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【書籍化&コミカライズ】冒険者アル -あいつの魔法はおかしい  作者: れもん
第23話 救出

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23-6 苦戦


 敵が倒れたのを見届けたアルは敵の魔導士やその護衛らしい者たちに生き残りがいないか手早く確認した。特に魔法の衝撃波マジックショックウェーブ呪文を使って人に攻撃したのは初めてで、どれほどのダメージを与えられたのか確信が持てなかったのだ。だが、対象となった6人の中で一番後ろに居た者もかなりの数の衝撃を全身に受けていたようで、全員息絶えていた。

 もちろんその後に魔法の竜巻(マジックトルネード)呪文の対象となった4人も全員死亡している。(シールド)呪文を使ってはいたようだが、それでは防ぎきれなかったらしい。

 これで、手の内は敵にばれずに済む。アルは少しだけ胸をなでおろし、全ての死体をマジックバッグに収納した。警備ゴーレムも研究塔の移送(トランスポート)空間に移送しておく。本当は持ち物などきちんと調べたいところなのだが、デズモンドを助けに行くことのほうが先だ。デズモンドたちが戦っている丘に向かって飛ぶことにした。


 丘からは、すでに戦いがはじまっているような罵声と剣戟の音が聞こえて来ていた。上空までくるとデズモンドたちが必死に剣を振っているのが見えた。呪文の応酬はないようだ。アルは低空飛行でレダのすぐ横に着地した。


「向こうは片付いたよ。こっちはどう?」

「アル! 大丈夫だったのね。こっちはちょっと厳しいわ。最初は優勢だったのだけど、向こうにも(ライト)呪文や魔法の矢(マジックミサイル)をつかう者が居てね。こちらからも魔法の矢(マジックミサイル)を撃ち返して倒したのだけど、そのうちにあたりも白んできてね……」


 アルは辺りをみまわした。敵が使ったらしい(ライト)がいくつか残っており、戦場はまったくの闇ではなかった。そして、丘の上はすこし木々の重なりが薄く、明け始めた太陽の光も周囲をほんのりと照らしている。せっかくの暗視ができるという有利性は打ち消されてしまったのか。それでは人数が倍以上の敵には厳しい状況だったのだろう。


「行け!」

「くそっ、もう……だめだ……」


 ここぞとばかりに、フードを目深にかぶった敵の後続が繰り出されて来た。レジナルドは最前線で剣を振っているが疲労の色が濃い。そのままだと押し切られそうで一刻の猶予もなさそうだ。ただ、魔法の衝撃波マジックショックウェーブ呪文や魔法の竜巻(マジックトルネード)呪文では、味方も傷つける事になってしまう。


「下がれる人は、少し、さがってもらってください」


 アルはそう言って前に出た。


「お、おい待て、殺されるぞ」


 レダの横で指揮をとっていたデズモンドが声を上げる。だが、それを大丈夫だとレダが制止する。彼女にはおおよその予想がついているのだろう。アルは真っすぐに手を突き出した。


魔法の火花群(マジック スパークス)』 -除外対象(レビ商会傭兵団)


 アルが突き出した掌に青白く大きな玉が浮かび上がる。その玉は真っ直ぐにレジナルドたちの横をかすめ、戦闘の中心辺りまで飛んだ。次の瞬間には青白く大きな玉はパーンと甲高い音を立てて破裂し、周囲に無数の玉をまき散らす。

 レジナルドたちは手にもった武器などで頭を守ろうとしていたが、無数の玉はアルの顔見知りであるレビ商会の傭兵団の者たちにはあたらず、敵だけに命中していく。その無数の小さな玉は、命中する度に小さな火花を散らしては深い傷を与えて倒していく。あっという間に最前線に立っているのはレビ商会の傭兵隊だけになった。


「なんて、呪文だ……」


 デズモンドが呆れたように言う。


「だって、彼の魔法はちょっと“おかしい”ですから」


 そう言うレダの口調もすこし呆れ気味だ。おかしい? いや、彼女は以前、オークと戦った時にこの呪文を使った事を知っていたし、この呪文を使う事は予想していたから、さっきもデズモンドに大丈夫だと言っていたのではなかったのだろうか。


「ふぅ、今ですよ! 一気にやっちゃってください」

「お、おう!」


 アルはデズモンドたちを急かせる。我に返ったようにデズモンドたちは剣を握り直し、一気に戦意を喪失している相手に向かっていくのだった。


-----


 戦いの形勢は急激にレビ商会側に傾き、最後にはアルとレダの2人が手分けして指揮をしている数人を魔法の矢(マジックミサイル)で狙い撃ちにして倒す事で決着を見た。輝ける盾や黒いナイフ団とよばれる傭兵団、セブンスネークの構成員たちは戦況を見て次々と降参していく。デズモンドとレジナルドたちがそれらの者たちの武装を解除して縛り上げる。


「これからどうします?」


 オーソンはまだ別荘を監視しているのだろうか? どれぐらいの戦力が残っているのか。


「とりあえず、降参した連中に話を聞いてからにしたいが、これだけの数を倒したんだ。向こうにはそれほど残っていないだろう。逃げ出されたら面倒だから、先に別荘の様子を確認したい。お前さんのその後ろの円盤には何人乗れる?」


 デズモンドの考えには賛成だ。アルは微笑んだ。


「今は合計で360キロですね。体重じゃなく装備も含めてですよ?」


 デズモンドとレジナルドが顔を見合わせる。そしてレジナルドが勝ち誇った顔を、デズモンドは悔しそうな顔をした。あきらかにデズモンドの身体が大きく、ごついその装備を含めれば2人分の重さになるかもしれない。


「仕方ない。レジナルド、任せるぜ、2人選んで連れていけ。あとレダ様なら連れて行けるだろう。オーソンが残ってたら合流して向こうで様子をみるんだ。こっちは怪我人の手当をした後、捕虜たちもつれて追いかける」

「任された。アル、よろしく頼むぜ」


 アルはそこで少し躊躇った。敵の魔導士らしい男たちの死体はマジックバッグに入れてきたが、それを話すかどうかだ。もちろん、デズモンドとレジナルドの二人にマジックバッグの事を話すのは問題ないのだが、今、ここには降伏してきた捕虜なども居る。アルはデズモンドに対して念話(テレパシー)を起動した。


“デズモンドさん。僕はマジックバッグを2つ持っています。どっちもレビ会頭に以前借りたマジックバッグよりすこし容量の多いやつです。その1つに向こうで倒した魔導士らしい連中の死体を回収しています。どちらかを預けてここに転がっている敵の死体や荷物も回収してきてもらったほうがいいかともと思うんですが、捕虜たちにはマジックバッグの存在を知られたくないとも思います。どうしましょう”


 アルの念話にデズモンドは首を振った。


“死体や荷物の回収は後で良いだろう。どうせ騎馬の連中の方もほったらかしのままだからな。全てが片付いてからでいい。マジックバッグについては、会頭もその使用については特に気を付けておられた。知られないほうが良いぞ”


 アルは頷く。言われてみればそこまでの重要度はないのか。とりあえずレビ会頭やエリック様の救出を急ごう。アルは4人を運搬(キャリアー)の椅子に乗せ、この場はデズモンドに任せて移動を始めたのだった。


読んで頂いてありがとうございます。

月金の週2回10時投稿を予定しています。よろしくお願いいたします。


誤字訂正ありがとうございます。いつも助かっています。


いいね、評価ポイント、感想などもいただけるとうれしいです。是非よろしくお願いします。


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諸々よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
レダは魔法の火花郡は話は聞いたけど、見てはないのでは?今回オークの時に見たと書いてるけど……
魔法がおかしい、のところ。いい感じになってましたね、ありがとうございました!
>>6人 衝撃波で吹っ飛ばしてたのね すいません、見落としてました 魔法の火花群ってもしかしてシルヴェスターじゃ一般的な魔法じゃない…? となるとアイネスはやっぱりテンペストの人間なのかな
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