竜と龍/Human Hunting
登場人物&設定
※必要のない方は読み飛ばしてください
※すでに描写されている範囲で簡単に記述します
※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします
一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。
次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。
以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。
(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)
【登場人物/一人称】
『あたし』
地球側呼称《エルフっ子》
現地側呼称《ねえ様》
256歳/女性
:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。姉貴分。ロングストレートなシルバーブロンドに緑の瞳。長身(数値不明)。革を主体とした騎士服にブーツに剣が常備。軽装の革鎧や弓(短/長)は必要に応じて。
『わたし』
地球側呼称《魔女っ子/幼女》
現地側呼称《あの娘》
10歳/女性
:異世界人。赤い目をした魔法使い。太守府現地代表。ロングストレートのブロンドに赤い瞳、白い肌。身長は130cm以下。主に魔法使いローブを着る。
『わたくし』
地球側呼称《お嬢/童女》
現地側呼称《妹分/ちいねえ様/お嬢様》
12歳/女性
:異世界人。大商人の愛娘。ロングウェーブのクリームブロンドに蒼い瞳、白い肌。身長は130cm以下。装飾の多いドレスが普段着。
太守領南部には広葉樹林地帯が広がる。
南に向けて100km以上続く森林であり、この邦と大陸沿岸中心部を隔てる地形的特徴だ。これを踏破したのは、帝国軍が土竜と工兵部隊をつかっておこなった王国攻略作戦が最初で最後となった。
十年前。
この作戦において帝国軍は、海路でしか外部とつながっていない旧王国に攻め込むために、数カ月かけて森林を踏破。
飛竜の対地支援と兵士の組織力で大型獣を排除、土竜と大陸一の工兵部隊で巨木を排除。大樹以外は平坦な地形を、まっすぐに突き抜けて南部大森林を突破、王都に吶喊した。
当時、海軍という概念がなかった帝国には「森は突き抜けるもの」という発想しかなかったのである。今もないのかもしれないが。
森林は外周から中心、人里からの距離によって特性がある。
人里が近い外周部には比較的小型、といっても地球で言えば大型だが、の獣が生息。地球で言うイノシシやシカに類似した生物、オオカミ状の生物、ほぼ同サイズの爬虫類両生類が生息。
森林の深部になればなるほど生物が巨大化する。植生もおおむね深部に向かうほど大樹大草大型植物が増加する。
確認されている限り、森林内部には集落村落はない。
一定規模の集落村落があれば、多くの獣は近づかない。である以上、現在この森林で獣の行動を制約する要素はなく、森に迷い込むことは帝国軍でもない限り自殺行為だというのが、現地における一般的な常識。
国際連合軍最北端作戦基地は、この森林地帯のさらに南端から200kmあまり南に位置する。
《国際連合環境計画(UNEP)/United Nations Environment Programme/プランC基礎資料》
【太守領南端/森林境界線/青龍騎士隊/本陣/青龍の貴族の前】
わたしに判るように、ご主人様が広げられた地図。まるで光る箱庭のように中空に浮いてますが
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何時ものことですけれど、綺麗です。
お星様、えと、光る点がだんだんと上に動きます。ここ、わたしたちがいる場所に向かっている、のですね。
わたしは時々、いえ、たびたび、ご主人様を見上げます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・間違っては、いない、みたい。
大丈夫です。
遠くから、遠くなのに、響く、響き続ける、音。
銃ではなくて、もっと、そうです、判り易い音。
ご主人様がなにもおっしゃらない間は、なにもかも大丈夫。
【太守領南端/森林境界線/青龍騎士隊/本陣/青龍の貴族の左】
茶を楽しむ御領主様。
わたくしが淹れたんですけれど。
時間をかけて、お金をかけて、助言のまま、決められた通りに行えば
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、悪くないモノが出来ますわ。
ダメね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ご領主様に、わたくしを味わっていただいているとは、とてもとても。
もちろん、わたくしは、まだまだ未熟。ご領主様には完成した形を味わってほしかったわ。
本来であれば、わたくしの腕前がご領主様の舌に及ぶまでは、わたくしのうちから最高のお茶役を呼ぶところですが
・・・・・・・旨くなる過程を楽しませろ、なんて仰る・・・・・・・
・・・・・・・いけません、お言葉を思い起こしてしまい・・・・・・
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――表情が!!!!!!!!!!
いつもの大人なわたくしが??????????
――――――――――――――――――――大丈夫、大丈夫、くーるだうん、くーるだうん。
口元。
頬。
瞼。
あとは、そう、引き締めて、きりっと。
・・・・・・・・いいわね。
・・・・・・・・・・大丈夫。
・・・・・・・・・・・・・・・・・いけません、いけません。
わたくし、お姉さんなんですから
――――――――――あの娘に無様な顔を見せるわけにはいきません。
第一、子供っぽいじゃない
――――――――――ご領主様に呆れられてしまいますわ。
【太守領南端/森林境界線/青龍騎士隊/本陣/青龍の貴族の前】
ちいねえ様はとろけるような表情。
なんといえばいいのでしょうか。
でも、ご主人様も微笑んでおられますね・・・・・・・ご主人様が何もおっしゃらないうちは、何がどうなっても大丈夫。
でも、ちいねえ様・・・・・・・あやし、いえ、不審・・・・ちょっと、常と異なるうご、仕草です。
ご主人様をチラチラ見て
――――――――――――――――――――真っ赤なお顔で、わたしを見て、またご主人様に。
そっとそっと、近づいて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと、下がります。
ダメダメダメ。
わたし、顔に出てなかったかな?羨ましい、って。
ご主人様のお仕事に集中集中。
・・・・・・・・・・・お役にはたてないけれど、ご主人様が教えてくださるのだから、必ずや解ってみせます!!!!!!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・できるだけ早く。
【太守領南端/森林境界線/青龍騎士隊/本陣/青龍の貴族の後】
遠くから響く音。
あたしには聴こえる。青龍の貴族、女将軍、騎士には解っている。
あたしには解らない、でも、青龍に解るなら十分。
竜と龍。
竜は大きな獣。人の及ばない力で飛び回り、走り回り、炎を吹き、岩を砕く。
――――――――――――――――――――でも、獣。
大勢で一斉に不意をうたない限り、人と竜では戦いにならない。
獲物には小さすぎて、竜は人を食べたりはしない。
大陸の大半で人と竜は互いに関わらない。ほんの僅かな例外を除いて。そして飼い慣らして使役するのは、帝国だけ。
50年以上帝国とだけ戦っていた諸国。対竜戦術を生み出しても、対抗する竜騎兵は作れなかった。
どうやって馴らしているか、帝国内の最高機密。
まあ見当はつくけれど。
多分、ドラゴン・ハンターが使うような薬。それでおとなしくさせるんでしょうね。そこから人が主のように躾る。
・・・・・・・・・見当と言っても漠然としすぎて、誰にも真似できない。
ドラゴン・ハンターを見たことがある者なんか、ほとんどいないし。
あたしが見たことがあるドラゴン・ハンターは、竜を最初から殺すつもりで薬を使っていた。その時は薬が効くまで時間がかかった。
だから、薬の量や種類を調節すれば、どうなるか推測できる。理屈が人や他の動物と同じなら殺さずに、おとなしくさせる事もできるでしょうね。
そこから馴らすことも出来る・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っていうのが、推測。
帝国がやっていることも、そんなことだとは思う。
だとしても、薬の素材も使い方も解らない。帝国の竜扱いどころか、ドラゴン・ハンターの薬だって正体不明だものね。
竜の躾かたなんて夢のまた夢。
帝国を帝国たらしめた力。
魔法と違って帝国だけの力。
力の源泉を明かすわけがない。
そんな機密に満ちた竜を駆逐する龍。
青龍の龍。
まさに龍。
竜ではなく、龍。
龍をかたどった国章を掲げる帝国にも、龍などいない。
龍とは大陸全土の伝説。
竜と同じかそれ以上の巨体を持つ。無限がそれに近い長命。竜の炎、速さ、力の倍より大きな力を振るう。そしてなにより、人の言葉を解し話す。
青龍の龍は幾種類もいて、どれが龍なのか、竜なのかはわからない。
あたしたちを載せて大地を走り回る土竜は、話した事がない。
港街を恐慌状態に陥れた海龍は、話すもなにも、腹の中を歩いてまわり見当もつかなかった。
でも海龍の腹の中で鳴り響いていた声。青龍の海兵たちに命じていたのは、人?響き方が、飛龍と同じ?なら、龍が体に載る海兵に指示してたのかしら。
そして飛龍、ちぬーく、さん?彼?彼女?これ?、だけは話すところを見た。
今も青龍の貴族と話している。
街に最初に降り立った時も、街中の人間に布告する青龍の貴族を補佐していた。
時々、青龍の貴族と対等な口をきく。けれど、あたしたちがいる事に気がつくと、臣下としての口調にもどる。
青龍の貴族は「気にするな」と言い、龍の、ちぬーくさんは「そういうわけにはまいりません」と返す。
まるで青龍が龍と対等な種族で、その中で序列があるみたい。
そう言えば、あの、巨大な海龍の中で響いていた声。
~~せよ。
~~~に注意。
~~~~になっている。
などなど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・青龍の海兵に命令口調?
なら青龍は龍を使役していない?
龍と人が対等に集団をなし、個々に上下があるのかしら。
ちぬーくさんが青龍の貴族に、時々ぞんざいな口をきくのは、二人、一頭と一人が親しいからかな。
かしこまるのは、あたしたちがいる時。
最近は、かしこまったまま、あたしたちがいるかを最初に確認するくらい。序列がわからない部外者の前だから、ことさら礼儀を示す
――――――――――――――――――――――――――――――道理よね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・部外者。
つまり、やっぱり、青龍全体から見て、あたしたちはよそ者。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・半月前に出会ったばかりですものね。
噂だけはされてるけれど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・噂だけだし。
青龍の貴族、その愛人。
青龍の貴族の子を産んだ。
青龍の貴族の寵姫。
青龍の貴族に信頼された女。
――――――――――なんで噂だけなのよ!!!!!!!!!!
【太守領南端/森林境界線/青龍騎士隊/本陣/青龍の貴族の前】
わたしは耳を澄ませます。
と言っても、気持ちだけですが。ご主人様から耳当てをわたされました。耳を覆ってなお、周りの音が聴こえるすごい魔法!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うぅ、わたしも魔法使いでした。
魔法使いが魔法ではしゃいだら、ダメダメです。
ご主人様が従える龍、ちぬーくさん、だったかしら、は力持ち。
龍籠を抱えてひとっ飛び。毎日毎日、太守府王城から、南の森林を越えて、遙か中原、青龍の要塞を行ったり来たり。
一昨日からは、ご主人様が物見をお願い。
南の森を飛び行くついでに、下に注意してくれ、と。使役されるだけの土竜と違い、話もできる龍には遠慮するのですね。
ちぬーくさんは眼が良くて、というより、物陰の暖かさを見るとか
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よくわかりません、ごめんなさい。
そして今日、範囲を狭めて、ご主人様の使い魔が飛び回る。
ご主人様は、わたしたちが神殿の後片付けばかり考えている間に、そんな段取りも進めておられます。お一人でいくつものお話を、何もかもしつらえてしまわれる。
・・・・・・・・違います違います。
わたしだって・・・・・・・・・・・・・・・・
たぶん・・・・・・・出来るように
・・・・・・・・・・・・お手伝い、なら?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・お役にたちたいんです。
いらないって言われても。
役立たずでも、御側にいられるとしても。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――みのほど知らず、ですね。
【太守領南端/森林境界線/青龍騎士隊/本陣/青龍の貴族の左】
わたくしは、Colorfulの皆と一緒に準備しました。
今日の主催は、あの娘ですからね。
お出迎え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お客様、とは言わないけれど、まあ、そんな方々。
あの娘が震え始めました。本番に弱いのかしらね。ううん、こんなことは、慣れですわ。わたくしはその手をとります。
そして力いっぱい
――――――――――ご領主様に抱きつきました。
【太守領南端/森林境界線/青龍騎士隊/本陣/青龍の貴族の胸元】
ちちちちちちちちちちちちちいねえ様!!!!!!!!!!
わたしはご主人様に抱き留められながら、ちいねえ様をみて
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの、すりすり、するのは、如何なものでしょうか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・落ち着きましたけど。
【太守領南端/森林境界線/青龍騎士隊/本陣/青龍の貴族の後】
――――――――――あ、始まった。
あたしたちの耳当ては、青龍の魔法具。必要な音しか通さない。
あたしは妹たちの仮面を確かめた。顔半分、目をすっかり覆った、さんぐらす。青龍の道化がいつも付けている黒い仮面。
見えにくい、のは当たり前だけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・隙間がない?
黒い色が、裏側から見ると透けて見える。
見にくいけれど。
こちらの視線を隠すなら、意味はある、かしら。でもそれじゃ、発想が、暗殺者よね。
青龍の騎士が付けている、ドワーフを含む黒旗団の兵士たちが与えられている青龍の魔法。あれは同じ仮面ながら視界を塞がない。
同じく外側からは見えにくい。でも内側の視界は塞がない。魔法で視界を操っているって、言ってたわね。
光?をいっぽうつうこう、にしてるとかなんとか。
それにアレなら、他の騎士や使い魔の視界、見えない場所にいる敵味方の場所、青龍の貴族からの文までが、仮面の裏側に映し出される。
でもそれは、あたしたちには与えられていない。
――――――――――敵中に突撃する騎士用の魔法だから。
あたしたちは、青龍の貴族から離れない。常に、青龍の騎士達に護られている。だから、必要ない、って言われてしまったけれど。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・青龍の貴族に限らず、青龍の女将軍、ううん、騎士も、青龍全体が。
――――――――――あたしたちを、護られる存在だと、決めている。
それ以外を許さない。
子供を前線に立たせるような世界は、滅びるべきだ。
――――――――――滅ぼしてやる、と、聴き違えたくらいに、青龍の貴族が断言した。その時は、震えが来たけれど・・・・・それなら、この大陸はエルフ以外の世界が青龍に滅ぼされてしまう。
子供は戦場の下働きが通り相場だしね。
まあ・・・・・・・・・・・・だから、滅ぼしてる最中なのかしら。
合理的で、目指す結果に最短で向かう選択を繰り返すのが青龍。
それが時々、極端に、怖いくらいに、硬質な感情を見せる。目的も過程も振り捨てて、結果だけに突撃するような、龍の暴走。
たぶんこれは、感性、青龍の好悪の問題なんでしょうね。
まあ、あたしだって、妹たちを戦わせたくはない。子供と斬り合いたくはない、のは、エルフ以外も大体そう感じるだろう。
あたしたちは、そこで終わり。
青龍は違う。
そういう世界があることを、許せない。だから壊す。だから殺す。だから滅ぼす。それで子供が犠牲になったとしても。
子どもを助けたいんじゃない。
そういう世界の、在り方、が気にさわるのだろう。
そのあたりは、あたしには構わないのだけれど。
問題は一つ。
あたし、なんで子供扱いされてるのかしら。
あの娘は10歳。
妹分は、12歳。
あたしは256・・・・・・・いえ、あたし(エルフ)の年齢は一目でわかるわけじゃない。でも、人の体つきで言えば、あたしは十代後半よ。
妹分なら、そろそろ適齢よね。
あたしが人ならそろそろ嫁き遅れ・・・・・・エルフは違うから。成長が止まったらいつでも伴侶を得ることができるから。
人と違って、一生想う相手を慎重に選ぶだけだから。
誰からどう見みても、あたしは一人前の女よね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・遅くない、ハズ、絶対!!!!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・青龍の世界では違う????????
――――――――――後で考えよう。
森の中を走る足音。
近づいてくる。
百以上。
息が切れ、怯えている。
男も女も・・・・・・・・子供まで。
来た。
来た。
来た。
森を飛び出した。
得物を持っているのは十人未満。
みな血走った目で、叫びながら飛び出してくる。
――――――――――こちらにまっすぐ向かってくる――――――――――




