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ギャルで、オタクな女先輩は意外と純情(納得)4

「まさかあんなにもギャラリーがいたなんて。大勢の前であんなにもはっちゃけた姿見せちゃった。恥ずかしー」


 両手で上気した頰を抑えている。

 そんな恥ずかしがることもないのに。

 あれはむしろ人が来ない方がおかしい。


「うーっ、気を取り直して次行くわよ次!」


 遊びに誘った俺ではなく、水原先輩に主導権を握られてしまっている。


「それでどこに?」

「……ちゃんと来てくれる?」


 質問の意味が分からないけど、適当に頷く。


「行きます行きます」

「それじゃあ……」



 というわけで連れてかれた場所はコスプレショップ。

 水原先輩の趣味に巻き込まれる可能性大なのですぐに離れたい。


「やっぱテンション上がるー! 守谷もそう思うわよね!?」

「そうですねー」


 女装させられなければ。


「それじゃあ入るわよ!」

「楽しんできてください」

「あんたもくるのよ」


 両手で俺の頭部をガッシリ掴む。

 そしてさりげなく親指をこめかみに添えているところを見ると……さては松本先生に脅し方を教わりましたね。

 仕方なく中へと入る。

 そこにはメイド服からアニメの世界の服まで様々な分野のコスプレ衣装がずらりと並んでいる。


「やっぱりいいわねー。私もここまでの完成度を求めたいけど中々うまくいかないのよねー」


 そう言いながら近くのメイド服をうっとりと見つめている。


「まさかとは思いますけど、俺に着せるつもりじゃありませんよね?」

「さすがに前回で反省してるから女装はさせないわよ……今回だけは」

「今最後の方小さい声でなんて言ったんですか?」

「さぁー! 試着するわよー!」


 誤魔化された。


「すいません。これ試着してもいいですか?」

「どうぞ。試着室はあちらです」


 快く女店員が許可を出すと、何着か手に持ち試着室へと入る水原先輩。

 着替え終わるまで試着室の近くの衣装を拝見させてもらうことに。

 それにしてもよく作り込まれてるよなー。

 この衣装が出てくる漫画持ってるけど、忠実に再現されている。

 数コマ程度しか出ていないはずの箇所まで細かく装飾されていた。


「お待たせー」


 着替え終わった水原先輩に声をかけら顔を向ける。

 そこには美しいドレスのような鎧を身に纏った女騎士が立っていた。


「どう?」

「す、すごいですね。でも、ちょっと重そう」

「少しね。でも忠実に再現出来るなら重いくらい我慢するし。それじゃあどんどんいくわよ!」


 そう言って再び試着室にこもると、今度は酒瓶が似合う駄女神の姿で登場。

 ご丁寧にウィッグまでつけている。

 次はどこかのゴスロリ厨二アイドルキャラになりきり、超高校級と呼ばれるゲーマー、美少女怪盗、勉強が出来ないヒロイン達にと目まぐるしく着替えていく。


「やっぱどれもかわいい! 衣装作りの参考にしないと」


 ロングスカートのメイド姿でくるりと回って、スカートを翻しながら楽しそうに笑う。

 水原先輩が大いに楽しんでくれているようでよかった。


「ところで守谷。あんたは何か試着しないの?」

「俺ですか? 俺は特には」

「もったいない!」


 ビシッと人差し指を突きつけられてしまった。


「コスプレショップで試着しないなんてもったいない! 一瞬だけでも憧れのキャラになれるチャンスなのに」

「いやでも……」

「でもじゃない! 先輩命令でこの辺と……店員さん! この子に似合いそうなコスプレ衣装持ってきてください!」

「いや、さすがにそれは店の人に迷惑が━━」

「ご安心ください! 私の独断と偏見と性癖でもうご用意してます!」


 いつの間にか何着か用意されてる!?


「さすがですね!」

「ふふっ、彼には可能性を感じまして。コスプレ魂に火が付いてしまいました」


 ガッシリと握手を交わすが、当の本人(被害者)が置いてきぼりを食らっているんですが。


「それではこちらにお着替えを。心配しなくても私は女装を強要させることはいたしません。いやだと思いながらも自然と手を伸ばしてしまう自分を恨めしく思う姿に尊さを感じるので」


 店員さんの性癖は聞いてませんから。

 しかしここで上々の水原先輩の気分を下げるわけにもいかないし。

 俺が出来る選択はひとつしかなかった。


「……着替えました!」

「うんうん! 似合ってる!」

「とてもよくお似合いですよ!」


 黒いロングコートに二振りの剣を背負ったキャラの服装をさせられた。

 単純な作品としてなら好きなのだが、こうして現実で同じ格好をするとなると正直恥ずかしい。

 何も知らない人からしてみれば、ただの厨二病を拗らせたかわいそうな人だ。

 その次はハイカラな番長。

 銀髪天パーのサムライ、自分の才能を思い出せない超高校級の主人公、どこかのブリタニアの皇帝と続いた。

 スーツを着せられたが、これはさすがにコスプレとは言わないだろうと反論してみたが、


「「それはプロデューサーのコスプレ」」


 店員も一緒になって否定したので俺は考えるのをやめた。


「ふーっ……大・満・足!」


 コスプレショップを後にし、満足した水原先輩の肌はツヤツヤしている。

 対して俺はゲッソリしていた。


「次はあそこ!」


 水原先輩が指差す先の店に入る。

 そこはアニメや漫画関連の商品を数多く取り揃えているアニメイクという店。

 こういったアニメに特化した店に来るのは初めてだが、前々から行きたいとは思っていたので喜んでついていった。


「へー、こんな風になってるんですね」

「守谷は初めて来たの?」

「ええ、実家の近くにこの類のお店がなくて」


 心踊らせ水原先輩と一緒に回る。

 漫画やライトノベルだけではなく、アニソンのCDやグッズが数多く陳列されていた。

 初入店ということもあり、色々な商品に目移りしてしまう。


「はしゃいじゃって。守谷もかわいいところあるじゃない」


 浮かれていることを指摘されたことで、少しだけ恥ずかしさが湧き上がり、視線を明後日の方向へ。


「あ、これとかどう? あんた前にこの作品好きって言ってたわよね?」


 キーホルダーを一つ摘んで俺へ見せる。


「いい! これ欲しいです!」

「よかった」

「ありがとうございます! それにしてもよく覚えてましたね。結構前に一回だけ話しただけなのに」

「…… た、たまたまよ」


 今度は水原先輩が俺と視線を合わせてくれない。

 それに心なしか頬に赤らみが帯びている気がする。

 まぁいっか。それよりこのキーホルダー買おうかな。

 あ、隣のもいい! でも、中々のお値段。

 給料日前だし、書いたい本もある。

 ここで買えるのはキーホルダー一個かな。


「あっ、これ」


 買う決心がついた俺の横で水原先輩は何かを見つけた。

 どうやらアニメキャラのアクリルキーホルダーが気になっているようだ。


「かわいい」

「買えばいいじゃないですか」


 しかし水原先輩は腕を組み、首をひねって悩む仕草を見せる。


「うーん、夏休みで色々出費がかさむ予定だし、今日はこれ以上お金をかけることも出来ないのよねー。まぁ、次回かな。守谷はどうするの?」

「俺もお金がピンチなのでこれだけ買おうかと」

「そう。じゃあ先に出てるね」

「もうですか?」

「これ以上それを目にしたら誘惑に負けそうなの」


 あー、なるほど。気持ちは大変よく分かります。


「じゃ、お店の前で待ってるから」


 一足先に退店する。

 俺は少しの間キーホルダーが並ぶ棚を見つめ手を伸ばす。



「ありがとうございました!」


 無事キーホルダーを購入した俺はすぐに水原先輩の元へ。


「買えた?」

「はい!」

「それじゃあ今度は━━」

「水原先輩」

「何?」


 キョトンとする水原先輩の前にアニメイクのロゴマークが入った小さな袋を手渡す。

 少しの間俺と袋を交互に見てからようやく袋を受け取ると、その中身を引っ張り出した。


「これって……」


 中身は先ほど水原先輩が買うことを諦めたアクリルキーホルダー。


「なんで!? あんた自分のは!?」

「それは、その……あはは」


 当然これを買ったことで、自分が買いたかったキーホルダーを諦めなければならなかった。


「待って、今から買ってくるから」

「ダメです」

「なんでよ!」

「今日は水原先輩に課題を見てもらいました。それに水原先輩と遊んで、すげぇ楽しかったです。だからそれはお礼です」

「守谷……」


 視線をアクリルキーホルダーに落とし、それをぎゅっと胸元で握りしめる。


「ありがとう」

「いえいえ」


 水原先輩の微笑みを同じく微笑みで返す。


「それでこの後はどうします?」

「うーん、もう思いつかないかな」

「それじゃあ、今日はこれで解散ですかね」


 そんな話をしながら街中を歩いていると、俺達の前方を遮るように男の壁が俺達を阻む。

 しかもわざと俺達を足止めをしているようだ。


「あの、通してもらえますか?」


 腰を低くして頼んでみるが、ニタニタと笑っている。

 よく見れば、何人かはさっき達哉って人と一緒にいた人達だった。


「ああ、いいよ。ただし、その女は置いてけ」

「意味の分からないこと言わないでください」

「だ・か・ら! 俺達はそいつに用があるんだよ。さっさと渡さないと痛い目見ることになるよ?」

「へー、そうですか……あっ! おまわりさん!!」


 相手は全員一斉に後方を振り向く。

 しかしこれは俺の嘘。当然おまわりさんはいない。

 俺は水原先輩の手を引いて精一杯逃げた。


「あ、待て!」






「あれって、まさか……」

読んでくださりありがとうございます!

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