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白兎令嬢の取捨選択  作者: 菜っぱ
第二章 王都の尋ね者(騎士学校一年生編)
87/157

81森の中で可愛らしい生き物に出会います


 ざわりざわりと楽しげな空気に揺れる、騎士学校の講堂。


 四方を透ける水のような煌めきをもつ、硬質なガラスに囲まれたどこか聖堂のようにも思えるその空間は平家造りでありますが、縦にも横にも広く、騎士学校の生徒、一二学年全員を集められる余裕があります。


 今日は一日を通しては実技実習です。今日は初めての魔獣討伐が全校生徒で行われる予定でした。そのために、この講堂に全学年の生徒が集められているのです。

 これも昨日、突然発表されたシハンクージャで新たな王が立ったことによる、騎士学校カリキュラム変更の影響です。


 以前は討伐実習自体、二年生になってから行われていましたが、カリキュラム変更によって一年生から行われることになったのです。


 昨日の今日で授業内容が変えてしまえる、騎士団の柔軟さに少し驚いてしまいましたが、それだけ人材の育成が急務なのかもしれません。


 騎士学校の新入生の中にはわたくしのように日頃から、領地の管理として魔獣討伐を行っているものもいますが、入学試験で初めて魔獣と対峙したものが過半数を占めています。


 初めての魔獣討伐に浮き足立った一学年の生徒は楽しげに声をあげていました。

 わたくしも一学年の生徒として、初めての実践的な授業に心を弾ませてもいいはずなのですが、どこか乗り気に慣れません。どこか自分ごとに思えぬ、時間の流れ方を受け止めることができないまま、ぼんやりと生徒達の群れを眺めていました。


 ここにいる生徒のうち、どれだけの人が自分の身を置く派閥を決めているのだろう。そんなことを考え始めると、憂鬱感が体から溢れ出しそうになります。


 そんな中、集まった列の真ん中あたりから「絶対に大物をゲットするぞ!」と、雄叫びが聞こえてきました。


 わたくしは体をびくりと震わせてしまいます。

 

「なんだか一部。目を輝かせて盛り上がっている方々がいますね」


 男子の中で、一部盛り上がっている方々が見受けられます。盛り上がっている方々の面々を確認すると、もちろん一年生の中にもいらっしゃいますが、上級生に多いようです。


「ああ金欠気味な生徒達の中には魔獣討伐で、生活費を稼いでいるものをいるからね。基本的に討伐した魔獣からとれる魔鉱は自分の防具の材料にする人が多いみたいだけど、多めに倒して金策として使うものも多いそうだ」


 そう教えてくれたのは隣の列に並んでいたメラニアでした。わたくしと違ってなんでも教えてくださるお兄様がいるメラニアはやはり多くのことを知っていますね。


 わたくしは多めに魔鉱を獲得出来たらどうしようと少し考えます。お金集めは……。ハーブティー事業は薬効が明らかになってから安定的に利益が出ていますから、急務では無いのですよね。もちろん、あったほうがいいですけど。


 そうだ、珍しい魔鉱が見つかったら、ぜひ先生に差し上げましょう! この前、わたくしの魔術補填の魔術具に先生の貴重なコレクションを使ってしまったので、申し訳ない気持ちがどうしても拭えなかったのです。

 先生は気にしなくともいいとは言ってくださったのですが……。


 ただ、騎士学校の授業内で倒す程度の魔獣ではあまり希少なものは討伐できないかもしれませんね。


 いい魔鉱を生み出す、レアリティの高い魔獣に出会えましょうに!



 カリキュラム変更を余儀なくされた新入生にいきなり魔獣を倒せ、というのも酷なので、今日の授業では上級生が一緒についてきてくれるそうです。


 今日の授業でのわたくしの班は、教官が気をきかせてくれたのか、エナハーンとメラニアの女の子チームでした。


 その班を面倒見てくれる上級生はどんな人なんだろう、と考えを巡らせていると、見慣れた人物がこちらに向かってきたことに安堵の笑みを浮かべます。


「あら、わたくしの班にはステファニア先輩がついてくださるのですね」


 今日も背景に大輪のエダム(バラ)が見える気がする、イケメンのステファニア先輩がこちらに颯爽とやってきました。


「やあ、リジェット。今日はよろしく頼むよ」


 そう言って爽やかな微笑みを振りまく、ステファニア先輩はやっぱり、女性だと分かっていてもかっこいいですね。わたくしの隣にいた、エナハーンは顔を赤く色づかせていました。


 やはり、ステファニア先輩のキリリとした美貌の威力はほとんどの女の子をメロメロにしてしまうほど凄まじいのです。


 班員全員が集合したところで、教官のエドモンド様はわたくしたちに、今日の目的地の振り分けがかかれた予定表を手渡します。


「え……。ここってギシュタール領? ……ですか?」


 目を瞬かせながら、目的地を見ていると、エドモンド様はどこか嘲笑したような笑い方で言葉を紡ぎます。


「君は転移陣が仕えるだろう? ギシュタールとも由縁があると、君の父親であるセラージュ様から聞いているから、転移箇所の位置取りも問題ないはずだ」

「それは……そうですけど……」


 どこまで意見していいのかわからず、黙ることしかできません。

「随分遠いね。まさか王都の外だとは思わなかったけど。リジェット、頼んだよ」

 そう言ってステファニア先輩はわたくしの肩をポンと叩きます。


「ステファニア、班長用の書類を渡すからこちらへ」


 エドモンド様に呼ばれたステファニア先輩は、手を軽く振って一時的に班を離れていきます。


 どうして……、こんなことに?

 

 わたくしとステファニア先輩は魔法陣を描くことができ、わたくしに至っては転移陣も描ける、と言う確証のもと、この場所が振り分けられたのでしょう。


 というかエドモンド様には転移陣が使える、と言うことをいっていないのですが……。もしかしてこの前の教室からの移動が早すぎたせいで見抜かれてしまったのでしょうか。


 しかも場所がよりにもよって元婚約者がいる、ギシュタール領ですか……。


 わたくしは興味がありませんでしたので、その後のギシュタール領の様子は聞いていませんでした。しかし、今ギシュタール領では魔獣が大発生しているそうなのです。


 もし騎士学校に入学していたら、わたくしはもうギシュタールにお嫁に行っていたかもしれないのですよね。

 そう思うとなんだか不思議です。行かされるのではなく、自分で選んだ選択肢の末に、魔獣の討伐にいくことになるなんて。


 ちょっとだけ誇らしいような、むず痒い気持ちです。

 ギシュタールへの嫁入りを取りやめて騎士学校へ入学したからこうなって……。

 結果として今日の授業に向かっていると言うことは、わたくしの取捨選択は間違っていなかったことの証明なのかもしれません。



 校舎から出るとぴゅうと吹く、冬の風が容赦なくわたくしたちを冷やします。

 騎士学校の騎士服は、刃が入らないような、特殊な織られ方をした生地でできているのですが、それに特化しすぎているせいか、触ると少しヒヤッとしてあまり暖かくありません。


「ううっ。寒いですねえ」

「そうかい? 私は結構平気だけど」


 メラニアは風に吹かれても飄々とした顔をしています。なぜなのだ……と不思議に思っていると、メラニアは熱の純度要素持ちなので気温変化自体に体が強いそうなのです。う、羨ましい!


 歯をガタガタとさせながら、恨めしい視線を向けているとエナハーンにちょんと肩に触れられます。


「だっ大丈夫ですよ。リジェット。わ、わたくしもとってもとっても寒いです」

「ですよねえ! よかった! 仲間ですね!」


 きゃっきゃっと盛り上がっていると、教官に今日の実習の指示書をもらいに行っていたステファニア先輩が戻ってきました。


「どうして魔獣が大発生してしまったのでしょうね」

「理由はわからないが、去年の末あたりから騎士団に討伐要請が出ているね。かなり厄介な魔獣だ。大量に発生している」

「厄介……ですか?」


 尋ねると、ステファニア先輩は眉を下げながら、ギシュタールの様子を教えてくださいます。


「ああ。魔獣という生き物は基本的には森の奥で生まれることが多いのだけど、今回の魔獣は人が住む集落の中で、発生が確認されているんだよ。……住人の中で、死傷者が何人も出ているんだ」

「まあ! それは早く、処理せねばなりませんね! ……というか昨年末から報告はあったのに、なぜ騎士団はその集落を放置していたのですか?」

「まあ……。ギシュタールだからね。あそこは領主一族が、湖の女神の信仰者だろう? たびたび、湖の所有権をギシュタールに、と声高らかに宣言しているからね。その尊大な態度が、王都の人間に嫌悪されているのに、助ける義理はないのだろう」


 その事実にわたくしは目を丸くして呆れることしかできません。わたくしの知っている、ギシュタール領の領主一族の筆頭は元婚約者のエメラージ様でしたが、他の方もそんな感じなんですね。


 それで助けてもらえないなんて自業自得、と言ってしまえばそこまでですが、巻き込まれる民のことを考えると胸がとても痛くなります。


「でも、ギシュタール領の人間だからといって助けてもらえないなんて、集落の人々には関係ないじゃないのに……。とばっちりをうける集落の住人は本当に難儀ですね」

「ああ。本当に。領民のためにも今回の実習で、かたがつくといいのだけれども」

 


 転移で集落近くの森に足を踏み入れると、そこは荒廃していたマルトのように、木々が枯れ果て、森としての機能を失った土地が広がっていました。


「こんなにひどいとは思っていませんでした……」


 領主は何をやっているのか、とため息をついてしまうほどの荒れ具合です。覆い尽くすような瘴気が地を這うように広がり、気を抜くと寿命を徒に縮めてしまいそうな状態でした。


「うわあ。思っていたよりも、随分酷いね。森の木は粗方枯れて大分少なくなっているね……。あっちの方まで、見渡せちゃうよ」


 そう呟いた、メラニアの意見にわたくしは同意して頷きます。


 あたりを見渡していると、十メートルほど先の草むらが、がさりと大きく音を立てます。

 動物とは違う、光沢を持ったそれは紛れもなく魔獣でした。


「おっと! 魔獣のお出ましだ! みんな、気を引き締めてかかるんだよっ!」


 そのステファニア先輩の声にまず動いたのはエナハーンでした。


 水の要素を使った魔法陣を展開し、魔獣を一掃するように掃き出し、一箇所に集めるように集めます。それだけで、弱い個体は魔鉱へと姿を変えていました。


 その上からメラニアは魔力量を生かした、総合的な打撃攻撃をぶつけます。剣に施した広範囲への可能にする魔法陣を展開しました。


 とても息のあったコンビネーションです。さすが主従コンビですね!


「わあ! 一撃ですね!」

「リ、リジェットいつも朝練しているでしょう? わっわたくしたちも負けちゃうから、こっそり練習していたのですよ」

「そうなのですか! すごいです!」


 その後もスムーズに討伐は進んでいきます。


 あまりにも、スムーズな討伐だったので、わたくしはやることがなくなってしまいます。


 まさか、今日のわたくしは魔法陣係?


 手持ち無沙汰になってしまったわたくしは、仕方なく魔鉱を一箇所に集めるために、枝を手に持ち魔法陣を地面へと描き示します。魔法陣を展開させるとゴロゴロと魔鉱が集まってきます。


「うわあ。大量の魔鉱ですね」

「本当に君たちは腕がいいんだね……」


 思わず見惚れてしまうような剣裁きで応戦していたステファニア先輩も、感心した様子でメラニア達が集めた魔鉱を見ています。


「ん? 何これ?」


 集まった魔鉱を持ってきた袋に入れていたメラニアが不思議そうな表情をしています。そこには手のひらに乗るくらいの大きさの柔らかいふわふわした物体が混ざり込んでいました。


 毛玉状のそれを落ちていた枝でツンと突くと、黒々と光るつぶらな瞳と目が合います。


 子うさぎだとか子猫だとか……そういったかわいらしい

動物を思い浮かべでしまう可愛らしさです。


「これは……」

「魔獣の赤ちゃん?」


 わ、魔獣の赤ちゃんって初めて見ました……。見慣れぬ姿、ふわふわの魔獣の赤ん坊は動き回るようなことはせず、じっとそこに佇んでいます。

 

 小さな頭部に配置された大きく潤んだ目を見るとなんだか庇護欲を掻き立てられてしまいます。


「キュルンッ!」

「わっ! 鳴いた! 何だか……。泣き声がかわいいですね」


 わたくしの呟きを聞いたステファニア先輩は鋭い視線を向けます。


「いくらかわいくても殺さないとダメだよ。魔獣の幼子が己を可愛らしく見せるのは生存戦略だ。その見た目に惹かれた誰かが、人混みに持ち帰ってくれた日には集落中の人間を食い荒らすことだってできる」

「そ、そうですよね……」


 いくら可愛くてもこれは魔獣。いずれ大きくなった時には人を食い殺し、土地を荒らす生き物なのです。

 これからこのかわいらしい生き物を殺さねばならないと言うことに罪悪感を持ちながらも、わたくしは覚悟を決めます。剣を取り出し、魔獣の赤ちゃんに構えます。


「ごめんね。さようなら」


 刃を受けた魔獣の肉体はそのまま立ち登る煙のように消え去りました。


 今まで、成体の魔獣を倒していた時は、自分に害をなすものを処分している感覚しかなかったので、それが悪いことだとは一ミリも思っていませんでした。しかし、生まれたての魔獣という無抵抗の生き物を見たとき、わたくしは今まで以上に躊躇してしまったのです。


 心の中に黒い靄のようなものが湧き上がりますが、これは仕方がないことなのだと自分にいい聞かせます。


 眉を下げて魔獣が魔鉱になるのを見守っていると、後ろでそれを見守っていたステファニア先輩が口を開きます。


「しかし……。思ったよりも荒廃していたな……。これだけ魔獣が出現しているということは……。ギシュタールの人口はだいぶ減っているのかもしれない」

「え? 魔獣の被害でと言うことですか?」

「いや……違うよ」


 そう小さく否定したステファニア先輩は苦い顔を見せました。


「リジェットは、戦争が起こると魔獣が増える理由を知っている?」

「いいえ……」

「そっか……。あまり知らない方が気楽に扱えるからいいかもね。でもこれだけは言える。魔獣の秘密を知ってしまっても、国のため、民のため、私たち騎士は魔獣を狩らねばならない」

 

 その重々しい声にわたくしは目をパチパチさせることしかできません。


 この世界には、当たり前に魔獣がいて、瘴気を放ち人の体を損なう生物なのですから、それを狩るということは至極当たり前で、ありふれた行為だと思っていました。

 だから、魔獣というものがどうやって発生するかなんて考えてもいなかったのです。


 ステファニア先輩の言い方だと、まるで魔獣を狩ることは罪深いことのようではありませんか。


 でもステファニア先輩は知らない方がいい、と言っているのです。それを聞くほど、愚かな人間ではありません。


「そうですね。わたくし達はこの国を守る騎士になるものとして、責務を負わなければなりません」


 強い決意を胸に言葉を返すと、ステファニア先輩はにこりと小さく微笑みを見せます。


 そしてわたくしに問いかけをしました。


「リジェット……。君は……。今後国が分断されて、戦いが起こった時、家族と対立することになってもその剣を振えるかい?」

「え?」


 その問いかけにわたくしは頭が真っ白になってしまいます。


「君は優しい子だ。魔獣の子供に心を砕き、心配までしてみせる。そんな君がこれから始まるであろう戦争で、心を壊さないか……。今から私は不安になるよ」


 そういえばステファニア先輩はご実家が現王に仕える家系ですので、次代の派閥争いにおいては中立の立場にあります。今後、もし第二王子が粛清の対象になった時、恋人であるヨーナスお兄様を殺さねばならぬ状況に陥ることだってあるのです。

 ——もちろん、その逆も。


「心配しなくても私は覚悟が決まっているから大丈夫だよ。家族はもちろん、ヨーナスにも、対岸に立たねばならなくなった場合は、遠慮なく切れと言ってある」

「家族と対岸に……」


 それは全く考えていないことではなかったのです。王位継承争いで王城が揺れる中、オルブライト家の長男であるユリアーンお兄様は第一王子側の陣営にいるのですから。

 もしもその決断に意を唱える立場になったとしたら、わたくしはユリアーンお兄様と戦うことになります。


 そんな可能性だってあるんだ、ということが頭の中では想像ができても、現実のこととして理解できていなかったのかもしれません。


「君はただでさえ、立場が弱いし、尚且つ有用な人材として引く手数多だ。うっかり選んだ選択肢によっては家族と戦わねばならなくなる時もあるだろう。あとは……。戦わなくても優先順位的に家族を諦めねばならなくなることだってある。そんな時に、君は、何かを切り捨てられるかい?」

「切り捨てる……。ステファニア先輩はその覚悟がおありなんですね」

「あるよ。なんなら私は経験者だ」

「え?」

「おや? 君は聞いたことがないのかな? 私は騎士団に入るために、父親を斬っているから」


 まさかの発言に混乱します。え? でもステファニア先輩のお父様ってご存命ですよね? 今も現王の近侍として活躍されていますし……。


 わたくしはいつかの式典で見た、現王横に仕えるステファニア先輩のお父様の様子を思い起こします。

 

「え、ええ……? 確かステファニア先輩のお父様って……、現王付きの文官でしたよね。しかも首席の……」


 現王の忠臣として、仕える堅牢な姿。その文官ながらよく鍛えられた体を見て、王に仕えるともなるとやはりあそこまで身を鍛えねばならないのだな、と感心しましたが……。

 

 彼には左の腕がありませんでした。


 まさか……ステファニア先輩が斬り落とした……?


 そんなことは……、いや、あり得るのかしら? 本当にそれが推測ではないとしたら……。

 実の父親に決闘を仕掛けるのはわたくしだけかと思っていましたが、もっとすっごいことをしでかしている方がいたみたいです。


 信じられない事実に冷や汗が出てきました。


「ああ。私はあの人を殺してでも、自分の人生を選びたかった。……まあ、結果あの人は死ななかったけどね」


 わたくしが想像しているよりもステファニア先輩の人生は過酷だったのかもしれません。


「昨日も、君に苦言を呈してしまったし、私の言葉は君にとって口煩く聞こえるかもしれない。だがそれを承知で言わせてもらう。

 ……君は甘い。だからこそそれが魅力的でもある。それを自覚して、今後立ち位置を考えていかねばならないとだけ助言しておくよ」

「……ありがとうございます。ステファニア先輩。こんなこと、先輩じゃなければ教えてくれなかったかもしれません」


 素直にお礼を言うと、ステファニア先輩は藍色の目を見開きます。


「こちらこそ、嫌味とも聞こえかねないことを素直に聞き入れてくれて感謝するよ。君はやっぱり素直な質だね。ヨーナスとよく似ているよ」


 下を向きながら薄く微笑んだステファニア先輩は、魔獣の血がついた剣を振り、血をあらかた払うとゆっくりと昂る感情をしまい収めるように、剣を鞘にしまっていきました。





ステファニア先輩に釘を刺されました。

ステファニア先輩がここまでリジェットに言うのは、リジェットの甘さが気になる、と言うのももちろんありますが、ヨーナスの妹だから、と言う理由がほとんどです。

彼女も平坦な人生を歩んでおらず(騎士学校にいるくらいですし)、温和で慈しみがあるヨーナスがそばにいることがある種、恩寵でそれを失いたくないのです。リジェットが失われることで彼の心が損なわれるのを避けたいのですね。


次は 席次はやはり正しかったです です。


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