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素直で、ヤンデレな幼馴染は天然です(安堵)6

 追いかけもせず、俺は少し呆気にとられ立ち尽くす。

 いつもならギリギリまで俺と一緒にいるはずなのに。

 考えても無駄だろうと思いながら、綾先輩に追いつかないように登校する。

 だけど綾先輩の反応が嫌でも頭に残って、つい考えてしまう。

 俺があんな話をしたからか?

 これは良い傾向なのか、それとも……


「廉!」


 考えにふけっていた俺に声がかかる。

 目の前に卓也がいた。なぜこんなところにいるのか。


「卓也、お前なんでこんなところに? お前の登校する道は違うはずだよな」


 と、問いただしてみると卓也は眉を歪ませ、怪訝な表情をする。

 そして次には失笑し、俺は頭がこんがらがった。


「な、何言ってんだよ。ここ校門だぞ」

「え?」


 言われてみれば、周りには俺と同じ制服を着た集団が校門をくぐっている。

 いつのまにか学校に到着していたようだった。

 改めてさっきの行動を振り返る。


「は、恥ずかしい……」

「気にすんな。誰だってやるミスだ」


 そういうけど、さっき笑ってたよな。


「廉と卓也じゃねぇか。校門の前でなんて初めてじゃないか?」


 偶然にも校門の前であったのは裕太、剛、隆志の三人。

 いつも教室では話すが、校門ここで鉢合わせるのは初めてだな。


「裕太達か」

「なんだよテンション低いな。そんなんじゃ女にモテないぞ。テンション上げろよ」


 モテなくて結構。

 それに有言実行している祐太がこの中で一番「モテる」って言葉から遠い存在なのを自覚しているのだろうか。


「なんだその目は」

「別に」


 明後日の方向に顔を背けて、昇降口に向かう。


「話は変わるんだけど、今日は廉ってバイトの日だよな」


 靴を履き替えていると祐太がそう尋ねる。


「なんで俺のスケジュール把握してるんだ。まさか、俺のストーカー」

「ちげぇよ!」


 わかってるわかってる。冗談だよ。

 これが綾先輩だったら冗談にならないけど。

 それと後ろにいる見覚えのあるラフレシア系眼鏡っ子の女子生徒。さっきから「腐へっ」って鳴き声が聞こえるぞ。


「そうだけど、それがどうした」

「今日お前のバイト先に遊びに行く」

「来るな」


 即答してから教室の方へと歩く。


「な、なんでだよ!」

「どうせ何か企んでるんだろ」


 教室の扉を開け、鞄を自分の席に置くと祐太達が回り込んで俺を囲む。


「別に何も企んでないぞ! 俺達はただ夏休みの計画を立てるために旅行雑誌を買って、どこ行こうかって話し合いがしたいなーと思ってだな。そこで廉が働いている本屋で買った方が廉とも相談出来ると思って」


 かなり苦しい理由を言う隆志。

 だが、少しは納得出来そうな理由だ。だから聞く相手を変えよう。


「剛。本当はどうなんだ」


 ジッと剛の目を見つめる。

 剛は苦い表情を浮かべ、俺と他の二人を交互に顔を向けると、観念した様子で息を吐く。


「お前の姉ちゃんの美鶴さんに会いに行くつもりだった。すまん」

「「剛! 裏切ったな!」」


 そんなことだろうと思ったよ。

 あと姉ちゃんじゃない。


「廉も卑怯だぞ!」

「剛に聞くなんて!」


 だってお前ら二人よりも剛はまだ心が綺麗な方だからな。


「廉、別にいいんじゃないか? どうせ今日は俺も廉の店に行くつもりだったし」


 ここで伏兵とばかりに卓也が祐太達の援護に入る。


「卓也まで」

「お前の邪魔しないし、俺がある程度押さえておくからさ。な、いいだろ?」


 卓也にここまで頼まれたら嫌とは言えないな。

 ここは俺が引き下がるか。


「分かったよ。あんまり騒ぐんじゃないぞ」


 俺が承諾したタイミングでチャイムが鳴り、松本先生が教室に入って来る。

 他の四人は自分の席に戻り、朝のホームルームが始まる。



 昼休み。綾先輩から弁当を受け取っていた俺が教室や学食で食べるわけにもいかなかった。

 万が一綾先輩の手作り弁当だと気づかれれば何が起きるか分からない。

 しょうがないので一人寂しく屋上で食べることに。

 屋上は相変わらず利用している人はいない。

 だけど俺にとっては誰の目にも届かない最高のスポットだった。

 日を避け、日陰に置いてあるベンチに座る。

 少し暑いが、我慢出来ないほどではないな。

 弁当箱を開けて中身を確認。

 きんぴらごぼう、里芋。サラダに鮭の塩焼き。二段目には白米と梅干が。

 どれも美味しそうだ。

 きっと俺のために心を込めて作っているのだろう。

 だけど、俺は綾先輩ことは尊敬出来る先輩であっても異性としての好きという感情はない。

 なのに俺はいつもこんな弁当を貰ってばかり。

 最低な奴だと思いながらも箸で突いていると、屋上の扉が開いた。

 屋上に人が来るなんて珍しいな。

 まさか綾先輩?

 身構えて扉を観察すると、ひょっこりとクリーム色の髪が顔を覗かせる。


「守谷、いるー?」


 恐る恐る出てきたのは水原先輩。だが、どうしてここに?


「ここですよ」


 やはり一人で食事をすることへの寂しさからなのか、つい声をかける。


「あ、そこにいたんだ」


 軽い足取りで近寄り、自然に俺の隣に座った。


「どうしてここに。いつもは生徒会室か教室で食べてるんじゃないんですか?」

「それは廉を見かけ──た、たまには屋上で食べるのもいいかなーって。あ、あははっ」


 何故か誤魔化している水原先輩。もしかして目に見えて俺の様子がおかしかったのか?

 前にも顔に出てるって言われたし、それを心配して水原先輩はここに来たのかも。


「や、やっぱり、屋上って人いないわね。あたし達しかいない」


 落ち着かない水原先輩は自前の弁当箱を開いて、食事を始める。


「そうですね。俺達だけなんですね。でも、今はそれが良いです」


 聞こえないように呟いたつもりだったが、俺の声が聞こえたらしく水原先輩は咳き込んだ。


「急に変なこと言ってどうしたのよ!?」

「いや、ちょっと悩みがあって」

「悩み?」


 俺の話に集中してくれるのか、水原先輩は箸を止める。


「悩みがあるならあたしに話しなよ。スッキリするわよ」

「本当ですか?」

「もちろん。だってあたしは体験者だもん」


 そうでしたね。


「それにあたしと守谷は、その、と、友達っていうか、親友っていうか、その」


 恥ずかしそうにモジモジとしている。


「そうですね」


 俺は意を決して、悩みを打ち明けることにした。


「綾先輩と沙耶未のことで悩んでるんですよ」

「沙耶未って、昨日の子よね」

「はい。あの二人は俺のことが、その、好きなんですよね。異性として」

「……そうね」

「ですけど、俺は誰かと付き合う気はないんです」

「二人とも守谷のタイプじゃないから?」


 水原先輩の質問に首を横に振る。


「違います。ちょっとトラウマで女子を好きになれなくて。あ、でもそれは恋愛的な好きだけで、友人としては好きになることは出来ますよ」

「そ、そうなんだ」


 水原先輩は複雑そうな顔を浮かべている。


「だから二人がどんなに好きであっても、俺は答えることは出来ないんです。だから二人の恋は決して実らない。このままだと俺が気づかないうちに二人を傷つけてしまいます」

「そっか」

「だから、二人には早々に諦めてもらいたいんですけど、どうすればいいのか」

「……それは無理だと思う」

「え?」


 聞き返すと、ハッと我に返った水原先輩が慌てている。


「え、えーっと、その。ほら、沙耶未はわからないけど、綾は諦め悪いからさ。出来ないんじゃないかなって」

「そ、そうですね。それが問題です」

「でも、一人で悩むよりかは誰かに意見を聞くのもアリだと思うよ。今回はあたしだから納得する答えは出なかったと思うし、他の人に相談してみたらあっさり答えが出てくるかも」

「そうですね」

「うん。じゃあ、二人のことをちゃんと考えてる後輩には私のハンバーグをあげましょう」

「じゃあ遠慮なくいただきます」


 弁当箱を俺に差し出し、ハンバーグを勧める。

 俺はありがたくハンバーグを頂戴する。


「うん! 美味しいです!」

「本当? よかったー……よしっ」


 小さくガッツポーズをする水原先輩。

 料理を褒められてそんなに嬉しいのか。

 ジーッと見られていることに気づいた水原先輩はすぐに、やめて姿勢を正して平静を装うと一度だけ咳払いをした。


「でも注意してね。守谷の考えが正しいとは限らないから」

「わかってますよ」


 水原先輩のアドバイスも貰った。

 思い立ったが吉日だ。弁当箱の中身を平らげて、すぐに弁当箱を片付ける。


「ごちそうさまでした! ありがとうございました水原先輩。俺はもう戻ります」

「頑張ってね」


 少し気持ちがスッキリした俺は足早に教室へ。

 まだ授業まで時間はある。

 アドバイス通り、俺は裕太達に相談してみることに。

 当然俺のこととは告げず、かといって知り合いの話にもしない。絶対バレるから。

 なので、ちょっと前に読んだ本の主人公というていで話をすることに。


「と、いう流れなんだけど、現実にこういうことがあったらお前達だったらどうする?」

「ふむふむなるほど」


 裕太は一考すると、微笑みながらこう答える。


「とりあえずそいつは死ねばいいと思う」


 水原先輩、相談する相手を選ぶのは大事ですね。

読んでくださりありがとうございます

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