者。

国を国土を文化を知識を人間やら異種族やら

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・壊して殺して奪ってなんぼ、だよ?


夜盗殺人鬼テロリスト。


気にしてない、っていうより、国連軍はスカウトしてるくらいだから。

特殊技能付き種族や技能者は、前歴を自白剤で確認した上でなお、スカウト中。


もちろん、元帝国軍兵士も含む。もちろん、国連軍兵士として地球人兵士たちと分け隔て無く活躍中。そう!!!!

いたずらに前歴差別などしないのだよ!!!!!!




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・などと言う話を雑談がてらしたのが昨日。


いや、時間が余ってたからね。


でまあ、エルフっ子が明らかに「エルフが野盗に加わる」事例について気にしている。なのでフォローしたら、別な二人が釣れました。



シスターズの小さい二人が目を輝かせちゃって、まあ。

「さすがです!!!!!!!!!!」


って。

後から考えたら、魔女っ子とお嬢。

生まれたからずっと仲間外れにされ続けた魔法使いにその親友。

この手の「わけ隔てなく」ってワードに食いつくよね?



まずかった。

普段から見慣れているドワーフ達のフリーダムな扱いが、フリーダム過ぎるアレが、国連軍の異人種異民族異種族への基本姿勢だと思ったらしい。


・・・・・・・・・・あれみりゃ、自由気まま、信頼関係MAXに見えるわな。

もちろん違う。



連中は元カノの私兵で国連軍兵士じゃないし。

元カノ個人の家臣団である「黒旗団」に国連軍兵士を付け加えて、「国連軍独立教導旅団:黒旗団」が出来上がる。

団員一人一人を基本放置は黒旗団だけの特別処置。



なら国連軍の、すでに増えつつある異世界人兵士への一般的処置は?


――――――――――異世界義勇兵には、ドッグタグで常時監視してることは秘密。

しかも不定期自白剤投与で築かれる信頼関係!!!

そう。

地球人兵士たちと全く同じ扱い方だ。



わけ隔てなく、完全に、誰もかれも信じていない。



俺たちが、同朋も、外国人も、地球人も異世界人も自分自身も

――――――――――信じる訳がない。



信頼感の最高と最低は、等しく同じ姿をとる。見た目で区別がつかないが、決して同じものじゃありませんから注意。


かくして。

多数の異物がスクリーニングされ、捕虜待遇すら受けられない。

当然のように帝国のスパイが乗り込んできているし、スパイじゃなくても、不適切な善人悪人嘘吐き正直者が次々と回収されている。

三佐がホクホク笑顔さ!!!!!!!!!!




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・子供に言えるか。


捕虜ではないが、地球人兵士と違って処刑もされない。

そんな異世界人がどうなっているのか

――――――――――誰も囁かない。噂にすらならない、ってのは、そういうこと。

お察しだ。



ぜっっっっっったい言わない。


保護者格のエルフっ子にも、そこまでダークサイドの話は言わない。

だから、なにやら、誤解が生じているかもしれない。



だがしかし、安心したまえ!


エルフっ子!!


俺を見ればわかるじゃないか?

そこまでのダークサイドを知らなくとも普通に侵略者、虐殺者、略奪者をコンプリートしているこの姿!!!


・・・・・・・・地味にキツイけど、まあ。



よってエルフっ子!

同族の恥的な話を、気にすることなんかない。

エルフの中にナニをする者が居ようが、俺たちに比べたら、ねえ?


しかもエルフっ子。

長い耳を垂れさせるのは、ね?

ヤバいから。


何が?

って聞かれるって、どんなプレイ??????????


エルフっ子はポーカーフェイスで耳に表れる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・感情が。


それポーカー弱いよね。

言うだけヤボだがそれどころじゃない。



しょんぼりと垂れた長い耳。

ピクピクと動くわこっちに向くわ、気にしてこちらを窺っている証拠。


引け目を感じているらしいエルフっ子

――――――――――ヤバい。

全然平気で無関心、と見せてる澄まし顔。でみ、すぐそばを決して離れない仕草。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・スッゴくヤバい。




こちらを気にしているのが別な意味で気になる俺は、気にするな、なんて言ってる場合じゃない。




「ORAaaaaaa―――――

―――――ワクワクしてきたZoi!!!!!!!!!!」

「落ち込みかけの、気弱になった女の子にナンて事をするのはアリですよね?」


などとエロMIBメン・イン・ブラックと恋愛クリーチャーが大騒ぎしていたのは、悪い思い出だ。


「今閣下に強引にってどうですか?今に限りませんが敢えて!」


エルフっ子――――――――――いや、あれは俯いたのであって、頷いたのではない。

と、ずっと言い聞かせている、自分に。

だけでドウカト思います、俺。



ええ、昨日からですがナニか?

今、騎乗で後ろを走っているエルフっ子が気になります。

まだ、耳の立ち方が甘いような?

一晩寝れば治ると思ったのに。


俺は魔女っ子が差し出してくれるストローをくわえた。

温かいスープ。

旅の間はレーションが中心だったからな。

ありがたや。




【太守領中央/太守府南街道/青龍の騎士団本陣/馬上/青龍の貴族の胸元】


わたしは甘えないように気をつけながら、ご主人様を見上げます。

お気に召して、いただける、でしょうか。


奴隷市場で、ご主人様がお気に召したお茶。ちいねえ様はその茶葉を基本に、毎日いろんな茶葉との取り合わせを試しています。


わたしは少しかじり、閃きました。

お料理に合いそうだな、と。


それは我ながら、良い思いつきでした。風味が、スープにも良く合うそのお茶。とっても栄養があるそうです。

じようきょうそうせいりょくぜつりん、えーと、やる気がすごく溢れる、って奴隷商人さんが仰いました。


といっても、わたしには風味しか楽しめません。

でも、ご主人様にはお役にたちます。


マメシバ卿の保証済み。

男の人にしか、効かないそうです。




【太守領中央/太守府南街道/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】


俺はエルフっ子から視線外した。

昨日のタレ耳が浮かんで、ちと照れる。

エルフっ子の胸元にはお嬢。二人騎乗だから、特に胸元はマズい。二人に変に思われる。外した視線はお嬢に。



・・・・・・・・・さっきまで、アレの裏をかく作戦を考えていたはずなのに。


手を尽くして所在地を確認。


時差のある戦場全体に手を広げているし、普段の生活からしても早起きはない。

夜明けまでにこっそり滑り込み、こっそりひそめば、発見を遅らせることができる。

――――――――――――――――――――そのまますぐ出発もできるかもしれない。


・・・・・・・・・・・・・と考えていたのに。





いつの間にかエルフっ子を見ていた。

なんで見てたって?

はて?

なぜに視線が向いた?

確かにエルフっ子は普段から目の保養だが・・・・・・・?



いや、後ろを見ている場合じゃないが。

俺は騎乗中だってのに、危ないな。

乗馬は得意じゃないし。

よそ見運転ケガの元。

はて?



イヤイヤながらの任務に、慣れてはきたから、余裕が出てきたか?

いかん。

このままじゃ社会人になってしまう!

社畜に転落する!!!




【太守領中央/太守府南街道/青龍の騎士団本陣/馬上/エルフっ子の胸元】


わたくしは、舞い上がってしまいました。

ご領主様はいつも、わたくしたちを気にかけてくださいます。


青龍の移動。

基本は徒歩。


帝国貴族騎士なら屋内は徒歩、屋外はみな馬、距離があり太守ならば竜に乗りました。街の商人、我が家くらいなら、竜以外は似たようなもの。


でも青龍の皆さんは街中までは徒歩。

そこから先は龍。

誰でも、わたくしたちや村人たちを連れる時すら龍を使役します。


もちろん、帝国なら領民を竜に乗せたりは有り得ません。

徒歩なり馬車なりゆっくり移動せざるを得ない領民をどこかに連れて行くとき。先に出発させるか、先について到着を待つかどちらかです。



結局、わたくしたちを連れて街中を歩く事が多いのが、青龍、ご領主様。

だから、よくご領主様は振り返られます。

――――――――――わたくしたちを、その様子に心配がないか、確かめる為に。


最初から気になっていました。

お聞きしましたから間違いありません。



お気遣いに申し訳なく思いますが、とっても嬉しい。

普段ならお父様、お兄様以外の者はさっさと歩いて行きます。使用人なら、わたくしの後に続くだけですし。

それが当たり前でしたのに

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・立派な男性に、媚びも諂いもなく大切にされる。


――――――――――わたくしも酔ってしまいますわ。




【太守領中央/太守府南街道/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】


いかんいかん。

何回目だ、俺。

ライトで照らして進むから、日の出前でも周りが見える。

ついついエルフっ子をみてしまう。



着任初日からシスターズにフォーマンセル24時間。

寝床も、風呂さえ独りにはなれない16日目。

由々しき問題です。



いやまあ、懐かれてるのは良いんだけどね?


第一、シスターズは俺たちと近い。特別な力を持たない魔女っ子を現地代表にした以上、護らねばならない。

俺のせいだし。


魔女っ子は危なっかしいんだよ。

地雷源に飛び込みやすいというか、飛んで火に入る魔法少女っていうか、自己保存本能がフリーズ中っていうか。

まさに俺とは正反対。

何とかしてもらわんと。



護れるのは俺じゃないからね。


戦力に乏しい俺たち軍政部隊。常にシスターズは俺たちと一緒にいる。あの子らを護るなら、それ以外の選択肢はない。

それがお互いに不快じゃないのは、幸運だ。幸運なのだが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・距離感が間違っている。



俺たち基準で。


シスターズ全員が俺に随伴0m。寝室ベッドまで一緒。あーさすがに、エルフっ子は多少離れてくれるが。

まあ、個室個人住宅なんて概念が乏しい世界。

雑魚寝になるのは時代的には一般的。


魔女っ子は家族に死に別れたせいでエルフっ子と二人きり。

お嬢は大金持ちの娘。

どちらも時代の一般的と違い、個室や個人住宅完備の生活だったのに

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぜ、一般的異世界人の感覚に戻っている?



俺たち地球人と関係を結んだことで、共同体みたいに振る舞っている、のかな?


なら密着生活も普通?

地球の中世なら、男女年齢層で別れたはずだが

――――――――――――――――――――――――――――――現地の慣習には口を出せないからな~。



結果、俺が困る。

何がとは言わないが、大変不自由な面もあり、いろいろ我慢も限界でした。


だから、仕方ないよね?


実年齢256歳ながら外見十代後半未成年なエルフっ子。体の凹凸に合わせた騎士服、流れる銀髪、緑の瞳に桜色のくちび

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・失礼いたしました。

仕方ないことなんて一つもないと理解いたしました。



エルフっ子に微笑み返されるとピッチャーライナーばりに効きます。

可愛く手を振るお嬢をみて高ぶりを抑えます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お嬢を鎮静剤に使うって、マズいよね。


視線を前に戻し、抱き抱えている魔女っ子で癒やされよう。

おなじか。


Cool Down!Cool Down!



だがしかし、美少女に視線を奪われるのはまあ、自然?

だが、なぜに今?


危険はないとはいえ、作戦中に他のことが気になるなんて。

慣れたのか?

俺も成長したな、って余裕の現れか?


限界突破か?

禁欲生活が長すぎたか?

いや、長すぎるのは確かで間違いなく。




―――――――――――――危険だ―――――――――――――――――



エルフっ子。

言うまでもなく、シスターズの小さい二人にとって、長姉か、あるいは、おかん。

外見年齢的にストライクゾーン外角低めよりで、俺に限らず、アリ。


なのだが、口説く訳にはいかない。

いや、ほら、異世界にくる前みたいに、気軽にはね?


特に、お兄ちゃんどこ見てるの、とかシスターズの小さい二人にツッコまれたら最悪だ。

口笛を吹いて夕陽の中に消えなくちゃならない。



『だいじょーぶですよ?お上にも慈悲はあります』

マメシバ三尉。

感謝する。

国連軍規定を忘れてた。


つーか、軍事参謀委員会か?

お上って?


『アタシを無視してなーにを企んでるか!!!!!!!!!!いーじゃんアタシで!!!!!!!!!!』


やかましい!

いーじゃんじゃねーだろ!!!

おまえは黙ってりゃいい女なんだから!!!


『だよね~~~~~~~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪』


はい、喜ばない喜ばない。


だから、よりを戻す気がないのにやれ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

泣くな~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!




【某日某所のアレ】


運命、って言葉が大好き。


だって素敵じゃない。なにもかも、最初から決まっているのよ。

出会いも別れも。

生きるのも死ぬのも。

私たちの意志に意味なんかない。


それすら運命、最初から決まっていたことなんだからね。

みんなが運命を受け入れたら、人はもっと自由になれるわ。



だって


――――――――――みんな、運命が悪いんだから――――――――――


だから、何でもできるわよね。

うんうん、なんて自由なのかしら。



「三佐。検証終わりました。彼らには特別な背景はありません」

「ん」



斉射音。

悲鳴。

テルミット焼却剤は既に配置済。

深く掘られた穴の中が朱く輝く。


数千度を超える熱の前では、海兵隊も現地住民も、何も変わらない。

等しく塵になる。



「三佐殿、これを」


国際連合軍軍事参謀委員会データベースへのアクセスログ。特定にIDが特定のIDの所在地を確認している。昨夜から今朝にかけて複数回。

三佐の操作でIDはすぐに特定される。とはいっても、探されているのは捜査している当人のID。その一つ。


「例題です」

三佐は傍らの女性兵士を見る。

隠そうとしているが隠しきれない嫌そうな表情、に笑顔を輝かせる三佐。


「カタリベさん、の一人である、コードネーム歴史家さんが、三佐の動向を知りたがっています」


女性兵士の報告に肩をすくめる三佐。

問い返した。


「カタリベさんは、何故、今、こちらに興味を持ったのでしょうか?」


女性兵士は考える。

三佐の動向に興味を持つ者なんかいくらでもいる。ここまでストレートに当たってくるものはいないだろうけれど。

なんというか、わかりやす過ぎる。カタリベはどんな情報にもアクセスできる。だから、カタリベは三佐の動向を把握しただろう。



――――――――――――――――――――データベースに乗っている範囲では。



だが、その痕跡を消してやる義理はない。すくなくとも、軍事参謀委員会には。

だから、探りを入れているのが丸わかり。

やり方としては稚拙極まりない。

まあ、素人さんだから当たり前ではある。


では、その動機は?

いままでは新たな占領地の観察で満足していたのに?


「わかりません」

「側にいる誰かのマネ」


女性兵士は頸をかしげる。三佐の周辺に探りを入れる動きは、常に監視されている。別に敵対的なモノとは限らないがルーチンワークとして。

この、奇妙に素人臭いアクセス以外に、痕跡はなかったのだが・・・・。



「あいつも甘いわね~」


三佐は部下への宿題にした。

そして内心、ほくそ笑む。


カタリベは目の前の軍政司令官が、痕跡を残さないように、人づての人づてで手を回していることに気がついた。

だから、何事かが起きているのかと疑って、自分で調べ始めた。



相手はこちらの動きを知らない。

こちらは相手の動きを知る。

カードが一枚手に入ったけれど、デコイだったらなお面白い。


などと考える三佐。



「さんさ~」

「ん」

「運命を信じてるんですか」

「当たり前のことを訊かないでね」




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