ギャルで、オタクな女先輩は意外と純情(納得)1
ようやくきました!
メインヒロイン(と錯覚するような立ち振る舞い)の女先輩編!
「んむううぅぅぅぅ」
「ぐぎぎぎぎ……」
「あいつらは何やってるんだ?」
「一昨日廉君が舞さんの胸を触ったらしくて」
「それを、知った、綾が、暴走」
「自分の胸を触るかキスをしろって迫ってる」
「なるほど、それでキスされそうで胸を触りそうになっているのか。それでお前達は何してるんだ?」
「ジュースを賭けてこの後の展開を予想してるんです。私は『廉君が胸を触る』」
「私は、『廉が、キス、される』」
「それで私が『両方』。お姉ちゃんも参加する?」
「ジュースはいらないが、まぁ面白そうだから予想はしよう。そうだな……もうそろそろ『廉が私達にツッコむ』」
「いつまでもソファでくつろいでないでさっさと助けてくださいよ!」
お茶を啜りながらくつろいでいる傍観者達に怒声を上げる。
正解者の松本先生はガッツポーズ。他三人は予想が外れ少し肩を落とす。
「ほらな。私の言ったとおりだ」
「あら、残念」
「せっかく、新作の、ジュース、飲みたかったのに」
「しまった。その可能性を考えてなかった」
「いいから助けろ雫!」
渋々ではあったが雫に助けられた。
危うく捕食されるところだった。
「助かったー」
「もういい加減食べられろ。いい加減飽きてきた」
こんの教師が。
俺の人生を「飽きた」で決められてたまるか。
こんなこと言ってるから行き遅れなんですよ。
「……行き遅れって言ったろ。今度の数学のテスト楽しみにしてろよ」
どうしてここの人達は平然と俺の心を読むのだろう。
「ところでお前達。ちゃんと課題は進んでいるか?」
「同然だ」
「もちろんです」
「うん、余裕」
「問題ないよ」
みんなは同時に頷く。
やっぱり生徒代表でもある生徒会は違うなー。
「おい守谷。ちゃんとこっちに顔を向けろ」
「さっきのやり取りでちょっと首痛めたみたいで向けれないですね」
「そうか……」
松本先生が回り込んでくるけど、椅子が勝手に回るから全然目が合わせられないなー。これは仕方がないなー。だって勝手に回っちゃうんだもん。しょうがないよね!
「……守谷、宿題はどうした?」
「正直に話しますからそのチョークスリーパーとアイアンクローの合わせは技を今すぐに止めましょうそれはもう殺しにかかって──ぎいいぃぃぃやああぁぁぁぁ……あふっ」
「れーん!!」
「……これぐらいにしてやろう」
意識を離す一歩手前で技が解かれた。
そのせいで首と蟀谷辺りに刻まれた地獄のような苦しみが俺をいたぶる。
「さ、先生に正直に話すんだ。これ以上隠されると、先生悲しいぞ」
いい笑顔で右手に血管を浮かび上がらせながら「ゴキッ! バキッ!」と骨を鳴らしてますけど、まさかその悲しみって一人の命が消えることに対しての悲しみですか?
「れ、冷静になりましょう! 正直に言います。全然やってないです! でもまだ夏休みが始まってから一週間経ってないじゃないですか。むしろ俺みたいな奴の方が大多数で──」
「悲しいな。私の可愛い生徒が言い訳するなんて。悲しいな。そんな生徒ともうすぐお別れなんて」
完全に取りにきてる! 命取りにきてるよ!
「すいませんすいません! 絶対今日は進めますので勘弁してください!」
「……いいだろう。どうせ今日はここまでだ。それに明日は生徒会の活動は休み。私が指定したところまで進めるんだぞ」
「はい!」
「と、言ったものの……全然終わらねぇ! というか指定範囲広すぎだろ! しかもほとんど苦手な数学とか、あの人性格悪すぎだろ!」
あの後すぐに課題に取りかかったが、中々思うように進まず、家まで持ち帰ってしまったわけで。
普通の人なら、『その場の誰か』に教えてもらえばいいと考えるはずだ。もちろん俺だってそうしたかったさ。
でも『その場の誰か』が生徒会メンバーの時点でそんな考えなどすぐに捨てた。
ただでさえ課題が多いのに、雫、小毬先輩、姫華先輩、綾先輩のどれかを耐えなければならない時点で、心身共にボロボロになる未来しかない。
しかしだ。正直このペースでは間に合わない。
誰かに教えてもらわないと……
「あっ……適任の人いるじゃん!」
早速その人に連絡を取る。
メールという手もあったけど、万が一見落とされてしまったら明後日以降の未来が約束されないので電話で確実に。
『もっ! もしもし! 守谷よね!? 守谷でしょ!?』
ワンコールなり終わる前に出るとは思わなかった。
そして異様にテンションが高い。
「夜遅くに電話してすいません水原先輩。今いいです?」
『ううん! 全然大丈夫! 今ちょうどお風呂出てブラつけてるだけだから!』
「十分後にかけ直します」
通話を切るが、連続で水原先輩から何度も電話がきたけど、十分経つまで一切出なかった。
「……もうそろそろかな」
水原先輩の絶え間ないコールが止んでから数分後、再度水原先輩に電話をかける。
『ひぐっ……うっ……も、りゃ?』
ワンコール目で涙声の水原先輩が電話に出た。
「あの、なんで泣いてるんですか?」
『守谷が電話に出てくれないからじゃん!』
「それは水原先輩が着替え途中だからであって」
『別にいいじゃん! どうせ見えないんだから裸だろうと電話したって!』
あの発言だけで、健全な男子高校生の妄想力であれば十分すぎるんですよ。
「一旦落ち着きましょう。一回深呼吸」
耳元で大きく深呼吸する音が聞こえる。
なんだか、ドキッとするな。
『……そ、それで、守谷は、あ、あたたしにななななにかようなのかしら?』
壊れたラジカセみたいな喋り方の水原先輩。
大方冷静になったことで先ほどの自分の言っていたことに羞恥心を覚えたのだろう。
でもそんなことを指摘していると、始まってすらいない本題からまたそれてしまうので触れない。
「実は……」
今日のことを大まかに伝える。
『なるほどねー。それであたしに手助けしてほしいわけね』
「はい」
面倒くさいことを頼んでいるはずなのに、なんだか嬉しそうだ。
『仕方ないなー。あたしも用事があったんだけど、守谷がどうしてもって言うならしょうがないわねー。わ・ざ・わ・ざ! 卓也君や花田さんに頼まずに、あたしに連絡してくるほどだし。それを無下に断るのも──』
あれ? 言われてみればそうだ!
別に水原先輩に頼まなくても、卓也に頼めばいいじゃんか!
花田さん? 数学よりも前にかけ算を徹底的に教え込まれそうだから嫌だ。
「──のファミレスで課題をするわよ。それで、もしも。も・し・も! 時間が余れば、守谷と一緒にあ、ああっ、遊びに行ってあげても──」
「あ、すいません。わざわざ水原先輩の用事を取り消させるのは申し訳ないんで、一回卓也に頼んでみます。それじゃあ」
「え? 守谷?」
電話を切り、すぐに連絡先の一覧を開く。
「えーっと、卓也の番号は……っと」
すぐに卓也の電話番号を見つけ、番号をタップしようとしたが、黒くなった画面がそれを阻止した。
卓也の番号の代わりに『水原先輩』の名前を浮かばせコール音を響かせる。
何か言い忘れたことでもあったのか?
ひとまず電話に出ることに。
「はい……守谷ですけど」
『ひぐっ、うっ……ぢゃんど、一から十まで教えるから、ぐすっ……一緒に、勉強しよ……』
さっき用事があるって言ってましたよね。なのになんで──ああ! もし卓也に断られてもいいように予定を開けといてくれるんですね。
でもそれは悪いしなー。
「大丈夫です。どうせ卓也も暇してるだろうし、水原先輩は気にせず用事を済ませてください」
『……う』
う?
『うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
えー!? 号泣!?
「水原先輩!? お、おお落ち着いて!」
先ほどの甲高い泣き声を耳元でされたせいで、キーンと耳鳴りを起こしながらも宥めようと試みる。
『だっでぼびやばばだびばばぐべばぐやぐんとずるっで! ばだびもぼりやぼびだいのに!』
耳鳴りと解読不能な言語を使われてるせいで全く話してる内容が分からない。
「な、泣き止んで下さいよ」
『だっで!』
勢いが収まらない水原先輩。
初めて会った時からだんだんこの人の精神年齢に対する若返りが酷い気がする。
現状、面倒くささが沙耶未とどっこいどっこいというのは相当だ。
なんとかこの子供のような先輩を止めないと。
「俺に出来ることなら何でもしますから泣き止んで下さい!」
俺がそう言うと、先ほどまでの叫びに似た鳴き声がピタッと止まる。
向こうで何が起きているんだ?
「水原先輩?」
『……たし……る』
「はい?」
聞きかえすと今度ははっきりとこう言った。
『明日はあたしが、守谷の課題を見る』
「えっ、でもそれは卓也に──」
と、言いかけたところでスマホから泣き出しそうな声がしたので喜んで申し出を受けることにした。
書籍版も発売中!
水原先輩の可愛い一面を書籍版で!




