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淑女で、紳士な二人は生徒会長の両親です(絶望)3

 中は少し薄暗く、足元に注意しないとこけてしまいそうだ。

 集客はそこそこといった様子からして、ハズレの作品ではないのかもしれない。


「えーっと、たしか……あ、ここよ」


 雫が立ち止まったのはちょうどスクリーンを目線が同じ位置に来る真ん中の列。

 俺の座席番号を確認すると、通路側から二番目の席のようだ。


「とりあえず、奥の人から入りましょうか」


 と言って、俺よりも奥の人達を先に行かせる。

 一番奥から姫華先輩、小鞠先輩、綾先輩、水原先輩が座り、次に俺、雫が席に着く。

 綾先輩が隣じゃなくてよかった。

 何かしてくると思うと映画に集中出来ないからな。

 座ってすぐに館内は暗くなり、近日公開する映画やあの有名なカメラが一通り踊ると映画が始まる。


『なんで……これは夢なのか?』


 内容は一週間を永遠とループする中、唯一記憶を引き継いでいる高校生の主人公がどうにかして無限の日々を終わらせるため悪戦苦闘する物語。


『俺は絶対あいつを助ける! たとえ何度もリセットされても、その度助けてやる!」


 途中で好きな子を助けたり、仲違いしていた親友との友情を取り戻したり、終盤にさしかかった頃にはなぜ時間がループしているのかが謎の老人の口から明かされ始めた。


『俺は絶対にこの一週間を超えるんだ!』

『それは無理だ』

『何でだよ!?』


 手に汗握る展開に心拍数が上がり、自然と体が前のめりになる。

 いよいよループしてる謎がわかるんだな!

 が、その前に、口が渇いた。ここは一度落ち着くために飲み物を……って、あれ?。

 左手を伸ばすが空を掴もうとしてしまう。

 視線を左のホルダーに向ける。

 ホルダーに入れておいたはずの飲み物がない。

 左隣の雫を見ると、ストローで飲み物を啜っているが、なぜか左のホルダーには紙コップがある。

 それらのことから推測すると……


「あの、雫。ちょっといいか?」

「なによ。今いいところなんだから静かにして」


 どうやら集中しすぎて、自分が何を飲んでいるのかも分かっていない様子。


「いや、その、な。それ、俺の」


 俺が指摘すると待っているコップとホルダーのコップを交互に確認する。


『なぜならこの世界は──』


 この映画で最大の見せ場と言っても過言でない老人が真相を話す場面。

 しかし俺がその真相を知ることはなかった。

 暗闇の中で突然顔面に打撃をくらい、気を失うからだ。

 


「あー、面白かった! ループしてた理由が意外だったなー」

「私はあまりこういうの見ないから、新鮮で面白かったわ」

「うむ、こういうアニメ映画もやはり侮れないな」

「キャラメル、美味しかった」


 映画館を出て行く綾先輩達。

 その後ろを映画終了まで気を失っていた俺と気まずそうな雫が歩く。


「……その……本当にごめん。今回は一方的に私が悪いです」


 気にするな……といつもなら言いたいところだが、今回に関しては罪が重いぞ! 俺一人だけ謎も結末も知らないんだけど!


「本当に、ごめん……」


 心から反省しているようで、どんどん弱々しくなっていく雫の姿にこちらの方が罪悪感を抱いてしまう。


「……小鞠先輩を宥めるために約束したクレープ。それを雫が払うなら許す」

「も、もちろんよ! 廉の分も奢る!」


 和解が成立した。

 クレープの話をしたからか、お腹が空いてくる。


「もうそろそろ昼を食べませんか?」

「そうね。もうそろそろ混んでくるだろうし」


 水原先輩が答えると、みんなで近くの店へ。

 少しだけ列が出来ていたため、綾先輩が用紙に名前と人数を書く。

 少しばかり店先に並ぶ椅子に腰をかけていたが、周囲の男性からの視線が嫌でも集まる。

 そりゃ俺の周りの女性陣は美少女。

 しかもそれぞれ違う魅力があるのだからここらにいる男性の目を奪うのも無理はない。

 鼻の下を伸ばすのもしょうがない。

 だけど、俺が視界に入った途端に親の仇みたいな目で睨まないでもらいたい。

 時間にして五分。ようやく俺達が呼ばれたので、みんなの後を追うように俺はそそくさと入店し、胸をなでおろす。

 ただ、店員が俺達を呼ぶ際に「六名でお待ちの『守谷様』」と言っていたのが聞こえたんですけど。

 書いたの綾先輩ですよね? 綾先輩は「東雲」ですよね?


「どうした廉君? 座らないのか?」


 全員が席に座り終え、まだ立っている俺に綾先輩が、対面の空いてる席を指差す。

 ここで指摘はしない。ここでさっきのことを訪ねたら、明後日の方向の答えが返ってくるって俺知ってる。


「なんでもないです」


 空いてる席に座る。

 店員からメニュー表が二つ渡され、横に並んでいる三人でそれぞれ共有することに。


「雫はどうする? あたしはパスタしようと思ってるんだけど」

「あ、私もパスタがいいです。廉は?」

「俺はオムライスで」


 お冷やに口をつけながら向かいの三人を横目で盗み見る。


「ドリアにしようかしら。小鞠ちゃんはどうする?」

「デラックスジャンボパフェ」


 昼飯なのに最初からクライマックスデザートですか。

 そもそも食い切れるんですか?


「綾ちゃんは?」

「私はこれをもらおうかな」

「当然のごとくカップル限定メニューを指差さないで、このパスタあたりで頼んでください」


 綾先輩が見ているページを無理矢理変えて注文を変更させる。


「廉君、注文するのは私の勝手ではないかな?」

「たしかに勝手ですが、そのメニューは俺の許可が必要です。俺は許可しません」

「もう、仕方ないな。ここは私が引き下がろう。そもそも私と廉君はカップルではなく夫婦だからな」


 ただの生徒会メンバーです。


「全員決まったなら注文しますよ」


 一番奥に座る雫が呼び鈴を鳴らす。

 すぐに店員が対応し、各々の注文を聞くと一旦厨房にさがる。

 しばらくして注文の品を運び、伝票を入れて「ごゆっくりどうぞ」と一声かけて去った。


「うーん、美味しい!」

「たしかに、安いのにとても美味しいです」


 水原先輩も雫も、頼んだし品に舌鼓を打っている。

 俺もオムライスを食べているが、なかなか美味い。

 ありがたいことに値段も安い。

 ……それにしても。


「小鞠ちゃん。本当に食べられるの?」

「うん」

「無理をしなくてもいいからな。最悪私達が協力するぞ」


 小鞠先輩の前には顔が隠れるほど存在感のあるパフェ。

 これを食べるってマジですか小鞠先輩。

 でも、無表情ではあるが、瞳の奥はキラキラと輝いている気がする。

 そして小鞠先輩はスプーンを持ち、パフェと対峙した。

 グラスの底からスポンジケーキ、イチゴアイス、具沢山の果物、チョコアイス、コーンフレークと層が重なり、その上には高く盛り付けた真っ白なソフトクリームの山がそびえ立っている。

 絶妙なバランスを保っているソフトクリームは、スプーンを少し刺してしまうと倒れてしまいそう。


「いただき……ます!」


 刹那、素早いスプーンさばきでソフトクリームの山をえぐり、幸せそうにスプーンを口に含む小鞠先輩。

 アンバランスな形になった山が待ち受けるのは確実な崩壊。

 だが、小鞠先輩がそんなことを許すはずもなく、崩壊する前にスプーンが次々とソフトクリームを掬い、口運ばれていく。


「……ぷふぅー」


 とりあえず一息とばかりに、頼んでおいた冷たいジュースを一口。

 すでに山は消え、コンフレークの層が顔を出している。

 あれだけのソフトクリームを食べてよく頭が痛くならないものだ。

 その後も小鞠先輩の勢いは止まらず、見ているこっちの方がお腹いっぱいになりそうだった。

 全員が注文したものを食べ終え、すぐに席を空けて会計を済ませる。


「ありがとうございました!」


 店員に見送られながら俺達は店を出た。

読んでくださり、ありがとうございます。

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