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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第三章「掃討戦/文化大虐殺」

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114/1003

視線/化学戦考察

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします


一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。

次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。

以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。

(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)


【登場人物/一人称】


『僕』

地球側呼称/現地側呼称《若い参事、船主代表》

?歳/男性

:太守府参事会有力参事。貿易商人、船主の代表。年若く野心的。妹がいて妻の代わりに補佐役となっている。


『シスターズ』:エルフっ子、お嬢、魔女っ子の血縁がない三姉妹をひとまとめにした呼称。


【用語】


『太守府』:帝国の行政区分をそのまま国連軍が引き継いだ呼び名。領地全体の呼び名と中枢が置かれる首府の呼び名を兼ねる。南北が森林、西は山脈、東は大海で大陸のほかの地域からは孤立している。ただし、穀倉地帯であり海路につながっているために領地としての価値は高い。10年前までは古い王国があり帝国に滅ぼされた。


『参事会』:太守府を実質的に支配する大商人たちの集まり。五大家と呼ばれる5人が中心メンバー。



あなたと同じものを見てきたからだ。



――――――――動機を問われたテロリストの言葉。

ヒトラー暗殺は未遂に終わり、その一年後に第二次世界大戦が勃発する。




【太守領中央/太守府南馬乗一日程/大きな街の広場/旅籠の前】


僕の頭上を超えた何か。

宿屋の戸口、窓、二階、次々と飛び込む。広場の真ん中で次々と続く竜殺し(M-14)の轟音。それとは別に僕の背後、旅籠の中で連続して響く高い濁った音。

何か堅いものを石の床に叩き付けたような、衝撃をともなう音。


火事!!!!!!!!!!

旅籠の窓、戸口、屋根から白煙が吹き出していた。




【太守領中央/太守府南馬乗一日程/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本陣(前衛)】


「ふゃ!」


叫ぶ魔女っ子。

俺はうっかり落としそうになった魔女っ子を抱き直した。


「ごごごごごごごしゅしんさま」


わるいわるい。つい、前線、この場合は佐藤と芝が暴れている?、先の街中の映像を操作しようとしたから。

やはり乗馬と前線観察並行は無理だ。

俺には。


「あの、その」


魔女っ子は怖かったのか、耳まで真っ赤になっている。

手綱を右手、魔女っ子を左手腕。


10歳児は流石に片腕だけで動かせない。

左腕と体で挟むように固定。

「ご主人様

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ!」


慎重に、だが、残念ながら乱暴に掴み直して立て直した。


『鷲掴みキタ

――――――――――!!!!!!!!!!ガンホー!ガンホー!』

『馬上って!いきなり

――――――――――よし!本人了承!ダメです!もっとやって!』


神父とマメシバ三尉の妙に興奮した声。

――――――――――街がヒドい事になったか??????????


「ヒドい目にあわせちゃろか」

「支えます」


背後で凄む元カノ。

横から手を添えてくれるエルフっ子。


『馬上4○!!!!!!!!!!

人類はここまで来たんだ!!!!!!!!!!

ハレールヤ!!!!!!!!!!』

『ん?ヨンピー?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・○Pゆーな!!!!!!!!!!』


つーか、お前ら、偵察ユニットの無駄遣いしてないか?

・・・・・・・・・・・・戦闘中に軽口も飛ばない部隊はおしまいだ、って言うし、まあ、いいか。




【太守領中央/太守府南馬乗一日程/大きな街の広場/旅籠の前】


幸いに僕を無視する青龍の騎士。

一人が旅籠に竜殺し(M-14)を向けて、一人は竜殺し(M-14)を抱えながら周りを見回していた。


旅籠からは悲鳴と怒声が響く。

そして、焦げ臭く

――――――――――――――――――――――――――――――ない。


煙りが上に昇らず、下に広がる?????????

旅籠の中の煙りはまるで生き物のようにたゆたい、戸口や窓から溢れ出した部分が地を這うように広がる。



――――――――――魔法生物、か?

っと!

戸口を破って男達が飛び出してきた。


叫び泣き、互いの体にぶつかり合い、脚をかけ、もつれさせ、地に沈みのたうち回る。

咳き込み泣き叫びながら、地を這う魔法生物にからめ取られ、さらにせき込み転げまわる。


――――――――――毒、だ。



次々と飛び出して、50人以上が広場で苦鳴を上げている。

バカ女の取り巻き、従者、侍女、給仕

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・バカ女は


――――――――――いない。

チッ!




【太守領中央/太守府南馬乗一日程/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本陣(前衛)】


俺は手綱に集中。

魔女っ子には全力でしがみつくように伝えた、ら、馬体じゃなくて俺にしがみついてきた。


まあ、結果は同じだからいいか。


全身で寄り添ってしまえば、重心をつかみやすくなる。魔女っ子は両腕を俺の首にまわし、胸元に顔を埋めてくる。

魔女っぽいローブ姿だから横座り。

安定が良いとは言い難い。


負ぶい紐ならぬ抱き上げ紐でもしつらえて、固定すべきかな。

ドワーフ達に頼んだら、騎乗用チャイルドシートをこしらえてくれるかもしれない。


要検討、今後の課題。



とりあえず、こころもち馬速を上げた。いや、ギャロップは無理。

異世界調達の、現地風訓練しかしていない馬を制御出来ない。

俺は。


後ろに元カノ。

横にエルフっ子。


二人とも余力を残して馬を操る。

エルフっ子はともかく

―――――――――――――――――――いや、現地住民でも騎乗は希少な技術。

第二次世界大戦前の日本で言う自動車運転みたいな、はずだから、さすが最年長。


「なにか?」

とエルフっ子。

俺はさりげなく、視線をそらした。



いや、切れ長な目はいつも通りだが、瞳が怖い。

幸いにエルフっ子から追撃はなし。

気のせい気のせい。


背後でガンを飛ばしてる元カノは、昔から乗馬をやってたな。


騎乗経験者は派兵前演習にて、訓練に駆り出されていた。騎馬を見たことがない兵士向けの訓練だ。目的は騎馬のサイズと動きになれ、対騎兵戦闘に備えさせること。


戦前から今も日々、帝国支配領域に空挺降下しまた帰ってくる長距離浸透偵察兵。

小規模部隊に必ず配置される選抜歩兵(合衆国だと選抜射手か)。

現地社会の中を歩き回る軍政官。


などなど、騎兵への対処が予測される兵士向けのカリキュラム。

ランスチャージを受けたときは気絶しそうになりました。いえ、受けたっていうか、傍らを通り過ぎたんですけどね。ギリギリで。


だが、敵役に駆り出された元カノたちも、騎乗の感覚を取り戻せただろう。

いまなら魔女っ子を落としそうになっても、どちらかがすくい上げてくれそうだ。ついでに落馬する俺も。


ちょっと前線を覗いても平気、だな?




【太守領中央/太守府南馬乗一日程/大きな街の広場/旅籠の前】


僕はイラついていた。


転げ出て、出続けるバカの群れ。

騎士の仮装をしたバカ。

メイドの格好をしたバカ。

執事の真似をするバカ。

料理人

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はバカじゃないな。


アレは味にうるさいし。


涙を溢れさせ、咳き込み、吐いて、のたうち回る。こうなると、みな同じだ。

――――――――――バカ女は完全に見捨てられたらしい。


毒ではあっても、しなない、か。


僕は仕方なく、宿屋に近づき

・・・・・・・・・・・・・・・・・両腕を挙げた。

青龍の騎士に肩を掴まれたのだ。




【太守領中央/太守府南馬乗一日程/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本陣(前衛)】


CSを使ったか。

俺はやや安心。


農村と違って密閉性が高い石造りレンガ造りの街中。その特定の建物を処理するなら、ベストチョイス。えげつないけどね。


まあ、神経ガスや青酸ガスなんかウチの部隊には無いしな。


だが、俺も現場に急ぐ。

CSガス、つまりは催涙ガス。非殺傷兵器/武器の代表。だが、失明させる可能性が、常にある。


非、殺傷、とは何か?

意図的に殺したり傷つけたりはしてませんよ

――――――――――って意味だ。


狙ってないけど、仕方ないよね、と。



これで失明したら、未必の故意が認定されるべきレベル。

まあ、本来の規定行動の場合よりマシだが。


本当なら、催涙ガス弾を放り込み、戸口や窓を管制出来る場所で銃手が待機。

飛び出し来るのをまつ。

いぶり出されたところを、順序射殺。



未必じゃなくて必殺。



近代兵器の優位が失われる、屋内近接戦闘を避けるため、の手順。まあ、どうしても建物の制圧が必要な場合、であって、普通なら建物ごと、街ごと吹き飛ばすが。


我が国連軍では呼吸器官を狙ったガスが標準多用される。


歩兵用フェイスカバーは、薄型ディスプレイで情報を共有する機能だけじゃない。



共有っても指揮官が指定したデータだけを、部隊各階級各編成で制限した上で、だけどね。

戦況の有利不利なぞ、兵士が知ればどちらにせよ動揺する。

戦友死傷なぞ戦闘後に知れば良い。



それはともかく、データツールとしての機能を省略したフェイスカバー。

替わりに対呼吸器ガス機能がついている。


簡単な操作、ってか、手で押すだけで密閉出来る。


無論、神経ガス他の皮膚浸透化学兵器には無力。

全身密閉の対化学戦防護服とは違い、呼吸器しかカバーしないからだ。



だからこそ、普段は通気性が良く、夏でも大丈夫な逸品。標準装備でガスマスクがあるようなものなので、前線でもガスの利用機会は少なくない。

緒戦の上陸作戦ではトン単位でばらまかれたとか。中世の騎士団、密集歩兵はそれだけで的に堕ちる。




と、眺めている間に街中のプロセスが進んだ。

佐藤が現地住民のガス圏接近を防ぎ、芝が宿屋内部に。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・指向性爆薬で壁を外に向かって、ぶち抜いた。


もちろん、軍用対装甲爆薬ではない。

そんなのを使ったら、レンガ石積みなんぞは粉々。石片榴弾と化して大惨事だ。

海外警察の突入用爆薬は軍用に比べれば威力が少ない。



持ち歩いているとは知らなかったが、ウチの装備だ。


開口部を広げると、換気弾を投げ込む。

単に無害無色透明なガスを発生させるだけ。爆発的に。

対化学戦装備の一つだ。


影響範囲を確認するために、着色された催涙ガス。

無害なガスに、さらに屋内の空気に押し出され、見る間に屋外に流れ出していく。



――――――――――低く低く。


敢えて催涙成分とは別の化合物を加え、大気より重くなるように調合している。

野戦使用が前提だから、風の影響が少ない低高度をたゆたうように工夫されている。


まあ、量が少ないから、仕切りとなる壁を崩すと、すぐに足元に落ちて流れる。


そして、CSガスは解水性。

地面の湿気にも反応する。


元々ガスは屋外では拡散しやすい。すぐに濃度が下がり、二次被害は無いだろう、多分。

近場で誰かが匍匐前進してなければ、大丈夫、きっと。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・匍匐ではないが、宿屋に近づく人影。

逃げてない。

あれは、港街で世話になった、あの若い参事。


宿屋から飛び出して来た被害者、一人一人を、確認してるな。




【太守領中央/太守府南馬乗一日程/大きな街の広場/旅籠の前】


僕を引き留めた青龍の騎士。両手を上げたままの僕。

僕のスカーフをとり、水筒、かな、陶器に近い不思議な入れ物から透明な、おそらくは水をスカーフにぶちまけた。


そして僕の目元を濡らしてから、巻きつける。

顔の下半分を隠す覆面のように。



もう一人、青龍の騎士が宿屋に入り、壁を吹き飛ばした。

そして、部屋の奥に何かを投げ込んだ。発泡酒のコルクを抜くような音が連続。

煙りが外に吹き出して霧散。


僕を止めた騎士が手を離した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・行っていいらしい。

旅籠の中に。




【太守領中央/太守府南馬乗一日程/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本陣(前衛)】


俺が街に走ると、沿道の住民が転げるように逃げていく。

ガスから逃げるよりひどいありさま。


・・・・・・・・・・正直でよろしい。


愛されるな。

憎まれるな。

畏れられよ。


国連軍の基本方針。


俺はどっちかな?

恐れられてるのか、畏れられてるのか。




・・・・・・・・嫌われてるのか。




【太守領中央/太守府南馬乗一日程/大きな街の広場/旅籠の中】


僕は一瞬で風邪をひいたがごとく、くしゃみ鼻水涙が止まらない。

どうなってやがるんだ?

旅籠の中、まるで違う世界に迷い込んだかのように。


だが、なんとか進む。


青龍の騎士はまるで平気だ。兜と面貌の下がどうなっているか、見えやしない。だが落ち着いた物腰で僕を先導し、床でのたうち回る人影を見つけてくれる。


人影は数える程しかいない。

まあ、体が動くなら走り出てるか。


青龍の騎士が指差し、時には首を引きずり起こし、僕が首を振る。

僕が一人を探しているのは、バレているようだ。




【太守領中央/太守府南馬乗一日程/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本陣(前衛)】


宿屋から、女性が運び出された。

失神しているのか、完全に脱力し抱き上げられている。

お姫様抱っこだ。

シスターズの小さい

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・エルフっ子まで、見てる。

交互に。


――――――――――いや俺を見ても、やらないから。




【太守領中央/太守府南馬乗一日程/大きな街の広場/旅籠の前】


僕がバカ女を抱えて旅籠を出ると、青龍の貴族が立っていた。

離れた、広場の中心に。


「水で洗って!目、口、鼻に水を!」


街の人間を広場に呼び集めるエルフ。青龍の貴族、その愛人。


「川辺に運べ!はい!急ぐ!」


集まった住民に命令して急がせる青龍の女将軍。


ありがたい。

皆が気圧されて従っている。


飛び出してなお、苦しんでいる連中を街のものたちが運んで行く。

川辺に、だろう。


とにかく水で治るらしい。


ならば汲んでくるより、川に連れていく。その方が早い。井戸もあるが、やはり汲む手間がかかるし、飲み水を汚す訳にはいかない。


青龍の貴族は、喧騒の中、超然と立つ。

傍らに少女が二人。

魔女と、お嬢様。


青龍の貴族、その妻。


二人は青龍の貴族、その装具、裾を掴み、見上げていた。

自身の主を。


僕はバカ女を抱えたまままっすぐに歩く。




【太守領中央/太守府南馬乗一日程/大きな街の広場/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本陣(前衛)】


俺は若い参事が向かってくるのを、唖然として見ていた。

血相を変えて抱えてるのは、家族?

あるいは恋人か?


広場は死屍累々、死んでないけど、まあ、大半は。生死不明も若干。

大丈夫じゃないかな。

大丈夫だといいけどな。

催涙ガスで死ぬとしたら窒息死か?

散々戦場で使われた範囲では、アレルギーなど特殊な症状はないはずなんだが。



シスターズの小さい二人はキョトンとして、俺を見上げている。

二人は俺の上着、裾を掴み、俺の許可をまっている。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何かしたいらしい。


だが、させない。


小さい二人は優秀で、俺は何度も助けられている。

だが、こういう場所には向かない。

大の大人が、鎧兜姿の奴も含め、苦鳴を上げててのたうち回る。そんなところで役に立つのは腕力体力。二人に一番遠い力。



俺も向かないから、一緒に待機。


手をつないでいた方がいいか?

とも思ったが、片手だけでも空けて置く必要がある。


二人とも、大人しく待っている。

片方だけとつなぐと、また拗ねられそうだ。


しかし、物わかりが良いね?

戦場で飛び出すと死ぬから、その方が良いが。


だが、もうちょっとワガママでもいいんじゃないか?

もっと、こう、無害な、そう、趣味嗜好の辺りで好き勝手させた方がいいかも。


おかんエルフっ子は厳しそうだし、俺が水を向けてみるかな。

エルフっ子込みで。



などなど考えいたら、若い参事が接近中。

被害者代表に詰め寄られる覚えが有りすぎる。


制圧作戦の内容を確認してなかったからな。殺すなよ、ぐらいしか指示してないし。目の前に広がる、悲惨な有り様の責任は何処?



――――――――――俺でした!!!!!!!!!!



殴られるくらいなら、まあ、良いんだが。嫌だけど仕方ないかな、くらいは。

残念なのは、俺が個人的感情で動けない事。


そうなったら、問題が俺の手を離れる。

俺、と言うより、国連軍軍政官を殴ったら?



――――――――――街ごと皆殺し。



この現場。

俺の軍帽の前。

佐藤、芝のフェイスカバー。

バイタルチェッカー。

偵察ユニット。

哨戒気球。


総てを観察し記録し続ける科学の組み合わせ。


ナニもかもがつつ抜けだ。

個々人が身に着けた通信機は、何一つ操作しなくとも、起動している。振動を、喉、骨、空気の震えを収集している。

隠蔽は効かない。



最上位指揮権限は国際連合安全保障理事会に、軍事参謀委員会にある。

俺たちが身にまとい使用する電子機器の制御機能から、俺たち兵士への命令まで。


彼らは安全な何処かで、完全な俯瞰にて、完璧に客観的判断を下す。

躊躇いも逡巡も遠慮もひとのみに、全軍から一兵卒まで従わせる。



俺に出来ることは、ない。

芝が俺の傍らに付く。


若い参事に手を出させない為に。

その前に殴り倒す為に。

街を救う為に。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アレ?


銃を構えて、るよ?

着剣?




【太守領中央/太守府南馬乗一日程/大きな街の広場/青龍の騎士団本陣】


あたしは青龍の貴族の背後に立った。すぐに前に回れる位置取り。

妹達は、近づいてくる若い参事を、特に気にしていない。


血走った眼。

荒い呼吸。

汚れた服。


若い参事は、まっすぐに通り抜けた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?

通過???????



水音。

カボガバガフヒャブクブク!!!!!!!!!!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・溺れてる。



広場中央、馬の水飲み場。

青龍の貴族と、あたしたちの背後。


放り、込んだ。


生きていた女は、膝程度の深さでバシャバシャと、大騒ぎ。

まあ、錯乱すれば十分溺死できる深さだけど。



若い参事は伸びをして、自分の腰を揉み、ゆっくりと振り返った。

青龍の貴族に、にこやかに歩み寄り、跪いた。


「このような不調法な姿で、御前にまかりこしました。申し訳ごさいません」


余裕、ね。ボロボロだけど。




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