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【書籍化&コミカライズ】冒険者アル -あいつの魔法はおかしい  作者: れもん
第7話 レインドロップ

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7-4 イシナゲボンゴとムツアシドラ

 アル、オーソン、マドック、ナイジェラの4人は渡し場のある町から、川沿いに北西に進んでいた。最近は雨が降っておらず、川幅は十メートルほどになっていた。石ばかりの河原はかなり広く、巨大な岩がごろごろしている。

 盛りは越したとはいっても日差しはまだまだ強く、アル、マドック、ナイジェラの3人は、岩を登ったり降りたりして汗だくで息を切らしている。だが、オーソンはアルのすぐ後ろに運搬(キャリアー)呪文で作られた椅子に座って宙に浮かび、周囲を眺めていた。


「オーソン、それは楽そうね」

「悪いな。だが、この脚だからよ。一応周囲は警戒してるから許してくれよ」


 オーソンは申し訳なさそうに悪い脚を摩った。彼は去年の春に負った怪我が元で足を引きずっていた。おそらくこの大岩を乗り越えての移動を彼がするとなると倍以上の時間がかかってしまうだろう。


「まぁ、それは仕方ないと判ってる。でもさ、羨ましいじゃないか。私も一緒に乗せてくれないかい?」

「うーん、それはちょっと無理かなぁ。荷物だけなら大丈夫だろうけど……」


 横でアルは苦笑いを浮かべる。運搬(キャリアー)呪文の熟練度はかなり上がってきたので今では200㎏ぐらいを運ぶことが出来る。だが、オーソンだけでなくナイジェラも金属製の鎧を身に着けているので2人を乗せるのは厳しいだろう。荷物だけならなんとかなるかもしれない。


「本当? 荷物だけでも助かるよ。予備の武器や保存食も結構重いからねぇ。マドックの分もお願いできる?」

「ああ、あんまり載せると動かなくなるからさ、そうならない範囲なら良いよ。荷物を載せられる箱を作るね」


 アルは魔力制御マジックパワーコントロール呪文を使い、オーソンが座る椅子の形を変えて背もたれの後ろに1メートルサイズの四角い箱を作った。その箱に2人は背負っていた荷物などを次々と入れる。


「こんなところだとラバとかも無理だろうし、荷物の運び屋をお願いするとなると4人は雇わないといけなかっただろう。ほんと、便利だな」


 マドックも楽になったとばかりに今まで荷物を背負っていた肩をぐるぐると回した。運び屋4人分と言われると心情としては微妙な気もする。だが、その分儲けも増えるからとアルは前向きに受け取ることにした。


「それで、レインドロップが取れる場所っていうのは結構遠いの? 10日前後って話だったけど……」

「そうだな……」


 アルの問いにオーソンが北西の方角を見た。


「ここから、まだしばらく川沿いに行くことになる。河原というより川の中を登るようなところもあるが、今は水が減ってるから大丈夫なはずだ。このペースなら明後日の昼ぐらいにはこの川に細い支流が南側から流れ込んでいるところに着くと思う。そこは目印になるでかい岩があるからすぐわかる。その川をさらに上流に2時間ほど進んだところが目的地だな」


 アルは、浮遊眼(フローティングアイ)呪文を使って、5mほど浮かべてそちらの方を見た。だが、付近には既に森が迫ってきており、遠くを見通すことはできなかった。


「魔獣が良く出るって話だったけど、何が出るの?」

「イシナゲボンゴとムツアシドラってのだが、知ってるか?」


 オーソンはアルたち3人を見た。マドックとナイジェラは首を傾げたが、アルは軽く頷いた。


「実物は見たことないけど、話だけなら聞いたことあるよ。僕はシプリー山地出身だからね。もっとナッシュ山脈寄りだからここからは結構遠いけどさ」


 アルが子供の頃、父親に故郷のチャニング村からまっすぐ東に移動したら辺境都市レスターに行けないのかと相談した時の事だ。父親によると、道中に魔獣が多く出るのでとてもじゃないが無理だという話だったのだが、その時に出ると言われたのが、この2種類の魔獣だった。


 イシナゲボンゴというのは、人間と同じか、すこし大きいぐらいの猿で、50頭ぐらいの群れで暮らしているらしい。その群れはテリトリーを持っていて、そこに人間が入っていくと襲ってくるのだという。石を投げたりしてくるので厄介だという話だった。

 そして、ムツアシドラというのは、体長5メートルほどあり、名の通り、足が6本ある虎だという。こちらは魔獣にしては気性が穏やかな方で、近寄っても襲われないこともあるのだそうだ。

 アルはその時に聞いた話を聞いたことのない2人に説明すると、オーソンが頷く。


「よく知ってるな。イシナゲボンゴは手が長くて力も強いから結構厄介だ。このあたりはまだ河原が広いから大丈夫だと思うが、上流に進んで河原が狭くなるとたまに出てくる。特に支流に入ってからは結構やばいので気を付けてくれ」

「石を投げてくるのか。じゃぁ盾は背負っておくか」


 オーソンの説明に、マドックとナイジェラは一旦箱に入れていた盾を取り出して背中に背負い直した。特にマドックのものは上下に1メートル以上ある長方形のタイプでかなり重そうではあるが、大きな石が飛んでくる可能性を考えると仕方ないだろう。


「僕は盾を持ってないからよろしくね」


 アルの言葉にマドックはもちろんだと最近生やし始めたひげ面でニッコリとほほ笑んだ。


読んで頂いてありがとうございます。

月金の週2回10時投稿を予定しています。よろしくお願いいたします。


誤字訂正ありがとうございます。いつも助かっています。


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― 新着の感想 ―
運搬の呪文、上手いこと形を変えたら盾になりそう……200キロまでの威力を耐える盾とか、そこそこ使えそう?
[一言] >>石を投げたりしてくるので厄介だという話だった。 あらー…、それは確かに厄介ですね。人間が地球で天下を取った理由の一つとして、「火を熾して、その熱エネルギーを様々な事に活用できたから」や…
[一言] オーソンには弓でも覚えて移動砲台になってもらおうか モンスター相手にただの荷物だと辛い
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