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白兎令嬢の取捨選択  作者: 菜っぱ
第一章 大領地の守り子
27/157

26国の情勢はなんとも複雑です


 タセが来てからしばらくが経ったある日。わたくしはスキップしそうな足取りで、廊下を歩いていました。

 通りすがったラマが何だか怪訝な顔でこちらを見ています。


「あら、ラマ! おはよう! 今日はとっても天気がいいですね!」

「……何だか、お嬢様。今日、びっくりするくらい浮かれていませんか?」

「おほほ! そうかしら!」


 ふふふ……。ラマのいう通りかもしれません。

 今日のわたくしはとっても嬉しいことが起こりましたので、浮かれているのです。


 本日わたくしは……やっとお父様が指定する、座学の授業を受けなくてもいいと判断されたのです! やりました!


 わたくしの勉強の進み具合を見たお父様がこれだけできていれば、もうこれ以上は必要ないと太鼓判を押して下さったのです。


 その代わり、わたくしが知りたいこの国の情勢の情報を短時間で教えてくださる家庭教師を新しくお父様にお願いしています。


 そもそもわたくしについていた家庭教師は自分にあっていないのでは……といつも思っていたのですよね……。

 わたくしについていた家庭教師の先生は今までに二人いらっしゃいました。

 一人は女性の家庭教師で、幼少の頃に勉強を教えていただいていました。子爵家のご婦人だったのですが、伸び伸びとした教育、というものを理想に掲げていて、座学の勉強よりも野外に出て知的好奇心を養いましょうという考えの持ち主でした。


 そのため基礎知識がすっ飛ばされていて偏りが出てしまったので、慌ててお父様が解任したという苦い経緯があります。まあ、そこでわたくしはハーブの存在を知ったので全く無駄ではなかったと思いますが、知識に偏りが出るのはよくありません。


 次の家庭教師は前の家庭教師とは真逆で……なんと言いますか、天才型の先生で、わたくしがここの法則がわかりません、と助言を求めても、なぜわからないのだ? 見ればわかるだろう。と詰めてくるタイプの先生だったのです。メガネをクイッと上げながら目を吊り上げて怒る方で、いつもその理不尽に頭を抱えていました。


 そんな訳で、わたくしの家庭教師運は著しく悪く、まともな家庭教師に出会うことができていなかったのです。

 

 仕方ないのでほとんど独学で勉強し、忍時代の勉強方法を取り入れ、年表にまとめるなどしてなんとかして知識不足を凌いでいました。


 年表を作ってみて改めて感じたのは、この国は本当に短いスパンで戦いを繰り返しているということですね……。


 お父様が現役の騎士時代に活躍したのは、先の対戦と呼ばれている隣国ラザンダルクとの対戦です。長きに渡った対戦は両方の国々に多大な影響をもたらしながらも決着がつかなかったため、現在は休戦という形になっています。

 しかし、事実上は我が国ハルツエクデン王国が優勢だったと言われています。

 そのため友好の印として、三年前にラザンタルクの姫が輿入れのためやってきており、現在はハルツエクデン王城の離宮に住まれています。


 しかし、なかなか婚姻の儀が行われないので、国の中ではこの休戦は見せかけのもので、近いうちに戦いが起こるのではないか、と噂をされています。


 そんな情勢もあって、この家のものはわたくしが騎士になるのを反対しているのでしょう。


 でも、望んでもいない家に嫁いで、駒の一つとして動きながら一生を終えるくらいなら、望んだ戦いの場で、散った方がよっぽど有益だとわたくしは思うのですが……。まあそれを口に出したら、ラマに死ぬほど怒られたのですがね。


 ちなみにこの情勢のことを知ったのも、ここ最近の話です。


 わたくしは先生のもとに通うようになってから、自分が知らないことが多いことにやっと気がついたのです。


 知識が足りないと本当に何もできませんからね……。


 新しい家庭教師もつくことですし、これから必要な知識を身につけるために精一杯努力しますよ!

 わたくし、先生みたいに天才ではありませんけれど、泥臭い地道な努力は大の得意なのです。



 自室の勉強机の上を整理していると、扉からノック音が聞こえました。


「どうぞ入ってください」


 現れた家庭教師の顔を見てわたくしは驚きで、目を見開きます。

 そこにいたのは、お父様の右腕として領主執務の一端を担っている、ベルグラードだったからです。


「なぜ貴方が……。わたくしの家庭教師なんて引き受けたのですか……? 今のお父様にそんな余裕ないでしょう?」

「セラージュ様にどうしてもと頼まれましてね。まあ半分は監視目的ですが」


 ベルグラードは代々オルブライト家の領主の補佐官という役職を受け持っている、役職持ちの貴族です。しかし、彼はただの貴族というわけではありません。


 彼はなんと、ラマの出身領地であるアーノルド男爵家の教育を受けるため、アーノルド家に自ら単独で留学にいった経歴を持つ、スーパー補佐官なのです。

 恐ろしく仕事ができると評判の人物で、この方がいるおかげで、お父様はおばあさまから領主職を引き継げたと言われているほどです。ですので、対峙すると逃げられないと言いますか、隙が見つかりません。どうしようもない相手をお父様から直接差し向けられてしまいましたね。


「子爵家の家庭教師は私が手配したのですが貴女に必要な教育を与えていなかったようですね。そこは私の落ち度です。大変申し訳ありません。二人目の家庭教師も悪くはなかったのでしょうが、貴女には……どうやら合わなかったようですね」


 ベルグラードは全て見透かしたようにわたくしに問いかけます。


「そうですね……最初の方は、なんというかおっとりした方でしたからね。野外教育に熱心で、草花の名前なんかはたくさん教えてくれましたが……。それが役に立つこともあるのでしょうが、そうでないことの方が今後多いだろう、ということはわたくしにもわかっているのです。二人目の方も……ね」


 一人目の家庭教師であった子爵家の令嬢の教育方法はおっとりとした気質の淑女を作り上げるのには適していたのでしょう。何も考えずに駒として動かせる人材を作るにはいいですよね。ああいう方。

 そういうところを見込んで、わたくし付きの家庭教師にしたというお父様の意図もわかります。しかし、それでは騎士を目指すわたくしには足りないものが多すぎるのです。


「しかし、あなたは聡明な人だ。自らの選択で家庭教師を変更するなんてなかなか、できる子供はいません。さすがオルブライト家のお嬢様だと、感心いたしました」


 その言い方にどこかわたくしを馬鹿にする様なニュアンスが含まれていることを感じ、わたくしはムッとした表情を作ってしまいます。


「くだらないご機嫌とりはわたくしには必要ありません。わたくしには時間がないのです。王都に向かう前に必要な情報は集めておかねばなりませんから。それともあなたもお父様の目論見通りに騎士学校入学試験までの時間を稼ぎたいのかしら? 賢い女性は駒にするのに不便だから?」

「とんでもない。わたくしは賢い女性は大好きですよ」

「どうだか……。おしゃべりはもうやめましょう、授業を始めてください」


 わたくしが、切り捨てるように言うとベルグラードはほくそ笑むような顔をしました。


「かしこまりました。さて、何からお教えしましょうか。ではこの国の状況から説明しましょう。この国の次期王が未だ確定していない、という事案はご存知でしょうか」

「第一王子と第二王子は王座を争っているのでしょう? そのくらい知ってるわ」


 興味がなかったので、記憶の片隅に追いやられてはいましたが、国の重要事項なので一応消去されず記憶に残っていました。


「今、王族周辺は保守派と革新派に分かれています。御正室のお子様である、第一王子を筆頭とした保守派と側室のお子様である第二王子を筆頭とした革新派ですね」


 この辺りはなんとなく知っていましたが、わたくしの頭の中には一つの疑問が湧き上がります。


「そもそもどうして第一王子の王位継承権が強固なものとなっていないのですか? そこからわからないのですよね。御正室が第一王子をお産みになったのだから、第一王子が王になれば何も問題はないでしょう?」


 それを聞いたベルは目を丸くして、はあとわたくしに聞こえるくらい大きなため息をつきました。


「リジェット様……。貴女は本当に何も知らないのですね」

「? 何をですか?」

「第一王子はその髪に黒を持っていないのです」


 黒持ちでない王族?

 わたくしは二番目の家庭教師が持ってきたテキストの中に記載があった歴代の王族の肖像画を思い出します。そのどなたもが黒い髪を持っていたはずです。


「王家では代々、王家と血が近い王妃を親戚筋の公爵家から選び、輿入れをし続けていました。第一王子の母君でいらっしゃったカトリーナ様が良い例でしょう。あの方はセンドリック公爵家の姫であると同時に現王の従姉妹にあたります」


 なるほど、今の王の御正室は由緒正しい高貴な血筋の方なのですね。

 わたくしの顔色を伺って理解しているかを確認したベルグラードは説明を続けます。


「近い血族同士の婚姻による歪みが今代で表に現れてしまったのでしょう。現王もカトリーナ様も黒髪でいらっしゃいましたが、お生まれになったジルフクオーツ様……。第一王子の髪色は金色ですから」


 髪色は魔力量を表します。トップに立つ人間の魔力量が見るからに少ないのはやはり問題があるのでしょうか。


「王は魔力量が少ないと務まらないのでしょうか。王自身で魔法陣を新しく作成する、と言うことは難しいのでしょうか」

「それは……。無理でしょう。そもそも魔法陣を描けると言う魔術師自体がこの国では稀少な存在ですから。王であるということはこの国のトップです。そのトップである人物の魔力がみるからに少ないなんてあってはならないことです。それだけではありません。王族が使用する魔術具には多量の魔力を使うものが多いのです。伝令一つとっても多くの魔力を使わねばなりません」


 それを聞いてわたくしは疑問を持ってしまいました。


「どうしてそんなふうに作ったのかしら? 王様だって魔力が枯渇すると大変でしょうから省エネ仕様で色々作った方が、良さそうですが……」

「ある種魔力量で制限を作ることで他の人物の悪用を防いでいるのでしょう。まあ、そんなことをやっても黒持ちには使えてしまうのですが……。現にユリアーン様は第一王子の近侍騎士ですからご自身の魔力で第一王子の足りない魔力の補填を担当されているようですよ」


 わたくしの一番上のお兄様であるユリアーンお兄様がしばらくこの家に帰ってきていない理由がわかった気がしました。主人の魔力をいつも負担しなければならない状況で、呑気に帰省なんてしてられませんよね。


「その代わり、第二王子の見事なまでに完璧な黒髪を持っていらっしゃる」


 ベルグラードは簡潔に言い切ります。


「第二王子を御生みになったのは王都を除くと一番大きな領地を有するクルゲンフォーシュ伯爵家のご令嬢です。あの方も同じように見事な黒を纏っていらっしゃった……」


 ベルグラードは側室の方を知っている様子でした。


「二人を並べてみると、第二王子の方が王に相応しく思えてしまう、と言う訳ですね」

「まあ王になるには叡知の王冠が必要とされますから、それすら得ることができれば、金髪の王子でも問題はないのでしょうが……。お二人ともまだ得ていませんからね」


 __叡智の王冠。王家の継承物の中で王位を継ぐものとして必ず得ることが必要とされる、唯一の継承物ですね。


 他の王家の継承物は今わたくしと先生が持っているのですが、これって……大丈夫なんでしょうか。

 そんなことは今どうでもいいことですね。


「でも、わたくしには縁のなさそうな世界ですわ。政争に関係があるのは、公爵家の人間だけでしょう」

「何をおっしゃいますか! リジェット様! 貴女はこの継承争いの渦中の人ですよ?」

「え?」


 ベルグラードの突然の言葉にわたくしは戸惑ってしまいます。


「今、この国では階級制度が意味をなさなくなってきています。不動の地位を誇っていたはずの力を失いつつあるのです。公爵家は黒持ちを輩出できない、と言うことももちろんですがそれ以上に資金面が危ういですね。その反面、オルブライト家のように伯爵家にもかかわらず、戦果として領地を与えられ、多くの領民と税収を持ち大きく繁栄してきた貴族も多い。貴女はオルブライト家の一人娘。黒持ちを多く輩出する武の領地は王族の懐刀です。貴女を得ることは王座に近づく近道でしょう」

「あら……。もしかしたらお父様はその戦いに巻き込まれないように、わたくしに婚約者を用意したのかしら」

「左様です。セラージュ様は様々な手段を用いてあなたを政争から遠ざけたかった……」


 ベルグラードは目を閉じて胸が詰まるような表情を見せました。まるでそれはお父様の心情を代弁しているように見えました。


「あなたがお生まれになった時やヨーナス様が生まれた時、私たちは生まれてくる子供が女児であったら……と皆心配しました。先に生まれている王子たちと年齢の釣り合いがとれてしまいますから。あなたが女の子だと知らされたときは本当に心臓が止まりそうになりましたよ」


 その発言にわたくしは小さな刺のようなものを感じました。


「……わたくしの存在はこの家では望まれぬ存在だったのですね」


 ベルグラードは否定も肯定もしませんでした。それが紛れもない肯定だと言うことは頭の良さに自信がないわたくしにもわかります。


「しかしリジェット様、あなたが白い髪をお持ちだったのですよ。そのことに我々は大層喜びました。魔力の少ない子供であれば、正室にはなり得ませんし、輿入れを断る理由にもなる。……これであなたを王家に輿入れされずに済むとみな、安堵したものです。黒髪でないことを示すために、直轄地の町でパレードまで行いました。黒髪でお生まれになっていたら、あなたはこの国の争いの火種になったでしょう」


 それで……だったのですね。以前先生と話している中で、防衛が万全でない中、わたくしを見せびらかす様な真似をしたお父様は何を考えているのだ、と言った話を思い出しました。


「今の説明だとわたくしは継承争いの渦中の人、とはいえなそうですが」

「それが、そうとも言っていられなくなってしまったのです。ここ数年でリージェが急激に上がってしまっていますからね」

「リージェ?」


 聴き慣れない単語に首を傾げます。


「爵位に関わらない実質的な貴族階級をリージェと私たちは呼んでいます」


 そんな制度があるなんて……。わたくし全く知りませんでした。


「先ほど公爵家は力を持たなくなっているとお話したでしょう? オルブライト家の眷属扱いになっているアーノルド男爵家は力が強いでしょう? 下手な伯爵家、侯爵家よりも今やリージェ上の地位は高いとされているのですよ」


 アーノルド男爵家……。ラマとお母様の出身地だわ。


「オルブライト家はあなたの祖父母であるヒノラージュ様の築き上げた功績もさる事ながら、最近では第一王子の近侍騎士であるユリアーン様の功績も重要視されています。それに加えヘデリー様もシハンクージャ国境沿いの防衛に大きく貢献しております。セラージュ様も自領で騎士の養成に力を加えていますから、武力面だけで言うならばオルブライト領が一番です。そこも加味されてオルブライト領のリージェの順位は大きく上昇しました」


 何回もリージェ、リージェ、と言われるとなんだか自分の名前を呼ばれているような気がして、くすぐったい気分になってしまいます。

 ——リージェとリジェット。なんだか似た響きを持つ言葉ではないですか。


「なんだかリージェってわたくしの名であるリジェット、と響きが似ていますね」


 馬鹿な質問をした、と少し後悔しましたが、ベルからは思いもよらぬ返答が返ってきました。


「ええ。あなたの名前の由来はリージェからきていますからね」


 わたくしの名前の由来?


「ええ、暗に階級を指すリージェに古語で否定を表す「ト」という音を加えて、階級を持たぬ子という意味で名付けられたのですよ」


 衝撃的な由来にわたくしは眩暈がしてきました。


「なんだか、生まれながらの捨て駒って感じがしてしまいます。……嫌な由来ですね」

「そういうわけではありませんよ。セラージュ様はあなたが力なく、弱い存在であることを周りに示すことであなたを守りたかったのですよ」


 俯きながら言葉を紡いだベルグラードは、このことを言うつもりはなかったのでしょう。表情にうっすらと後悔が滲んでいます。


「きっとこの国では近いうちに政変が起きるでしょう。その時、どちらの王子が貴女を得ているかで、その戦いの明暗が別れるのです。貴女を得ることができれば、あなたの父上であるセラージュ様もお兄様であるユリアーン様もヘデリー様も動くでしょう。騎士学校を卒業すればもちろんヨーナス様だって貴女を守るために動くに違いありません」


 お父様は騎士団のOBとして力があるのはもちろんですが、それ以上に現役騎士のお兄様方は今後需要なポジションにつくことが期待されています。そんな彼らの妹であるわたくしを得ることができれば、武力を一気に得ることができるという考えですね。でもそんなにうまくいくものかしら? 


「他の方はともかく、ユリアーンお兄様は第一王子を守るでしょう。ユリアーンお兄様は第一王子の近衛騎士なのですから」

「しかし、状況が変わればわかりません。ユリアーン様は家族と敵対するなんて展開を好まないでしょう。あっさり主人を捨てて、貴女を守りにくると思いますよ?」


 わたくしはしばらく会っていないユリアーンお兄様を頭の中で思い出します。優しくて慈悲深いユリアーンお兄様……。


「ユリアーンお兄様がそんな薄っぺらい主従関係を結ぶ方だとは思いませんけど」


 どんな気質の方だとしても第一王子はユリアーンお兄様が仕えたいと思うだけの資質を持っているに違いありません。


「まあどちらにせよ、政争にまきこまれたくないのであれば、王族に近づかないのが正解でしょう」

「それはそうですね。あー……わたくしって、なんてめんどくさい立場なんでしょう」

「王都に向かえば争いに巻き込まれることは必須でしょう。これを聞いて考えを改める気になりましたか?」

「いいえ、全く」


 はっきり言い切るわたくしを見てベルグラードは目をひん剥きます。


「リジェット様⁉︎ セラージュ様は貴女様の行先を案じていらっしゃるのですよ?」

「お父様がわたくしを愛していることはわかりましたが、愛し方が一方的ですよね」


 その鋭い指摘にベルグラードは目を瞠ります。


「わたくし、守られているだけなんて性に合いませんの。わたくしは守られるより守りたいです。……いつかオルブライト家ごと守れる存在になって見せますよ」


 不敵で挑戦的な笑顔を作り、ベルに向けるとベルは一瞬怯んだ様な表情を見せました。


「どうしてそこまで頑ななのですか」

「誰かのために自分の道を諦めると、後悔するということをわたくしは知っていますから」

「まるで見てきたかの様に言いますね」

「ええ、見てきたのですよ」


 無様な前世を。誰かのせいにして自分の物語を満足できないものに仕上げてしまった過去を。後悔ばかりでちっとも素敵ではない、エピローグを。わたくしは知っています。


「どうやら私の声はあなたには届かない様ですね。……私ははっきり忠告しましたよ?」

「ええ、だからわたくしが今後どんな人生を送ってもあなたに一切の責任はありません。全てわたくしの責任です」

「ほう……。そこまで腹を括っていらっしゃるとは。お見それしました。あなたを説得しろというセラージュ様の命には反してしまいますが、ここまでくるとどこに辿り着くのか、あなたがどんな人生を送るのか、私は少々興味が出てしまいますね」

「あなたを少しでも楽しませてあげられたらいのだけれど」


 ベルグラードはそれ以上のことはとやかく言わず一礼して、わたくしの部屋を出て行きました。


 助言をもらった上で、わたくしは今後どうあるべきかを頭の中で考えます。できるだけ、わたくしは権力争いに巻き込まれないように頑張りましょう……。まあ、頑張ってもどうにもならないところはありますでしょうが、とにかく努力だけはするのです! 



階級を持たぬ子、ひどいネーミングですね。でもこのお話にはもっとひどいネーミングの方が出てきます。第二部に出てきますので、探してみてくださいね!

次は 27シュナイザー商会はやっぱり曲者です です。

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