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淑女で、紳士な二人は生徒会長の両親です(絶望)4

「美味しかった! 次どうする? 服でも見る?」


 映画も見て、昼も食べ終えた。さて、次は何をしようか。

 提案をしようと考えていると、袖をクイクイッと引っ張られる。

 視線を落とすと、小毬先輩が俺を見上げていた。


「どうしました?」

「クレープ、食べたい」


 ……え、今からですか?


「さっきパフェ食べてましたよね?」

「うん。昼食で、パフェ、食べた。だから、デザート、食べたい」


 あれ? パフェはデザートじゃ? でも、昼食として食べたからデザートとは呼ばない? だからある意味クレープがデザートで……


「りょ、了解です」


 頭がこんがらがり、思考停止した俺はそのまま小毬先輩の言うことを受け入れる。


「なんだ? クレープを食べるのか?」

「お、いいね! 私も食べたい!」

「いいわね。私あまり食べたことないの」


 と、俺と小毬先輩を聞いていた先輩達もクレープを欲しくなったらしい。


「どこにあるのかしら?」

「たしか、どこかにマップがあるあったと思うんだが……」

「あ、あれじゃない?」


 後輩二人を置いて先輩達はエスカレーター近くの柱に貼り付けてあるマップへ。


「小毬さんのはちゃんと私が払うから。もちろん廉のも」


 さっきのお詫びについては忘れていないことを俺に告げる雫。


「頼む。あと、俺のは自分で払うからいい」

「遠慮しなくていいわよ。そもそももお詫びなんだし」

「いいって、たしかに少し残念だったけど、その内レンタルで出るだろうし」

「それとこれとは関係ないでしょ。いいから奢らせなさい!」


 どうしても俺の分を払おうと意固地になっている。


「だから小毬先輩のだけでいいって!」

「それじゃあ廉のお詫びにならないでしょ!」


 お互いが気を使い、少しずつ熱が入り始めていると、


「……仲よさそうだな。二人共」


 マップの前にいたはずな綾先輩ジトーっとした目で俺達を見ていた。


「わっ!? びっくりさせないでよ綾ちゃん」

「いいなーいいなー、廉君とそうやって対等におしゃべり出来て」


 なんか面倒臭いテンションだなこの人。


「べ、別に、雫と特別仲が良いわけでは。綾先輩達とも仲良いと思ってますよ」

「ほら、今だって私と話すと少し硬い話し方をするじゃないか」

「先輩なんですからこんな喋り方しますよ」


 流石に先輩に対して普段の喋りをするわけにはいかない。


「ではせめて、名前だけでもフレンドリーに呼んでくれないか」


 それって、雫みたいに綾先輩のことを「綾ちゃん」と呼べってこと? 俺のキャラじゃないな。


「例えばー……ハニー、とか」

「フレンドリーはどこにいったのかな綾ちゃん?」


 その甘ったるい呼び方をしていいのはフレンドリーを飛び越した人だけだから、俺は「綾先輩」のままでいいってことだな。


「綾ちゃーん、雫ちーゃん、廉くーん。クレープ屋さんが見つかったから移動するわよー」


 マップの前で手招きしている姫華先輩のおかげでこの話は強制終了。


「すぐ行きます!」


 小走りで姫華先輩と水原先輩、小毬先輩とごうりゅ――小毬先輩は?


「小毬先輩はどこです?」

「え? あたしの後ろにいるじゃ――いない!?」

「あらー、どこかしらー」


 お互いが別の場所に視線を向けて小毬先輩を探す。

 俺のみている先に小毬先輩らしき影が人波に消える瞬間をとらえた。


「あそこです!」


 みんな一斉に振り向き、小走りで追う。

 小毬先輩の背後はなんとか視線を外さないようにしているが、人波のせいで走ることは出来ず、さらにその人波の中でも悠々と通り抜けて進んでいく小毬先輩の速さについていけず、少しずつ距離が離れていく。


「なんであんなに機敏なの!? いつもあんなんじゃないよね!?」

「小毬め。相変わらずお菓子やスイーツのこととなると行動的になるな」

「いいじゃない。それが小毬ちゃんの可愛いところよ」

「おしゃべりもいいですけど、このままだと見失いますよ! 廉もきびきび歩く!」


 急かされるけど、冷静になって考えてみると、別に目的地は分かってるんだから急がなくても――


「小毬先輩が迷子の子だと思われて迷子センターに連れていかれたら、今度こそ小毬先輩はキレるわよ」

「小毬先輩! ストップ!!」


 今出来る小走りで小毬先輩に必死に追いつこうと試みる。

 なんとか見失う前にクレープ屋に到着してくれたおかげで恐れていたことは免れた。


「やっと、追いついた」

「クレープ」


 はいはい、分かってますよ。


「これがメニューか」

「色々な種類があるのねー」

「甘いものだけじゃなくて、グラタンなんかもあるんですね。知らなかった」

「でもデザートなんだから甘いのじゃない?」

「甘くない、クレープ、なんて、邪道」


 メニューの看板の前でワイワイしている横でふと店先を見た。

 クレープ屋の前には中々長い列が出来ている。

 別にクレープは食べようとは思っていないし、飲み物だけだから先に並んでおいて決まったら一緒に注文しておこう。


「先に並んでおくんで決まったら教えてください」


 そう伝えて列に並ぶ。

 店と列に仕切りの壁もガラスもないので店員の作業がこと細かく確認出きる。

 円形の鉄板の上に生地を流し、生地を薄く延ばす。

 焼けた生地の上に生クリームと苺、チョコレートソースをたっぷりとかけて包む。

 生地の焼けた甘い匂いに少しだけ食べたいと頭の中で訴えが聞こえてくるが、昼食のオムライスと小毬先輩のパフェを見たせいで満腹だ。

 買っても食い切れない。

 小さな溜息を吐いてからボーっと列の先を眺める。

 店員の手際の良さからどんどん注文が捌かれていく。


「廉君」


 姫華先輩に声をかけられたので振り向く。

 ニコニコした姫華先輩と無表情の小毬先輩が立っていた。


「残りの人達はどうしたんです?」

「ベンチで、座って、待ってる」

「私達は廉君のお手伝い。ほら、一人じゃ全員分は持てないでしょ?」


 まぁ、五人分のクレープと飲み物を同時に持つのは厳しいな。


「ありがとうございます。それで何にしたんですか?」

「私が抹茶アイスのクレープ。綾ちゃんがチョコとクリーム」

「雫は、バナナと、クリーム。舞が、苺と、クリーム」


 えーっと抹茶のアイス、チョコ、バナナ、苺っと。


「それで、私が……メガクリーム苺バナナチョコバニラアイスクレープ……」


 ツッコまない。ツッコまないぞ!


「の、アイスマシマシ苺バナナ多めクリームエベレスト生地広め」

「それはおそらく特定のラーメン屋にしか対応してない注文方法です」


 てかエベレストってなんですか!? 初めて聞いたんですけど!?


「次のお客様どうぞ」


 店員に促され、カウンターの前に立つ。


「ご注文はお決まりでしょうか?」

「コーラと抹茶アイス、チョコ、バナナ、苺のクレープ一つずつ。それと、えーっと……なんでしたっけ?」

「メガクリーム苺バナナチョコバニラアイスクレープ」

「かしこまりました」


 スラスラと小毬先輩が注文し、レジに全ての品の合計金額が表示される。


「三千九十円になります」


 結構な金額になるな。主に原因は小毬先輩のだけど。

 とりあえず俺が全員分の支払う。


「ちょうどお預かりします。列からズレお待ちください。商品が準備出来次第お呼びします」


 言われた通りに列から少し外れて待つことに。

 一気に注文してしまったためか店員達は慌ただしそうだ。

 少し申し訳ないな。


「はい、廉君。先にお金を渡しておくわね」


 しばらく眺めていると姫華先輩が小銭を渡す。


「たしかに受け取りました」


 素直に受け取り、財布に入れる。

 その横でもう一人の握った手が俺に突きつけられた。


「はい、廉」

「なんですか?」

「お金」


 あれ? 雫が払うんじゃなかったか?


「雫から、話は、聞いてる。でも、あれは、私が勝手に、怒った、だけだから。ちゃんと、自分の、分は、自分で、払う」

「そうですか。なら遠慮なく受け取りますね」


 小さな手が開き、俺の掌に小銭が乗る。


「お待たせしました! こちら商品になります。ありがとうございました!」


 チョコと苺のクレープ、それに自分で頼んだコーラを受け取る。

 抹茶アイスとバナナのクレープは姫華先輩が。

 メガクリーム苺バナナチョコなんとかは小毬先輩が持って、他の三人の元に歩く。

読んでくださり、ありがとうございます!

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