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ギャルで、オタクな女先輩は意外と純情(納得)7

「はぁ、中々いいのが見つからないな」


 肩を落としながら向かってくる人を避けて歩く。

 母親の誕生日が迫っているというのに、中々良さそうなものが見つからない。


「そう思い詰めるな。適当に選べばいいんだよ」


 そう言って隣にいるお姉ちゃんだけど、私と同様にプレゼントを決められていないのであった。


「お姉ちゃんもプレゼント決まってないでしょ」

「私は決まってるぞ。カップ麺一ヶ月分だ」

「それ渡したらお母さん絶対怒るけどいいの?」

「……さすがにこの歳で半日説教コースは嫌だな。それに今でも母さん怒らせるのは怖い」


 私達のお母さんはあれこれと家での決まりごとを課すタイプではないけれど、ドがつくほどの真面目な人物ではある。

 特に説教をするときは気合が入りすぎてしまうのか、長時間説教が続く。

 しかも全てが正論のため返す言葉が見つからず、ただ黙って聞くしかない。

 だから私もお姉ちゃんもなるべくお母さんを怒らせないようにはしている。

 ちなみにお姉ちゃんが一人暮らしを始める要因の一つがお母さんの説教を免れるためだったりする。


「ならちゃんと考えてプレゼントしようね」

「ああ。でもその前に腹ごしらえしないか? この辺で探してからずっと歩きっぱなしだったから腹が減った」

「もう、そんな調子じゃ日が暮れ━━」


 と、言いかけたところクゥーっと私のお腹の鳴き声が。

 お姉ちゃんの顔を見ると、ニヤニヤしている。


「お前の腹は正直だな。周りにたくさん人がいるというのに、ちゃんと聞こえるほど大きな鳴き声がしたぞ」

「わかったからそれ以上何も言わないで! お店に入って何か食べよ」

「よしわかった。えーっと、この近くにあるラーメン屋は」

「せっかく妹と出かけてるんだからラーメン縛りはやめない?」


 ……そこまで嫌そうな顔しなくても。


「なぜだ? ラーメンは美味いだろ?」

「前もそんなこと言ってラーメン食べたでしょ。連続は嫌だよ」

「いいじゃないか。別に二連続ラーメンだって」

「五連続目だよお姉ちゃん」


 ジトーっと見ていると、明後日の方向に視線を向けるお姉ちゃん。

 観念したのかため息ひとつ漏らす。


「仕方ないな。今日はラーメンはやめるか」

「やった! 何にしよっかなー」


ようやくお姉ちゃんとラーメン以外のものを食べに行けると思うと、気分が上がった。


「しかしこの辺は茶店ばかりだな」

「茶店って。なんか古い言い方」

「横文字には疎くてな。特に呪文みたいな注文をする茶店はすかん」

「前にお姉ちゃんと一緒になんとか系ラーメン食べに行ったとき、呪文唱えてた気がするんだけど」

「なんのことかさっぱりだ……ん?」

「どうかした?」

「あれって……」


 お姉ちゃんは横切ろうとしたファミレスの前で立ち止まる。

 まさかあそこですませるつもりなのだろうか。


「えー、ファミレスじゃなくて、もうちょっと違うところで食べようよ」

「そういうことじゃない。ほら、あそこの二人」


 目線で中を見るように促され、それに従って盗み見る。

 奥の方の席に廉が。

 そして向かいには水原先輩が。


「あいつらこんなところで何してるんだ?」

「昨日お姉ちゃんが期日決めて課題進めるように言ったでしょ。それできっと水原先輩に頼んだんだよ」

「それにしてもここにいるのはおかしくないか? 課題進めるだけなら何もこんな街中じゃなくてもいいだろうに」


 言われてみればたしかにそうだけど、なら一体……


「それになんだ水原の格好は。かなり気合が入っているように見えるが」


 おまけに少しお化粧もしてるように見えるけど、本当に課題なのか疑問を抱き始めた。

 そしてある推測が頭をよぎった。


「まさか……デート?」


 自分の口から出た言葉なのに、その本人がその可能性に冷や汗をかく。

 まさかあの二人が付き合っていた!?

 いや、そんな素振りは感じたことないし。

 それに廉の格好はかなりラフなもの。

 デートにしては少しルーズな気がする。

 でも廉ならあの格好でも……って、私なんでこんなにまじまじと観察してるんだろう。

 プライベートなんだから二人がどうしてようが、私が覗き見る権利なんてないのに。

 でもこれがデートだとすれば、私の胃への負担が増すことになるだろうし。

 一体これはどっちなんだろう。

 セーフ? それともアウト?


「……よし、行くか」

「いやちょっとちょっと! お姉ちゃんどこに行くの!?」


 腕を掴んで引き留める。


「何って、あいつらに会いに行く」

「それはさすがにダメでしょ!」

「なんでだ?」

「なんでって……それは」


 ただの勉強会だったらいいけど、もしこれが本当にデートならこれ以上の詮索は折角の二人の時間に水を差してしまう。


「……冗談だ。流石に教師だからってそこまで突っかかるわけにはいかないだろ」


 私の反応を見たからなのか、お姉ちゃんはファミレスから背を向ける。


「とりあえずここにいると気づかれるからもう離れるぞ

「そうだね」


 最後に一瞬だけ二人の様子を見てから私達はファミレスから去った。


「それにしても、まさかあの二人がなー」 

「まだそうと決まったわけじゃないでしょ」

「まぁ、そうなんだが。仮に何もなくても、色々と問題がある」

「問題? 何もないなら問題なんてないよね?」


 そう言う私にお姉ちゃんは呆れた様子。


「今日綾が守谷をストーキングしていて、なおかつこの場面に出くわしたらどうするんだ?」


 私は急いでスマホをポケットから引き抜き、綾ちゃんにコール。

 三コール目で通話状態に。


『雫か。どうしたんだ?』

「綾ちゃん、今家?」

『ん? なぜそんなことを聞く?』

「え、いやその……」


 電話した理由を考えてなかった。焦ってすぐに電話をかけたことがあだになってしまった。


「そ、その……お母さんの誕生日プレゼントを一緒に選んでほしくて」

『そうだったのか……でももう出かけているのではないか? 電話越しが騒がしいぞ?』

「そ、そうなんだけど、やっぱり綾ちゃんにも来てほしくなっちゃって……」

『そうか……だがすまないな。今出掛けているから協力出来ない』

「また廉をストーキングしてるの?」

『いつもしているわけではない』


 いつもじゃなくてもしてほしくはないんだけどな。

 でも電話越しからではあるけど、嘘をついているようには感じられない。

 とりあえず信用しよう。


「そう、わかった。ごめんね急に電話掛けちゃって」

『……人が多い』


 謝ってるのに反応してくれない。代わりに何かぶつくさと言っているけど、何を意味しているのだろう。


『伯母さんの誕生日プレゼント……買いもの……杏花姉さんと雫……電車の音……つまり駅近く……』

「綾ちゃん? どうしたの?」


 流石に心配して尋ねると、近くの時計屋の時計が鳴った。


『時計? ……時計屋か……ということは』

「綾ちゃんってば」

『雫、近くに廉君がいるんだな?』


 唐突に核心を突かれてしまい、息を呑む。


「な、なんで? 一緒じゃないよ?」

『嘘をつかなくてもいい。さっき私が『出掛けている』と言ったら『廉君をストーキングしている』と聞いた。雫にしては安直な考えだ。つまり私が廉君の近くにいたら雫としては不都合だということ。しかし、雫は杏花姉と今出掛けているはずだ。なのになぜ廉君が出てくる? おそらくどこかで廉君を目撃し、すぐに私に電話をかけたのだろ? まぁ、その『どこか』も雫の電話から聞こえる音で大方把握できたがな』


 本当、ハイスペックのストーカーはタチが悪すぎる。


『まぁ、流石に今日は廉君に会うのはやめるがな』


 綾ちゃんの口から意外な言葉が。

 てっきり今すぐにでも駆けつけると思ってた。


「そんなに忙しいの?」


 好奇心に負けてしまい、つい聞いてしまった。


『いや、今日はブラブラと街を散歩したくてな』

「……え、それだけ?」

『それだけだが?』

「それだけなのに廉をストーキングしないの?」


自分で思うのもなんだけど、おかしな質問。


『雫、何か勘違いしているようだが、私は別に廉君を監視するためにストーキングしているわけではない。愛でるためにストーキングしているんだ』


 理由なんか関係なくストーキングはやっちゃいけない行為だけどね。


『それに今日、廉君は課題を進めているはずだ。おそらく舞か三島君あたりに頼んでるはず。そこに私が合流すれば課題を進める時間がなくなってしまう。そんなことになっては申し訳ない』

「綾ちゃん……」


 そこまで気遣いが出来るならストーキングするのをやめてあげて。


『おっと、つい長々と話してしまった。私はこれで失礼するぞ』

「うん、じゃあまた明日」


 そこで私は通話を切った。

読んでくださりありがとうございます

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