素直で、ヤンデレな幼馴染は天然です(安堵)9
俺達のコントじみたやり取りの横で、自動扉がお客を迎える。
そこにいたのは今朝からバイト先に突撃することを宣言していた裕太達だった。
「あ、いた」
すぐにこちらにやってくる裕太達。
「美鶴さん、こんにちは」
おい、先に俺に声をかけないか普通。
「うん、こんにちは」
「待て、先に声をかけるべき人物を無視するな」
「……あ。わ、忘れてないぞ! 俺達は廉に会いに来たんだ! それで夏休みの予定を組むためにここに寄ったんだよ!」
絶対自分達の目的が達成したから俺のこと忘れてただろ。
「廉、この人達誰?」
初対面の裕太達のことを尋ねられたので、順番に紹介することに。
「こいつらは学校の友達だよ。右から卓也、裕太、隆志、剛」
「そうなんだ。ウチは佐竹沙耶未! よろしくね!」
元気よく挨拶したところで、今度は卓也達に沙耶未を紹介する。
「こいつは俺の幼馴染。といっても、最近再会したばかりだけど」
「元気で可愛らしい子だね」
「褒められちゃった。えへへー」
卓也に褒められた沙耶未は頭をかきながら照れている。
ただのアホなんだけどなー。
「あーあ、なんで廉ばっかり可愛い子が集まるのかなー」
「ほんとずるいよなー」
「二人共、今日は予定を決めに来たんだろ?」
なんか急に裕太と隆志がブツブツ言っていじけ始めた。面倒臭いな。
幸いなことは俺の代わりに剛が対処してくれてることだな。
「どうしたの? 元気ないけど」
二人のテンションの下がりように心配した沙耶未が二人の間に割って入る。
相変わらず初対面との距離が近いな。
「え、えーっと、佐竹さんだっけ」
「沙耶未でいいよ。えーっと、隆志君、でいいんだよね」
「う、うん」
沙耶未の距離感に戸惑う隆志。
「沙耶未ちゃん! 俺は裕太! 沙耶未ちゃんみたいな可愛い子に会えて嬉しいな!」
可愛い子がフレンドリーに話しかけてくれることが分かると、目に見えてウキウキしている裕太。
しかし、沙耶未はジーッと裕太を見たかと思えば俺に顔を向けて裕太を指差す。
「廉!」
「なんだ?」
「なんか分からないけどこの人苦手!」
素直にはっきりと正直に気持ちを俺に伝える。
さっきまで笑顔の裕太は石化したように固まっている。
流石に叱らないとな。
「こらっ! 失礼だろ沙耶未。生理的に無理とか、言動がキモいとか、本当のことでも正直に言っちゃ」
「お前の方がよっぽど失礼だろ!」
「おお、よかったよかった。固まってたから沙耶未の言葉に心を痛めてるかと思ってたけど、元気そうだな」
「いや心痛めてるから!? 怒ってるから!」
「そんで、今日は旅行雑誌買いにきたんだろ。さっさと買ってこい」
「ねぇ無視なの?」
裕太をいじるのに飽きたので、さっさと本題に移させる。
「そうだな。買いたい本もあるし」
卓也はそう言って、先頭を歩く。他二人も後ろに続く。
「あ、待てよ! まだ廉との話が終わって━━」
「旅行雑誌買うならオススメがあるから案内してあげる」
「美鶴さんが選んでくれるものならきっと参考になるんでしょうね!」
美鶴さんが付いてきてくれると分かり、鼻の下を伸ばして美鶴さんの後を追う裕太。
本当に調子がいいよな。
「面白い人達だね!」
君も充分面白い子だよ。
「でも、廉にもちゃんと友達がいて本当によかった」
「お前は俺の母親か」
微笑む沙耶未に対して俺は仏頂面で答えていると、今朝のことが頭に浮かぶ。
そうだ、あいつらなら安心して沙耶未を任せられる。
見た感じは悪い印象は持っていないだろうし。
卓也はもちろんだけど、剛は卓也の次に誠実だ。
隆志は少しおちゃらけてはいるものの、しっかりしてる奴だ。
裕太は……とにかく、あいつらならきっと沙耶未を傷つけることはないだろう。
思い立ったが吉日という言葉もあることだ。早速沙耶未に三人をアピールしないと。
「でもまぁ、あいつらはいい奴だよ」
「そうなの?」
「ああ、卓也は見た目も整ってるけど、中身が出来てる。ああいうのが理想の彼氏像なんだろうな」
「そうなんだー」
あれ、反応か薄い。
「そ、それと剛! たまに裕太達とバカやるときもあるけど、基本的に真面目な奴だ。それに運動神経いいんだぜ。前の球技大会でも結構いい線いってたし」
「ふーん」
う、また反応が薄いな。
「あ、あと! 隆志! おちゃらけてるけど、協力するときは最後まで付き合ってくれるいい奴だ。いつも面白い話ししてくれるから、一緒にいても飽きないと思うぞ」
「へー」
こ、これもか。
うーん、やっぱり裕太か。
裕太の良いところは……ダメだ。そんなにカッコいいわけでもないし、運動神経もそこまで。下心丸出しだし、あいつが話す笑い話全然面白くない。
「え、えーと」
「廉」
少し低めの声で俺を呼ぶ沙耶未。
少し危機感を覚えた俺は沙耶未の動向を注視する。
「……もう帰るね! また明日!」
そう言って足早に帰っていく沙耶未の後ろ姿と今朝の綾先輩の後ろ姿が重なった。
「おーい、廉。これレジに通して━━さっきの子はもう帰ったの?」
旅行雑誌と新刊のラノベを持った卓也が周りを見渡している。
「あぁ」
短く返事をする俺に違和感があったのか、眉をひそめる卓也。
「何かあったのか?」
「いや、特には。他の奴らは」
「自分の買い物中」
「そっか」
「それで、夏休みどうする? 夏祭りは一緒に行くかって話してたんだけど」
「悪い、予定決めるのまた今度で。今日は人の入りも多いみたいだし」
綾先輩と沙耶未の姿を見て心に引っかかりを覚えてしまい、今は予定を決める気分でもない。
俺は理由をつけてすぐに帰らせようとした。
「そうか。じゃあそう伝えておく」
卓也は疑いもせずに了承。
後から来た三人にそのことを伝えて一緒に退店した。
「どうしたのれっちゃん。様子が変だよ」
「そ、そうですか?」
「うん。沙耶未ちゃんと何かあったの?」
何もなかった。なのに妙に気にしてしまう。でもなぜ気になるのかわからないことを説明出来るはずもないので、小さく「いえ」と答える。
「それならいいけど。もしかして風邪でも引いた? 今日は終わったらすぐに帰った方がいいよ」
「はい、そうします」
風邪ってことにしよう。だから今日は色んなことに違和感があるんだ。
そう言い聞かせ俺は作業に没頭し、一日を終えた。
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